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第-1章 迷星の時量剣師(めいせいのときはかし)
第24話 1番の山場
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朝食を取るために一度冒険者ギルドに戻る。
ギルドの酒場で供給された朝食は、見慣れない野菜が色々入ったサラダと丸くて硬いパン、メインは濃度の濃いシチューのようなスープだった。
手でちぎったパンでスープをすくってパンごと食べると、優しい甘みと程よい塩気と熱さと旨味が寝起きの身体に染み渡る。
「これはなかなか良い味付けだの」
アヤメはパンを千切らずスープにつけて丸かじりしており、口の周りがスープでベタベタになっている。
「お口に合ったようで何よりですな」
エッジはスープ皿に口をつけてゴクゴクと飲み、パンはそのままモリモリと食べていた。
「それで、エルフの村までどれ位かかるんだ?」
パンとスープが無くなり、サラダに入っているでっかい紫色のイモムシのような不気味な見た目の果実の様な物に、フォークを刺すべきか悩みつつアヤメに尋ねた。
「徒歩で半日、馬車なら1時間程度といった所かの」
アヤメは布巾で口元を拭いながら答えた。
「近いとは言え早く出発したい、ソウシもさっさと食っちまってくれ」
言われて見ると、アヤメもエッジも皿は空になっていた。
「いや、よくこんな毒々しい見た目の物を平気で食えるな…」
「何を言っておる、美味しくて栄養抜群なのだぞ?」
アヤメは心底意外そうに言ってくるが…
フォークを刺すと謎の赤い汁が滲み出る、持ち上げてしげしげと観察するも、全く美味しそうには見えない。
「ソウシ、ことわざにも言うだろ『毒を食らわばサラダで』とな」
「なんでわざわざ朝からサラダで毒を食わなきゃならんのだよ…」
しかし、いつまでも駄々をこねていても仕方ない。
しっかりと目を閉じ、見ないようにしながら覚悟を決めて口の中にねじ込んだ。
プチっと弾ける皮。
その中から、ねばりつくような果肉が舌に絡みつく。
薬草を濃縮したような苦味と、経験したことのない不快な舌触りに血の気が引き涙が流れた。
これはバイタルには良いかもしれないがメンタルに悪い、そして何より…
「不味い」
右手の小川に沿って南へと伸びる街道は山の奥へと続いていた。
紅葉が進み、見渡す限りの山が燃えているように見える。
アヤメを荷台に乗せ、緩やかで長い登り坂を進んでいた。
「ここもなかなかの山越えなんだな」
「この旅一番の山場だからな」
「何か昨日も似たようなこと言ってなかったっけ?」
「毎日は日々の積み重ねだからな」
何かそれっぽい雰囲気の、エッジの台詞を脳内で反芻する。
「いや、俺が思ってた事ってそういう事では無かったような???」
エッジのペースに巻き込まれて自分の事に自信が無くなるが
「この旅一番の難所や山場が日々訪れる件について…」
「なんだ、そんな事か、ことわざにも言うだろう『2度ある事はサンドバッグ』ってな」
「言葉の意味は良く分からんけど、滅多打ちで気の毒になってくるな」
ふと見ると、アヤメがニヤニヤして俺とエッジのやり取りを見ていた。
「エッジ殿、随分と楽しそうだの」
「俺には冒険者稼業より運び屋の方が性に合っているようでな」
「仏頂面で寡黙な男だったからの」
「青い空、木の葉を揺らす穏やかな風、優しく降り注ぐ木漏れ日、こんな物に10年も触れていれば人は嫌でも丸くなるというものだ」
仏頂面で寡黙なエッジなど想像も出来ないが、そういう時代もあったのだろう。
「そっちだの」
賑やかな道中、山道を進んでいるアヤメが左へと分岐する細い道を指差した。
道幅3メートル程度あり、馬車も入っていけそうだが、かなりの悪路だ。
「尻の割れ目が増えそうだが、奥でUターン出来るかな?」
エッジは地面に埋まった大きな石を見ながらアヤメに尋ねる。
「ゴブリン達を壊滅した暁には、村の中で好きなだけターンして貰って構わぬ」
「それじゃ張り切って行くとしようか」
ノリノリなエッジとアヤメを尻目に俺の手のひらはじっとりと汗ばんでいた。
「何だ? ソウシ、緊張してるのか?」
エッジは軽い調子で声を掛けてきた。
確かにゴブリンの巣に近付いてきていることで緊張はしていた。
いつもはチャラけているが、周囲に気配りが出来るところはさすがベテランと言える。
「ルーキーだからな」
「気の抜けたベテランよりよほどマシだ」
エッジはそう言うとニヤリと笑ってきた。
軽い凸凹道を1キロ進んだ頃、荷台の中はぐしゃぐしゃに散らかっていた。
アヤメは倒れた椅子に潰されないように毛布の隙間で横になっている。
「おぉ、トンネルか?」
エッジは正面の道が山を貫く様に続いているのを見て声を上げた。
「トンネルって珍しいのか?」
意外そうにしているエッジに尋ねた時、馬車の車輪が地面に埋まった大きめの岩を踏んだようで、荷台が大きく跳ねた。
「気を付けないと舌を噛むぞ?」
「先に言ってくれ、今ちょっと噛んだよ…」
今更忠告してくるエッジに悪態をつくと、荷台にいたアヤメが這いずってくる気配を感じた。
「そろそろ石畳の道になる頃かの?」
アヤメの言う通り、トンネルの少し手前から綺麗に整備された石畳の道になっていた。
「これは助かるな、このままでは股間の相棒が脳天を突き破るところだった」
エッジが訳の分からない事を言うと、アヤメがコホンと咳払いをした。
「一応レディが乗っておるのだがの」
「おっと、これは失礼『セクハラは耐えられない』と言いますしな」
エッジの発言にアヤメが小さく頷いたが…
「『背に腹は代えられない』だったか… ことわざって難しいな…」
「いや、最初ので合ってるよ」
エッジの独り言に、どうしても突っ込まずにいられなかった。
ギルドの酒場で供給された朝食は、見慣れない野菜が色々入ったサラダと丸くて硬いパン、メインは濃度の濃いシチューのようなスープだった。
手でちぎったパンでスープをすくってパンごと食べると、優しい甘みと程よい塩気と熱さと旨味が寝起きの身体に染み渡る。
「これはなかなか良い味付けだの」
アヤメはパンを千切らずスープにつけて丸かじりしており、口の周りがスープでベタベタになっている。
「お口に合ったようで何よりですな」
エッジはスープ皿に口をつけてゴクゴクと飲み、パンはそのままモリモリと食べていた。
「それで、エルフの村までどれ位かかるんだ?」
パンとスープが無くなり、サラダに入っているでっかい紫色のイモムシのような不気味な見た目の果実の様な物に、フォークを刺すべきか悩みつつアヤメに尋ねた。
「徒歩で半日、馬車なら1時間程度といった所かの」
アヤメは布巾で口元を拭いながら答えた。
「近いとは言え早く出発したい、ソウシもさっさと食っちまってくれ」
言われて見ると、アヤメもエッジも皿は空になっていた。
「いや、よくこんな毒々しい見た目の物を平気で食えるな…」
「何を言っておる、美味しくて栄養抜群なのだぞ?」
アヤメは心底意外そうに言ってくるが…
フォークを刺すと謎の赤い汁が滲み出る、持ち上げてしげしげと観察するも、全く美味しそうには見えない。
「ソウシ、ことわざにも言うだろ『毒を食らわばサラダで』とな」
「なんでわざわざ朝からサラダで毒を食わなきゃならんのだよ…」
しかし、いつまでも駄々をこねていても仕方ない。
しっかりと目を閉じ、見ないようにしながら覚悟を決めて口の中にねじ込んだ。
プチっと弾ける皮。
その中から、ねばりつくような果肉が舌に絡みつく。
薬草を濃縮したような苦味と、経験したことのない不快な舌触りに血の気が引き涙が流れた。
これはバイタルには良いかもしれないがメンタルに悪い、そして何より…
「不味い」
右手の小川に沿って南へと伸びる街道は山の奥へと続いていた。
紅葉が進み、見渡す限りの山が燃えているように見える。
アヤメを荷台に乗せ、緩やかで長い登り坂を進んでいた。
「ここもなかなかの山越えなんだな」
「この旅一番の山場だからな」
「何か昨日も似たようなこと言ってなかったっけ?」
「毎日は日々の積み重ねだからな」
何かそれっぽい雰囲気の、エッジの台詞を脳内で反芻する。
「いや、俺が思ってた事ってそういう事では無かったような???」
エッジのペースに巻き込まれて自分の事に自信が無くなるが
「この旅一番の難所や山場が日々訪れる件について…」
「なんだ、そんな事か、ことわざにも言うだろう『2度ある事はサンドバッグ』ってな」
「言葉の意味は良く分からんけど、滅多打ちで気の毒になってくるな」
ふと見ると、アヤメがニヤニヤして俺とエッジのやり取りを見ていた。
「エッジ殿、随分と楽しそうだの」
「俺には冒険者稼業より運び屋の方が性に合っているようでな」
「仏頂面で寡黙な男だったからの」
「青い空、木の葉を揺らす穏やかな風、優しく降り注ぐ木漏れ日、こんな物に10年も触れていれば人は嫌でも丸くなるというものだ」
仏頂面で寡黙なエッジなど想像も出来ないが、そういう時代もあったのだろう。
「そっちだの」
賑やかな道中、山道を進んでいるアヤメが左へと分岐する細い道を指差した。
道幅3メートル程度あり、馬車も入っていけそうだが、かなりの悪路だ。
「尻の割れ目が増えそうだが、奥でUターン出来るかな?」
エッジは地面に埋まった大きな石を見ながらアヤメに尋ねる。
「ゴブリン達を壊滅した暁には、村の中で好きなだけターンして貰って構わぬ」
「それじゃ張り切って行くとしようか」
ノリノリなエッジとアヤメを尻目に俺の手のひらはじっとりと汗ばんでいた。
「何だ? ソウシ、緊張してるのか?」
エッジは軽い調子で声を掛けてきた。
確かにゴブリンの巣に近付いてきていることで緊張はしていた。
いつもはチャラけているが、周囲に気配りが出来るところはさすがベテランと言える。
「ルーキーだからな」
「気の抜けたベテランよりよほどマシだ」
エッジはそう言うとニヤリと笑ってきた。
軽い凸凹道を1キロ進んだ頃、荷台の中はぐしゃぐしゃに散らかっていた。
アヤメは倒れた椅子に潰されないように毛布の隙間で横になっている。
「おぉ、トンネルか?」
エッジは正面の道が山を貫く様に続いているのを見て声を上げた。
「トンネルって珍しいのか?」
意外そうにしているエッジに尋ねた時、馬車の車輪が地面に埋まった大きめの岩を踏んだようで、荷台が大きく跳ねた。
「気を付けないと舌を噛むぞ?」
「先に言ってくれ、今ちょっと噛んだよ…」
今更忠告してくるエッジに悪態をつくと、荷台にいたアヤメが這いずってくる気配を感じた。
「そろそろ石畳の道になる頃かの?」
アヤメの言う通り、トンネルの少し手前から綺麗に整備された石畳の道になっていた。
「これは助かるな、このままでは股間の相棒が脳天を突き破るところだった」
エッジが訳の分からない事を言うと、アヤメがコホンと咳払いをした。
「一応レディが乗っておるのだがの」
「おっと、これは失礼『セクハラは耐えられない』と言いますしな」
エッジの発言にアヤメが小さく頷いたが…
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