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第-1章 迷星の時量剣師(めいせいのときはかし)
第23話 姫君の依頼
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「ソウシはエルフに会うのは初めてだろうな?」
エッジの問い掛けに軽く頷く。
エルフやドワーフがいるとは聞いていたが、ファンタジー系の作り話に登場する種族が目の前にいる違和感に眩暈がしそうだった。
「我々は貴殿達とは少しばかり違う世界に住んでいてな」
アヤメはそう言うと静かに目を閉じた。
アヤメの輪郭が希薄になっていく様に見える。
目がおかしくなったのかと思い、目をこするが見間違いでは無いようだ。
「エルフ族は精霊に近しい存在なんだ」
エッジが言い終わる頃にはアヤメの姿は完全に視えなくなっていた。
「これは一体どういうトリックなんだ?」
「俺達が認識できる世界は、川の流れに例えれば水面から空を見上げているようなものだ。 そして精霊たちは水の中に潜ることが出来る、という感じかな?」
エッジが説明している間にアヤメが再び姿を現した。
「精霊界に潜っている間はこちらの世界に干渉される事は無いが、我々エルフ族は中途半端に肉体を持っているせいで移動する事が出来ない」
「なるほど…それで?」
話しは大体理解出来たように思ったが、それがどうしたというのだろう?
「我々の村がゴブリンの群れに襲撃された時、我ら全員精霊界に潜ってやり過ごそうとしたのだが、あろう事かゴブリン共が我々の村に住み着いてしまっての」
「いや、ゴブリンの群れなんて蹴散らせば良いだけなんじゃ無いのか?」
俺は一般的なファンタジーの知識で簡単に考えていたが、エッジが神妙な顔をして首を横に振った。
「ゴブリンは確かに弱いが、群れとなると簡単に蹴散らせる相手でも無いんだ」
「どういう事?」
「お前は生き物を殺す時、罪悪感を抱くか?」
エッジの質問に少しだけ悩んだが
「罪悪感はあるが、必要ならやるよ」
「相手が人間でも同じことが言えるか?」
「正直分からないな…」
「ゴブリン共にはその様な感情は一切無い、相手を殺す為なら仲間ごと切りつけて来る程だ」
「狂気の沙汰だな」
「怒り狂った蜂の大群に襲われる様なものだ、ましてや住み着いているとなれば巣を突くような事だからな」
「段々怖くなってきたな」
「実際に以前、挑んだ冒険者がいたが帰ってこなかったな…」
死んでも肉体が残っていて条件さえ整っていれば蘇生出来る事を考えると『帰って来ない』という言葉の意味は大きいのだろう。
「それでさっきの冒険者を断っていたのか」
アヤメは頷くと口を開く。
「我を逃す為に勇敢な5名の若者が命を失っての、 それからずっとこの地で助けを求めておるのだ」
「船だの陸路だのと騒いでいた様だけど?」
「あの冒険者達に依頼する気は最初から無かったから適当にあしらっておったのだ。ゴブリン退治と聞いて簡単な仕事だと思って飛び付いて来られても困るからの」
なるほど、そういう事だったのか。
「それじゃ、何で俺達に依頼する気になったんだ?」
「そりゃ、俺が一流の魔術師だからさ」
何故かエッジが答えるが、アヤメから視線を逸らさずに返事を待つ。
「精霊界から見たソウシ殿は強大な力を持っているように見えるからの、エッジ殿も一緒であれば何も心配は要らぬだろう」
「そういえば二人は知り合いの様だけど?」
エッジは何故今までアヤメを助けなかったのだろう?
「冒険者を引退してから知り合ったからな、俺の足がこんなんじゃ無ければ良かったんだが」
俺の言いたい事を察したのだろう。
エッジはそう言うと、足首から義足を外して見せた。
「その足は?」
「昔、少しばかりドジってな、ことわざで言う『広報大使の笛に謝れ』って奴だな」
「それは一体何の儀式だよ…」
「何はともあれ、こちらのお姫様は滅多にこっちの世界に顔を出さないからな」
「そうなの?」
「前回会ってから3年は経ったかな?」
「え? そんなに昔の話なの?」
「初めて会ってから10年は経ってるだろうな」
産まれてから10年位にしか見えないのに…
「何か今、失礼な事を考えてなかったかの?」
アヤメに向けて右手を全力で横に振り、否定の意を表する。
「まぁ良い、精霊界にいる間、肉体は歳を取らぬのだ」
「ん? アヤメの仲間は10年以上精霊界に閉じ込められていると言う事?」
「そういう事だの」
アヤメはコクリと頷いた。
「滅茶苦茶待たせてるんだな」
「我々は長生きする種族だと言われておるが、肉体の寿命は人間とさほど変わらぬ、 10年程度精霊界に閉じこもっている事はそれほど珍しい事では無いのだが、自ら出ないのと出られないのとでは全く意味が違うからの」
「精霊界で移動して別のところから出れば良いのでは?」
「さっきも言ったが、中途半端に肉体を持っておるせいで精霊界で移動出来ぬのだ、潜った場所からしか出られぬ」
「それで10年も?」
「不憫であろう?」
「ご飯やトイレは?」
「いや、精霊界では肉体の束縛が無いからの」
なるほど…
「それでゴブリンの数は?」
「一般的なゴブリンのコロニーなら全部で100を下らない程度だろうな」
エッジがお気楽な感じに答える。
「そんなに?」
「中には数百匹集まるコロニーもあると聞くな」
「そんなもん、どうやって駆除するんだよ…」
「そこは俺の魔法でドカンとやって、残りはソウシがちまちまやれば大丈夫だろう」
エッジが大雑把すぎる作戦を口にした。
「いくらなんでも危険すぎないか?」
「ことわざにも言うだろ?『孤児院に入らずんば孤児を得ず』ってな」
「お巡りさん、コイツです」
アヤメは不思議そうに首を傾げ、俺達のやり取りを眺めていた。
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エッジの問い掛けに軽く頷く。
エルフやドワーフがいるとは聞いていたが、ファンタジー系の作り話に登場する種族が目の前にいる違和感に眩暈がしそうだった。
「我々は貴殿達とは少しばかり違う世界に住んでいてな」
アヤメはそう言うと静かに目を閉じた。
アヤメの輪郭が希薄になっていく様に見える。
目がおかしくなったのかと思い、目をこするが見間違いでは無いようだ。
「エルフ族は精霊に近しい存在なんだ」
エッジが言い終わる頃にはアヤメの姿は完全に視えなくなっていた。
「これは一体どういうトリックなんだ?」
「俺達が認識できる世界は、川の流れに例えれば水面から空を見上げているようなものだ。 そして精霊たちは水の中に潜ることが出来る、という感じかな?」
エッジが説明している間にアヤメが再び姿を現した。
「精霊界に潜っている間はこちらの世界に干渉される事は無いが、我々エルフ族は中途半端に肉体を持っているせいで移動する事が出来ない」
「なるほど…それで?」
話しは大体理解出来たように思ったが、それがどうしたというのだろう?
「我々の村がゴブリンの群れに襲撃された時、我ら全員精霊界に潜ってやり過ごそうとしたのだが、あろう事かゴブリン共が我々の村に住み着いてしまっての」
「いや、ゴブリンの群れなんて蹴散らせば良いだけなんじゃ無いのか?」
俺は一般的なファンタジーの知識で簡単に考えていたが、エッジが神妙な顔をして首を横に振った。
「ゴブリンは確かに弱いが、群れとなると簡単に蹴散らせる相手でも無いんだ」
「どういう事?」
「お前は生き物を殺す時、罪悪感を抱くか?」
エッジの質問に少しだけ悩んだが
「罪悪感はあるが、必要ならやるよ」
「相手が人間でも同じことが言えるか?」
「正直分からないな…」
「ゴブリン共にはその様な感情は一切無い、相手を殺す為なら仲間ごと切りつけて来る程だ」
「狂気の沙汰だな」
「怒り狂った蜂の大群に襲われる様なものだ、ましてや住み着いているとなれば巣を突くような事だからな」
「段々怖くなってきたな」
「実際に以前、挑んだ冒険者がいたが帰ってこなかったな…」
死んでも肉体が残っていて条件さえ整っていれば蘇生出来る事を考えると『帰って来ない』という言葉の意味は大きいのだろう。
「それでさっきの冒険者を断っていたのか」
アヤメは頷くと口を開く。
「我を逃す為に勇敢な5名の若者が命を失っての、 それからずっとこの地で助けを求めておるのだ」
「船だの陸路だのと騒いでいた様だけど?」
「あの冒険者達に依頼する気は最初から無かったから適当にあしらっておったのだ。ゴブリン退治と聞いて簡単な仕事だと思って飛び付いて来られても困るからの」
なるほど、そういう事だったのか。
「それじゃ、何で俺達に依頼する気になったんだ?」
「そりゃ、俺が一流の魔術師だからさ」
何故かエッジが答えるが、アヤメから視線を逸らさずに返事を待つ。
「精霊界から見たソウシ殿は強大な力を持っているように見えるからの、エッジ殿も一緒であれば何も心配は要らぬだろう」
「そういえば二人は知り合いの様だけど?」
エッジは何故今までアヤメを助けなかったのだろう?
「冒険者を引退してから知り合ったからな、俺の足がこんなんじゃ無ければ良かったんだが」
俺の言いたい事を察したのだろう。
エッジはそう言うと、足首から義足を外して見せた。
「その足は?」
「昔、少しばかりドジってな、ことわざで言う『広報大使の笛に謝れ』って奴だな」
「それは一体何の儀式だよ…」
「何はともあれ、こちらのお姫様は滅多にこっちの世界に顔を出さないからな」
「そうなの?」
「前回会ってから3年は経ったかな?」
「え? そんなに昔の話なの?」
「初めて会ってから10年は経ってるだろうな」
産まれてから10年位にしか見えないのに…
「何か今、失礼な事を考えてなかったかの?」
アヤメに向けて右手を全力で横に振り、否定の意を表する。
「まぁ良い、精霊界にいる間、肉体は歳を取らぬのだ」
「ん? アヤメの仲間は10年以上精霊界に閉じ込められていると言う事?」
「そういう事だの」
アヤメはコクリと頷いた。
「滅茶苦茶待たせてるんだな」
「我々は長生きする種族だと言われておるが、肉体の寿命は人間とさほど変わらぬ、 10年程度精霊界に閉じこもっている事はそれほど珍しい事では無いのだが、自ら出ないのと出られないのとでは全く意味が違うからの」
「精霊界で移動して別のところから出れば良いのでは?」
「さっきも言ったが、中途半端に肉体を持っておるせいで精霊界で移動出来ぬのだ、潜った場所からしか出られぬ」
「それで10年も?」
「不憫であろう?」
「ご飯やトイレは?」
「いや、精霊界では肉体の束縛が無いからの」
なるほど…
「それでゴブリンの数は?」
「一般的なゴブリンのコロニーなら全部で100を下らない程度だろうな」
エッジがお気楽な感じに答える。
「そんなに?」
「中には数百匹集まるコロニーもあると聞くな」
「そんなもん、どうやって駆除するんだよ…」
「そこは俺の魔法でドカンとやって、残りはソウシがちまちまやれば大丈夫だろう」
エッジが大雑把すぎる作戦を口にした。
「いくらなんでも危険すぎないか?」
「ことわざにも言うだろ?『孤児院に入らずんば孤児を得ず』ってな」
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