『冒険者ギルドへようこそ(最強剣士と娘巫女) ~全ての謎を解き明かし、全てを救う物語~』

此木、大(しばいぬ)

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第1章 リリアの巫女(いわやのはなのみこ)

第81話 神都ハヤタマ

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商隊は明日の早朝、神都ハヤタマを出発し、鉱山都市ヤタガノを目指して南下する。
ダラの刀の打ち直しは今日中に終わる予定で、予定通りなら商隊と共に行く予定だった。
俺達4人はミカとフミナの身の回り品を揃えるべく冒険者ギルドに来ていた。
「ミカちゃんとフミナちゃんはここでマイカップでも選んでおいて」
冒険者ギルド内の販売コーナーに二人を案内し、ダラと一緒にクエストの失敗の報告をする為に受付に寄った。

「500,000ゴールドの賞金首とは、なかなかやらかしましたね」
受付嬢は俺達の冒険者プレートを確認するとクスッと笑った。
「こっちとしては笑いごとじゃないよ。 これで堅気の市民への道は閉ざされた訳だね」
「何だ? お前そんなの目指してたのか?」
ダラがわざとらしくツッコミを入れてくる。
掲示板に俺達の人相書きを探した。
俺やジャンの人相書きはお世辞にも似てるとは言えなかった。
リンに関しては似せる気すらないだろう、というくらい似ていなかった。
「ダラ、700,000ゴールド…」
俺の視線に気付いたのか、ダラはバツが悪そうに頬を掻いた。
「まぁ、なんだ、色々とあったのさ」
ダラが目を背けた先にミカとフミナがいた。


「なぁ、あの二人の事どう思った?」
ダラがやぶから棒に尋ねて来た。
「どうって?」
「まぁ、特定の感情についてでは無く、颯竢はあの二人に何を感じているのかが気になってな」
ダラの言いたい事はよく分からなかったが
「そうだな… 儀式で使った鏡から出て来たのは凄まじい負の感情だった。 神父は儀式の為にあえて彼女達に精神的な苦痛を与えていたんじゃ無いかと思っているよ。 その過去を取り戻すくらいにはこの世界の良い所を教えてやりたいな」
ダラは少し驚いた顔をしたが
「やっぱりお前に任せた俺の目に狂いは無かったな、任せたぞ、『親父』」
ダラは良く分からない事を言ってニヤリと笑った。

今日の宿は肉が旨い店だとダラが言っていた。
またミカとフミナが大騒ぎしなければ良いが…
一瞬そう思ったが、本心はそうではないと気付いて思わず苦笑いした。
「今夜は『出禁』になるまで騒いでやるか」
「おいおい、勘弁しろよ?」
俺が物騒な事を呟くと、ダラが顔色を変えた。
たまには逆襲してやるのも悪くないだろう。

建物は無骨な四角い建物だが、内部は和モダンなテイストに統一されていた。
ミカとフミナは購入してきたマイコップにお茶を淹れて盛り上がっていた。
「なんか良い所だよなぁ」
「そうだろう?」
俺の呟きにダラが嬉しそうに反応した。
昼を少し過ぎた頃だが女将は快くチェックインさせてくれた。
お陰様で今、全員で部屋の中で寛いでいた。

「ここは大浴場もあるんだが」
ダラはふと気になった様子で姉妹を見た。
「風呂は入った事、あるんだよな?」
思えば失礼な物言いではある。
「当たり前です」
「女の子にそんな事を言うのは流石にどうかと思います…」
フミナとミカが猛抗議する。
「いや、悪い悪い、一応確認しとかないとな、流石に一緒に入ってはやれんから」
「ダラ様のバカ」
半眼でフミナが呟くが、フミナとダラの距離感が近付いているような感じがした。

「裸で外を歩いたの初めてでした」
ミカが顔を赤らめて言った。
露天風呂の話だ。
滝で禊をするなら衣に着替えてするだろう。
単に風呂なら室内だろう。
ミカの言いたい事は理解できた。
フミナは何も言わないが、ミカと同じ顔をしていた。
ダラの質問に反論した手前、驚いたとは言いにくいのかも知れない。
まぁ、これから色々な物を見て経験すれば良いさ。

晩飯は焼肉だった。
珍しく食堂が最上階にあるスタイルで、階段を登るにつれて肉の焼ける良い匂いがしてきた。
「何か… すごく良いにおいがする…」
フミナが目を見開いて言った。
「何かしら…」
ミカの反応から、今夜も大騒ぎ間違いなしと確信した。
炭火で網焼きにして食べる焼肉もこっちの世界に来てから初めてだった。
俺でも感動しているのだから姉妹の喜びようといったら、店主が飛んできて山盛りのサービスをしてくれたくらいだった。

「またのお越しをお待ちしております」
二人の反応が余程嬉しかったようで、チェックアウトの対応も店主がしてくれた。

「お肉、美味しかったねー」
フミナは朝からご機嫌だった。
「うん、お口の中がまだ美味しいです」
ミカはそう言って俺の腕に抱きついてきた。
気が付けばミカにはすっかり懐かれていた。

「なんだ? 甘えん坊か?」
ダラがからかう様に言ってもミカは気にもしなかった。
「人のぬくもりでこんなに幸せになれるなんて知りませんでした」
ミカはかなり小柄で、妹のフミナより少し背が低い。
遠慮がちに俺の右手を握ってくるフミナの左手を握り返した。
「すっかり親子だな」
そう言うダラにフミナは少しだけ舌の先を出して見せた。

都の南門はかなり立派な建築物だ。
そして門の内側には広大な広場があり、広場の中心にはお洒落な噴水もある。
その噴水前に商隊のメンバーが続々と集まって来ていた。
「君達が一緒に来てくれるのは心強い」
リーデンは俺達の顔を見ると安心した様な笑顔を見せた。
「相棒が間に合ったんでね」
ダラは腰に提げた刀を見せて笑った。
「それに手荷物を運んでもらえると何かと助かる」
ダラがリーデンと握手をしながら言った。

「巫女のお嬢さん達も来てくれたのか」
商隊員のオルトは髭面のオヤジだが、見た目とは違いジェントルマンだ。
「おはようございます、オルト様」
フミナがオルトに挨拶する。
彼はフミナの事を気に入っていて、何かと親切にしてくれていた。

「随分と荷物が増えたようだね、お手伝いしようか?」
ミカに話しかけてきたのは商隊員のモーリスだった。
「おはようございます、モーリス様。 これくらいは自分で出来ないとこの先やっていけませんので…」
ミカは申し訳なさそうにそう言うと荷物を馬車に押し込んだ。

「またお世話になります」
オルトとモーリスに挨拶をすると彼らはにこやかに振り返った。
「こっちこそ、君達がいてくれると助かるよ」
そう言って二人は隊列に戻って行った。
「さぁ、出発だ、目指すは鉱山都市ヤタガノ! 商隊前進!」
リーデンの号令も様になってきた。
彼の号令で商隊は神都ハヤタマを後にした。
澄み切った青空の下、ひんやりとした朝の空気が心地よく全身を包んでいた。



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