『冒険者ギルドへようこそ(最強剣士と娘巫女) ~全ての謎を解き明かし、全てを救う物語~』

此木、大(しばいぬ)

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第2章 環刻館の後継者(かんごくかんのこうけいしゃ)

第82話 引率

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「絶対にお肉だよ、間違いないって」
そう言ったのはフミナだった。
あの事件から1週間。
彼女の髪は完全に黒色になっていた。
「お魚に決まってるわ」
ミカがフミナに言い返した。
俺はフミナとミカを連れ、3人で街道を歩いていた。
どうしてこうなった?
二人の争いに巻き込まれないように早足で歩いていた。

商隊の馬車の車輪が破損し、修理するのに時間がかかる。
━分かる。
今日中に目的地のミナベに到着出来そうになくなった。
━そうだな。
馬車の修理の役に立たず、身軽な俺が先行して野営地を確保する。
━言い方にひっかかるモノがあるが理解した。
気分転換にミカとフミナも連れて食材の確保もしておけとダラにそそのかされる。
━なんとか理解出来る。
「それで、颯竢様はどっちの味方なの?」
━分からん。
いやぁ、どっちと言われましても…

商隊は、鉱山都市ヤタガノを経由し、クシモトを通り、スサミまで南下した。
それは4日の旅だった。
山脈を右手に、海を左手に見ながら東へと進んでいた。
商隊の目的地は貿易都市モズだ。
ハヤタマからモズを結ぶこの街道は全長300キロ以上あり、この陸地で最も人通りが多い街道として知られている。
そのおかげで街道沿いにはいくつかの休憩所が設置されていた。

スサミからミナベのちょうど中間地点にある大きな川の河口には立派な橋が架かっており、かつての工事関係者が整備した野営地が当時のままの姿で残っていた。
川から引いた水路は、生活用水はもちろん、飲み水としても利用可能で、炊事場と屋根付きBBQハウスや水洗トイレまで完備されている。
男女別の大浴場もあり、旅人だけでは無くレジャー目的の利用者も結構いるのだ。
この世界で防壁の外にこれだけの規模の野営地があるのは意外だったが、管理運営は冒険者ギルドが行っていると聞いて妙に納得した。
そう、管理されている野営地だから肉や魚の様な食材も普通に販売している。
この場合、食材の確保と言えば普通、果物を採取したりハーブを摘んだりと、乙女でも出来る仕事だと思うんだが…

ミカとフミナの視線が痛い。
何故この娘達はメイン食材を獲る気満々なの?
魚ならまだ何とかなりそうだけど豚とか解体するのヤダよ? ほんと。
しかし魚を選べばフミナの機嫌を損ねる事は間違い無かった。
街道の先に巨大な橋が見えて来た。
「あ、ほら、あそこだよ」
二人の方を振り返り、逃げるように駆けだした。

橋の上から見ると川が見えた。
川幅は広いがそれほど深くなく、流れも穏やかだった。
橋を越えた所にある丁字路から下に降りる道が見えた。
下り坂を降りると受付があり、広い河原のテントサイトがあり、その奥が川になっている。
100メートルほど下流には海も見える。

「川の水が青いよ」
フミナが言う通り、川底の石が見える程透明な水は綺麗な青色をしている。
「小さな子供がいますね」
ミカの指差す先には幼い子供が遊んでいるのが見えた。
まもなく冬だが、今日は日差しも強く特に寒さも感じない。
「行ってみよう」
ミカとフミナの手を取り歩き出した。

受付でチェックインの手続きを済ませると、空いている中では一番広いサイトを確保した。
商隊の馬車のテントを展開するにも充分な広さだ。
さて、これからどうしたものか…

「見て見て! こんなにいっぱい獲れたよ」
少年の声が聞こえて来た。
「そんなにちっちゃいの獲ったらだめでしょ。 戻して来なさい」
少女が少年を注意する声が聞こえてきた。
ミカとフミナが声のする方へ振り向いた。
少年はかごを持って川の中を歩いていた。
「えー、やだよ、せっかく獲ったのに~」
少年はかごの中を覗き込みながら反論する。
「あ、カニさん見っけ! そんなの捨ててあれ捕まえよ?」
少女が上流へと歩いていく。
「待って、おねぇちゃん~」
慌てて少女を追う少年のかごからこぼれ落ちたのは小さな貝だった。

「しじみかな?」
「しじみ?」
少年がこぼした貝を見て呟く俺にフミナが不思議そうに尋ねて来た。
「小さな貝だね、味噌汁にすると美味しいよ」
「みそしる?」
そうか、この娘達は海スープしか飲んだことなかったっけ…

「カニさんって食べられるんですか?」
ミカが興味津々という顔で尋ねてきた。
「そうか、川で遊んだ事ないんだね。 貝とかカニとかエビとか色々な物が獲れるんだよ」
二人の顔を順に見ながら説明した。
「ちなみにカニさんはすごく美味しいよ」
「えー、楽しそう、行こう、お姉ちゃん!」
「フミナったら、子供みたいにはしゃいじゃって」
そう言うとミカもフミナの後を追って川辺に走って行った。



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