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結界はハウス栽培に
しおりを挟む「りっくん、お願いがあるんだけど、いいかしら?」
「……なんとなくどんなお願いかは予想できるけど……」
「そう? まぁそうよね。……りっくん、お願いなんだけど、その結界を国にある農地に使ってハウス栽培を促進してくれないしら? そうすれば、国内は潤い、植える民は減り、他国とも差をつけられると思うわ!」
「そうで……そうだ、リク。俺からもお願いしま……お願いする!」
「うぅん……今までの話を聞いていて、協力したいのはやまやまなんだけどねぇ……」
「ん? 何か断る理由でもあるの?」
「陛下、リクさ……リクは冒険者です。なので、国からの頼み事というのは聞きづらいのでは? 先日、冒険者ギルドのマスターが来たように、リクは注目されていますし……直接頼むのは厳しいのでは?」
「あぁ、成る程ね。そうよね……あの女狐……マティルデとか言ったから? そのギルドマスターからも、りっくんは目をかけられているみたいだし、国からお願いをするのは不味いわね。せめて、正式に冒険者ギルドへ指名依頼という形にしないと……」
満面の笑みで俺にお願いをする姉さん。
やっぱりそうだよね……ここまでの話で予想はついていたけど、俺へのお願いってこの話の流れだったら、結界を農地に張ってくれという事しかないよね。
だけど、それはちょっと難しいかなぁと思って、難色を示していると、エフライムから俺が冒険者だからすぐに受けられないという意見。
いやまぁ、それも多少はあるけど……というか、マティルデさん来たんだ。
何かの用事があったのかもしれないけど、多分俺がいない間に来たんだろうな……俺に関する事ではなく、統括ギルドマスターなんだから、王城に来る用事だってあってもおかしくないよね。
暇を見つけて、近いうちに一度話を聞きに行ってみよう……何か難しい依頼があって、とかかもしれないから。
ちなみに、俺が姉さんのお願いに難色を示したのは、冒険者だという事は関係ない。
単純に、結界を維持する方法がない事を考えていたからだね。
ヘルサルでは、俺の魔力を大量に蓄えていたガラスが、フィリーナの協力で結界を維持するための魔力供給をしてくれるからなんとかなったけど……他の場所に代わりになる物があるとは思えない。
ただ結界を張って、それで終了ならお願いを承諾してただろうけど……維持できなかったら意味がないからね。
「あの、姉さん、エフライム?」
「ん、どうしたのりっくん? 大丈夫よ、すぐに冒険者ギルドには報酬を奮発して指名依頼を出すようにするわ」
「そうですね。お爺様に連絡を取り、子爵家からも報酬を出せるようにしましょう。他の貴族達にも報せれば、協力してくれるはずです。これは大規模な国内事業、自分達の領地からの作物が豊かになるのなら、協力を惜しまない者達も多いはずですから」
「いや、そうじゃなくて。……あのね? 結界を張るくらいなら問題は何もないんだけど……それを維持しなきゃ意味がないよね? けど、その方法がないんだよ」
「「え……?」」
姉さんとエフライムに話し掛けると、何故か二人でさらにヒートアップして指名依頼を出す話を加速させた。
クレメン子爵や、他の貴族の人達にもって……話がかなり大きくなって行っているけど……そういう事じゃなく、報酬もや依頼は関係ない所で問題があるんだ。
とりあえず、これ以上大きくならないうちに伝える必要があると、興奮する姉さんとエフライムに、結界の維持をする方法がないという事を伝えた。
それを聞いた二人は、キョトンとした表情になる……目が点になるって、こういう事なんだなぁ。
「……えーと……え? でも、維持ができないって、ヘルサルでは結界が張られたままなんでしょう?」
「それは……色々あって、その……」
呆然とした様子になってしまった姉さん達に、ヘルサルでのガラスの事、フィリーナが魔法具にする事で、魔力供給装置としてくれたため、結界の維持ができる事などを説明した。
こういう部分は、ハーロルトさんが報告しなかったのかな?
いや、姉さんの事だから、ハウス栽培を思い浮かべてそこから他の部分が抜け落ちてしまったのかもしれない。
それか、その事ばかり考えてて、うわのそらになったとかかな。
「それじゃ、結界を維持するっていうのは……」
「多分、現状じゃ不可能……かな? 多分、方法はあるんだろうけど……魔力量が多過ぎるらしくて、普通の人間が魔力を補充するんじゃ駄目みたい。まぁ、農場が大きければ大きい程そうなるから、しかたないかなぁ?」
「そんな……それじゃ、国内の生産力向上は……」
「子爵領の民が安心して作物を作れる環境が……」
俺の説明を聞いて、実質結界維持が不可能と理解した二人は、床に手と膝をつけてがっくりとした。
二人共、私欲のためにではなく、国や領地にすむ人たちの安定を考えての事だから、何とかしてあげたいと思うけど……こればっかりはね。
「せめて、大量の魔力を保持できるような物があればなぁ。そうしたら、多分アルネやフィリーナに頼んで、維持のための魔法具にしてくれるかも……? いやでも、今は魔力を練る研究をしているから、忙しいか」
「魔力を保持できる物……大量の魔力だから、そこらへんの物では駄目そうね。ガラスは、りっくんの魔法が影響してできた物だから特別だったのよね……はぁ……魔法具に関しては、アルネ達が忙しいなら、エルフの集落に頼むという方法があるわ。だけど、肝心の素材がねぇ……」
「魔力を保持……大量の魔力……どこかで聞いた事があるような……?」
「ん、エフライム。何か思い当たる事があるの?」
「いや、聞いた事があるような感覚で、思い出せないんだが……なんだったか……」
俺の魔法が原因で作られたガラスは、だからこそ魔力を大量に含んでいた。
多分、普通の職人が作ったガラスじゃ、結界を維持する魔力を溜め込む事は不可能だろう。
それに、維持するための供給装置にするにしても、アルネとフィリーナは今それどころではなく、魔力を練る事の研究をしている。
そちらも頼めなさそうだなぁと呟いたら、姉さんの方からエルフの集落に頼めばという言葉。
確かにそうか……エルフはアルネやフィリーナだけではないんだし、フィリーナが施した処置のように、魔法具にする方法を知っているエルフもいるだろうしね。
だけど結局、素材という部分でつまづいてしまう。
どうする事もできないと考えていたら、がっくりしたままのエフライムが、難しい表情で何やら思い当たる事があるようなないような……?
「……確かあれは、お爺様に聞いた話だったような……確認してみる必要があるか」
「クレメン子爵が?」
「あぁ、そうで……だな。小さい頃だったと思うが、以前お爺様から、不思議な鉱石の話を聞いた事があったような気がするんだ。あまり覚えていないのではっきりとは言えないが、それがもしかしたらリクの魔力を蓄積するのに使えるかもしれない」
「それが本当なら、ハウス栽培も現実的になるわね! すぐにクレメン子爵に伝令を!」
クレメン子爵に昔聞いた話で、鉱石が関係しているらしい。
おぼろげな記憶で、はっきりとは思い出せないらしいけど、話を聞いた先……クレメン子爵なら知っているだろうという事か。
今まで意気消沈していたはずの姉さんも復活し、すぐにクレメン子爵へ伝令を送ろうとしてる。
それはともかく、昨日からはだいぶ通常通りになって来ているけど、咄嗟にエフライムが俺に対して丁寧な言葉遣いになりかけてるのが少し気になる……。
さっきも、俺に様を付けて呼びそうになってたしね。
もう少し時間をかけて、慣れて行ってもらわないといけないかなぁ。
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