神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
499 / 1,955

結界と新しい農業

しおりを挟む


「そんな事よりも、りっくん?」
「ん、どうしたの?」
「昨日は途中までだったけど、ハーロルトからの報告を聞いたわ。ヘルサルでの結界の事よ!」
「魔物を寄り付かせないための結界だったんだけど……どうかした? 何か悪い事でも……」
「その逆よ。多分、これは農業の革新になるわよ?」
「革新……?」

 うーん、魔力を練る事の方で、近い事を聞いたような……?
 確か、アルネかフィリーナ辺りが言ったんだったっけ。
 そのアルネとフィリーナは、夕食はいらないと言って、書庫へと引きこもった。
 なんでも、魔力を練るという事に近い記述を見たという、アルネの言葉によって、その本を探して研究するためらしい。

 俺が魔力を練る方法を見せた事で、本に書かれていた事がもしかしたらそうではないかと、思い当たったらしい。
 それまでは、何のことが書かれているのか、ほとんど理解できなかったとの事だ。
 昔の人も、同じように考えて試してだたんだなぁと思うのと一緒に、何かの参考になったようで嬉しい。
 おっと、今はそれじゃなく、ヘルサルでの結界の話だね。
 でも、結界を張って魔物を防いだ事が、どうして農業の革新につながるんだろう?

「昨日はまだ、時間がなくて魔物がどうの……という話までしか報告を聞いていなかったけど、今日結界って魔法を農場に張ったというのを聞いたのよ」
「そうだね、確かに結界を農場に張ったね。フィリーナが協力してくれたおかげで、魔物が入り込む危険が減って良かったよ。それが農業の革新ってやつなの?」
「うんまぁ、魔物が近寄って来ないというのは、素晴らしい事だと思うわ。作物や人が被害に遭う事が少なくなって、結果的に生産力の向上にも繋がるはずよ。でもそういう事じゃなくてね? その、結界というのは、農場全体を完全に覆っているのよね?」

 姉さんは今日になって、ハーロルトさんからの報告を全て聞いたようで、興奮気味に話している。
 昨日は、ヴェンツェルさんを捕まえたり、姉さんの方にも仕事があったりで、全部聞く余裕はなかったんだろう。
 さすがに、全体の概要くらいは聞いてると思うけどね。
 けど、昨日の夕食の時はそうでもなかったのに、今日いきなりこの様子になっているのはどういう事なんだろう?

 結界が関係してるみたいだけど……。
 なんだか、魔力を練るという事を知りたがったアルネ……は言い過ぎだけど、ヘルサルでのフィリーナと同じくらいの食いつきだ。
 うぅん……魔力の事もそうだけど、そんなに驚くような事をしてたかなぁ?
 思わぬ姉さんの勢いに、モニカさん達一緒に夕食を頂いている皆が、ポカンとしていた。

「確かに結界は、農場を覆ってるね。ただ、完全にじゃないよ? 人が出入りする事も必要だから、入り口を作ってあって、そこを魔物が入らないように見張っていれば大丈夫なようにしてある」
「そうなのね……いや、入り口の事は今はいいわ。とにかくその結界よ。確か、空気すら遮断するんでしょう?」
「え? うん、そうだね。目にはほぼ見えないけど、薄い壁を作る感じに似てるかな? 本来は魔法なんかの攻撃を防ぐ物だと思うけど……まぁ、色々あって外に漏れないようにしたんだ」
「魔力だまりだったわね。それも報告で聞いたわ。それはともかく、気付かない? 空気も通さないような密閉空間を作ったのよ、りっくんは?」
「密閉空間……まぁ、入り口はあるけど……それは置いておいて……何か問題でもあるかな?」

 密閉空間を作ってそこを農場に、というのは何かあるんだろうか?
 降った雨が農地に行かないから、天気とか関係なく水を運んでやる必要があるけど……それが革新なんて言い方になるわけないし……。

「もう、りっくん。ハウス栽培よ、ハウス栽培!」
「ハウス栽培……? あの、ガラスやビニールで覆って、温室を作る?」
「そうよ、それよ! 温度管理がちょっと難しいだろうけど、りっくんがヘルサルでやったのは、ハウス栽培と似たような事なのよ!?」
「えぇと……そんな事は考えてはいなかったんだけど……」

 ハウス栽培は、ガラスやビニールを使って温室を作り、一年を通して内気温を一定にする事で、季節が変わってもずっと同じ物を栽培できる……というものだった気がする。
 農業に関してはあまり詳しくないから、正しいのかわからないけど、おおよそそんな感じだと思う。
 冬なんかは、内部を温かくするのが大変とか夏は冷やしたりなど、温度管理をする必要があるみたいだけど、一定に保たれた温度で栽培された作物は、品質を保ちやすいとかなんとか聞いたような気もする……違ったかな?
 あと、ちゃんと管理していれば確か害虫とかを減らせるんだったけ……これはこの世界における魔物も同様、と考えられるのかもね。

「考えていなくとも、結果そうなったのだから関係ないわ。ともかく、ハウス栽培ができるのなら、この国の作物事情は一気に変わるわよ? それこそ、一年中キューを作る事だって可能よ」
「キューをなのだわ!?」

 興奮した様子で力説する姉さんに、キューと聞いてエルサが大きく反応。
 とりあえず、エルサは少しおとなしくしていような? キューを年中栽培すると決まったわけじゃないから。
 おとなしくしてもらおうと、モニカさんとユノに預けて、可愛がってもらう事にする……ソフィーも手を出したそうだね……まぁ、いいんじゃない?

「ガラスは高価で採算が合わないし、ビニールなんて生産できないから、諦めていたのだけど……その結界があれば、ハウス栽培を実現して生産力を向上させる事ができるわ! なんてったって、広大な農場を簡単に覆えるくらいなんだから!」
「まぁ、ガラスやビニールを使って覆うよりは、簡単にできるよね……俺が結界を張るだけだし」
「陛下、その……ハウ栽培? というのは、それ程の物なのですか?」
「そうよエフライム! 魔物を引き寄せない事で、人や作物への被害が抑えられる。さらに天候による影響を減らせられるから、作物を確実に管理する事ができるわ。農作業をする人の手間すら減る事も多いはずよ。あとそうね……これが最大の利点だと思うのだけど、年中同じ作物を育てる事ができるから……例えば、取引される作物が効果になる時期を狙って出荷する事で、利益を増やす事もできるわね」
「それはすごい事ですね陛下! 民の負担を減らせられて、利益も増えるのなら、民が……後々は国全体が潤う事ができる!」
「そうなのよ。さらに言うなら、天候に左右されないために不作になる事も減るはずよ。つまり、豊かな国にする事ができるはずだわ!」
「おぉ……ハウ栽培とはそこまで……」
「一応言っておくけど、ハウス栽培ね、エフライム」

 作物に関する事なので、次期子爵家当主のエフライムが興味を持ったようだ。
 まぁ、領地を治めるのなら、そういう事も考えないと駄目だからなんだろう。
 興奮が収まらない姉さんに力説され、ハウス栽培の素晴らしさを理解したエフライムは、そのまま引き込まれるように興奮し始めた。
 せっかくエルサをおとなしくさせたのに、興奮している人が増えちゃった……。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...