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先制攻撃の剣と魔法
しおりを挟む「……なんというか、歴戦の戦士っぽいのにそうじゃないというか……」
「似合わないって言いたいんでしょ。自分でもわかっているわよ。仕方ないでしょ、この剣は重さで扱う武器なんだから……正直今の人間の体じゃ、こうして持っておくしかできないの。鞘もないし」
「まぁ、そうなんだろうけどね……」
未だ戸惑っているのか、オロオロしているという珍しい挙動をしている魔物達へと、足を向ける俺とロジーナ。
ロジーナは、アマリーラさんのらしい大剣の腹を右肩に乗せて歩いている。
その姿は、歴戦の戦士らしい迫力がありながらも、やっぱり見た目が幼い女の子なのもあって不釣り合いだ。
まぁ、本当に見たままの幼い女の子だったら、重すぎて大剣を持つ事すらできないだろうけど。
「腰に下げる……はできないか。引きづりそうだし、すぐに戦うんだからあんまり意味ないし」
進行は止まっているけど、魔物達は近付く俺とロジーナには気付いている。
レムレースやヒュドラーと戦っていたのが俺達、というのもわかっているから、多少の怯えや戸惑いの視線とか意識を感じる気がするけど……それでも、もう少し近付いたら一斉に襲ってきそうな気配でもある。
そんな中で、剣を腰に下げておく意味はあまりないよね。
抜き身で腰に取り付けたら引きづってしまう以上に、危ないし……俺も輝く剣を魔力放出モードにして抜き身で持っているから。
「借り物なんだから、あまり無茶な使い方はしないようにね?」
「それは保証できないわね。あれだけ魔物がいるのよ? ヒュドラーと比べたら雑魚のようにも見えるけど、多少無茶をしないと奥まで進めないもの」
「そりゃそうだけど……」
本当に、後でアマリーラさんには謝っておかないと。
なんなら、新しい剣を用意するとか……まぁ、とにかく今は剣の事よりもこれからを気にしなきゃな。
「どれだけ奥かはわからないけど、とにかく突っ込む前にある程度道を切り開くよ。結界とかにはあまり期待しないでねロジーナ」
「わかっているわ」
先制攻撃で魔法を撃ちこんで道を開け、突撃するようロジーナと示し合わせる。
結界は動くようにはできるけど、使用者がいちいち意識を向けないゃいけないため、魔物に囲まれてなおかつ進んでいるような状況には不向きだ。
まっすぐ進むならともかく、戦いながらだからね……ロジーナがどういう動きをするか、俺には予想ができない部分もあるし。
一応、遠くから飛来するであろう魔法は、俺が剣で叩き落すというか消滅させるつもりではあるけど。
そのためにも……。
「ん……」
「ほんと、よくわからない剣ね。私が拾ったこの剣より大きい……いえ、長いじゃない」
「まぁ、剣に魔力を込めれば込めた分だけ、長くなるみたいだから」
魔力放出モードの剣に、柄から俺の魔力を贈る。
真っ直ぐ魔物に向かってに伸びた剣身は、ロジーナが持っている剣より長く……十メートルくらいはあろうかという巨大な剣身となった。
それでもほんの少し重くなったかな? という程度なのはやはり伸びた剣身が魔力で手で来ているからなんだろう。
「それじゃ、ちょっと離れてて。この後に魔法も使うから」
「わかったわ。魔法は一回ね? その後、リクが開いた道を突っ切る事にするわ」
頷いて、肩に担いだ剣を持ったまま俺の後ろに下がるロジーナ。
少し前と違って、素直に俺の意見を聞いてくれるのはありがたい……ロジーナ自身も、ここで余計な事を言っている場合じゃないとわかっているからだろうけど。
ロジーナが俺の真後ろに下がったのを確認して、長い剣を右横に構えながら魔物達へと駆ける。
「GURUUUAAA!!」
「GYAHIIII!!」
「せいっ!!」
残り一メートル程度、手を伸ばせば触れる程の距離まで一気に詰める。
やけくそなのかなんなのか、俺に向かって襲い掛かろうと雄叫びを上げる魔物達に対し、伸ばした剣を右から左へ、横薙ぎに思いっ切り振りぬいた。
手応えは……斬ったという感覚がほとんどないくらいで、むしろ空振りを心配するくらいだったけど、数舜後に剣が通った軌跡を辿るように、次々と魔物達の体が斬り離されて行く。
そして……。
「うぉ!? こんな衝撃が起こるなんて……でも、むしろありがたい! マルチプルアイスバレット!!」
長大な剣を振ったからか、俺が力を込めたからか、それとも魔力が多かったからなのかわからないけど、爆発するような衝撃はが発生し、体や頭、手足が切り離された魔物達が吹き飛ばされる。
その勢いに驚きつつも、重ねるように頭の中で発動待ち状態にまでイメージしておいた、マルチプルアイスバレットを発射。
俺の体を中心に、魔物達に向かって扇状に広がるよう発射された氷の弾丸は、吹き飛ばされた魔物、そしてその奥の魔物など、周辺の魔物を次々と貫いて行く。
「ほんと、よくわからない魔法を軽々と……先に行くわ!」
俺が魔法を発動させ、氷の弾丸が魔物達を貫き始めると、後ろからその体に不釣り合いな大剣を振りかぶって、ロジーナが前に出た。
破壊神に、よくわからない魔法と言われてしまった……俺からしたら、隔離された空間で受けた衝撃だとか熱線の方がよくわからないんだけど。
まぁ、威力はともかく似たような事はいちゃんとイメージしたら、俺にもできるのかもしれないけど。
「っと、俺も遅れないように行かないとね……!」
余計な事を考えている暇はない、ロジーナの後を追うように俺も駆け出す。
輝く剣は、元の長さより少し長めにしておこう……黒い剣だった頃と同じくらいの長さだね。
これが一番、扱い慣れているから――。
剣と魔法で吹き飛ばした魔物達を抜け、さらに奥へ進む俺とロジーナ。
奥にいた魔物達は、俺達に対してただの乱入者だと思っているようで、躊躇なく襲って来る……どうやら、俺達の戦いなどは見えなかったようだし、レムレースがいなくなった影響も薄れているようでもある。
ロジーナは大量の魔物がひしめく中、大剣を振り回してキマイラを斬り、ガルグイユを破壊し、オルトスを縦に割る。
他にも見た事のない巨大な蜘蛛に人間の上半身を取り付けたような魔物、さらに口から火を吐く真っ赤なトカゲなどを斬り倒して突き進む。
「ふっ! せっ! まだまだ甘いわ、出直して来なさい!」
「なんで魔物に助言するような事を……そのうえで斬り倒しているし……っと!」
魔物を斬る際に、何やらアドバイスをいちいち付け加えているロジーナ……時折、脇が甘いとか、もっと速く動きなさい、不用意に近付かない、どうして正面から来るのよもっと相手の動きを見なさい……などなどの言葉も聞こえた。
いや、大上段から縦に体を真っ二つにしておきながら、脇が甘いっていうのは違うと思うんだけど……ロジーナにはあまり人を指導させない方が良さそうだ。
そんなロジーナに対し、遠くからいくつかの魔法が降り注ぐ、俺にもだけど。
軽く飛び上がって、大剣を振り回すロジーナや俺を狙う魔法は、輝く剣を魔力吸収モードで切り払って消滅させた――。
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