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調査のお供にアマリーラの大剣

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「……そんなにおかしな事をやっているつもりじゃないんだけどね」

 魔力消費とかも、結界より少ないし……そもそも治癒魔法は、相手の自然治癒力を高めるようにイメージした魔法で、研究したらそのうちアルネやフィリーナとかが使えるようになりそうでもある。
 まぁ、折れた骨や瀕死の人も一部治せる効果は自分でも凄いと思うけど。

 ん……? 自然治癒力を高める治癒魔法? でも、瀕死の人はそもそも自然治癒力が低くなっているわけで……?
 もしかして、俺が考えているよりも治癒魔法って……。

「怪我も治ったし、リクも連戦で疲れているかもしれないの。早く戻るの!」
「え、あ、あぁ……」

 疑問が沸き上がって、考え込王都する俺の服の袖を引っ張るユノ。
 何かに焦っているような気もするけど……どうしたんだろう?
 でも確かに、ここでこうして話しているだけっていうのも時間の無駄だろうから、一度戻った方がいいか。
 打って出るにしても、皆に状況を伝えなきゃいけないからね……モニカさんやマックスさん達がどうしているのかも気になるし……無事だろうってのはわかるけど。

「……ん? あ……そうだった。ちょと待ってユノ」
「どうしたのリク?」

 ユノに引っ張られて、ロジーナも一緒に石壁の方へ向かおうとした時に思い出した。
 そういえば、リネルトさんが見つけた怪しい場所を調べるって言っていたんだった。

「こっちの魔物達って、ヒュドラーと連携していただろう? レムレースもそうだったし」
「そうね、まぁあれくらいで連携と言えるのかどうかはともかく」
「だからアマリーラや他の人達にも協力してもらったの。助かったの」
「うん。連携の良し悪しはともかく、他ではそんな事がなかったから……」

 リネルトさんから聞いた事も含めて、ユノとロジーナに伝える。
 北側と中央のヒュドラー周辺は、撒き散らされる炎なんかで他の魔物達を巻き込んでいたけど、南側はレムレースまで加わっていたのに、他の魔物は巻き込まれていなかった。
 リネルトさん曰く、先頭にいるヒュドラー達の後ろの方で、妙な空間ができているとか……他の場所ではそれが見られず南側だけだった事から、何かあるのではないかと。

「だから、その怪しい空間というか、リネルトさんが見た場所を調べてみようと思っていたんだ。ユノとロジーナは、疲れもあるだろうから一旦下がって。俺はそっちに行ってみるよ。……魔物達の中に突巫覡するようにはなるけど、なんとかなると思うからね」
「んー、私も行ってみたいけど……武器がないの。わかったの……」

 魔物達には俺一人で斬り込んで、刺激してしまう事にはなるけど……気になる箇所を放っておくより、調べておいた方がいい気がした。
 もしそこに、魔物達が連携をするようになった何かがあるのなら、排除した方が今後のためにもなるからね。
 ……排除できるのならいいけど。

「……魔物達の連携、怪しい空間……ふむ……」
「ロジーナ?」

 足を止めて、口元に手を当てて考え込むロジーナ。
 気になって声を掛けてみる。

「もしかして……いやでも、こんなに前線に近い場所で?……だからこそっていう可能性もあるわね。リク、私もその調査一緒に行くわ」
「え? でも……」
「ロジーナ、武器も何もないの。一応折れてほとんど使えないようなのはそこらに落ちているけどなの。リクの足手まといになるから、おとなしく下がるの」

 俺の呼びかけを無視してなおも考えていたロジーナ、何やらブツブツと呟いた後、顔をこちらに向けてついて来ると言い出した。
 とはいえ、ユノの言う通り武器も何もない状態……さすがに、魔物達がひしめく場所に素手でというのは危険過ぎる。
 剣先だけの剣は握るだけで手を怪我するし、柄があっても剣先のない物だと短くて切り込むには不十分。
 ないよりはマシだし、ロジーナなら素手でもある程度はなんとかしそうだけど、それでもね。

「……向こうに落ちている剣があるわ」
「向こうに……?」

 ロジーナが示す場所……俺達がいる所から離れた、センテ側の石壁がある方には確かに、折れていない無事な剣が突き刺さっているのが見えた。
 けどあれ……かなり大きいような?

「アマリーラの剣なの」
「あれを使えばいいわ」
「アマリーラさんの……でも、大きすぎない?」

 アマリーラさん、俺が駆け付けた時にはもう何も持っていない状態だったから、おそらく重傷を負った時に弾き飛ばされたか何かしたんだろう。
 確かに折れてはいないし、アマリーラさんが使っていたならいい剣なんだろうけど……ロジーナのが扱うにしては大きすぎる気がする。

「別に大きいとか重いとか、武器の種別は問わないわ。というより、集まった魔物の所に行くのなら、大きい方がいいわね。扱いにくくはあるけど」

 近くで見ていないからわからないけど、あの剣はロジーナよりも……というか、の身長を優に超えるくらいの長さがあるように見える。
 俺のお腹までもない身長のロジーナが使うとなると、巨大とも言える剣だからどうなのかと思ったら、使えはするみたいだ。
 本人が言うなら大丈夫なんだろう……と思う。

「うーん……まぁ、ロジーナがそう言うなら。でも疲れとかは……」
「なんでここまでやらないきゃいけないのか、と思う程疲れてはいるわよ。でも、予想通りなら私が行かないといけないわ」
「ロジーナが?」
「ここで話している暇はないわよ。さっさと動かないと……とにかく私も一緒に行くからね!」

 そう言って、突き刺さったままの剣の方に駆け出すロジーナ。
 あっという間に剣の所まで行くのはさすがだけど……持ち上げる時ちょっとよろめいたのは本当に大丈夫なのだろうか? その後、二回ほど両手で振って確かめているのを見るに、なんとかなりそうではあるけど。
 というか、アマリーラさんの剣を勝手に使っていいんだろうか、という疑問も……ま、まぁ、後でアマリーラさんには俺から謝っておこう。

「むぅ、私も行きたいの。だけどあれは一つしかないの」
「ユノは、冒険者さん達や兵士さん達に、今がチャンスだって伝える役目をお願いしたいかな。多分、中央ではフィリーナやエルサが見ているから、そういう機微は察しているだろうけど……一応ね。俺とロジーナが突っ込んだのも伝えておいて欲しい。無事な事も含めて」

 他に使えそうな武器はないし、俺の剣をユノにかすわけにもいかない。
 ユノには休憩がてら俺やロジーナの事、チャンスである事などを伝える伝令係になってもらうのが良さそうだ。

「……仕方ないの、わかったの。ロジーナが後ろから斬りかかるかもしれないから、気を付けるの!」
「いやぁ、さすがにそれはないんじゃないかなぁ?」

 破壊神だから本来は敵、という事を考えるとあり得るのかもしれないけど……今のロジーナは魔物達をどうにかして、センテ周辺に渦巻く負の感情を取り除こうとしているから、後ろから俺を攻撃するなんて事はない、と思いたい。
 というか、そうするなら最初から協力なんてしなかっただろうし、ヒュドラーの足止めもしないだろう。
 ユノの本気なのか冗談なのかわからない注意を苦笑いで受け、剣を担いで戻って来るロジーナと入れ替わりに、センテへと向かうのを見送った――。

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