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強力な魔物ひしめく中を突き進む
しおりを挟む「はぁっ! せいっ! うん、問題ないみたいだ」
横からロジーナの隙を狙っている魔物など相手に、魔力放出モードで斬り伏せたり、突入する直前に献身を伸ばしたおかげだろうか、剣その物に吸収できる魔力に空きができたようで、問題なく消滅させられる。
さすがに試していないけど、そこらの魔物の魔力を吸収すると上限値とかになりそうなので、今は基本的に魔力は放出させておいた方が良さそうだ。
俺へ流れて来る魔力の他に、剣そのものが蓄積させる魔力もあるみたいだからね。
まぁ、悠長に魔力を吸収させている暇がないってのもあるけど。
それに魔力吸収の方に頼っていて、いざって時にさっきのレムレースみたいに吸収速度が遅くなったり限界を迎えないようにしなきゃいけないから。
「礼は言わないわよ、リク!」
「いや、むしろこっちがお礼を言いたい方だよ!」
なおも剣を振り回しながら、こちらに声を掛けるロジーナ。
それに応えつつ、横から突っ込んできたキマイラを斬り、飛んで来た魔法を斬り払う。
俺一人だったら、もっと強引に魔法をまき散らしながらになるから、ロジーナがいてくれるのは本当にありがたい。
魔物の集団に突っ込んで中央のヒュドラーに向かっていた時よりも、進みが早いからね。
「……リク、見えているわね?」
「うん」
自分の体よりも大きな剣を軽々……多少アンバランスになりながらも振り回すロジーナが、ふと進みを遅めて言った。
魔物達の囲みの向こうから飛び込んで来る魔法を斬り払いつつ、ロジーナに速度を合わせながら頷く。
俺達を囲む魔物達の向こう……進行方向から少し南にズレた辺りで、さっきからいくつもの細い線のような光が見えていた。
「魔物に向かっているね。光が曲がるのはなんか不思議だけど……」
空へとに伸びる細い光……赤いそれは山なりになって、魔物達へと降りる。
まだ距離があるためにはっきりとは見えないけど、魔物達がひしめく場所の上で赤い光が消えて波上に、そして円形に広がっているようだね。
赤い光……糸のようにも見える程細いから、赤い糸? いや、運命の人と繋がっているとかじゃないだろう、いくつも別方向に迸っては消えているし。
紛らわしいから、赤い光のままでいいか。
「あれは魔力ね。直接関わっていないから予想でしかないけど……魔物を操作するために、魔力を飛ばしているんだと思うわ。リクみたいに、魔力を固めてそのまま攻撃とかじゃないはずよ」
魔力を固めてって、魔力弾の事か。
離れて見ているだけだから、赤い光がどれだけの魔力を含んでいるのかどうかまではわからないけど……魔力弾程じゃないのは間違いないんだろうね。
あれは、本来変換されて魔法になる魔力をそのまま、現象として放つもの……のような気がするから、凝縮して固めるのに必要な魔力量はかなり多い。
「でも、魔物を操作って……って事は、あの光の発生源に魔物を操っている誰かがいるって事?」
「おそらくね……あの子か、それとも別の誰かか……私が干渉して知る限りでは、何人か可能な人物がいるわ。予想通りなら、それが原因で私達の所にいたヒュドラーとレムレースや他の魔物達が、連携していたのでしょうね……んっ! リク、光が気になるのはわかるけど、集中しなさい!」
「っとと。ごめんごめん。とにかく、あそこに行ってみればわかるって事……だねっ!」
話をしながらも、別方向から飛んで来る魔法を避け、目の前の魔物に大剣を振り下ろして斬り裂くロジーナ。
謝りながら、意識を赤い光よりも戦闘の方へと引き戻し、ロジーナや俺に向う魔法、俺に突進してくる魔物のを倒す。
少しだけ先頭のロジーナが方向を変え、赤い光へと突き進みながら、また怒られないように頭の片隅で試行する。
ロジーナが知っている人物か……もしかしたら、帝国に関連している組織の幹部とかかもしれない。
何人か、という事は可能な人は限られているわけで、つまり誰でもできるわけじゃないのは魔力量とかが関係するんだろう。
だから、組織の関係者がいるのだとしたら幹部級……ツヴァイやクラウリアさんのように、魔力譲渡で無理矢理保持できる魔力量の上限引き上げられた人である可能性が大きい。
という事は一連の魔物騒動というか、センテを取り囲んだ魔物達をけしかけた首謀者がいるかもしれないわけで。
少なくとも、今回のヒュドラー含めた強力な魔物を使ってというのは間違いないだろうね、ロジーナの予想通りなら断続的に続いている赤い光で、魔物達を操作しているようだから。
中央や北側では魔物の連携が見られなかったのは、赤い光がそこまで届かないからなのかもしれない。
リネルトさんが空から見た、怪しい場所から指示を出していて、だからこそ周囲の魔物が強く警戒して寄せ付けなかったのかもね。
なんにせよ、センテ全体を囲んでいた魔物達の時は、けしかけた何者かはすでに生きていなかったみたいだけど、この先にいる何者か今確実に生きている。
捕まえれば、重要な情報の参考人になると思われる……情報のあるなしに関わらず、魔物に指示を出しているのは止めないといけないけど。
それが、戦場全体にいい影響を与えるかはともかく、やる事は決まった。
「ちぃ! まったく、自分の周りに魔物を多く配置して、厳重に守っているってわけね。向こうは、私達が近付いている事もわかっているみたいよっ! くのぉっ!」
「そう、みたいだっ! ねっ! 近付くにつれて、魔物達の抵抗が強く……なるっ!」
「GAOOOOO!!」
「PIGYAAA!!」
魔物達に常に囲まれている状況に飛び込み、ひたすら赤い光が放たれている場所へと向かっている。
けど、段々と魔物達の囲みが狭まり、飛び込んで来る魔法の数や、襲い掛かる魔物も増えてきた。
さらには、俺達の頭上で赤い光が円形に広がった後からは、魔物達の連携も特にみられるようになった……やっぱり、あの赤い光が何かしらの操作をしているので間違いないようだ。
キマイラがロジーナに向かって飛び込み、斬り伏せられた瞬間さらに後ろからオルトスが飛び掛かる。
俺が頭上から降って来た魔法を消滅させたら、左右からほぼ同時に魔法が放たれたうえ、後ろから足の速いオルトスが噛み付いて来るなどなど。
これまではバラバラに襲い掛かって来ていた魔物達が、俺とロジーナを排除するという目的のために協力やタイミングを見計らうようになっていた。
襲って来る魔物をロジーナが斬り、次いで来る魔物を俺が輝く剣で斬り飛ばす。
魔法は避け、別の魔法は魔物を斬り裂いた勢いのままで振った俺の剣で消滅させる。
さらに俺へと襲い掛かる魔物は、ロジーナが大剣を真っ直ぐ口へと突き刺し、そのまま横に振って別方向から近付いていた魔物へと投げ飛ばす。
「ふぅ……これは、かなり手間ね」
「うん。でも、少しずつでも確実に進んでいるけど、面倒だね」
魔物の集団へと飛び込んですぐの頃みたいに、走るように突き進む事はできなくなっている。
けど、襲い掛かる魔物や魔法を着実に処理して、断続的に放たれる赤い光の発生源へ少しずつ近付いている。
間に魔物達がおしくらまんじゅうでもしているんだろうか、と言いたいくらいひしめき合っているため、正確な距離は測れないけど……あと二、三百メートルといったところだろうか――。
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