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全てがリクを狙っての事ではないかも
しおりを挟むシュットラウルさん達はもしかしたら、俺がこれまでできるだけ被害を減らそうと考えていたからかもしれないけど、とにかく周囲には優しく信頼してくれる人達がいるっていうのは、本当にありがたいと思う。
日本にいた時は、両親や姉さんがいなくなってからそんな人達には恵まれず、ほとんど独りぼっちだったからなぁ。
まぁ俺自身、適当に過ごしてあまり人と関わらないようにしていたのも原因だけど。
「だから今回の事、もしレッタっていう人がリクさんの力を目的に引き起こした計画だったとしても、リクさんが気にする事はないのよ。リクさんがいなかったら、この場にいなかった人達ばかりなんだから」
「うむ、そうだな。モニカ殿言う通り、リク殿がいなければ私はバルテルに殺されていたやもしれん」
「私もほとんど同じくですね。王城に押し寄せた魔物にやられていた可能性が高いと思われます」
モニカさんの言う通りなのかもしれない。
ヘルサルに押し寄せたゴブリンによってモニカさんは、姉さんを人質に取ったバルテルによってシュットラウルさんは、そしてマルクスさんは王城を襲う魔物によって。
ゴブリン以外は、俺が原因でバルテルの凶行やらを引き起こしてしまった部分はあるけど、いなければ絶対に起こり得なかったとまでは言えない。
助けた事があるから、気にしなくてもいいなんて考えはできそうにないけど、自分が原因で皆をと心苦しく思っていた心が少しだけ軽くなった。
それでも、やっぱり魔物との戦いによって被害に遭った人達には、申し訳なく思ってしまうけど。
「それにだわ、リクは一つ見落としているのだわ」
「エルサ……起きていたのか」
唐突に言葉を発するエルサ。
ずっと黙って頭にくっ付いているだけだったから、退屈して寝ているのかと思っていた。
こういう時、大体エルサはお腹が空くか起こすまで寝ている事が多かったし。
「……リクの感情が流れて来て、寝るに寝られなかったのだわ。安心や焦燥、糾弾されるかもしれないとの恐怖とかだわ。リクは悪い方に考え過ぎなのだわ」
「……」
頭の上から降り注ぐエルサの声に、押し黙る。
契約をしているエルサには、魔力だけでなく記憶とかも流れているんだった……記憶が流れれば、感情も流れていって当然だよね。
一番新しい記憶は、一番新しい感情と繋がっているんだから。
俺が考えていた事、心苦しく思っていた事、さらにお前のせいだと言われないだろうか? なんて心の隅で想っていた事もエルサには流れていたみたいだ。
……ちょっと恥ずかしい。
「そ、それで俺が見落としている事って?」
とりあえず、自分の感情がエルサとはいえ自分以外に漏れていた事での恥ずかしさを誤魔化すように、エルサに聞いて続きを促す。
モニカさんにもある程度、見抜かれていたのは嬉しさもあるから置いておこう。
「あれだけ大量の魔物、集めるのは大変なのだわ。わざわざ運び役のワイバーンまで用意していたのだわ。あれは別に、リクがこの街に来たからというわけではないのだわ。そもそも、リクが来る前から魔物達は動いていたのだわ」
「そういえば……そうだね」
「当然、何か大きな事を起こせばリクが出て来る、という思惑もあったのかもしれないのだわ。けどだわ、リクがここに来たから魔物が街を囲んで押し寄せたのではなく、リクがいなくてもそうなっていたのだわ」
「そうよね……エルサちゃんの言う通りだわ。リクさんがセンテに来るかどうかなんて関係なく、最初から魔物を集めて計画を進めていたのかもしれないわね」
エルサの話に、考えながら言うモニカさん。
俺やシュットラウルさん達も、深く考えている。
確かに、俺達がセンテに来る前から異変はあった……それは、冒険者ギルドでベリエスさんから調査依頼を受けたのもあったので間違いない。
街の南側で、魔物が多くなっていた事に対する調査だね。
結局はロジーナの話を信じるなら、魔力溜まりを作ろうとして魔物の死骸を運び、それに他の魔物が引き寄せられていたってわけなんだけども。
多分その引き寄せられた魔物は、センテを包囲するために集まっていた魔物の一部だろうというのはまぁわかる。
あと実際に、街の南では魔力溜まりが発生しそうだった事を、フィリーナが見て確認しているしスピリット達も言っていたからね。
それにロジーナの口ぶりからは、俺が来る事を見越しての計画ではなく、偶然俺がきたから計画を利用しようとした……と言う感じを受けた。
まぁ、これはロジーナに実際聞けばわかる事かもしれないけど、正直に話してくれればね。
つまり最初から俺とは関係なく、センテを魔物で包囲する予定だったって事か……。
「どうやら理解できたようなのだわ」
俺が頭の中で結論を出すとほぼ同時、エルサが頭の上でそう言った。
見れば、俺以外の皆も同じ考えになったようで、ハッとなってこちらを見ている。
こちらというかエルサだけど。
「じゃあ、今回の魔物が押し寄せる騒動は、全てリクさんがいなくても起きていたって事、よね?」
「全てかどうかはわからないのだわ。特にヒュドラーがいた二回目は、だわ。ただ少なくとも、一回目はリクがここにいなくても起こっていたはずなのだわ」
「リクさんや私達が来る以前から、センテの南側では異変があったのだから、そうなるわよね」
「俺がいなくても起こっていた事……」
ヒュドラーがいた二回目に関しては、ロジーナやレッタさんが言っていた事を考えば、俺が原因の一端なのは多分間違いないと思う。
俺がセンテに来た事でロジーナと接触し、そのせいで人間としてこちら側に来る事になったらしいから……なんでそうなったのかは、さすがに神様ならぬ俺にはわからないけど。
ともかく、そのせいでレッタさんが刺激され、ヒュドラーやレムレースを使う事に踏み切ったみたいだから。
多分、俺がいなければ例え一回目に魔物が包囲したのが失敗したとしても、ヒュドラーを投入する事はなかったんじゃないかなと思う。
ロジーナも、レッタさんが本当に使う手段だとはあまり考えていなかったみたいだし。
「つまり、やはり我々はリク殿に救われているという事だな」
「え……?」
シュットラウルさんが出す結論に、キョトンとしてしまう。
エルサも言っている通り、二回目のヒュドラーは俺が原因じゃないとは言えないわけで……むしろ、ここまでの話だと予想通り俺が原因となっている可能性が高い。
それでなんで、俺がシュットラウルさん達を救ったって事になるんだろう?
「不思議そうな顔をしていますね。敵う者は他になく、考えを巡らせる事ができる方なのに、自分の成した事には無頓着なのでしょうか?」
「まだ短い付き合いだが、私もリク殿の事をそう思うな」
「えっと……」
くすくすと笑いながら、マルクスさんが言うのに対しシュットラウルさんが肩をすくめる。
どういう事だろう? 他の人を見ても、モニカさんや大隊長さん、それから侯爵家の執事さんまでが、苦笑している様子だ。
エルサに至っては、これ見よがしに頭にくっ付いたまま溜め息を吐いていた――。
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