神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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感極まるモニカさん

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「ぐすっ……ぐすっ!」

 俺が意識を取り戻した時のエルサのように、泣きじゃくる様子はどれだけ不安だったか、怖かったかを物語っているように思えた。
 そっと、優しく腕を回し、モニカさんを抱き締める。
 ……これくらいは許してくれるよね? 跳ねのけられたり、嫌がられたらショックだ。
 経験不足で、こういう時どうするのが一番正しいのかがわからない、自分が少しだけ憎い。

 あ、そうか……モニカさんが言っていた、信頼していても嫌われないか不安というのは、こういう事なのか。
 それにしても、エルサといいモニカさんといい、今日はよく胸で鳴かれる日だなぁ。
 まぁ、それだけ心配をかけてしまったって事なんだろうけど。
 モニカさんの様子を見ていると、少し胸が痛い。

 心配してくれる人、一緒にいてくれる人……姉さんもいなくなった日本では、そんな人はもういなかった。
 ずっと一人だと思っていた……もしかしたら、どこかにいたのかもしれないけど、俺の知る限りではいないと断言できるくらい、他人と深くかかわらないようにしていた。
 失うと、怖いから。
 だけど、この世界に来て自惚れかもしれないけど、誰かを守る事くらいはできそうな力を持った。

 もうすでに泣かせているから、あまり意味はないのかもしれない。
 それでも、これからはできるだけモニカさんを心配させないように、泣かせてしまわないように気を受けよう。
 回して抱き締めた手で、モニカさんの背中を撫でながら、心の中で固く誓った。

「うぅ……ぐすっ。ごめんなさい、恥ずかしいところを見せてしまって……」
「ううん、恥ずかしくなんてないよ。それだけ、モニカさんが真剣に思ってくれて、悩んでいた結果だから」

 少しだけ落ち着いたのか、まだ鼻を啜りながらだけど、モニカさんが謝る。
 俺は首を振って、何度も何度もモニカさんの背中を撫でて気にしてない事を伝えた。
 それにしても、モニカさんは俺の服で鼻をかんだりしないんだな……いや、エルサだからで女の子のモニカさんがそんな事をするとは思わないけど。
 あ、明日の朝、エルサの鼻水でぐじゅぐじゅになった服を洗わないと。

 戻って来るまでに乾いていたけど、さすがに洗わずにまた着る気にはなれない。
 この宿で泊っている間、洗濯は使用人さんがやってくれているから……王城でもそうだけどね……とにかく申し訳なく思うけど、頼めばいいか。
 モニカさんの背中を撫でながら、そんなどうでもいい事を考えていると……。

「ん……?」
「リクさん……リクさん……」
「モ、モニカさん!?」

 落ち着いたらしいモニカさんが俺の背中に腕を回し、顔を俺の胸に押し付けたまま体ごと預けるようにして強く抱き着いてきた。
 柔らかい感触が、下腹部辺りに押し付けられる。
 何がとはあまり考えない……考えると俺の頭の中とか鼓動とか、その他色々が大変な事になるからね。
 俺だって、れっきとした男なんだから。

「すぅ、はぁ……すぅ……あぁ、リクさんの匂い……」
「あの、ちょっとモニカさん?」

 俺の体を抱きしめたままで、深呼吸するモニカさんだけど……俺の匂いって!?
 お風呂に入ったばかりで、洗濯後の服を着ているから臭くはないと思うけど、それでも落ち着かない。
 戸惑い、モニカさんの背中を撫でるのを忘れ、問いかけるだけしかできない俺。

「すぅ……はぁ……」
「えっと……?」

 俺の声が聞こえていないのか、胸に顔を埋めたまま何度も深呼吸するモニカさん。
 なんだろうこれ……どうしたらいいんだろうか。
 動く事ができず、もはや俺が抱き締めると言うよりもモニカさんから強く抱き締められている状況。
 ギュッと力を込められていても苦しくないのは、下腹部にある柔らかい感触のせいなのかもしれない。

 あ、いや、やっぱり苦しいかも。
 柔らかくはあっても圧迫感はあって、モニカさんから力いっぱい抱き締められているのがわかる。
 多分だけど、俺じゃなかったら背骨やあばらが軋んでいたんじゃないかな? と思うくらいの力強さだ。
 それだけ、モニカさんの思いが強いことの表れなのかもしれないけど……この状況、これから一体どうしたら?

「モニカさん、モニカさん?」
「すぅ……うぅん……すぅ、はぁ……」

 やっぱり俺の声は届かないようで、何度か呼び掛けても深呼吸……というより、臭いを嗅ぐのを止めてくれない。
 俺の匂いって、トリップ効果とか危ない何かがあるんだろうか? と疑ってしまうくらいだ。
 呼びかけても気付いてくれないし、恥ずかしいけど無理矢理引き剥がすのはどうかなと思う。

 少し前まで泣いていたから、不安に思う気持ちがわかってしまったのもあって、引き剥がすと泣かれそうで怖かったりする。
 どうにも動けない状況で、しばらくそのままでいる。
 どれだけの時間が経ったのかわからない、数分かそれとも数時間か……もしかしたら数秒しか経っていないかもしれないけど。
 とにかく、もうこうなったらモニカさんが正気に戻ってくれるまで、柔らかい感触でも堪能しようかなんて、男の思考になってしまっていた頃、ようやくモニカさんが顔を上げてくれた。

「……リクさん」
「モニカ……さん?」

 けどその目はトロンとしていて、潤んでいるのは泣いていたからだろうけど、どう見ても正気とは言えない目つきになっていた。
 えっと、うーんと……もしかして本当に俺から発せられる匂いには、トリップ効果があったりするのかな?

「あぁ、リクさん……」
「え、あ、え……?」

 余計な事を考えて時間を浪費す俺に対し、見上げたモニカさんが少しずつ顔を近付けて来る。
 段々と、少しずつ、ゆっくりと、俺とモニカさんの顔が近付く……。
 さっきとはまた雰囲気が違うけど、ある意味これもそういう雰囲気なのかも?
 なんて、どういう雰囲気なのかよくわかっていないくせに、脳内で勝手に納得して受け入れる準備完了。

 男はきっと気持ちを通わせた女性に対して、受け入れ準備は一瞬で完了する生き物だ、きっと。
 トロンとしたモニカさんの目に魅入られて、俺からも少しずつ顔を近付けて行く……。
 ドクンドクンと、大きく脈打つ心臓がうるさい。
 痛いくらいでも、その痛みと音を無視する。

「リクさん……」
「モニカさん……」

 そうして、俺とモニカさん、二人の顔が重なって……。

「うぅん……だわぁ。もっとキューを寄越せー! だわぁ!」
「「っっっ!!」」

 突然は部屋に響くエルサの叫び声。
 声にならない声を発して、目を見開く俺とモニカさん。
 一秒程度だろうか、大きく開かれた目でお互いを見つめあい、次の瞬間ガバっと体を離した。
レーゼ
「リ、リクさん……その……なんというか……」
「いや、えっと……俺もなんというか……」

 正気に戻った俺とモニカさん……お互いに気まずくなり、ソファーの両端に移動しつつチラチラとお互いに視線を交わす。
 どうしていいのかわからず、真っ赤になったモニカさんが、何か話そうとするも上手くいかないし、俺も同じく上手く言葉が出ない。
 顔が熱い……俺の顔も真っ赤になっているかも――。


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