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森への出発直前
しおりを挟む「もしもの時、逃げる事も敵わないであれば空に向かって叫べば助けてくれる事になっています。センテで戦った冒険者はある程度馴染みがあるはずです。ヘルサルにいた者達は馴染みはないかもしれませんが、離脱する際には……」
等々、ヤンさんの話でワイバーンに関して説明される。
魔物を倒した後は冒険者さんが戻りたいのであれば、ワイバーンに乗って離脱する事にもなっていて、その際リーバーは俺達への伝令係になって、場合によっては俺も駆けつける予定だったりもする。
ただそこまでの事は、冒険者さん達を安心させ過ぎて油断してはいけないためらしく、話さない事になっているけど。
安全はできるだけ確保しつつ、冒険者さん達には危機感も持って欲しいという計らいだとか。
……至れり尽くせりだと、油断しないようにしていてもどうしても気が抜けてしまうのが、人ってものだかららしい。
俺も自分の力を過信して色々と油断する事があるから、わからないでもない。
そのせいで昨日はレムレースとの戦いは大変だったからなぁ……白い剣を持っていないばかりに。
「では各自、今私の言った事を忘れることなく、準備ができた者から森へと出発して下さい。準備の中には、依頼受諾登録も忘れずに」
「こちらで、依頼受諾登録を受け付けています! 森に行く冒険者の方は、こちらに記名をしてから出発して下さーい!!」
ヤンさんの話が終わり、冒険者さんが各自で装備の確認などの準備を始める。
それと同時に、簡素な机を設置して冒険者ギルドの職員さん数名が声を張り上げ、簡易的な登録の受付を開始した。
出張版冒険者ギルドってところかな。
まぁ同じ街に支部があるけど……ここに集まっている冒険者さん達全員を、一度にヘルサルの支部には入らないからって事なんだろう。
「リク様、頼まれていた剣をお持ちしました」
「ありがとうございます、エレノールさん」
皆の様子を見ていると、エレノールさん来て頼んでいた剣を持ってきたので受け取る。
昨日のショートソード日本とは違い、今日は少し大きめの剣だ……俺が丈夫な物をって頼んだからだろう。
受け取った剣を鞘から抜いて、剣身も確かめてみる。
「リク様、その剣は中途半端なものに見えますが……」
「これでいいんです。丈夫な物、というのが一番の条件ですから。切れ味とかは二の次です」
「そうなのですか……」
抜いた剣を見て、アマリーラさんが訝し気になる。
剣はロングソードというのは少し短く、バスタードソードよりも少し長め、刃はあまり鋭く感じないけど剣身そのものは少し厚めだ。
実戦用というよりは、訓練用に近い気がする……アマリーラさんが中途半端というのもわからなくもないかな。
剣身が厚めだからだろう、重さもロングソードなどの両手剣より少し重めだから、鋭い振りは難しい。
さらに押し切る用と考えても、刃の鋭さが足りない。
もし実戦で使うなら鈍器としての方が使えそうな気がするけど、剣の形になっているため結局不向き……うん、中途半端だ。
「丈夫な、という事でしたら私のこの剣をお使いに」
そう言って、抜き身のまま背負っていた大剣を差し出すアマリーラさん。
その剣は、小柄のアマリーラさんよりも大きく、巨大だ。
この剣を軽々と振り回すんだから、人は見かけによらない……獣人ってのはあるんだろうけど。
あと、大食いなのは驚いたけどもしかしたら食べた物のエネルギーは、全てその膂力に使われているのかもね。
ちなみにだけど、ヒュドラー戦の時にロジーナが拾って使ったアマリーラさんの大剣とはまた別の物らしい。
あれは、ロジーナと一緒に意識を乗っ取られた俺に巻き込まれて回収が不可能になっていたから……というか、多分形すら残っていないっぽい。
もし残っていたとしても、凍った地面の中だろう。
その事についてアマリーラさんとも話したけど、なんでもコレクターという程ではないけど、大剣はいくつか持っているらしく、気にしないとの事だった。
今持っているのは、そのうちの一つらしい。
確かに丈夫そうではあるけど……。
「いえ、それはアマリーラさんが。昨日森に入って思ったんですけど、そこまで大きな剣だと取り回しが難しいですから」
「そうですか……リク様に使われるなら、この剣も喜ぶと思ったのですが……」
剣に意思があるかどうかはともかく、今は雑な扱いしかできない俺が使っても、刃こぼれしそうだしむしろ喜ぶどころか悲しむと思う。
それに、巨大な剣をあの木々が密集した場所で振り回したら、色々と危ない気がするからね。
木を斬り倒したり、近くにいる人を巻き込んだりとか。
「というか、アマリーラさんもその剣は森の中で使うのは難しいと思うんですけど……」
「問題ありません。そんじょそこらの魔物であれば、剣など使わなくてもリク様のお手を煩わせる事などありませんから。それに、森での戦いは慣れています。ものは使いようなのですよ」
人の身長を優に超える大剣でも、密集した森の中で扱う事はできるってわけか。
自信がありそうなアマリーラさんを見れば、俺が気にする必要はあまりなさそうに思えた。
獣人だし、Aランク相当の実力だから、俺がしなくても大丈夫か。
「アマリーラさん、手を煩わせないと言っても私達はリク様とは別行動ですよぉ?」
「何!? そ、そんな馬鹿な!」
「も~、聞いていなかったんですか? 私とアマリーラさんは、リク様達とは別の場所を見て回るって言われたじゃないですかぁ」
「な、なんだ……と……リク様に、私の勇姿を見て頂けると考えていたのに……」
リネルトさんの指摘に、ガクッと膝をつき項垂れるアマリーラさん。
ヘルサルに来る前、付いて来る事が決まった時に話したんだけどなぁ……確かあの時アマリーラさんは、俺と行動ができると感極まっていたようだから、話に集中できていなかったのかもしれない。
その代わりに、ちゃんと話を聞いていて指摘してくれるリネルトさん。
戦闘とかの実力的には、アマリーラさんの方が上らしいけど、初対面のイメージや雰囲気と違ってリネルトさんは頼りになるなぁ。
これ以上、アマリーラさんを落ち込ませるといけないので、口には出さないけど。
戦いになると、アマリーラさんも頼りになる人なんだけどね……主に、大量の敵を蹴散らす役目とか。
「私が、アマリーラさんとリネルトさんと一緒ね。よろしくお願いするわ」
「はい~、よろしくお願いしますね~。獣人は、特にアマリーラさんは私よりも森での活動に向いていますが、エルフの方がいてくれると心強いですぅ」
「……フィリーナ殿、リク様と後退する事はできないだろうか?」
「往生際が悪いですよアマリーラさん~。もう決まった事ですからねぇ」
なんて話をしているフィリーナ組。
アマリーラさん達獣人二人は、フィリーナと一緒に森を探索して魔物と遭遇すれば倒し、危険な冒険者さんがいれば助ける役目。
同じ役目の俺は、モニカさん、カイツさんと一緒だね。
六人全員で一緒に行動するのは数が多いし、広い森を見て回らなきゃいけないので効率が悪いため、チームを別ける事にしたってわけだ――。
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