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チームを別けてそれぞれ森へ

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 チーム分けで同じエルフで連携の取りやすい、フィリーナとカイツさんが別れているのは、森の木々に働きかけて周囲の様子を探る事ができるためで、俺が探知魔法を使えないから、その代わりでもある。
 アマリーラさんとリネルトさんは、長く一緒にいるから同じチームの方が連携しやすいだろうし、同じく俺もモニカさんとの方が動きやすいと思っての組み合わせだね。
 まぁ、不安があるとすればカイツさんの方向音痴か……。

 詳しく話している余裕はなかったし、カイツさんの方向音痴っぷりを知らないアマリーラさん達に任せるよりは、知っている俺達と一緒の方がいいだろうとの考えもある。
 リネルトさん一人で、アマリーラさんとカイツさんを見るのは大変そうだからね。

「それにアマリーラさん、リク様が離れていても私達の活躍を見逃すとは思うのですかぁ?」
「そ、それは……」

 いやリネルトさん、さすがに離れていたら活躍を見る事はできないんだけど……。

「リク様ですよぉ? 私達の考えすら及ばない方法で、私達の事を見てくれているはずです。ですから、離れてもアマリーラさんの勇姿はきっと、リク様に届きますよぉ?」
「そ、そうか。そうだな、うむ! リク様、他の者達の追随を許さない活躍を、捧げます。見ていて下さい!」
「あー、えっと……は、はい……」

 リネルトさんに言われて元気を取り戻したアマリーラさん、その圧に押されてとりあえず頷く。
 活躍を捧げられても困るんだけどなぁ……とは思うけど、リネルトさんから後でアマリーラさんの成果は教えますと耳打ちされたので、とりあえずはいいか。
 後で褒めてあげてくださいね、とも言っていたリネルトさんは、アマリーラさんの扱いが上手いと思わざるを得ない。

 さっきまで膝をついて意気消沈していたアマリーラさんは、元気よく尻尾を振りながらやる気に満ち溢れているようだったから。
 元気過ぎて、暴れまわらないといいけど……そのあたりは、リネルトさんとフィリーナに期待しよう。

「よしっと。リクさん、こっちは準備できたわ」
「うん。冒険者さん達も各々森に向かっているみたいだし、もう少し待ってから出発しようか」
「そうね」

 アマリーラさん達の話を聞いている間に、モニカさんの方の準備も整ったようだ。
 こちらの荷物は武器以外の全てを俺が持って、モニカさんとカイツさんは身軽になってもらっているから、準備らしい準備は本来いらないんだけど、今回は密集した木々の森に入るため、モニカさんに必要だった。
 その理由はモニカさんが持っている武器。
 いつも使っている槍ではなく、短槍、手槍、ショートスピアなどと呼ばれる短めの槍に取り換えているからだ。

 まぁ短いと言っても、俺がエレノールさんから受け取った剣どころかロングソードなどよりは長いんだけど、そこはまぁ槍だからね。
 槍は基本的に長いリーチを生かすための武器だけど、センテでの戦いで思うところがあったらしく、短めの槍も用意してもらっていたらしい。
 その槍を、カイツさんに頼んで簡易的な魔法具にしてもらっていたってわけだね。
 あくまで今回はお試しの部分が大きいため、インスタント的な魔法具で耐久に問題が出るらしいけど、短時間でしかも外ですぐに武器を一つ魔法具化できるのは、さすがエルフで研究者でもあるカイツさんと言えるかな。

 フィリーナのみならず、王都にいるアルネにもこれはできない事みたいだ。
 解氷作業に駆り出されてはいたけど、元々戦闘よりも魔法具に関する研究の方が得意なカイツさんらしい。
 モニカさんはその槍を、何度か素振りの要領で振って感触を確かめて、準備完了したみたいだ。

「リク」
「リク様」
「ソフィー、フィネさんも」

 しばらく冒険者さん達が、登録をませて門を出ていくのを見守っていると、ソフィーとフィネさんがやって来た。
 二人共、既に登録を済ませ、装備の確認なども終わらせて準備万端のようだ。
 その二人と少しだけ話をし、森へと送り出す。
 さらにその後、ルギネさん達リリーフラワーのメンバーも俺の所に。

 ルギネさん、アンリさん、グリンデさん、ミームさんの四人も張り切っている様子だったので、アンリさんの過去とかの憂いはちゃんと話し合って、メンバー内での解決はできたんだろうと思う。
 まぁミームさんだけは相変わらず、謎の干し肉に関しての執着を見せていたけど、それもいつも通りの調子になったからかな。
 とりあえず、成果を出して胸を張って協力できるように……というような事を言っていたから、俺が作る予定のクランに入る方向で話はまとまったっぽい。
 さらにさらに、トレジウスさんを始めとするパーティメンバー、それ以外にもヘルサルやセンテで知り合った冒険者さん達が、次々に俺へと挨拶をして森に出発していく。

 ……どうして皆俺に話し掛けてから行くんだろう? ギルドマスターのヤンさんとかにならわかるんだけど。
 大体が、成果を上げて――と各々口に出していたから、俺の作るクランに興味があるのかもしれない。
 帝国との関りがほぼ調べ尽くされた、今ヘルサルとセンテにいる冒険者さん達は、信用できる人達が多いから前向きに考えてくれているのは嬉しいんだけど。
 でもさすがに、全員をクランにというわけにもいかないからなぁ……そんな事をしたら、ここらの冒険者さん達がほとんどいなくなってしまうし、クラン自体も大所帯になり過ぎてしまう。

 マティルデさんに怒られそうでもある。
 ……そういえばクランって、上限人数とか決まっているんだろうか?
 まぁ何はともあれ、現状でおくしようと決めている人達以外に関しては、俺以外の人達とも相談してちゃんと決めないとね。

「……ではリク様、輝ける成果を示すため、行ってまいります」
「は、はい。お気をつけて……」
「行ってきますね~」
「私は、魔法より周囲の探索に集中した方が良さそうね。行って来るわ」

 なんて今後の事を考えている間に、冒険者さん達が全員森へと出発。
 さらに少し経って、意気込むアマリーラさん達が閑散とした門から出ていくのを、苦笑しながら見送る。
 輝ける成果ってなんだろう? と思わなくもないけど、まぁ頑張るって事だろうと思っておく。

「そろそろいいかな。それじゃ、俺達も出発しよう」
「えぇ」
「了解しました」

 アマリーラさんが出発してさらに少し、頃合いを見計らって俺達も森へと出発する。
 モニカさんとカイツさんが頷くのを見て、俺達はそれぞれリーバーやワイバーンに分乗。
 他の人達は皆、徒歩で森に向かったのに俺達だけワイバーンに乗るのには訳がある。

「それじゃリーバー、森の南に行ってくれ」
「ガァゥ!」

 リーバーにお願いした通り、俺達だけは森の南から入るからだ。
 冒険者さん達も、それぞれ時間差で出発したし、各自で森に入る場所は少し違う……特に示し合わせたわけじゃないけど、大勢で同じ場所から入って同じように動いていたら、意味がないからね。
 森全体の魔物を掃討するローラー作戦、というのもありだけど今回は全体の魔物の数を減らすのが優先。
 今日だけで全てをというわけではなく、数日に分けてだからいずれローラー作戦は行うだろうけど、まずは大まかに全体をだからね――。


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