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フォレストウルフでお試し急造魔法具

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 先に出発したアマリーラさん達は南から入る俺達とは違い、冒険者さん達の後から近い場所……西側から森に入り、俺達は南から入る事でばらけさせてできるだけ広範囲に見張りをするってわけだね。
 東側はレムレースとの戦いで荒野ができているし、氷った大地などもあって魔物の数は少なそうだし、 北側は昨日俺が入って進んだから、今日は南側からって事にした。
 まぁただ人が入る事が少ない南側の方が、俺達が魔物と遭遇する可能性が高そうだからってのもあるけどね。
 昨日はレムレースとの戦いで、結局目的より森の捜索範囲は狭かったから、その代わりだ。

「こっちは、川が近いんだ」
「そうね。ヘルサル南を流れる川が、ここに続いているわ。っと、こっちにも魔物があぶり出されているみたいね」
「そうみたいだね。それじゃリーバー、昨日と違って今日は俺の上じゃなく、空から危険な冒険者さんを助けるように」
「ガァ~」

 森の南、流れる川の近くに降りて、リーバー達を送り出す。
 モニカさんとカイツさんは、それぞれの武器を構えて森の方を向いている。
 こちらに気付いているのかいないのかわからないけど、森の外に魔物が複数いるのを見つけたからだ。
 凍っている東側に逃げられないなら、他の方向に逃げるわけで……全てがヘルサルの方に逃げたわけじゃないだろうから、あの魔物達もラミアウネに森を追われたんだろう。

「……フォレストウルフが三体かしら?」
「そうみたいだね」

 目を細めて、森から出て来ている魔物を観察。
 姿勢が低いというか、遠目ながらに四足でいる様子が見えたため、フォレストウルフと判断。
 こちらを見ているようで、見つかって入るみたいだけどまだ向かって来ないのは何故だろうか?
 ……あぁ、さっきリーバー達がいたからか。

 人相手ならともかく、リーバー達はワイバーンでフォレストウルフよりも圧倒的に強い魔物。
 空が飛べるとかは関係なく、魔物としての本能か何かで敵わないと悟っていてもおかしくない。
 そのリーバー達の事も見ているから、飛び去った今でも様子を見ているんだろう。

「モニカ殿の見立てで間違いないようですね。どうします?」
「そうですね……」
「ここは、私に任せてもらえないかしら?」
「モニカさん一人で、ですか?」

 少しだけ近付いて、間違いなくフォレストウルフ三体である事を確認。
 さっさと倒すに限るけど、俺が行くべきかモニカさん達と一緒に行くべきか、考えている俺にモニカさんからの提案。

「フォレストウルフは戦った事があるし、あれくらいなら一人でなんとでもなるわ。それに、これも試してみたいから」
「成る程……うん、わかった。それじゃモニカさんに任せるよ。でももし危なそうなら……」
「えぇ。油断はしなければ大丈夫だとは思うけど、お願いするわね」

 新しく魔法具になった槍を示すモニカさん。
 いつもとは勝手が違うだろうけど、だからこそ森に入る前のここで試しておきたいんだろう。
 フォレストウルフは、素早い動きで翻弄してくる魔物だけどDランク、しかも昨日見た木を足場に使った動きもできない場所だから、三体いるとしてもモニカさん一人で倒すのは難しくないはず。
 念のため、俺やカイツさんも参加できるよう構えておいて、まずはモニカさんに任せてみる事にした。

「モニカ殿、もう一度言いますが急造の魔法具は耐久に不安があります。魔法の威力は普段モニカ殿が使っている物よりも高くなるよう調節しましたが、過信はしないよう注意してください」
「えぇ、わかっているわ。魔法そのものも違うから、気をつけないとね」

 カイツさんの注意にモニカさんが頷き、持っている槍を握る手に力を込めた。
 そのまま、俺達も一緒にゆっくりとフォレストウルフに近付き……。

「来た! さぁ、力を見せなさい!」
「GAAAAU!!」

 警戒心を強めていたフォレストウルフは、距離約十メートル程度にまで近付いた俺達に対し、三体同時に駆け出した。
 それを見て、モニカさんが一人で駆け出しつつ槍を構えて魔力を込め、叫びと共に魔法を発動。

「GYAUN!!」
「よし、次!」

 槍から放たれた魔法は、空気をほんの少し歪ませつつ先頭を掛けて来るフォレストウルフの体を切断。
 成る程、風の刃……ウィンドカッターの魔法だね。
 確か、急造の魔法具にするにあたって、短時間ではカイツさんが得意な魔法を込めるしかできない、と言っていたからそのためだろう。
 まぁそれでも、ほんの十分程度で魔法具にできるっていうのはかなり凄い事らしいけど……フィリーナ曰く、本来なら一日かけてやる作業らしい。

 場合によっては数日かかる事もあるとか。
 ともかく、いつもモニカさんが使っている槍は炎を吐きだす魔法具だし、モニカさん自身が使う魔法も炎の魔法が多い。
 だからこそ、短い槍になれるだけでなく初めて使う風の魔法を試すのもあって、一人で戦うってわけだね。

「ふ……っ! せい!」 
「GYA!!」
「GAAU!!」
「遅い! とぁ!! 止めよ!」

 二体になったフォレストウルフとモニカさんの戦いは、ほとんど一瞬と言っていい間に終わった。
 モニカさんが付きだした槍を、口から突き入れられた一体。
 もう一体がその隙にモニカさんへと飛び掛かったけど、素早く引き抜いた勢いのまま槍の石突に頭を強打されて弾き飛ばされる。
 そして最後に、もう一度槍から魔法を発動し、空気を歪ませる風の刃が飛ばされたフォレストウルフの首を刎ねて終わりだ。

「ふぅ……うん、森の外でならこんなものかしら。木に邪魔されたら、もう少し苦労したかもしれないけど……」
「お疲れ様、モニカさん」

 動かないフォレストウルフ三体を見下ろして、息を吐くモニカさんに声をかける。
 フォレストウルフは木々がないため、単純に駆けて来て飛び掛かるしかできなかったから、戦い慣れたモニカさんにとっては難しい相手じゃないみたいだね。
 まぁ、木に邪魔されないために短い槍に持ち替えているわけだし、森の中でも大丈夫そうだ。
 モニカさんも呟いているように、今より少しくらいは苦労していたかもしれないけども。

「槍の調子はどうでしたか?」
「大きく木になるって程の事はないかな。いつもの槍より、魔法の発動が早いくらいかしら?」
「ふむ……魔力の伝導速度、というよりは単純に得物の長さの違いのようですね」
「短くなれば、魔力が伝わる速度も速くなるってわけだね」

 使用感を聞くカイツさんに、穂先に付いた血を振り払いながら答えるモニカさん。
 魔法具の槍は、基本的に穂先か石突から魔法が出るらしいんだけど、その長さによって魔力が伝わる時間が変わるんだろう。
 カイツさんの作った魔法具に、今の所不具合とかはなさそうだ。

「見ている限り、長さから推測される発動速度よりも早く見えましたが、おそらく魔力の扱いに慣れているからでしょうね。次善の一手のおかげでしょう」
「あれのおかげで、物に魔力を流す感覚に慣れたのは確かね。いつもの槍も魔法の発動までが短くなっていたし……」


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