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伝令役リーバー
しおりを挟む「ま、まぁ喜んでくれるなら、パーティ名くらいは覚えておきますけど……それよりも「華麗なる一輪の花」で間違いないんですね。無事で何よりです。ただ、五人のパーティだと聞いていましたけど、他の二人はどうしたんでしょうか?」
ともあれ、俺がパーティ名を覚えているとかで喜んでいるのはいいとして、見当たらない二人がどうしているかの方が大事だ。
もしかしたら、俺やモニカさん達が森の中で見た後に何かあって、無事なのが三人だけという可能性もあるわけだから。
まさか、手に負えない数の魔物に襲われて、他の二人を囮に逃げてきたとか……そういう事ではないとは思うけど。
……俺達の前にいる三人を見る限り、服や装備が多少汚れてはいても大きな怪我をしている様子はないので、危険な目にあったとかではないように見える。
多少のかすり傷くらいはあるけどね。
「ここにいない二人でしたら、今は少々……お花を摘みに行っております」
「リク様が目の前に降りて下さったのに、運の悪い二人です」
「ま、まぁ無事ならいいんですけど……」
というか、こんな暗い中わざわざお花を摘む必要があるんだろうか? と思う。
周囲には、俺が木を斬り倒したのとラミアウネと戦っていたうえ、止めにリーバーの炎と粉塵爆発で焼かれているため、花はない。
けど森の中に入れば、様々な植物は生えていたし当然花もある。
女性らしく、可愛い花とか好きで花を摘みたいと思うのは、悪い事じゃないけど……。
「あ……」
「ど、どうされました、リク様?」
「い、いえ、なんでもありません」
考えているうちに、花を摘むという意味に気付いて思わず声を出してしまった。
何かやってしまったか!? と、心配顔になる三人には、とりあえず首を振って誤魔化しておいた。
そうか、花を摘むという暗喩があったね……うん、俺が女性に対して言及するのは憚られるので、これ以上は考えないようにしよう。
女性はそういう時、複数で一緒に行くというのも聞いた事があるけど……まぁ暗い森の中だし、単独行動をしないというちゅいを守ってもいるみたいだし。
さっきここにいない二人の事を聞いた際、少し言いにくそうにもしていたから、本当に言葉通り植物としての花を摘みに行ったわけではないだろう。
何はともあれ、こちらの世界にも同じような暗喩ってあるんだなぁ……。
「えーっと……」
とりあえず、頭の中を切り替えるために適当な言葉を選んで発している間に、これからの事を考える。
全員無事って事でいいんだろうから、あとは連れて帰れば問題は解決だね。
ただ、乗って来たリーバーに五人を乗せられる余裕はないから……。
「リーバー、ちょっと街まで行って他のワイバーンを連れて来てくれるかな? 俺とフィリーナ以外に、五人乗せられるくらいでいいから」
「ガァ、ガァゥ!」
ここから歩いて森を出ようとすると、暗いから昼よりもさらに時間がかかるだろうし、ワイバーンに乗せてもらった方が早いだろう。
そう思って、リーバーに女性冒険者さん達を運ぶためのワイバーンを連れてくるようお願いする。
リーバーならすぐに街の東門と往復してくれるだろうし、数体入れば全員連れて帰れるからね。
俺の言葉を聞いて、頷いてくれたリーバーが羽を広げて羽ばたこうとしたら……。
「あ、ちょっと待って! えっと……」
フィリーナに止められた。
そのフィリーナは広場の端まで走り、何やら魔法を落ちている太めの木の枝に放つ。
いや、木の枝というよりそこらにある木の幹と同じような太さだったし、そこから枝葉が生えているので俺が斬り倒してそのままになっていた木の残りだろう。
その木の一部を魔法で切り出し、板にして何やら刻み込んでいるようだ。
ナイフのようなもので刻んでいるわけでもなく、指先を木の板に向かって滑らせているので、おそらく魔法か何かだろう。
ちょっと不思議な光景だ……俺も、女性冒険者さんの三人も、何をしているのかわからず不思議そうにフィリーナを見守る。
リーバーもそうか。
「よし……これを、咥えては飛べないわよね。持てるかしら?」
「ガァ。ガァゥ」
何かを刻んだ木の板を持ってきたフィリーナは、リーバーに持っていってもらおうとしているようだけど、口に咥えてだとさすがに飛ぶのに支障が出ると思ったのか、前足で掴ませるようにして持たせた。
リーバーの方も、大丈夫と言っているように頷いた。
ワイバーンといえば、前足というか羽がその役目みたいなものなのが想像されるけど、こちらの世界でのワイバーンは四足でも動くため羽とは別に前足がちゃんとある。
あまり器用な事は出来ないようだけど、木の板を持つくらいはできるみたいだ……まぁ、その木の板に爪が食い込んでいるから、持つというより引っかかっているという方が正しいのかもしれないけど。
「フィリーナ、それは?」
「街にいる人達への報せよ。捜索した冒険者は全員無事なのと、ワイバーンを数体こちらに連れて来るよう、記してあるわ。エルフがよくやる連絡法ね。向こうにはカイツがいるから、わかってくれるはずよ」
「成る程、エルフ特有の連絡法ってわけだね……ふむふむ」
木の板を使う事や、刻み込むのも含めて、森の中で暮らしているエルフなりの知恵なんだろう。
フィリーナと話しながら、リーバーが持っている木の板を見ると、確かにそのような事が書かれていた。
ただ、同じく少し離れているけど木の板を見ていた女性冒険者の三人は、首を傾げている様子だったので、もしかしたら読めているのは俺だけなのかもしれない。
確かに、この世界でよく使われているというか、目にする文字とは違うから、エルフ独自の文字か何かなんだろうけど……理由はわからないけど、こちらの世界の文字も読めるようになっているのは、来てすぐわかった事。
それで、フィリーナが刻んだ文字も読めているのかもしれないけど……この事は、いずれユノとかに聞けばどういう事か教えてくれるかな?
ともあれ、女性冒険者さん達と同じように他の人達が読めなくても、カイツさんがいて読んでくれれば問題はなさそうだ。
「それじゃ、頼むよリーバー」
「できればカイツを探してね」
「ガァゥ」
俺達に頷いて、改めてリーバーが羽ばたき、少しの助走で空へと飛んで行った。
それを見送り、女性冒険者さん達の方に振り向く。
「……本当に、ワイバーンを使っているわね」
「魔物すら使役する。リク様の威光は留まるところを知らないわね……」
「まぁ、センテでも見ていたのだけれど」
なんて、三人で顔を寄せ合って話している女性冒険者さん達。
威光なんてないから、とりあえずとどまらせて欲しい。
「えーっと、それで……」
「は、はいっ!」
ポリポリと、こめかみ辺りを指先でかきながら声をかけると、ビクッと体を震わせて再び直立不動になる女性冒険者さん達。
別に畏まる必要も、緊張する必要もないんだけど……。
これが本当に、取り入ってハーレムだとか言っていた人達なんだろうか? と思わなくもないけど、実際に本人……というか俺を前にすると勝手が違うのかもしれない。
あの時言っていたのは、ほとんど冗談だったって事も考えられるかな――。
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