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行方不明の冒険者さん達を発見
しおりを挟む「けど今の状況、行方不明の冒険者さんって考えると、そこにいる可能性が高いかな」
「だと思うわ」
ゴブリンはともかく、煙が上がっているという事はそこに人がいるわけで。
森の中にいる人は行方不明の冒険者さんしかいないはずなら、そこに行けばいるという事でもある。
ヘルサル防衛戦の時、周囲のゴブリンは根こそぎゴブリンキングが集めたらようで、この森にもゴブリンはいないし、それじゃないはずだからね。
元々は、この森にも少数ながらゴブリンはいたとか。
ヘルサル南や、今は農園になっている西側にあった森には、結構いたみたいだけど。
それはともかくだ。
「よし、リーバー。あっちに見える煙に向かって飛んでくれ。できれば、少し低めで」
「ガァゥ!」
リーバーにお願いして、煙が上がっている場所へ向かう。
そこに行方不明の冒険者さんがいると信じて……。
「……あそこって」
煙が立ち上っている場所に近づくにつれ、その場所の事がはっきり見えてくる。
……とはいっても、フィリーナの使った明りの魔法は強めだから、ずっと続かないらしく消えているし、太陽が沈んで顔を見せた月明かりに照らされてぼんやりとだけどね。
「リクは知っているの? なんだか、あそこだけ木々がぽっかりと……というよりごっそりかしら? 亡くなっているように見えるわ」
フィリーナが不思議そうに俺へと問いかけるけど……あの場所は、俺が大量のラミアウネと戦った場所だ。
剣魔空斬を使い始めて調子に乗っていた事もあるけど、止めはリーバーの魔法からの粉塵爆発だね。
まぁ、大体の木々は俺が斬り倒していたんだけど。
というか、空から見るとあんな感じなんだなぁと空から見て改めて思う。
……二、三軒の家が建ちそうなくらい広い。
「ま、まぁね。知っているというか、俺がやったんだけど」
「はぁ……」
いや、俺がやったとわかった瞬間溜め息って酷くない!? 大体はこれまでやって来た事が原因だから、仕方ないか。
奇襲をかけてきたラミアウネが原因……というのは言い訳か、丁寧に戦えばあそこまでやらなくても倒せただろうし。
エルフのフィリーナにとっては、あんなに広く森を切り開かれているのを見ると、思う所があるのかもしれないけどね。
……レムレースと戦って、荒野になった部分を見たらもっと驚くかもしれない、こちらは昨日のうちに話して伝えてはいるけど。
なんて考えつつ、フィリーナにラミアウネと戦った時の状況を話しながら、視界の隅にほんの少し見える凍った大地との境目辺りの荒野は、スルーしておいた。
俺が前にいるから、フィリーナは見えていないようだし、今はそちらを気にしなくてもいいだろうからね。
「うん、やっぱり人みたいだ。探している冒険者さんかはわからないけど、多分間違いないんじゃないかな?」
煙の立ち上る場所……俺が切り開いてしまった場所の上空で見下ろすと、開けた場所の真ん中あたりで焚き火を囲む数人の人が見えた。
焚き火があるから、空から見ても少し明るくてよく見えるのはありがたい。
おそらく、というか間違いなく探している女性冒険者さん達だろう。
「他の冒険者は全員、街に戻ったから今森にいるという事はそうなんでしょうね」
「だろうね。リーバー、あそこの火が付いている所に降りてくれるかな?」
「ガァゥ」
フィリーナに頷き、リーバーに頼んでゆっくりと広場へと降りてもらう。
段々と、焚き火を囲んでいる人達の姿がはっきり見えてきて、それが女性だとわかった。
向こうもこちらに気付いたようで、全員が顔を上げてこちらを見ている……けど、なんだか数が足りないような?
「探しているのは、五人だよね?」
「そうね。でも、あそこには三人しかいないわ」
フィリーナにも確認したけど、焚き火を囲んでいるのは三人の女性。
それぞれ、森で発見した時やモニカさん、それに冒険者ギルドの男性職員さんの話通り、剣を腰に下げるなり、横に置いている。
長短や数は様々だけど……行方不明の冒険者パーティ「華麗なる一輪の花」で間違いない、はず。
だけど、本来は五人のはずなのに三人しかいないのは……。
「だよね……どうしたんだろう? まぁ、降りて聞いてみればいいか……おーい!」
ともあれ、三人でも発見したんだから合流して詳しい話を聞けばいいだろう。
そう思ってリーバーから身を乗り出して、地上にいる人達に手を振りながら声をかける。
暗い中、空から降りてきたリーバーを見て怖がられちゃいけないから、安心してもらうためだ。
そのおかげもあって、三人全員が剣に手をかけて見上げていた警戒を解いてくれたようだ……降りていきなり、リーバーが斬りかかられたりしなくて良かった。
そうして、リーバーが地上に降り立ち、その背中から俺とフィリーナが降りる。
「リ、リク様……リク様がご降臨なされた!」
「暗闇を斬り裂いて、空からリク様が……」
「ワイバーンを駆るリク様、格好いいです」
「いや、ちょっと大袈裟です。別に暗闇は斬り裂いていませんし、ゆっくり降りて来ただけですから」
地面に降りた俺に対し、さっきまで焚き火を囲んでいた女性三人はすぐさま立ち上がり、俺達の方へと駆け寄る。
口々に何やら大袈裟な事を言っているようだけど、そんなに格好いいもんじゃないと思う。
まぁ、森に残されて不安だったのが、空から助けが来たと思ったらこうなったりするのかもしれないけど。
というか、なんだか直立不動になっているんだけどどうしてだろう? 森で見かけた時は結構緩い空気で話していたのに……。
「えーっと、『華麗なる一輪の花』パーティですよね? 森から戻っていないようだったので、探しに来ました」
「は、はい! リク様にパーティ名を覚えて下さるとは、なんたる光栄……望外の喜びです!」
「冒険者を、冒険者を続けていて、良かったです……!」
「あまり芽の出ない活動ばかりでも、地道に続けていましたが、今やっと報われました!」
パーティ名に関しては、覚えていたというより探すためだし、そもそもさっき男性職員さんから聞かなければ知らなかったんだけど、これは言わない方がいいかもしれない。
……森で話をしていたのを聞いた時には、もっと緩く色々と狙っているような事を言っていたのに、何故か大袈裟な事を言う三人。
これはもしかするとあれかな? 俺がモニカさんに目隠しされていた時に聞いた、俺を怒らせたら云々かんぬんってやつを考えての事かもしれない。
少々の事で起こるつもりは一切ないんだけど……。
あと、三人のうち一人が芽の出ない活動でも地道にって言っているけど、そういう冒険者さんって結構大事だと思う。
確か、捜索の出発する前に男性職員さんから五人はCランクだと聞いたっけ。
Cランクなら冒険者として一人前だし、地道にでもちゃんと活動しているなら冒険者ギルドや街にとっては重宝されているんじゃないだろうか。
だからこそ、男性職員さんも含めて森から戻ってこない事を心配されて、こうして俺が捜索に来る流れができたのかもしれない。
Cランクでも素行が悪い冒険者とかだと、またあいつかみたいな空気で、ほとんど心配されずに放っておかれた可能性もあるわけだからね――。
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