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再度町へ繰り出す
しおりを挟む「あまり遅くならないようにですけど、少しだけお付き合いします」
「さすがリク君、話がわかるわぁ!」
俺の返答にパッと顔を明るくしたアメリさん。
爆発騒ぎの前は、毎日のように外へ出て散歩していたみたいだし、最近はずっと引きこもっていて鬱憤というかストレスが溜まっていたんだろうね。
ハーロルトさんもいないし、ここは俺が相手をさせてもらおうかな。
まぁ、実際アメリさん的にはハーロルトさんと一緒の方がいいんだろうけども。
「えーっと、カーリンちゃんやアマリーラさん達も一緒にどう?」
「もちろん、私はリク様と共にあらねばならないので同行させてもらうつもりだ」
「私もアマリーラさんと同じくですぅ。王都は、あまり来る機会がなかったので、もう少し町並みを見てみたいですしねぇ」
「うーん……新しい調理道具のめどが立ったからと、先程ララさんと話したせいでしょうか、少しでも早く料理がしたいので……私は……」
「それじゃあ、私とリク君、アマリーラさんとリネルトさんの四人ね」
「まずは、一旦王城までカーリンさんを送って、それからちょっとだけですけど城下町を見え回りましょうか」
というわけで、もうしばらく外にいる事が決まり、早く料理がしたくなってしまったカーリンさんを王城に送り届けた後は、再び城下町に繰り出す事が決まった。
「ありがとうございます、リク様。新しい調理道具、大事に使わせていただきます!」
「まだできてはいないですけど……美味しい料理を期待しています」
「はい! 今から王城の料理人の技術を盗んで、負けないくらい美味しい物をリク様達に食べてもらえるようにいたします!」
王城の入り口、正確にはお城を取り囲む堀の橋の前までカーリンさんを送り届ける。
張り切って駆けて行くカーリンさんの背中に、美味しい料理の期待が膨らむばかりだ。
ちなみに周辺には結構な人が集まっているけど、兵士さん達が大勢出て来ていて整理、対応しているみたいだ。
爆発騒ぎがあった影響か、俺達のように顔パスの人を除けば基本的に厳しく審査され、ほとんどの人が門前払いになっているようだ。
まぁ元々、王城自体は入れる人は限られているようではあるけどね。
あと簡易的ながら中央冒険者の機能が王城の敷地内に移されているため、一定ランク以上の冒険者の人は仮設の冒険者ギルドまでという条件付きで、入場を許可されている。
入城ではなく入場で、あくまでもお城の中には入れず冒険者ギルドまでって事みたいだ。
爆発する人間が入り込まないように、警戒しているからだろう。
中央冒険者ギルドの破壊された建物……あれと同じ爆発が王城で起こったら、混乱どころか大きな被害を被ってしまいかねないから、当然の措置ともいえるかもしれない。
ともあれ、このままここにいると他の人達から注目を浴びてしまうので、アメリさん達と一緒にその場を離れた――。
――ブラブラと、アメリさんやアマリーラさん、リネルトさんと話しながら人の少ない王都の城下町を歩く。
人が少ないとはいっても、開いているお店もあるし行き交う人が全くいないわけではなく、俺と目が合ったら挨拶をしたりと歓迎される事もあった。
以前のように多くの人が集まってしまい、移動ができなくなる程ではないから、ちょうどいいと言えば長といいかもしれないけど……ちょっと寂しくも感じる。
「もっちゃもっちゃ……美味しいのだわ~」
俺の頭にくっついているエルサは、食べ物を売っている商店の店主さんからお菓子をもらって、ご満悦の様子で食べている。
時折、頭の上から何かが降って来ているので、頭を振って払うけどエルサはお菓子に夢中で特に気にしていないようだ。
食べにくいとかそういう事はあまり感じないくらい、しっかりくっ付いているからなぁ。
ちなみに、そのエルサにお菓子を食べさせているのはアメリさんで、食べるエルサを眺めて楽しんでいる……餌付けかな?
「食べるのはいいけど、ちゃんと王城に戻ってからの夕食も食べられる程度にするんだぞー?」
「当然なのだわ。別腹を用意しておくのだわ」
「それは、甘い物に対してなのでは……まぁいいか」
せっかく王城の料理人さん達が頑張って作ってくれるんだから、間食したせいで残すのは申し訳ないからな。
甘い物は別腹とは言うし、エルサならキューに対しては特に別腹がありそうではあるけど。
というかエルサの場合は、ドラゴン的というか魔法的というか、本当に別腹のような物を作ったり用意しそうで怖い……。
「む……すんすん……」
「アマリーラさん?」
「いえ、すみませんリク様。――リネルト、どうだ?」
「ん~……すんすん。何か変な感じですねぇ」
急にアマリーラさんが足を止め、鼻を鳴らす。
どうしたのかと聞いてみるけど、首を振って謝ったアマリーラさんがすぐにリネルトさんに確認。
アイコンタクトというか、どうだの一言で察したリネルトさんも鼻を鳴らし、首を傾げた。
「二人共、どうしたのかしら?」
「鼻を動かしているので、何か気になる匂いがあったのかもしれませんけど……」
エルサにお菓子を与える手を止め、俺と顔を見合わせるアメリさん。
前足を動かし、さらにお菓子を求めるエルサはともかくとして、雰囲気的に美味しい匂いに釣られたとかではなさそうだ。
「よろしいでしょうか、リク様?」
「あ、はい。どうしたんですか?」
何度か鼻を動かし、リネルトさんと頷き合ったアマリーラさん。
「向こうの方から妙な臭いを感知しました」
「それはえーっと、多分違うと思いますけど美味しそうな何かの匂い、とかではないんですよね?」
「はい。何やら妙な……人間の匂いや時折我々のような獣人の仲間の匂いが充満している場所で、そのどれ元は違う臭いです」
「美味しい物だったら、もっといい匂いなんですけど……臭いんですよねぇ」
「臭い……俺にはよくわかりませんけど……」
「おそらく、人間には感知できない臭いなのかと。我々も、他の匂いに混じって微かに感じる程度ですから」
アマリーラさんの言葉に同意するように頷くリネルトさん。
獣人くらいしか嗅ぐことができないくらい、微かな匂い……いや臭さか。
町の中で、人が少ないとはいえいないわけじゃないし、お店もそれなりに営業中。
色んな匂いが混じっているのは当然だし、アマリーラさん達が臭いと思うようなのも中にはあってもおかしくない。
「そうだ。エルサはどうだ? 獣人とどっちが鋭いかわからないけど、少なくとも俺やアメリさんよりは、鼻が利くだろう?」
「もっちゃもっちゃ……お菓子の美味しい匂いしかしないのだわ」
「……駄目だ。うーん……アマリーラさん達が気になる臭いかぁ。どんな臭いですか?」
エルサが求めるようにしていたからか、再び餌付けを始めたアメリさん。
そのお菓子の匂いのせいかエルサには嗅ぎ取れないないようだ……まぁ、エルサの嗅覚より獣人の嗅覚の方が鋭い可能性もあるけど。
どちらがというのはいずれ確認するとして、お菓子に夢中で頼りにならない相棒はそのまま楽しんでもらって、アマリーラさん達が感じた臭いについて聞いた――。
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