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嵐の頃 …11
しおりを挟むきゆと流人は一度病院へ行ったが、その後、人里離れた流人の家へ向かった。
それは夏祭り会場に近い病院から少しでも離れたいという、流人のよこしまな気持ちがそうさせた。
この小さな島は、確かに何もかもが筒抜けだ。
田中医院に急に東京から美人になったきゆが帰ってきたというだけでも大きなニュースなのに、偶然にも同じ東京から若くてイケメン医師がどういうことかこの小さな島に赴任してきたなんて、憶測と妄想で島の人達はドキドキして注目している。
流人にしてみれば別に大した問題ではなかったが、地元のきゆの事を考えるとできるだけ騒動にならないように配慮してあげたかった。
イチャイチャしたいのなら、俺の家は最適だ。
今日は何があってもイチャイチャする…
ご褒美をもらえるという大きな盾を武器に、流人はきゆに甘えて久しぶりに楽しみたいと思っていた。
「流ちゃんの家は、本当にいつ来ても綺麗…」
「だって、全く住んでないからそりゃ綺麗だよ」
流人はそう言いながら、部屋の窓を全開にする。
島の夏の夜は、クーラーがいらないくらい涼しい海風が入ってくる。
暗闇の中、木々の揺れる音がかすかに聞こえるだだっ広いベランダに、流人は大きなソファを引きずり出した。
流人はきゆをそのソファに座らせる。
そして、冷蔵庫からペットボトルに入った烏龍茶を持ってきて細長いグラスに注いだ。
「本当はお酒を飲みたいところだけど、後できゆを家まで送って行かなきゃならないから、これで我慢しよう」
奥行きの広いソファにちょこんと腰かけたきゆの後ろに、流人はきゆを後ろから抱きかかえるように座った。
「きゆ…
今日の俺どうだった?…」
流人はきゆの首筋に顔をうずめそう聞いた。
「最高にカッコよくて、涙がでてきた…」
きゆは鎖骨を触っている流人の手を自分の手で包み込む。
「なんで、涙がでてきたの?…
きっと、私、流ちゃんが大好きって思ったんだろ?」
きゆは何も言わずに流人の手をさすったままだ。
「流ちゃんと離れたくない…
愛してるって…」
きゆは後ろからそうささやく流人の温もりに身をゆだねる。
「きゆ…
久しぶりにきゆと結ばれたい…
一つになりたい…
きゆからのご褒美はそれがいい」
きゆは振り返って流人を見た。
切なそうな苦しそうな、でも凛とした顔できゆを見ている。
「流ちゃん……
きっと、私も、流ちゃんに抱かれたい……
でも、そういう単純な感情にまかせて、自分自身を見失いたくないの…
自分の勝手な衝動で流ちゃんの未来を壊したくない…」
流人は大きくため息をついてきゆを力強く抱きしめた。
「きゆ…
単純ってそんなにダメなことなのか?
俺はきゆが好きで、きゆは俺が好き。
俺はきゆを抱きたくて、きゆは俺に抱かれたい。
それが二人の本能で最高の答えだと思うんだけど…」
きゆはそう言う流人の口をキスでふさいだ。
「一つになる方法は他にもたくさんあるよ…」
きゆはそう言いながら、流人に柔らかで滑らかなキスをした。
流人の心の叫びが治まるように、丁寧に愛情深くキスを重ねる。
流人はきゆを正面にして自分の膝の上に乗せた。
「こんなんじゃ、ご褒美にならないからな…
じゃ、百回俺にキスをしてよ、そしたら許してやる…」
きゆはすねた顔でそう言う流人の鼻の頭に軽くキスをした。
「今のはカウントなし」
流人はきゆを更に抱き寄せキスがしやすい体勢を作ってあげた。
きゆは男の体の仕組みを看護師のくせに全然分かっていない…
キスだけで一晩過ごせだなんて、俺にとっては修行を超えたただの拷問だ…
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