転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
1,032 / 1,191
第三十三章 二年生

千二百二十八話 感涙が止まらない人

しおりを挟む
 体育館前に移動すると、受付ではドラちゃんとリボンちゃんがエレノアたちと並んで新入生の受付をしていました。
 レシステンシアさんなどの他の生徒会役員もドラちゃんを全く気にしていないし、もはやドラちゃんとリボンちゃんは新たな生徒会役員みたいな立場ですね。
 そんな飛竜のドラちゃんとリボンちゃんの存在が霞むくらいの光景が、受付前で繰り広げられていました。

「おーいおいおい、おーいおいおい。い、イヨが、イヨが学園生に……」
「ちょっと、ウザい」

 ばっちしメイクを決めて品のあるドレスを着ているオカマさんが、号泣しながらイヨの事を抱きしめていた。
 どうやらずっと続いているらしく、オカマさんにきつく抱きしめられているイヨは死んだ魚のような反応をみせていた。
 物凄く目立つのだけど、流石にこの場にいる人でオカマさんを止められる人はいなかった。
 ティナおばあさまでさえ、苦笑しながらも二人から少し距離を取っていたほどだった。

「お兄ちゃん、オカマさんはもう十分はイヨちゃんのことを抱きしめて泣いているんだよ。流石に迷惑かも……」

 リズが僕の事を呼んだのもよく分かるが、リズもスラちゃんもオカマさんを止めることはできないらしい。
 僕は、思わず溜息をついてオカマさんに近づいた。

「あの、そろそろその辺にしないと他の人が受付ができませんよ」
「おーいおいおい」

 駄目だこりゃ。
 僕が声をかけても、オカマさんは相変わらずイヨを抱きしめたまま号泣していた。
 もしかして、泣きすぎて興奮しちゃっているのかもしれない。
 試しに、ある魔法を使ってみよう。

 シュイン、ぴかー。

「おーいおいおい……うん?」

 オカマさんは、我に返ったかのようにキョロキョロと周囲を見回していました。
 僕がオカマさんに放ったのは、ごく普通の状態異常回復魔法です。
 やっぱり、感激のあまり興奮しちゃったみたいですね。

「オカマさん、ちょっと感激しすぎちゃったみたいです。あと、メイクも落ちちゃっていますよ」
「いやだわ、イヨの制服姿を見たら感涙が止まらなかったのよ。ササッと、メイクも直さないといけないわね」
「ほっ……」

 オカマさんから抜け出したイヨは、心底ホッとした表情をしていた。
 オカマさんが感激していたのも分かっていたけど、流石に限界にきていたみたいです。
 というか、オカマさんは物凄い速さで化粧直しをしているよ。
 あまりの早業に、周りの人も思わずポカーンとしちゃっていました。

「ふう、これでよしっと。そうそうティナ様、この間とても良い化粧品を見つけたのよ。後でご紹介しますわね」
「あら、それは良いわね。入園式が終わったら、話をしましょう」

 オカマさんとティナ様がにこやかに談笑しているけど、女性ってお化粧品の話が好きだよね。
 そしてイヨはというと、リズに回復魔法をかけてもらっていた。

「イヨちゃん、これで大丈夫だよ!」
「リズ、ありがとう。ちょっと疲れた……」
「そうだよね、流石に疲れちゃうよね」

 疲労困憊のイヨだったが、何とか回復したみたいだ。
 そして、イヨには新入生代表挨拶という大きなお役目も待っている。
 因みに、イヨの従魔のミケちゃんはティナおばあさまが抱っこしていて、上手い具合にオカマさんの抱擁から逃れたみたいだ。

「じゃあ、僕は体育館の中に入ります。順に席に座って下さいね」
「ええ、分かったわ」

 僕がみんなに声を掛けると、ティナおばあさまが代表して返事をしてくれた。
 受付前の騒ぎはもう大丈夫ですね。

「リズもそろそろ体育館の中に入らないと。リハーサルが始まるよ」
「じゃあ、お兄ちゃんと一緒に行くよ!」

 リズは、足も軽やかに僕の隣に並んできました。
 さてさて、いよいよ入園式が始まりますね。
しおりを挟む
感想 287

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??

シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。 何とかお姉様を救わなくては! 日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする! 小説家になろうで日間総合1位を取れました~ 転載防止のためにこちらでも投稿します。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。