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17、おねだり*
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顔を見てお願いするのは少し恥ずかしかったので耳元でそう言えば、兄はびくりと身体を震わせた。
「だが……」
「魂を安定させるためには、一回では足りないと思うの。……わたし、違う自分になりたくない。ずっと、お兄様を好きなわたしでいたいの」
そこまで言えば、兄も拒めないように見えて、イザベルの唇を噛みつくように塞いできた。彼女は夢中で兄の舌と自分の舌を絡ませて、吸い返した。荒い息遣いと微かな水音が部屋に響き、頭がぼんやりとしてくる。
「これじゃ、できないだろう」
兄が譫言のようにそう呟くと、行儀よく座っていたイザベルの脚を開かせて跨る格好にさせた。夜着の裾を捲られて太股や尻をいやらしく撫で回されると、イザベルはそれだけで蜜を零し始めた。
「ぁ、んっ……」
ごりっと兄の屹立が腹に当たり、媚びたような声が漏れる。兄を見れば、自分と同じように熱に浮かされた表情で、獲物を狙う捕食者のような目をしていた。
「兄さま、挿れていい?」
兄は口では答えなかったけれど、イザベルの尻を支えて持ち上げたので、彼女は微笑んで兄の前を寛げさせて先端を蜜口と触れ合わせた。
よく考えてみればまだ二回目の交接である。痛いだろう。……だが、この痛みもすべて享受したかった。
「イザベル。貫いてくれ」
「うん……ふ、ぁ……ぁ、あぁ……」
大きくて太い幹がゆっくりと自分の中に入ってくる。
「や、お兄、さま、大きい……」
「ゆっくり、挿れるんだ」
イザベルがいきなり全部咥えないようにフェリクスが支えてくれる。
「イザベル、もう少し腰を下ろせるか?」
「ぅ、ん……はぁ、はぁ……こう?」
「ああ、上手いぞ」
こんな時でも褒めるのは冷静になれば何だか滑稽であるが、快楽に浮かされたイザベルは素直に嬉しく思った。
あどけなく微笑んで、もっと兄に褒めてもらいたいと、慎重に腰を落としていく。
「兄さま、ぜんぶ、入った……」
「ああ、よくやった」
「すごく熱い、わ。それに大きくて、硬い……んっ」
なぜかフェリクスの分身がさらに硬く膨らんだ気がして、圧迫感が増す。
「そんなに大きく、ならないで」
「お前が、そんなこと言うからだ」
「わたしが、悪いの? ごめんなさい」
「いや……やはり、私が堪え性がないからだろう……お前の中があまりに心地よくて、我慢できない」
兄の言葉に今度はイザベルが気持ちを乱されて、彼を苦しめる羽目になった。
「はぁ……イザベル。少し、動けるか?」
「うん。やって、みる」
しかし座った状態で腰を持ち上げるのは意外と大変なものだ。兄のは大きいので、抜いて奥へ招き入れる度にふぅふぅ息が上がる。
「前後に、揺らしたらどうだ」
見かねたフェリクスにそうアドバイスされて、イザベルは兄の肩に手を置いて言う通りにしてみた。
「ぁ……これ、いい……気持ち、いい……っ」
花芽が擦れて、快感から蜜を溢れさせて、咥えているフェリクスの雄芯を味わうように食むのだ。
蕩けそうな気持ちで前後に腰を動かすイザベルに、兄も感じ入った声を上げて、イザベルを抱き寄せる。
夜着を肌蹴させて、露わになった胸に頬ずりして、柔らかな蕾を舌先で硬くすると、赤ん坊のように舐めしゃぶってイザベルをさらに悶えさせた。
「あぁ……兄さま、いきそう……もう、いく……っ」
イザベルの懇願にも似た声でフェリクスは彼女の丸い尻をぐいと前へ押しやり、さらに腰を突き上げた。初めて兄に動いてもらえた刺激は、ずっと欲しかったものをようやく与えられた感じに等しく、飢えを満たしてこの上なく気持ちよかった。
「んっ――……」
引き攣った声を上げて、イザベルは背中を反らした。あまりに強い愉悦に自分で身体を制御できず、椅子から落ちるかと思われたが、震えるイザベルをフェリクスが強く抱きしめてくれた。
「イザベル……っ」
彼の力はどこにも逃さないと言うように強かった。
イザベルはうっとりとして兄の拘束に身を委ねる。やがて、絶頂の余韻も静まると、自分の中にいる兄の分身がまた硬くどくどくとその存在を主張していることに気づく。
「ごめんなさい、お兄様、わたしばかり……」
けだるげな雰囲気を纏いながらイザベルがそう謝ると、兄は色気のある顔で微笑んだ。
「いい。私がただ、もっと長くお前の中にいたいと耐えたんだ」
「……今度は、お兄様の好きなように動いて」
自分だけでなく兄にも気持ちよくなってほしい。
イザベルが啄むような口づけをしながら言うと、フェリクスはイザベルを抱えたまま椅子から立ち上がった。
「ぁ、んっ……ふ、お兄様?」
「抱くなら、きちんと寝台の上で抱かないとな」
「あっ、あっ、なら、一度繋がりを解いた方が、あぁ……っ」
繋がったまま歩くので、イザベルは中を締めつけ、愛液を溢れさせてしまう。兄もわざと支える掌を離したかと思うと、臀部を押してくるので、抽挿と同じ行為で蜜壁を擦られる。
「ふぅ、ん……んっ」
「はぁ……イザベル。そんな締めつけたら、出てしまう」
「あっ、だって、兄さまが、あんっ」
気づけばイザベルも落ちないように兄の腰に脚を絡ませてまるで貪るように腰を動かしていた。ゆったりとした足取りでようやく寝台にたどり着くと、兄に押し倒される。その際抜けそうになって、「あ……」と声を上げて兄の方を見た。彼もまたイザベルを見ていた。
「イザベル」
(ずるい)
そんな顔をされれば、拒むこともできない。……いや、別に拒む必要もないのだが、表情と名前を呼ぶだけで容易くイザベルを翻弄する兄の手管に何だか腹が立ってしまうのだ。
「お兄様、意地悪しないで」
ぱっくりと開いた花びらに肉棒を挟んで滑らせるだけで、中へ突き入れてくれない兄にイザベルは腰をくねらせながら甘い吐息を漏らした。
「イザベル。私のことが、好きか?」
何を今さら、と思うが兄の顔はどこまでも真剣で、嫉妬が見えた。
「好きよ、大好き……んっ」
ずぶりと剛直が押し込まれる。でもまだ先端だけで、奥まできてくれない。
イザベルはもっと、と兄の首に腕を回し、自分の方へ引き寄せた。彼は逆らわず、イザベルに体重をかけて首筋や耳を甘噛みする。
「あの男たちよりもか」
「んっ……兄さまの方が、好き……あんな人たち、何とも思っていない……」
姿なんて本当は見たくなかった。
「お兄様……フェリクス、お願い、きて」
イザベルが涙声で頼むと、彼はようやく安堵できたのか、肉棒を深く中へ突き入れてきた。
「ん、ぁ……はぁ、あ、いい……あっ、あぁっ」
「イザベル……イザベル……っ」
兄がガツガツと腰を振りながら自分の名前を呼ぶので、イザベルも快楽に呑まれて、何も考えられず、ただ兄の腰に脚を絡ませて、彼の揺さぶりに合わせるように身体をぶつけた。
――翌朝。イザベルは隣に兄がいて、しかもまだ目を覚ましていなかったので、とても驚いた。せっかくだからと観察していたのだが、すぐに目を開けてしまったようにがっかりする。
「おはよう、お兄様」
「ああ……すまない、寝過ごした」
「いえ、恐らくまだ朝早い時刻よ」
使用人たちがようやく起き始めた時間ではないだろうか。自分たちはまだ寝ていてもおかしくない。
「お兄様、このところずっと眠れていなかったのではなくて? もう少し休んでいたら?」
妹である自分のことでずいぶんと悩ませてしまった自覚もある。
「別に、疲れてはいない。……お前こそ、こんなに早く起きては後が辛いだろう。もう少し寝ていなさい」
確かにそれは言える。あまりにも濃密な夜を過ごしてしまって、まだ身体の熱が冷めていないのかもしれない。疲れすぎていると、時々数時間で目が覚めてしまうことがあるのと似ている。
(もしかして、お兄様も毎日そんな感じなのかしら)
「わかった。眠るわ。でも、お兄様も一緒に寝て?」
一人じゃ寂しい。起きた時にも隣にいてほしいと零せば、兄は困った顔をした。
「まだ、正式に籍を入れるまでは我慢していたんだ。使用人たちにも、示しがつかないからな」
「もう今さらじゃない」
自分の部屋に帰って寝直すなんて嫌だ。兄が離れてしまうのも嫌だった。
だからその前に早く、と起きようとしていた彼の身体を寝床に引っ張り戻す。
「ふふ。昨日のお兄様、獣みたいだったわ」
「……すまない。怖かっただろう」
「ううん……ドキドキしちゃった」
兄の台詞は紛れもなく嫉妬にまみれたものだった。
イザベルを誰にも渡したくないと本能をむき出しに抱く様は、イザベルの心をひどくときめかせた。
イザベルの態度に兄は驚き、少し呆れたようだ。
「お前は本当に肝が据わっているな。……いや、この場合は救われたと思うべきなんだろうが」
「わたしがお兄様を大好きだって証でしょう。改めて伝えておくけれど、心配しなくても、わたしはお兄様一筋よ。他の殿方に心惹かれたりしない。もしそうなったのなら、それはわたしの意思じゃない。目に見えない何かの強制力が働いたってことよ」
覚えていて、とイザベルは言い含めるようにフェリクスに伝えた。彼はイザベルの顔をじっと見つめていたが、やがて額に口づけしてわかったと小さな声で言った。
「ではもしそうなったら、私はお前をどんな手段を使っても己の元に引き留める。それでいいな?」
「ええ。そうして。……お兄様は、詳しいことをわたしに訊かないのね」
シャルルがした説明ですべて納得したと思えない。もっとイザベルに詳細を尋ねると思っていた。
「何だ。話してくれるのか?」
「えっと……」
イザベルが思わず口ごもると、ふっと兄は目元を緩ませて頭を撫でた。
「無理に話さなくてもいい。……正直、お前から話を聞くのを怖い気持ちもある」
「怖い?」
「ああ。私以外の男とお前が結ばれているのを聞くと……たとえ仮定の話だとしても、自分がどうなるかわからない」
「……ねぇ、お兄様。お兄様は、もしわたしが悪いことをしたら……周りの人を傷つけて、ひどいことをしたら、どうする?」
フェリクスは考えるように少し黙ったのち、逆に尋ねた。
「お前だったらどうする。私が人の目も気にせず悪行の限りを尽くし、目的のためならば嫌がる相手の意思さえ無視して、自分の欲のみを満たそうとしたら……」
「お兄様は、そんなひどいことしないわ」
どんな局面に立たされても理性をフル稼働させて、万が一道を踏み外しそうになっても絶対に直前になると理性を取り戻す。そんな人だとイザベルは疑うことなく信じている。
だがイザベルの否定の言葉にも、フェリクスは仄暗い笑みを浮かべた。
「それはお前が私を兄として慕ってくれているからだ。お前が……まだ誰の者でもない、私だけの妹でいるから、私はお前に尊敬されるような兄でならねばならないと理性が働くんだ。……そうでなければ、とっくに壊れている」
「お兄様……」
ひょっとすると、ゲームに出てきた兄も、イザベルのことを好きでいてくれたのだろうか。
ヒロインではなく悪役令嬢であるイザベルのことを密かに想っていたから……だから、イザベルが王太子に心奪われて狂っていく姿に耐えられず、自分の手で……。
すべてイザベルの想像でしかない。本当はイザベルのことは妹としてしか見ておらず、マリオンを愛していたのかもしれない。
(それでも……)
「わたしも、きっとお兄様と同じことをするわ。お兄様が他の女性を想って狂っていく姿なんて、見たくないもの……」
イザベルの答えにフェリクスはどこか満足したように目を細め、額をそっと突き合わせた。
「ああ、私も同じだ。誰よりも怒りを抱いて、他の人間の手に任せればもっとお前が苦しむことになるだろうなどと表向きは思いながら……これ以上、私以外をその目に映して、その男の名前を呼ばないよう、私自身の手で終わらせる」
改めて言葉にされると、背筋に冷たいものが走る。
兄はなんて怖い人なのだろう。
そしてそれならば仕方がないと受け入れている自分もおかしかった。
「ふふ……わたしとお兄様って、似ているのね」
「兄妹だからな」
血は繋がっていない。でも似ていることに、イザベルは運命を感じた。
「お兄様、大好きよ……」
胸のつかえがとれたことと、話しているうちにいつの間にか眠気に襲われて、お休みなさいと告げる代わりにイザベルはそう伝えた。
「……私も、愛している」
イザベルはその答えに微笑み、ゆっくりと夢の世界に落ちていった。
「だが……」
「魂を安定させるためには、一回では足りないと思うの。……わたし、違う自分になりたくない。ずっと、お兄様を好きなわたしでいたいの」
そこまで言えば、兄も拒めないように見えて、イザベルの唇を噛みつくように塞いできた。彼女は夢中で兄の舌と自分の舌を絡ませて、吸い返した。荒い息遣いと微かな水音が部屋に響き、頭がぼんやりとしてくる。
「これじゃ、できないだろう」
兄が譫言のようにそう呟くと、行儀よく座っていたイザベルの脚を開かせて跨る格好にさせた。夜着の裾を捲られて太股や尻をいやらしく撫で回されると、イザベルはそれだけで蜜を零し始めた。
「ぁ、んっ……」
ごりっと兄の屹立が腹に当たり、媚びたような声が漏れる。兄を見れば、自分と同じように熱に浮かされた表情で、獲物を狙う捕食者のような目をしていた。
「兄さま、挿れていい?」
兄は口では答えなかったけれど、イザベルの尻を支えて持ち上げたので、彼女は微笑んで兄の前を寛げさせて先端を蜜口と触れ合わせた。
よく考えてみればまだ二回目の交接である。痛いだろう。……だが、この痛みもすべて享受したかった。
「イザベル。貫いてくれ」
「うん……ふ、ぁ……ぁ、あぁ……」
大きくて太い幹がゆっくりと自分の中に入ってくる。
「や、お兄、さま、大きい……」
「ゆっくり、挿れるんだ」
イザベルがいきなり全部咥えないようにフェリクスが支えてくれる。
「イザベル、もう少し腰を下ろせるか?」
「ぅ、ん……はぁ、はぁ……こう?」
「ああ、上手いぞ」
こんな時でも褒めるのは冷静になれば何だか滑稽であるが、快楽に浮かされたイザベルは素直に嬉しく思った。
あどけなく微笑んで、もっと兄に褒めてもらいたいと、慎重に腰を落としていく。
「兄さま、ぜんぶ、入った……」
「ああ、よくやった」
「すごく熱い、わ。それに大きくて、硬い……んっ」
なぜかフェリクスの分身がさらに硬く膨らんだ気がして、圧迫感が増す。
「そんなに大きく、ならないで」
「お前が、そんなこと言うからだ」
「わたしが、悪いの? ごめんなさい」
「いや……やはり、私が堪え性がないからだろう……お前の中があまりに心地よくて、我慢できない」
兄の言葉に今度はイザベルが気持ちを乱されて、彼を苦しめる羽目になった。
「はぁ……イザベル。少し、動けるか?」
「うん。やって、みる」
しかし座った状態で腰を持ち上げるのは意外と大変なものだ。兄のは大きいので、抜いて奥へ招き入れる度にふぅふぅ息が上がる。
「前後に、揺らしたらどうだ」
見かねたフェリクスにそうアドバイスされて、イザベルは兄の肩に手を置いて言う通りにしてみた。
「ぁ……これ、いい……気持ち、いい……っ」
花芽が擦れて、快感から蜜を溢れさせて、咥えているフェリクスの雄芯を味わうように食むのだ。
蕩けそうな気持ちで前後に腰を動かすイザベルに、兄も感じ入った声を上げて、イザベルを抱き寄せる。
夜着を肌蹴させて、露わになった胸に頬ずりして、柔らかな蕾を舌先で硬くすると、赤ん坊のように舐めしゃぶってイザベルをさらに悶えさせた。
「あぁ……兄さま、いきそう……もう、いく……っ」
イザベルの懇願にも似た声でフェリクスは彼女の丸い尻をぐいと前へ押しやり、さらに腰を突き上げた。初めて兄に動いてもらえた刺激は、ずっと欲しかったものをようやく与えられた感じに等しく、飢えを満たしてこの上なく気持ちよかった。
「んっ――……」
引き攣った声を上げて、イザベルは背中を反らした。あまりに強い愉悦に自分で身体を制御できず、椅子から落ちるかと思われたが、震えるイザベルをフェリクスが強く抱きしめてくれた。
「イザベル……っ」
彼の力はどこにも逃さないと言うように強かった。
イザベルはうっとりとして兄の拘束に身を委ねる。やがて、絶頂の余韻も静まると、自分の中にいる兄の分身がまた硬くどくどくとその存在を主張していることに気づく。
「ごめんなさい、お兄様、わたしばかり……」
けだるげな雰囲気を纏いながらイザベルがそう謝ると、兄は色気のある顔で微笑んだ。
「いい。私がただ、もっと長くお前の中にいたいと耐えたんだ」
「……今度は、お兄様の好きなように動いて」
自分だけでなく兄にも気持ちよくなってほしい。
イザベルが啄むような口づけをしながら言うと、フェリクスはイザベルを抱えたまま椅子から立ち上がった。
「ぁ、んっ……ふ、お兄様?」
「抱くなら、きちんと寝台の上で抱かないとな」
「あっ、あっ、なら、一度繋がりを解いた方が、あぁ……っ」
繋がったまま歩くので、イザベルは中を締めつけ、愛液を溢れさせてしまう。兄もわざと支える掌を離したかと思うと、臀部を押してくるので、抽挿と同じ行為で蜜壁を擦られる。
「ふぅ、ん……んっ」
「はぁ……イザベル。そんな締めつけたら、出てしまう」
「あっ、だって、兄さまが、あんっ」
気づけばイザベルも落ちないように兄の腰に脚を絡ませてまるで貪るように腰を動かしていた。ゆったりとした足取りでようやく寝台にたどり着くと、兄に押し倒される。その際抜けそうになって、「あ……」と声を上げて兄の方を見た。彼もまたイザベルを見ていた。
「イザベル」
(ずるい)
そんな顔をされれば、拒むこともできない。……いや、別に拒む必要もないのだが、表情と名前を呼ぶだけで容易くイザベルを翻弄する兄の手管に何だか腹が立ってしまうのだ。
「お兄様、意地悪しないで」
ぱっくりと開いた花びらに肉棒を挟んで滑らせるだけで、中へ突き入れてくれない兄にイザベルは腰をくねらせながら甘い吐息を漏らした。
「イザベル。私のことが、好きか?」
何を今さら、と思うが兄の顔はどこまでも真剣で、嫉妬が見えた。
「好きよ、大好き……んっ」
ずぶりと剛直が押し込まれる。でもまだ先端だけで、奥まできてくれない。
イザベルはもっと、と兄の首に腕を回し、自分の方へ引き寄せた。彼は逆らわず、イザベルに体重をかけて首筋や耳を甘噛みする。
「あの男たちよりもか」
「んっ……兄さまの方が、好き……あんな人たち、何とも思っていない……」
姿なんて本当は見たくなかった。
「お兄様……フェリクス、お願い、きて」
イザベルが涙声で頼むと、彼はようやく安堵できたのか、肉棒を深く中へ突き入れてきた。
「ん、ぁ……はぁ、あ、いい……あっ、あぁっ」
「イザベル……イザベル……っ」
兄がガツガツと腰を振りながら自分の名前を呼ぶので、イザベルも快楽に呑まれて、何も考えられず、ただ兄の腰に脚を絡ませて、彼の揺さぶりに合わせるように身体をぶつけた。
――翌朝。イザベルは隣に兄がいて、しかもまだ目を覚ましていなかったので、とても驚いた。せっかくだからと観察していたのだが、すぐに目を開けてしまったようにがっかりする。
「おはよう、お兄様」
「ああ……すまない、寝過ごした」
「いえ、恐らくまだ朝早い時刻よ」
使用人たちがようやく起き始めた時間ではないだろうか。自分たちはまだ寝ていてもおかしくない。
「お兄様、このところずっと眠れていなかったのではなくて? もう少し休んでいたら?」
妹である自分のことでずいぶんと悩ませてしまった自覚もある。
「別に、疲れてはいない。……お前こそ、こんなに早く起きては後が辛いだろう。もう少し寝ていなさい」
確かにそれは言える。あまりにも濃密な夜を過ごしてしまって、まだ身体の熱が冷めていないのかもしれない。疲れすぎていると、時々数時間で目が覚めてしまうことがあるのと似ている。
(もしかして、お兄様も毎日そんな感じなのかしら)
「わかった。眠るわ。でも、お兄様も一緒に寝て?」
一人じゃ寂しい。起きた時にも隣にいてほしいと零せば、兄は困った顔をした。
「まだ、正式に籍を入れるまでは我慢していたんだ。使用人たちにも、示しがつかないからな」
「もう今さらじゃない」
自分の部屋に帰って寝直すなんて嫌だ。兄が離れてしまうのも嫌だった。
だからその前に早く、と起きようとしていた彼の身体を寝床に引っ張り戻す。
「ふふ。昨日のお兄様、獣みたいだったわ」
「……すまない。怖かっただろう」
「ううん……ドキドキしちゃった」
兄の台詞は紛れもなく嫉妬にまみれたものだった。
イザベルを誰にも渡したくないと本能をむき出しに抱く様は、イザベルの心をひどくときめかせた。
イザベルの態度に兄は驚き、少し呆れたようだ。
「お前は本当に肝が据わっているな。……いや、この場合は救われたと思うべきなんだろうが」
「わたしがお兄様を大好きだって証でしょう。改めて伝えておくけれど、心配しなくても、わたしはお兄様一筋よ。他の殿方に心惹かれたりしない。もしそうなったのなら、それはわたしの意思じゃない。目に見えない何かの強制力が働いたってことよ」
覚えていて、とイザベルは言い含めるようにフェリクスに伝えた。彼はイザベルの顔をじっと見つめていたが、やがて額に口づけしてわかったと小さな声で言った。
「ではもしそうなったら、私はお前をどんな手段を使っても己の元に引き留める。それでいいな?」
「ええ。そうして。……お兄様は、詳しいことをわたしに訊かないのね」
シャルルがした説明ですべて納得したと思えない。もっとイザベルに詳細を尋ねると思っていた。
「何だ。話してくれるのか?」
「えっと……」
イザベルが思わず口ごもると、ふっと兄は目元を緩ませて頭を撫でた。
「無理に話さなくてもいい。……正直、お前から話を聞くのを怖い気持ちもある」
「怖い?」
「ああ。私以外の男とお前が結ばれているのを聞くと……たとえ仮定の話だとしても、自分がどうなるかわからない」
「……ねぇ、お兄様。お兄様は、もしわたしが悪いことをしたら……周りの人を傷つけて、ひどいことをしたら、どうする?」
フェリクスは考えるように少し黙ったのち、逆に尋ねた。
「お前だったらどうする。私が人の目も気にせず悪行の限りを尽くし、目的のためならば嫌がる相手の意思さえ無視して、自分の欲のみを満たそうとしたら……」
「お兄様は、そんなひどいことしないわ」
どんな局面に立たされても理性をフル稼働させて、万が一道を踏み外しそうになっても絶対に直前になると理性を取り戻す。そんな人だとイザベルは疑うことなく信じている。
だがイザベルの否定の言葉にも、フェリクスは仄暗い笑みを浮かべた。
「それはお前が私を兄として慕ってくれているからだ。お前が……まだ誰の者でもない、私だけの妹でいるから、私はお前に尊敬されるような兄でならねばならないと理性が働くんだ。……そうでなければ、とっくに壊れている」
「お兄様……」
ひょっとすると、ゲームに出てきた兄も、イザベルのことを好きでいてくれたのだろうか。
ヒロインではなく悪役令嬢であるイザベルのことを密かに想っていたから……だから、イザベルが王太子に心奪われて狂っていく姿に耐えられず、自分の手で……。
すべてイザベルの想像でしかない。本当はイザベルのことは妹としてしか見ておらず、マリオンを愛していたのかもしれない。
(それでも……)
「わたしも、きっとお兄様と同じことをするわ。お兄様が他の女性を想って狂っていく姿なんて、見たくないもの……」
イザベルの答えにフェリクスはどこか満足したように目を細め、額をそっと突き合わせた。
「ああ、私も同じだ。誰よりも怒りを抱いて、他の人間の手に任せればもっとお前が苦しむことになるだろうなどと表向きは思いながら……これ以上、私以外をその目に映して、その男の名前を呼ばないよう、私自身の手で終わらせる」
改めて言葉にされると、背筋に冷たいものが走る。
兄はなんて怖い人なのだろう。
そしてそれならば仕方がないと受け入れている自分もおかしかった。
「ふふ……わたしとお兄様って、似ているのね」
「兄妹だからな」
血は繋がっていない。でも似ていることに、イザベルは運命を感じた。
「お兄様、大好きよ……」
胸のつかえがとれたことと、話しているうちにいつの間にか眠気に襲われて、お休みなさいと告げる代わりにイザベルはそう伝えた。
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その後、叔母家族のもとでセシリアは暮らしていたが、ある日父の兄だという男性――伯爵が現れる。彼は攫うようにセシリアを王都へ連れて行き、自分の娘の代わりにハーフォード公爵家のクライヴと結婚するよう命じる。
逆らうことができずクライヴと結婚したセシリアだが、貴族であるクライヴは何を考えている全くわからず、徐々に孤独に苛まれていく。
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