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8、身を任せる*
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大きな寝台には真っ白なシーツが敷かれていた。座るのが躊躇われるくらい、皺ひとつない。セシリアはなるべく端に腰を落とし、俯いた。
けれどもすぐにクライヴの手が頬へ添えられ、顔を上げさせられた。彼の手にはもう手袋はない。想像していた通りの綺麗な指先だった。
二人は黙って互いを見つめ合った。
式の再現をするようにクライヴが顔を近づけ、唇を重ねた。誓いの口づけは一度だけであったが、今度はもう二、三度されて、舌先が閉じた唇を割るように舐めてきたので、セシリアは彼の邪魔をしないよう小さく口を開いた。息を止めていたので苦しかったのもある。
「呼吸は鼻でするんだ」
「は、はい、んっ……」
そうは言われるが、こんなにも距離が近いので、何だか恥ずかしくなってしまう。そしてクライヴは予想よりも遠慮なく咥内を貪ってくる。他人に歯列をなぞられるなんて、今までのセシリアの人生において考えられないことだった。
(あ、でも、あの人たちはしたのかな……)
故郷で年頃の男女が人目を忍ぶようにして口づけしていたことを思い出す。田舎なので娯楽が少なく、若者の性への関心は高かった。
セシリアもそういう場面に偶然出くわしたことがある。もっともまだ幼かったこともあり、見てはいけない光景、不潔なものという嫌悪感があったのですぐに立ち去った。そのため具体的にどんなことをするのかは知らなかった。
礼儀作法に関してはこんなことまで知る必要があるのかと詳細を教えられたが、閨事に関しては一切教えられなかった。
『あなたはただクライヴ様に身を任せればいいのです』
(身を任せる……)
は、とセシリアは大きく息を吐いた。執拗に吸われて、唇がジンジンする。頭もどこかぼうっとしている。
ぼんやりとクライヴを見ていると、彼はゆっくりとセシリアを寝台へと押し倒して、ルームシューズを脱がせ、全身を寝台に寝かせた。
彼も同じように脱ぐと、寝台に上がり、セシリアの顔を覗き込んでくる。
今まで口づけの余韻でとろんとしていたのに、彼のどこかひんやりとした視線に、急に我に返った。
狼狽えるセシリアにクライヴはもう一度顔を寄せ口づけする。今度は深く貪らず、唇の端や顎に触れて、首筋に顔を埋めた。
ちくりとした痛みに一瞬噛まれるのではないかと怯えたが、胸へと手が伸びてきてそれどころではなくなった。クライヴの掌がセシリアの乳房に被さり、優しく揉まれていく。
自分以外の――夫となる人の手によって形を変えられていく様を見下ろし、セシリアは次第に妙な気分になって、自然と息が上がっていった。
「はぁ……ん、ぁ……」
首筋に落とされる口づけの微かな痛みが甘美な快感へ変わっていき、他人の意思で自分の身体を好き勝手に弄られる手つきに腰を浮かせ、身を捩る。
クライヴはそんなセシリアの反応で次に移っても大丈夫だと思ったのか、彼女の夜着を脱がせていく。
「あ……」
小さくも大きくもない胸の膨らみ、ほっそりした腰つき、平らなお腹、程よく筋肉のついた健康的な脚を夫となる男性の眼前に晒され、セシリアは羞恥に襲われる。
ぴったりと股を閉じ、胸を手で隠すが、クライヴに難なくどかされ、胸元に顔を寄せられて、先端を舐められた。
びくっと大げさなほど震えたが、クライヴは止めず、さらに舐めていく。最初はぎゅっと目を瞑って行為を見ないようにしていたが、目を閉じていると余計に感じてしまい、またそろそろやめてくれるだろうと思って、うっすらとセシリアは目を開き、下へと視線を向けた。
するとちょうど舐めているクライヴと視線が合い、どきりとする。
「尖ってきた」
胸の先端は丹念に舐められて、濡れて光っていた。そして、蕾のようにぷっくりと勃ち上がっており、なぜかとても卑猥な光景に見えた。
クライヴがそうしたのだと思うと、セシリアは何とも言えない気持ちになった。
「こっちも同じようにしよう」
「まだ、舐めるのですか」
小さな声が弱々しく、嫌がっているように聞こえたからか、ちらりとクライヴが視線をやった。
「では、指でしよう」
そう言って彼は指先で掠めるようにして胸の飾りを触っていく。傷一つない細長い指が自分の乳首を弄っており、セシリアはまた変な気分になって脚をもじもじさせた。
「こちらも尖ってきた」
クライヴの指摘通り、左側と同じように右の乳房の蕾もツンと勃ってくる。不意にきゅっと摘まれ、セシリアは「あっ」と声を上げた。
「すまない。痛かったか?」
「少し……」
クライヴはもう一度謝り、「やはり舐めた方がいい」と唇を寄せてきた。必要ないと思ったが、舐められると甘い痺れに襲われ、声を抑えることの方に意識を持っていかれる。そうしている間にクライヴはもう片方の手ですでに硬く尖った蕾を弄り、徐々に下の方へ下りていく。腰の曲線をなぞり、お腹を撫で、閉じられていた太股の隙間に指をさし込まれたところでセシリアははっとした。
「そ、そこ……」
「濡れているかどうか確かめさせてくれ」
必要なことだと言われて、セシリアは大人しく従う。
彼の指は慎重にあわいをそっと撫で、滑らせるように指の腹で何度か行き来すると、花びらを割って、ほんの少し中へと入ってきた。
中は濡れており違和感はあるものの、痛みはさほど感じない。セシリアは神経をクライヴの動かす指先に注ぎ、変な動きをしないよう下半身に力を入れていた。
胸を愛撫していたクライヴも、そんなセシリアをじっと見つめていたが、彼女は気づかなかった。
「痛いか?」
ふるふると首を横に振ると、指が少し奥へ入ってきて、かき出すような動きをし始めた。
じっと息を潜めるようにしているからか、水音が聞こえる。
はしたない音だと思い、自分が鳴らしているのだと思うと、ますます濡れてくる。
さらに彼は蜂蜜のようにとろりとして粘ついた液を、小さな突起に擦りつけてきた。
「だ、旦那様……」
捏ね回すように押しつぶされ、莢を捲るように優しく押し上げられると、むず痒いような掻痒感に襲われ、もじもじと尻を揺らしてしまう。
そうしたセシリアの反応に、クライヴはさらに別の指でお腹の裏側、同じ場所を一定の間隔でゆっくり押し上げてきた。
「んっ、ぁ……あっ……」
内と外、焦らすように刺激を与えられて、セシリアは自分が徐々に何かに追いつめられていくような気がした。
(やだ、怖い……)
この症状が行き着く先がわからず、こんなことなら無理をしてでも閨事について学んでおけばよかったと後悔するが、すでに遅い。
セシリアが途方に暮れたような、あるいは縋るような表情でクライヴを見ていたからか、彼はもう一度「痛いか?」と訊いてきた。
彼女はまた首を横に振り、「怖い……」とだけ呟く。クライヴはどう思ったのか、顔を寄せ、口ではなく目元に口づけを落とし、涙で濡れた頬を撫でた。
「そのまま力を抜いて、受け入れるんだ」
それは一体どういうことなのか。もっと具体的に教えてほしいと思ったが、問う前にいよいよ何かが来そうだったので、セシリアはとっさにクライヴの腕を掴んだ。
「だ、旦那様、一度、とめてください、わたし変に、っ……、あっ、やだ、だめっ――」
セシリアの制止を聞き入れず、それどころかクライヴは指の動きを速め、赤く膨らんだ突起を今までよりも強く押しつぶした。それで何かが弾けたようにセシリアは悲鳴のようなか細い声を上げ、それまで考えていた全てのことを白く塗り替えられた。
ピンと硬直した身体はゆっくりと弛緩していき、くたりと寝台に倒れ込んだ。田舎道を全速力で走り抜けた時のような心地よい疲労感に包まれる。
「旦那、さま……」
「クライヴだ」
そう呼びなさいと言うように彼はセシリアの乱れた髪を整えながら軽く口づけする。
「まだ終わっていないぞ」
「まだ?」
疲れもあってあどけない口調で聞き返す。クライヴは「そうだ」と言いながら自身の服を脱いでいく。何となく細く、筋肉のない身体を想像していたが、裸像のモデルのような均整の取れた美しい身体をしていた。
貴族はみなこんなにも美しい容姿なのだろうかと思っていると、クライヴが投げ出されたセシリアの脚を左右に開き、その間に入ってきたので戸惑う。
「旦那さ――クライヴ様。一体何を?」
「私の男性器をきみの中に挿れる。一応慣らしたが、初めは痛いだろう」
セシリアはクライヴの下半身を見て、男女の違いを知った。何となく知っていたが、改めて見ると、やはり衝撃は大きかった。
(あれがわたしの中に? む、無理)
黙り込んだセシリアに、クライヴは脱いだ衣服へ手を伸ばし、ポケットから何かを取り出した。小さな瓶で、中には透明な液体が入っていた。
「念のため潤滑油を塗っておく」
端的に説明すると、彼は中の液体を指に垂らし、セシリアの膣内に塗ってきた。すでにたっぷりと濡れていたのであまり意味はない気がしたが、痛い思いは味わいたくなかったので、何も言わなかった。セシリアに塗り終わると、クライヴは残りの分をすべて自分の分身にかけ、手で何度か扱くと、さっそく蜜口にその先端をあてがった。
「挿れるぞ」
「はい……っ」
ぐちゅりと先端が蜜口に沈み、けっこう大きいなと思っていたところで、さらに深く捩じ込まれてセシリアは息が止まった。ぎちぎちと隘路をこじ開けるように肉杭が自分の中へ入って来る。
「う、ぁ……」
口から呻き声が出る。彼は慣らしたと言っていたが、それでもこんなに痛いのだ。目に涙が浮かび、少しでも挿入を楽にしようと自然と蜜が溢れてくる。でもまだ痛い。
「は……も、むり……」
思わず泣き言を言えば、クライヴが動くのを止めた。
「やめるか?」
セシリアは自分を見下ろすクライヴを見上げた。彼もまた額に汗を浮かべ、苦しそうに眉根を寄せていた。そういった表情もするのだと、こんな状況であるのに珍しく思う。男性も痛みを伴うものなのだろうか。
「……いいえ、やめないで、ください」
この痛みが続くのはもちろん嫌であったが、初夜が上手く完遂できず、翌日タバサや公爵家の人間にどう思われるかの方が怖かった。もしかすると不出来な嫁だと叩かれ、伯爵家に送り返されるかもしれない。そうなれば伯爵……特にイライザ、ドリュー夫人に合わせる顔がない。
心のどこかでずっとこの結婚が上手くいかないことを願いながら、いざそうなるかと思うと恐れる自分がいて、なんて情けないのだろうとおかしかった。
(でも、もう後に引けないもの……)
「わたしは大丈夫です、から……クライヴ様のお好きなように、なさってください」
「きみは……」
クライヴは僅かに目を瞠り、だがセシリアの意向を汲んで、また熱杭を奥へ挿入してきた。セシリアは痛みに耐えようと全身に力を入れてしまう。クライヴが身を屈め、ツンと尖った蕾を舐めたり、乳房を揉んでくると、先ほど与えられた快感を思い出し、少し強張りが解けた。そうしてまた肉棒が奥へと入ってきて……何とか無事に収めることができたみたいだ。
「はぁ……はぁ……」
二人の荒い息が部屋に響く。
(ここから、どうするの?)
ようやく終わるのだろうかと思っていると、クライヴと目が合う。
「なるべくすぐに終わらせるから、動いてもいいか?」
(動く?)
それがどういうことかよくわからなかったが、終わるためならばと、大して深く考えずこくりと頷いた。するとせっかく奥まで挿入した剛直を、彼がゆっくりと引き抜いていく。抜いてはいけないのではないかと思っていると、出て行きかけた肉槍がまたずぶずぶと沈められてくる。一度通ったおかげで、今度はややスムーズに入ってきた。
奥まできて、またぎりぎりまで抜いて、沈めて……規則正しい抽挿は、次第に速さを増して、クライヴの呼吸を乱していく。セシリアも――
「あっ」
喉奥から思わず声が出てしまった。痛みを訴える声ではなく、どこか甘い響きを持つ声だった。それは粘膜を擦られているうちに、疼痛から痺れるような愉悦を感じたためであった。
「あっ、ん……ん、んんっ……ふ、あっ、あっ」
クライヴに腰を掴まれ、叩きつけるように楔を打ち込まれる。獣のように荒い息をしながら、悩ましげな表情をする姿に、セシリアまでおかしな気持ちになって、またあの切羽詰まったような感覚に呑み込まれそうになる。
「あっ、クライヴさまっ、わたし、あっ、あぁっ――」
「くっ――」
自分に何が起こったのかよくわからぬまま、セシリアは腰を浮かせ、喉元を晒した。クライヴの呻き声にも似た声を耳にして、力尽きて倒れ込んできた彼の肌の熱さを感じる。
しばらくの間二人は何も言わず、ただ乱れた呼吸を整えようと胸を上下させた。
やがて彼が起き上がり、自身のものを今度こそセシリアの中から抜いた。同時にどろりとしたものが零れ、垂れていくのがわかった。
(なんとか、終わった……)
セシリアは目を閉じ、無事に初夜を終えられたことに安堵した。
これで正真正銘ハーフォード公爵の妻となり、逃げ道がなくなったことも同時に突きつけられたが、疲労に身を任せて眠りの世界へ逃げ込んだ。
けれどもすぐにクライヴの手が頬へ添えられ、顔を上げさせられた。彼の手にはもう手袋はない。想像していた通りの綺麗な指先だった。
二人は黙って互いを見つめ合った。
式の再現をするようにクライヴが顔を近づけ、唇を重ねた。誓いの口づけは一度だけであったが、今度はもう二、三度されて、舌先が閉じた唇を割るように舐めてきたので、セシリアは彼の邪魔をしないよう小さく口を開いた。息を止めていたので苦しかったのもある。
「呼吸は鼻でするんだ」
「は、はい、んっ……」
そうは言われるが、こんなにも距離が近いので、何だか恥ずかしくなってしまう。そしてクライヴは予想よりも遠慮なく咥内を貪ってくる。他人に歯列をなぞられるなんて、今までのセシリアの人生において考えられないことだった。
(あ、でも、あの人たちはしたのかな……)
故郷で年頃の男女が人目を忍ぶようにして口づけしていたことを思い出す。田舎なので娯楽が少なく、若者の性への関心は高かった。
セシリアもそういう場面に偶然出くわしたことがある。もっともまだ幼かったこともあり、見てはいけない光景、不潔なものという嫌悪感があったのですぐに立ち去った。そのため具体的にどんなことをするのかは知らなかった。
礼儀作法に関してはこんなことまで知る必要があるのかと詳細を教えられたが、閨事に関しては一切教えられなかった。
『あなたはただクライヴ様に身を任せればいいのです』
(身を任せる……)
は、とセシリアは大きく息を吐いた。執拗に吸われて、唇がジンジンする。頭もどこかぼうっとしている。
ぼんやりとクライヴを見ていると、彼はゆっくりとセシリアを寝台へと押し倒して、ルームシューズを脱がせ、全身を寝台に寝かせた。
彼も同じように脱ぐと、寝台に上がり、セシリアの顔を覗き込んでくる。
今まで口づけの余韻でとろんとしていたのに、彼のどこかひんやりとした視線に、急に我に返った。
狼狽えるセシリアにクライヴはもう一度顔を寄せ口づけする。今度は深く貪らず、唇の端や顎に触れて、首筋に顔を埋めた。
ちくりとした痛みに一瞬噛まれるのではないかと怯えたが、胸へと手が伸びてきてそれどころではなくなった。クライヴの掌がセシリアの乳房に被さり、優しく揉まれていく。
自分以外の――夫となる人の手によって形を変えられていく様を見下ろし、セシリアは次第に妙な気分になって、自然と息が上がっていった。
「はぁ……ん、ぁ……」
首筋に落とされる口づけの微かな痛みが甘美な快感へ変わっていき、他人の意思で自分の身体を好き勝手に弄られる手つきに腰を浮かせ、身を捩る。
クライヴはそんなセシリアの反応で次に移っても大丈夫だと思ったのか、彼女の夜着を脱がせていく。
「あ……」
小さくも大きくもない胸の膨らみ、ほっそりした腰つき、平らなお腹、程よく筋肉のついた健康的な脚を夫となる男性の眼前に晒され、セシリアは羞恥に襲われる。
ぴったりと股を閉じ、胸を手で隠すが、クライヴに難なくどかされ、胸元に顔を寄せられて、先端を舐められた。
びくっと大げさなほど震えたが、クライヴは止めず、さらに舐めていく。最初はぎゅっと目を瞑って行為を見ないようにしていたが、目を閉じていると余計に感じてしまい、またそろそろやめてくれるだろうと思って、うっすらとセシリアは目を開き、下へと視線を向けた。
するとちょうど舐めているクライヴと視線が合い、どきりとする。
「尖ってきた」
胸の先端は丹念に舐められて、濡れて光っていた。そして、蕾のようにぷっくりと勃ち上がっており、なぜかとても卑猥な光景に見えた。
クライヴがそうしたのだと思うと、セシリアは何とも言えない気持ちになった。
「こっちも同じようにしよう」
「まだ、舐めるのですか」
小さな声が弱々しく、嫌がっているように聞こえたからか、ちらりとクライヴが視線をやった。
「では、指でしよう」
そう言って彼は指先で掠めるようにして胸の飾りを触っていく。傷一つない細長い指が自分の乳首を弄っており、セシリアはまた変な気分になって脚をもじもじさせた。
「こちらも尖ってきた」
クライヴの指摘通り、左側と同じように右の乳房の蕾もツンと勃ってくる。不意にきゅっと摘まれ、セシリアは「あっ」と声を上げた。
「すまない。痛かったか?」
「少し……」
クライヴはもう一度謝り、「やはり舐めた方がいい」と唇を寄せてきた。必要ないと思ったが、舐められると甘い痺れに襲われ、声を抑えることの方に意識を持っていかれる。そうしている間にクライヴはもう片方の手ですでに硬く尖った蕾を弄り、徐々に下の方へ下りていく。腰の曲線をなぞり、お腹を撫で、閉じられていた太股の隙間に指をさし込まれたところでセシリアははっとした。
「そ、そこ……」
「濡れているかどうか確かめさせてくれ」
必要なことだと言われて、セシリアは大人しく従う。
彼の指は慎重にあわいをそっと撫で、滑らせるように指の腹で何度か行き来すると、花びらを割って、ほんの少し中へと入ってきた。
中は濡れており違和感はあるものの、痛みはさほど感じない。セシリアは神経をクライヴの動かす指先に注ぎ、変な動きをしないよう下半身に力を入れていた。
胸を愛撫していたクライヴも、そんなセシリアをじっと見つめていたが、彼女は気づかなかった。
「痛いか?」
ふるふると首を横に振ると、指が少し奥へ入ってきて、かき出すような動きをし始めた。
じっと息を潜めるようにしているからか、水音が聞こえる。
はしたない音だと思い、自分が鳴らしているのだと思うと、ますます濡れてくる。
さらに彼は蜂蜜のようにとろりとして粘ついた液を、小さな突起に擦りつけてきた。
「だ、旦那様……」
捏ね回すように押しつぶされ、莢を捲るように優しく押し上げられると、むず痒いような掻痒感に襲われ、もじもじと尻を揺らしてしまう。
そうしたセシリアの反応に、クライヴはさらに別の指でお腹の裏側、同じ場所を一定の間隔でゆっくり押し上げてきた。
「んっ、ぁ……あっ……」
内と外、焦らすように刺激を与えられて、セシリアは自分が徐々に何かに追いつめられていくような気がした。
(やだ、怖い……)
この症状が行き着く先がわからず、こんなことなら無理をしてでも閨事について学んでおけばよかったと後悔するが、すでに遅い。
セシリアが途方に暮れたような、あるいは縋るような表情でクライヴを見ていたからか、彼はもう一度「痛いか?」と訊いてきた。
彼女はまた首を横に振り、「怖い……」とだけ呟く。クライヴはどう思ったのか、顔を寄せ、口ではなく目元に口づけを落とし、涙で濡れた頬を撫でた。
「そのまま力を抜いて、受け入れるんだ」
それは一体どういうことなのか。もっと具体的に教えてほしいと思ったが、問う前にいよいよ何かが来そうだったので、セシリアはとっさにクライヴの腕を掴んだ。
「だ、旦那様、一度、とめてください、わたし変に、っ……、あっ、やだ、だめっ――」
セシリアの制止を聞き入れず、それどころかクライヴは指の動きを速め、赤く膨らんだ突起を今までよりも強く押しつぶした。それで何かが弾けたようにセシリアは悲鳴のようなか細い声を上げ、それまで考えていた全てのことを白く塗り替えられた。
ピンと硬直した身体はゆっくりと弛緩していき、くたりと寝台に倒れ込んだ。田舎道を全速力で走り抜けた時のような心地よい疲労感に包まれる。
「旦那、さま……」
「クライヴだ」
そう呼びなさいと言うように彼はセシリアの乱れた髪を整えながら軽く口づけする。
「まだ終わっていないぞ」
「まだ?」
疲れもあってあどけない口調で聞き返す。クライヴは「そうだ」と言いながら自身の服を脱いでいく。何となく細く、筋肉のない身体を想像していたが、裸像のモデルのような均整の取れた美しい身体をしていた。
貴族はみなこんなにも美しい容姿なのだろうかと思っていると、クライヴが投げ出されたセシリアの脚を左右に開き、その間に入ってきたので戸惑う。
「旦那さ――クライヴ様。一体何を?」
「私の男性器をきみの中に挿れる。一応慣らしたが、初めは痛いだろう」
セシリアはクライヴの下半身を見て、男女の違いを知った。何となく知っていたが、改めて見ると、やはり衝撃は大きかった。
(あれがわたしの中に? む、無理)
黙り込んだセシリアに、クライヴは脱いだ衣服へ手を伸ばし、ポケットから何かを取り出した。小さな瓶で、中には透明な液体が入っていた。
「念のため潤滑油を塗っておく」
端的に説明すると、彼は中の液体を指に垂らし、セシリアの膣内に塗ってきた。すでにたっぷりと濡れていたのであまり意味はない気がしたが、痛い思いは味わいたくなかったので、何も言わなかった。セシリアに塗り終わると、クライヴは残りの分をすべて自分の分身にかけ、手で何度か扱くと、さっそく蜜口にその先端をあてがった。
「挿れるぞ」
「はい……っ」
ぐちゅりと先端が蜜口に沈み、けっこう大きいなと思っていたところで、さらに深く捩じ込まれてセシリアは息が止まった。ぎちぎちと隘路をこじ開けるように肉杭が自分の中へ入って来る。
「う、ぁ……」
口から呻き声が出る。彼は慣らしたと言っていたが、それでもこんなに痛いのだ。目に涙が浮かび、少しでも挿入を楽にしようと自然と蜜が溢れてくる。でもまだ痛い。
「は……も、むり……」
思わず泣き言を言えば、クライヴが動くのを止めた。
「やめるか?」
セシリアは自分を見下ろすクライヴを見上げた。彼もまた額に汗を浮かべ、苦しそうに眉根を寄せていた。そういった表情もするのだと、こんな状況であるのに珍しく思う。男性も痛みを伴うものなのだろうか。
「……いいえ、やめないで、ください」
この痛みが続くのはもちろん嫌であったが、初夜が上手く完遂できず、翌日タバサや公爵家の人間にどう思われるかの方が怖かった。もしかすると不出来な嫁だと叩かれ、伯爵家に送り返されるかもしれない。そうなれば伯爵……特にイライザ、ドリュー夫人に合わせる顔がない。
心のどこかでずっとこの結婚が上手くいかないことを願いながら、いざそうなるかと思うと恐れる自分がいて、なんて情けないのだろうとおかしかった。
(でも、もう後に引けないもの……)
「わたしは大丈夫です、から……クライヴ様のお好きなように、なさってください」
「きみは……」
クライヴは僅かに目を瞠り、だがセシリアの意向を汲んで、また熱杭を奥へ挿入してきた。セシリアは痛みに耐えようと全身に力を入れてしまう。クライヴが身を屈め、ツンと尖った蕾を舐めたり、乳房を揉んでくると、先ほど与えられた快感を思い出し、少し強張りが解けた。そうしてまた肉棒が奥へと入ってきて……何とか無事に収めることができたみたいだ。
「はぁ……はぁ……」
二人の荒い息が部屋に響く。
(ここから、どうするの?)
ようやく終わるのだろうかと思っていると、クライヴと目が合う。
「なるべくすぐに終わらせるから、動いてもいいか?」
(動く?)
それがどういうことかよくわからなかったが、終わるためならばと、大して深く考えずこくりと頷いた。するとせっかく奥まで挿入した剛直を、彼がゆっくりと引き抜いていく。抜いてはいけないのではないかと思っていると、出て行きかけた肉槍がまたずぶずぶと沈められてくる。一度通ったおかげで、今度はややスムーズに入ってきた。
奥まできて、またぎりぎりまで抜いて、沈めて……規則正しい抽挿は、次第に速さを増して、クライヴの呼吸を乱していく。セシリアも――
「あっ」
喉奥から思わず声が出てしまった。痛みを訴える声ではなく、どこか甘い響きを持つ声だった。それは粘膜を擦られているうちに、疼痛から痺れるような愉悦を感じたためであった。
「あっ、ん……ん、んんっ……ふ、あっ、あっ」
クライヴに腰を掴まれ、叩きつけるように楔を打ち込まれる。獣のように荒い息をしながら、悩ましげな表情をする姿に、セシリアまでおかしな気持ちになって、またあの切羽詰まったような感覚に呑み込まれそうになる。
「あっ、クライヴさまっ、わたし、あっ、あぁっ――」
「くっ――」
自分に何が起こったのかよくわからぬまま、セシリアは腰を浮かせ、喉元を晒した。クライヴの呻き声にも似た声を耳にして、力尽きて倒れ込んできた彼の肌の熱さを感じる。
しばらくの間二人は何も言わず、ただ乱れた呼吸を整えようと胸を上下させた。
やがて彼が起き上がり、自身のものを今度こそセシリアの中から抜いた。同時にどろりとしたものが零れ、垂れていくのがわかった。
(なんとか、終わった……)
セシリアは目を閉じ、無事に初夜を終えられたことに安堵した。
これで正真正銘ハーフォード公爵の妻となり、逃げ道がなくなったことも同時に突きつけられたが、疲労に身を任せて眠りの世界へ逃げ込んだ。
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