ノースキャンプの見張り台

こいちろう

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10.大川の土手

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 最近になって、カナコさんは毎朝シューイチたちと一緒に登校するようになった。いつの間にか、ツヨシくんも一緒に登校し始めた。
 ヒロくんの動きにあわせて、シューイチとカナコさんとツヨシくんが歩いて、みんなで学校に行く。ヒロくんは、前よりも寄り道が少なくなって、楽しそうに歩くようになった。その後ろをシューイチたちが三人で歩く。いろんなことをおしゃべりするから、登校がだんだんにぎやかになってきた。
 ヒロくんがみんなを連れて、先頭をさっさと歩いている。みんなで一緒に歩くのがとても楽しいようだ。
「シューイチくんはガミガミさんところの『絵画教室』に行ってるんよね?」
カナコさんは最近シューイチを名前で呼ぶようになった。
「わたしもヒロと一緒に行ってみようかな」
「うん、行くといいよ。オレもまだ行きだしたばかりだけど。ガミガミさんって色んな事を教えてくれるから面白いし、ヒロくんがのびのびしてるんだ。ガミガミさんに甘えながら、自由に絵を描けるのが楽しいのかな」
シューイチは、ヒロくんが行ってると聞いて、一ヶ月ほど前から行き始めたのだ。
「オレも行こうかな」
ツヨシくんも言った。
 百番地の中では、だんだん三人で行動することが増えてきた。だけど、学校の中に入ったとたん、カナコさんはそっぽを向いて自分の教室に行ってしまう。学校の中では相変わらずだ。カナコさんの周りにはいつもたくさん人が集まる。人が一緒だと、シューイチやツヨシくんに出会っても話したりしない。知らんふりをしている。だからシューイチも声をかけない。シューイチだってクラスの人気者だ。もう東京弁をからかう者もいなくなった。
 次の日曜日、本当に絵画教室にカナコさんがやってきた。ヒロくんはいつものようにガミガミさんに抱きついていった。ツヨシくんも来た。いつもは数人で一つの長机を囲む教室が、もう一つ長机が出されて、いっぺんに大教室になった。
「なんだか急に大勢になったねえ」
ガミガミさんはうれしそうに、狭い大教室を見回した。
「じゃあ、今日はみんなの顔を描いてみようか。周りの人の様子をよーく見ながら描いてごらん。いつもと違っていろんな顔に見えてくるはずだよ。私の顔でもいいし、おばさんの顔でもいいよ」
 ガミガミさんの奥さんは、いつもお菓子と紅茶を出してくれる。それがけっこうおいしい。ユーイチみたいに、それだけが楽しみで通っている子もいるくらいだ。
「シューイチくん」
突然、奥さんから呼ばれて、
「ハイ」と返事をしたら、もう一人「ハイ」と返事をした。
ユーイチくんと呼んだようだ。なんだ、ユーイチだったのか。
 ユーイチは兄弟で絵画教室に通っている。いつも来ているがあまりまじめに絵を描いている風には見えない。お菓子目当てだからな。でも、おちょうし者でおしゃべり好きだから、いつもみんなを笑わせるこの教室の人気者だ。
 特に奥さんは面白がって、たびたびユーイチに声をかける。
「あら、ユーイチくんの絵はだれの顔なのかな?」
ユーイチの描いていた絵が、ふと奥さんの目にとまったみたいだ。ユーイチはあわてて絵を裏返しにした。
「えっ!あのぉ、これはですねぇ・・・。これは弟の顔ですよー。この間、弟が寝小便して母からこっぴどく叱られたんです。そのときの弟の泣きべそかいた顔です」
「違うわい!この間寝小便で叱られたのは兄ちゃんじゃないか!」
「いやいや、違うって。あれは夜中に寝ぼけて、それで氷水をこぼしただけなんじゃっ!」
 ここまでのやりとりだけで大笑いだったが、「どれ見せてごらん」と言って、ガミガミさんが取り上げたユーイチの絵。それを見て、みんな大爆笑した。
「うん、なるほどこりゃあワシにそっくりじゃ」
 そう。ユーイチは頭がテカテカのガミガミさんを描いたんだ。それもそっくりじゃないか。こんなことになるとユーイチってうまいんだ。それをじっくり見ながらガミガミさんは笑っていた。
「この顔はワシの若い頃に似とるかのう!もっとかみの毛はふさふさしとったが」
もう一回、みんなが大笑いした。
 シューイチとツヨシくんは、おたがいの顔を見ながら描き合っていた。
 ツヨシくんって、見れば見るほど面白い顔をしている。ツヨシくんはシューイチの顔を見ながら、真剣な顔つきで描いているんだ。でも、その顔をきちんと描こうとすればするほど、真剣な顔が笑っているような顔になってしまう。ツヨシくんもシューイチをニヤニヤしたような顔に描いている。お互いに見せ合ってゲラゲラ笑った。どっちの顔もしまりのない、まるでギャグマンガだ。
 ヒロくんはいつも広告の裏に、紙面いっぱいの先がとがった大三角形を描く。たいがいガミガミさんにじゃれついているヒロくんだが、気に入ったときは、茶色のクレヨンでとんがった大三角形を紙いっぱいに描く。熱中すると、何枚も何枚も続けて描き続ける。気に入らないと、一本だけ線を描いて、すぐに次の紙を欲しがる。たまらないから、ガミガミさんはヒロくん用にためた広告のチラシを渡して、その裏に描かせる。
 必ず茶色のクレヨンで、紙のてっぺんまで先のとがった三角形。そして、そのてっぺんに緑色で小さい丸を付ける。それを何枚も何枚も描くのだ。
 もともとこの絵画教室は、ヒロくんのためにガミガミさんが作ったんだ。そんなふうに聞いたことがある。いつも松林にいたヒロくんに、ガミガミさんが声をかけて思いついたんだそうだ。
「今日の三角形は、特別に力が入ってるぞ。いつも茶色い三角形を描いて、そのてっぺんに、ほら緑色のしるしをつける。これが必ず緑色なんよ。松ぼっくりも、緑色のかたいのばっかり集めるんよねえ。緑色が好きなんよ。何か理由があるのじゃろうか。不思議な色使いじゃねえ」
ガミガミさんは、となりに座ったカナコさんに聞かせるように、そう言った。
 次に、カナコさんの絵を見たガミガミさんは、とても感心していた。
「カナコちゃんは弟を描いたんだよね。じょうずだねえ。よく描けているよ。ヒロくんのいつもの楽しい気持ちが、よく伝わってくるみたいだ」
ガミガミさんはそう言ってカナコさんの絵をほめた。
 とても上手だった。にこにこ笑ったヒロくんの顔そのまんまだ。
「カナコちゃん、これコンクールに出したらいいよ」
ガミガミさんがこんなにほめるのはめずらしい。
「これはいやだ!」
「なんで?とてもよく描けとるがなあ」
「だって、ヒロを見せ物にしたくないもん」
「ああ、そうかそうか!ごめんよ、ごめん。じゃあ、他の物を描いて、いっぺんコンクールに挑戦してみようか」
「ウチはあれを描きたい」
 カナコさんの指さした窓の向こうに、監視塔が見えていた。
「あれって、あの見張り台かね?」
「あれがね、うちの家の窓からもよう見えてるんよ。ヒロはいつもあればっかりじっと見てるんよ」
そして、
「あそこからねえ、だれかがヒロをずっと見てるような気がする。ヒロも見てるけど、あっちの方からもずっと見てる。いつも見守ってくれてるんじゃないかな。ずーっと前からね」
そう言った。 
 そうか、見張り台じゃなくて、見守り台だ。見張り台はヒロくんをずっと見守っている。カナコさんはこれまでそう思って、あの監視塔を見ていたんだ。
『ヒロくんの描いている三角形、あれも監視塔なんじゃないかな?』シューイチはふと思った。
 茶色で大きく描いたさびた鉄塔。そして、緑色の丸、てっぺんの壊れかけたトタン屋根だ。トタン屋根はもうぼろぼろだけど、緑色のペンキが少しだけ残っている。ヒロくんは、小さい頃から見続けているあの見張り台を描き続けていたんだ。お姉ちゃんも弟も同じ物を描きたがっていたんだ。きっとそうにちがいない。
「それなら、大川の土手から見た見守り台がいいよ。あの土手には、今いろんな花が咲いているから」
ツヨシくんが言った。
「そりゃあいいアイデアだね。今度三人でスケッチに行ってごらん」
ガミガミさんもそう言った。
「そういえば、リューイチくんも、あの見張り台を描きたいと言っていたなあ」
 おしゃべりばかりしているユーイチのとなりで、黙って集中して描いていたリューイチが、照れくさそうに顔をあげた。川向こうから真法寺橋を渡って、わざわざ通ってくるシューイチはこの教室の優等生だ。ばつぐんに絵がうまい。性格もユーイチとは真反対の真面目な子だ。上級生のシューイチに対しても、いつも礼儀正しい言葉使いをする。
「ぼくは真法寺橋の向こうから、いつも見ている見張り台を描くよ」
リューイチくんがにっこり笑って言った。となりのユーイチが、
「リューイチくんに絵で勝てる子はおらん。絵の天才なんじゃ。川上小にも川北小にも、中町小にだって絶対おらん」
と自分のことのように自慢した。
 カナコさん、負けるなよ!シューイチも自分のことのように、カナコさんを応援した。               
 それにしても、小さな絵画教室に、ユーイチとリューイチとシューイチ。似たような名前ばっかり集まったもんだ。ややこしいなあ。
       
 今年は梅雨が長い。五月の後半から梅雨に入ったというのに、夏休みが近づいても、まだぐずついた日ばかりだ。しばらく晴れた空を見ていない。関東の方では長雨のせいで麦の収穫がずいぶん減ったらしい。稲の生長も心配だ。また今年もお米が不足するんだろうか。このあたりは梅雨のじめじめした曇った天気が続いているが、こちらは曇ってばかりだ。雨はそんなに降ってないから逆に水不足だ。だから、大川だって水があまり流れていない。
 次の土曜日の昼、シューイチはツヨシくんとカナコさんと一緒に大川にスケッチに行った。もちろんヒロくんも一緒だ。最近、百番地の中だけだけど、カナコさんはシューイチたちとよく遊ぶ。
 久しぶりにからっと晴れたスケッチ日よりだった。土手沿いにはいろいろな花が咲いていた。この花を前に監視塔を描こうというのが、カナコさんの考えだ。
「もう昼を過ぎたのに、まだ月見草が咲いてるぜ」
シューイチがそう言うと、ツヨシくんが言った。
「昼でも咲いている種類があるんよ。花の種類っていっぱいある。これはマツヨイグサ、月見草の仲間だけど、元々の月見草は白い花が咲くんじゃ」
「ツヨシくんは花のことをよく知ってるんじゃねぇ。ここに咲いてる花はみんなかわいいけど、ウチは黄色い花が大好き」
「ここの土手の植物のことなら、たいがい知ってるよ。うちのおとうさんが詳しいんだ」
なんだ、しきりに土手に誘ったのは、その自慢をしたかったからか。
 都会育ちのシューイチにはそんな豆知識なんかない。野草なんて、どんな花が咲いたってどれも野草だ。でも、ちょっとしゃくだった。だから、自慢げに自分の知ってることを言ってやった。
「あの茎の赤いひょろっとしたやつ、スイバと言ってさ、葉っぱをかむと酸っぱいんだぜ」
「違うよ。スイバとよく似てるけど、あれはイタドリ。スカンポとも言うね。この辺りではイタンボ。春に伸びた若い茎をかじったりすると、すごく酸っぱいんだ」
さっそく訂正された。
「ここに木イチゴがなってるじゃろ。それからこっちがヘビイチゴ」
「ヘビイチゴ!」
「そう、間違いやすいんよ。別に毒があるわけじゃあないけど、食べてもスカスカしておいしくはないんじゃ。こっちの小さい実の方が木イチゴで、こっちはおいしいよ」
こりゃツヨシくんにはかなわんわ。でも、どっちにしろ草なんだ。草の実なんて食いたかないし。
「あら、赤いユリの花が咲いてるわ。川原にもユリが咲くんだね」
カナコさんが赤いユリの花を見つけた。よく見ると、あちこちにちらほらと咲いている。
「ああ、これはノカンゾウっていうんだよ。ヒメユリに似てるけど、こっちの方は薬草になるんじゃ」
「ヒメユリ?ヒメユリがいいな、名前がすてき。絶対ヒメユリの方がいい。ノカンゾウなんて、時代劇みたいで名前がかわいそう。だからあんたたちは今日からはヒメユリになりなさい」
そりゃあむちゃくちゃだ。草だって好きで名乗ってるわけじゃないんだし。
 カナコさんはとてもごきげんだった。
「ねえ、ここに黄色いヒメユリもあるよ」
赤いユリの中に、一本だけ小さな黄色いユリがある。
「こりゃめずらしいね。ノカンゾウに黄色ってあったかなあ」
これはツヨシくんも初めてだったらしい。
「ウチ、決めた。この黄色いヒメユリを描く」
だから、それはノカンゾウだって!
 さっそくカナコさんは新聞紙を広げて、その上に座ってスケッチブックを広げた。
 シューイチとツヨシくんもスケッチブックを用意していたが、それどころじゃなかった。なんたって水の大好きなヒロくんが一緒だ。大川の上流は田んぼが広がっていて、この時期は強い農薬が川に流れ込むらしい。だから、学校では、「絶対川の水に入ってはいけません」と厳しく注意されている。
 ヒロくんはすきを見せるとすぐに水に入ろうとする。それを止めるために、必死でヒロくんの相手をしなくちゃいけない。カナコさんはシューイチたちにヒロくんの世話を任せっきりで、自分だけ一生けんめいスケッチをしている。
 土手の向こうから、寛太と健太がやってきた。虫取り網を持っている。
「おーい!チョンギースを取ったでぇ」
「この辺は珍しいものがいっぱいおって楽しいなあ」
 そう言って、竹ひごで作った虫かごの中を見せてくれた。草をいっぱい入れて、その中に捕まえた昆虫が入っている。
「チョンギース?ああ、キリギリスだね」
シューイチだってキリギリスくらいは分かる。
「どうや。これ、百貨店で買うたら高いやつや。二匹も捕まえたで」
「え?一匹はキリギリスだけど、もう一匹はトノサマバッタだよ。ほら、こっちは脚が長いけど、もう一匹の方は短いじゃろ」
「えっ、そうなの!トノサマバッタって、イナゴのことか?」
シューイチは、以前昆虫図鑑を見てこいつと同じようなイナゴの絵を見たことがある。イナゴって、佃煮にして食べるんだ。そのことをよく覚えていた。
「違うよ。同じ仲間だけど、これは違う種類だ」
「へええ、トノサマなんや!」
「そういや、とぼけた顔をしてるなあ」
「あのね、キリギリスをいっしょに入れてると、他の虫を食べてしまうよ」
「えっ!チョンギースって肉食なんか!」
「草を食べるんかと思うてた」
「そやけど、百貨店でもキュウリを入れてるで」
「あれは水分補給にしかならんのよ。小さな昆虫や、削り節の粉を入れてやらんと、腹を空かせてすぐ死んでしまう」
「そうなんか。ええこと聞かせてもろうた」
「それから、この緑色したやつは・・・」
「これか、きれいやろ。クワガタの新種やないかなと思うて捕まえたんや」
「あのね、これ青カメムシといって、強烈な毒ガスを吹き出す虫じゃ。くさいおならをして、体にくっつくと一日中くさくなるよ。死にそうなくらいくさいから、この辺じゃあ、絶対触ったりせんのよ」
「えっ!健太、こいつをきれいやと言うて、手で捕まえたろ。あんときのおまえ、くさかったもんなあ」
「ええっ、気持ち悪う。なんか体中がくさくなった気がする」
「でも、ツヨシくんて昆虫のこと詳しいんやな」
「ほんまに、昆虫博士やで」
いったいこの三人の昆虫話はいつまで続くんだろう。
 ヒロくんもさっきから、夢中になって虫かごの中をのぞいている。
「あっ、ヘビだ!」
ツヨシくんの声でシューイチは一瞬ぎょっとした。本物のヘビを見るなんて初めてだ。ツヨシくんは、草むらからひょいとヘビの頭と尻尾を捕まえて差し出した。
「うえーっ!気持ち悪い」
 小さくてひょろんとしたヘビだったが、ツヨシくんに頭と尻尾をつかまれて、不気味に胴体をくねらせている。小さくても初めて見た生のヘビだ。
「本物って、こんな不気味なやつなんだ」
 一瞬、ツヨシくんが怪物を捕まえた英雄のようにみえた。名前のとおりツヨシくんはつよしだ!
「わあ、発見発見!大発見やあ!」
「ダイジャまで見れるとは思わなんだ!」
寛太健太のはしゃぎよう。
「毒はないのか?」
ちょっと離れてシューイチは聞いた。
「だいじょうぶ。これはシマヘビだよ。この辺で毒のあるのはマムシだけじゃ。頭が三角形で胴体の太いやつ」
「こいつも、頭が三角形やぞ」
「マムシはね、もっとエラが張ってるよ。こいつらも人間が強い農薬をまいたせいで、最近はどんどん減っているんだ」
 するとヒロくんが寄ってきて、ヘビの胴体を指先でさわってみる。
「ヒロくんは触れるんだ。全然怖がらないんだね」
「ちょっとォ、ヒロにヘビなんか触らせんでよオ」
スケッチに夢中だったカナコさんが、遠くから叫ぶように言う。
ツヨシくんは
「川の中に入るんじゃないよ!」
とヘビにやさしく言いながら、そっと草むらに逃がしてやった。そして、寛太と健太とヒロくんと、四人でその様子をじっと眺めていた。
 その後、寛太と健太とヒロくんは、ツヨシくんを追いかけて四人で昆虫を捕まえたり、水辺の小魚をのぞき込んだりしていた。いっぺんにツヨシくんは人気者になった。ツヨシって案外くせ者だな。
 シューイチはなんだか一人ぼっちになってしまったような気がした。虫なんてきらいだ。ヘビなんて大きらいだ。こんな草っ原のどこが面白いんだ。
「できたァッ!」と叫んで、立ち上がったカナコさんが思いっきり背伸びをした。
 スケッチが完成したのだ。真ん中に背の高い鉄塔。その下に広がる、土手一面の真っ赤なヒメユリ。そして、その中に特別大きな黄色いユリが一本。
 まてまて、こんなに土手いっぱいの真っ赤なユリなんてないぞ。それに黄色いユリは、ちっぽけでまるで月見草くらいの、目立たない存在じゃないか。
 でも、それなりに作品は立派だ。寛太と健太がのぞきこんで、
「わ!カナちゃんて、絵もうまいんやなあ」
「ほんま、ほんま。テニスだけじゃあらへんなあ。なんでもできるスーパーレディーや。ますますあこがれるわぁ」
本当に調子のいいやつらだ。シューイチはちょっとむかついた。
 次の日曜日にその絵をガミガミさんに見せたら、
「これはいい!とてもいい!」
そう言われて、大きな画用紙に清書することになった。  

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