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第115話 復活のベルモ
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「やれやれ… こんな事してる場合じゃ無いんだけどなぁ…」
ベルモは今でこそ森を開拓して、近隣の治安維持や狩猟による毛皮や肉の供給をしてくれているが、元々は森を根城にして、街道を通る商人等を襲っていた馬賊の頭領だ。
彼女自身が鬼族である事も含め、その気性は荒く歯向かう者は情け容赦無く切り捨てるタイプの人だった。
今現在ベルモとの関係が命のやり取りにまで至っていないのは、紛れもなく俺の魔剣の『淫奔』の能力のおかげでもある。
今のベルモは俺達と出会う前の記憶を失っているらしい。つまり『荒くれ者の女オーガ』が復活している訳だ。
全く… 身体が急成長したり、限定的な記憶喪失とかろくな副作用が無いな魔道士の薬は……。
とは言え、モンモンもベルモも共に放置していたら命に関わる症状だったのを、一瞬で回復させた実績は無視出来ない。これらの不具合も必要経費と割り切るしか無い。
「盛り上がってるところ悪いけど、あまり時間は無いわよ…?」
チャロアイトが呟く。…分かってるよ、だからこんな茶番は速攻終わらせる。
☆
「アンタは強いらしいから、アタイは本気で殺りに行く。だからアタイも殺されても文句言わない」
今は無人の練兵場の一区画で、ベルモはモンモンから返却された武器を手に待ち構えていた。
例の岩鎧虫の装甲で作られた双剣を右は逆手に、左は順手に持って振り心地をテストするかの様に幾度か素振りを繰り返している。
「本気で戦うのは良いけどルールはどうする…?」
まさか本当に殺し合うだけで終わりじゃ無いよな? 別の落とし所は用意してあるよな…?
「ふん、単純な話だよ。どちらかの死亡、戦闘不能、戦意喪失でケリが着いたら終わり。アンタが勝てばモンモン達の言っていた事を信じて恩を返すよ。アタイが勝ったら… そうだねぇ、その背中の立派な得物を頂く。それで良いね…?」
「あぁ…」
魔剣が俺から一定距離離れたら、ティリティア達にかかっている『魅了』の効果も切れて、俺は文字通り『全て』を失う事になる。間違っても取り上げられる訳にはいかない。
しょうがない。ベルモには悪いが、サクッと終わらせて王都に向かおう。
そう言えばベルモと仕合うのは今回が初めてなんだよな。初対面で『魅了』しちゃったし、最初のゴブリン退治ではベルモはまともに戦う前に落とし穴に落とされたし、『蛇』戦の時は蛇の煙相手に手も足も出なかった。
彼女は鬼族だし、馬賊の頭を張っていた程だから腕っ節が強いのは予想出来るが、その実力を見る機会に恵まれて居なかった訳だ。
ベルモの戦闘力がどの程度なのか把握できれば、それに応じた一党での戦力配置が可能になる。
俺としてはティリティアは全体の支援と回復、モンモンは援護射撃、クロニアはティリティアら後衛の護衛に使い、『突撃する俺を援護して遊撃する前衛』の役目にベルモが置けるととても助かるのだ。
「じゃあ行くよ? すぐ死ぬなよ…?」
そんな俺の思惑などまるっきり無視し、ベルモの態勢が低くなる。そして彼女の目が一瞬赤く光った様に錯覚した。
ガガギンッ!!
ベルモは目にも止まらぬ速さで距離を詰め、両手に持った剣で俺に二撃を撃ち込んできた。それらを受け止めた俺の魔剣から耳障りな衝突音が響く。
ベルモは体型的にパワーファイターだと思っていたのだが、なかなかの加速と機動力、そして膂力を持っている。少し侮っていたぞ。
「はや…」
モンモンの呟きが耳に届く。モンモンは幼少時からベルモの世話になっているので、ベルモの攻撃スピードは知っているはずだ。その上でその感想って事は、もしかしてベルモは薬の影響で身体能力が『強化』されているのかも。
「あぁ、なんか前より体が軽くてねぇ…」
再度間合いを取る為に軽々と後ろに飛び退るベルモ。彼女に自覚は無さそうだが、薬の影響はマジでありそうだな。まぁ病で伏せっていた時期に激痩せしたせいで「体が軽い」はあるかも知れないが……。
「どうしたんだい? 守ってばかりじゃアタイを負かせないよ?」
『ヒットアンドアウェイ戦法』で再度双剣で斬り込んでくるベルモ。今度は攻撃の寸前に右に横跳びしてフェイントを掛けて来た。
ギンッ!
ただその程度の目眩ましで惑わされる俺じゃない。再び魔剣で受け流し、ベルモはまた後ろに跳んで距離を取った。なんだかガドゥを相手にしているみたいだ。
「アンタ… アタイの事を舐めてんのかい…?」
ベルモの額に青筋が浮かぶ。俺が手を出さない事で侮辱されたと感じたのか、怒っているのは一目瞭然だ。
もちろん誓って侮辱などしていない。一時は武器も握れない程に弱っていたベルモが、ややスリムになったとは言え、こんなに激しい運動をしても息一つ切らせていないのが純粋に嬉しくて感動していたのだ。
今にも死んでしまいそうに衰弱していたベルモが、高レベルの戦闘機動を行える程に元気になってくれた。こんなに嬉しい事は無い。
「何ヘラヘラ笑ってんだい、気持ち悪いねぇ!」
ベルモの3度目の突撃。過去2度の攻撃は俺の反応速度と新しい武器の慣らし運転を兼ねて、まだ本気では無かったらしい。
つまり今回の攻撃は本気で『殺し』にきた鋭く強い一撃、という事だ。
左手の剣撃を魔剣で受け止めたが、右手の剣が隙となった俺の脇腹を狙って突き上げられる。
ベルモの攻撃は俺のバリアを貫通するが、その過程で減退された攻撃力は身に付けていた鎧で間一髪防がれた。新ベルモはマジで強いぞ……。
俺に致命傷を与えられなかったのを瞬時に理解して、ベルモは再度距離を取るべく後ろに跳んだ。
だが何回も同じ手を食らう訳にも行かない。跳んだベルモに合わせて俺も同じ方向に飛び込む。ベルモが着地する瞬間を狙って彼女の腹に渾身のストレートパンチを打ち込んだ。
しっかりと足を付ける前に殴られたベルモは、踏ん張る事も出来ずにそのまま10mくらい吹き飛び、棒切れの様に転げ回った。
ベルモの防具は鎖帷子だが、帷子だけだと斬撃には強いが打撃には弱い。もし帷子の下に緩衝衣服を着けていなかった場合、普通に内臓が破裂しかねない力で殴ってしまったのだけれど、大丈夫かな…? 多分死んではいないと思うけど……。
「あいたたた…」
飛ばされて倒れたベルモがゆっくりと立ち上がる… 少なくとも死んだり再起不能レベルの負傷はしていなさそうだ。
「なるほど、噂に違わぬ強さだね。アンタの強さは分かったよ…」
スッキリした顔でニッコリ微笑むベルモ。意外に軽傷そうで安心した。これで納得してくれたなら良いのだが……。
しかしベルモは鬼族だけあって丈夫だな。或いは例の薬の効果で防御力も上がっているのかな? 今検証している時間は無いけど。
「これで気が済んだかな? 俺達は王城に急がないといけないんだが…」
王城に行くメンバーは俺とチャロアイト、あとティリティアが居れば十分なのだが、なぜかクロニアやモンモン、更にはベルモまで「じゃあ行きますか」って顔をしているのは何なんだ…?
ベルモは今でこそ森を開拓して、近隣の治安維持や狩猟による毛皮や肉の供給をしてくれているが、元々は森を根城にして、街道を通る商人等を襲っていた馬賊の頭領だ。
彼女自身が鬼族である事も含め、その気性は荒く歯向かう者は情け容赦無く切り捨てるタイプの人だった。
今現在ベルモとの関係が命のやり取りにまで至っていないのは、紛れもなく俺の魔剣の『淫奔』の能力のおかげでもある。
今のベルモは俺達と出会う前の記憶を失っているらしい。つまり『荒くれ者の女オーガ』が復活している訳だ。
全く… 身体が急成長したり、限定的な記憶喪失とかろくな副作用が無いな魔道士の薬は……。
とは言え、モンモンもベルモも共に放置していたら命に関わる症状だったのを、一瞬で回復させた実績は無視出来ない。これらの不具合も必要経費と割り切るしか無い。
「盛り上がってるところ悪いけど、あまり時間は無いわよ…?」
チャロアイトが呟く。…分かってるよ、だからこんな茶番は速攻終わらせる。
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「アンタは強いらしいから、アタイは本気で殺りに行く。だからアタイも殺されても文句言わない」
今は無人の練兵場の一区画で、ベルモはモンモンから返却された武器を手に待ち構えていた。
例の岩鎧虫の装甲で作られた双剣を右は逆手に、左は順手に持って振り心地をテストするかの様に幾度か素振りを繰り返している。
「本気で戦うのは良いけどルールはどうする…?」
まさか本当に殺し合うだけで終わりじゃ無いよな? 別の落とし所は用意してあるよな…?
「ふん、単純な話だよ。どちらかの死亡、戦闘不能、戦意喪失でケリが着いたら終わり。アンタが勝てばモンモン達の言っていた事を信じて恩を返すよ。アタイが勝ったら… そうだねぇ、その背中の立派な得物を頂く。それで良いね…?」
「あぁ…」
魔剣が俺から一定距離離れたら、ティリティア達にかかっている『魅了』の効果も切れて、俺は文字通り『全て』を失う事になる。間違っても取り上げられる訳にはいかない。
しょうがない。ベルモには悪いが、サクッと終わらせて王都に向かおう。
そう言えばベルモと仕合うのは今回が初めてなんだよな。初対面で『魅了』しちゃったし、最初のゴブリン退治ではベルモはまともに戦う前に落とし穴に落とされたし、『蛇』戦の時は蛇の煙相手に手も足も出なかった。
彼女は鬼族だし、馬賊の頭を張っていた程だから腕っ節が強いのは予想出来るが、その実力を見る機会に恵まれて居なかった訳だ。
ベルモの戦闘力がどの程度なのか把握できれば、それに応じた一党での戦力配置が可能になる。
俺としてはティリティアは全体の支援と回復、モンモンは援護射撃、クロニアはティリティアら後衛の護衛に使い、『突撃する俺を援護して遊撃する前衛』の役目にベルモが置けるととても助かるのだ。
「じゃあ行くよ? すぐ死ぬなよ…?」
そんな俺の思惑などまるっきり無視し、ベルモの態勢が低くなる。そして彼女の目が一瞬赤く光った様に錯覚した。
ガガギンッ!!
ベルモは目にも止まらぬ速さで距離を詰め、両手に持った剣で俺に二撃を撃ち込んできた。それらを受け止めた俺の魔剣から耳障りな衝突音が響く。
ベルモは体型的にパワーファイターだと思っていたのだが、なかなかの加速と機動力、そして膂力を持っている。少し侮っていたぞ。
「はや…」
モンモンの呟きが耳に届く。モンモンは幼少時からベルモの世話になっているので、ベルモの攻撃スピードは知っているはずだ。その上でその感想って事は、もしかしてベルモは薬の影響で身体能力が『強化』されているのかも。
「あぁ、なんか前より体が軽くてねぇ…」
再度間合いを取る為に軽々と後ろに飛び退るベルモ。彼女に自覚は無さそうだが、薬の影響はマジでありそうだな。まぁ病で伏せっていた時期に激痩せしたせいで「体が軽い」はあるかも知れないが……。
「どうしたんだい? 守ってばかりじゃアタイを負かせないよ?」
『ヒットアンドアウェイ戦法』で再度双剣で斬り込んでくるベルモ。今度は攻撃の寸前に右に横跳びしてフェイントを掛けて来た。
ギンッ!
ただその程度の目眩ましで惑わされる俺じゃない。再び魔剣で受け流し、ベルモはまた後ろに跳んで距離を取った。なんだかガドゥを相手にしているみたいだ。
「アンタ… アタイの事を舐めてんのかい…?」
ベルモの額に青筋が浮かぶ。俺が手を出さない事で侮辱されたと感じたのか、怒っているのは一目瞭然だ。
もちろん誓って侮辱などしていない。一時は武器も握れない程に弱っていたベルモが、ややスリムになったとは言え、こんなに激しい運動をしても息一つ切らせていないのが純粋に嬉しくて感動していたのだ。
今にも死んでしまいそうに衰弱していたベルモが、高レベルの戦闘機動を行える程に元気になってくれた。こんなに嬉しい事は無い。
「何ヘラヘラ笑ってんだい、気持ち悪いねぇ!」
ベルモの3度目の突撃。過去2度の攻撃は俺の反応速度と新しい武器の慣らし運転を兼ねて、まだ本気では無かったらしい。
つまり今回の攻撃は本気で『殺し』にきた鋭く強い一撃、という事だ。
左手の剣撃を魔剣で受け止めたが、右手の剣が隙となった俺の脇腹を狙って突き上げられる。
ベルモの攻撃は俺のバリアを貫通するが、その過程で減退された攻撃力は身に付けていた鎧で間一髪防がれた。新ベルモはマジで強いぞ……。
俺に致命傷を与えられなかったのを瞬時に理解して、ベルモは再度距離を取るべく後ろに跳んだ。
だが何回も同じ手を食らう訳にも行かない。跳んだベルモに合わせて俺も同じ方向に飛び込む。ベルモが着地する瞬間を狙って彼女の腹に渾身のストレートパンチを打ち込んだ。
しっかりと足を付ける前に殴られたベルモは、踏ん張る事も出来ずにそのまま10mくらい吹き飛び、棒切れの様に転げ回った。
ベルモの防具は鎖帷子だが、帷子だけだと斬撃には強いが打撃には弱い。もし帷子の下に緩衝衣服を着けていなかった場合、普通に内臓が破裂しかねない力で殴ってしまったのだけれど、大丈夫かな…? 多分死んではいないと思うけど……。
「あいたたた…」
飛ばされて倒れたベルモがゆっくりと立ち上がる… 少なくとも死んだり再起不能レベルの負傷はしていなさそうだ。
「なるほど、噂に違わぬ強さだね。アンタの強さは分かったよ…」
スッキリした顔でニッコリ微笑むベルモ。意外に軽傷そうで安心した。これで納得してくれたなら良いのだが……。
しかしベルモは鬼族だけあって丈夫だな。或いは例の薬の効果で防御力も上がっているのかな? 今検証している時間は無いけど。
「これで気が済んだかな? 俺達は王城に急がないといけないんだが…」
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