魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第114話 合流

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「ねぇ、バルジオンに戻ったは良いけど、ティリティア嬢が居なくてもミア姫様と話しが出来るの?」

 バルジオンに帰国し、大急ぎで王都に馬を走らせていた俺とチャロアイトだが、道すがらチャロアイトの質問で大きな問題点を無視していた事に気が付いた。

 一応機密事項ではあるものの、城の非常口の場所は俺もチャロアイトも把握してはいる。ただ『冒険者』の俺も『魔道士』のチャロアイトも本来堂々と王城に入れる社会身分ではない。

 道が分かっているのだから潜入する事は容易だろうが、問題はそこから入るとして中の王女様その他の人達に歓迎されるかどうかという事になる。
 なにより最後に会ったミア王女は、ティリティアの策に乗る決心はついていなかった様に見えた。

 万が一そこで不審者として王女様に騒がれでもしたら、今後の計画が全て水の泡になってしまう。何としてもそれだけは避けたい。
 
 ましてや前回、ティリティアが俺の一物を模した張形を置き土産にして逃げる様に退散してきた事から、次にどんな顔をして会えば良いのか皆目見当もつかない。
 
 そもそも論として、もしティリティアが同行していたとしても、王女様が快く俺達を迎えてくれる保証は無いし、何よりヨアンナさんによる王女暗殺計画も、チャロアイトのうろ覚えの記憶頼りであり何ら確証があっての事では無い。

「ティリティアはクロニアの叔父さんのいる衛兵隊本部に寄るって言っていたから、そこで拾っていけるかな…? なるべくなら寄り道はしたくないんだが…」

 ガドゥの術の効果範囲が絞れない現段階では、王城へ極力急いでヨアンナさんを拘束する必要があるのだが、そもそも城に入れなければ何の意味も無い。

「数日逗留してからラモグに行く、みたいな事を言っていたから、まだ衛兵隊本部に居てくれると良いのだけれど…」

 俺とチャロアイトのウルカイザーミッションは実質2日で終了した。チャロアイトの言う通りティリティアがまだ衛兵隊本部に居てくれれば、最低限の時間ロスでティリティアを引き上げて迅速に王都に向かえる。

 ただ彼女がラモグへと出発してしまっていたらかなり面倒な事になる。
 言うまでもなく携帯電話等の連絡手段も無いこの世界で、移動中の相手を捕捉するのは極めて困難だ。
 そしてラモグに着いたら着いたで俺は指名手配中なので町の中には入れない。

 もしそうなったら時間を無駄にした上にティリティアとも合流出来ないと言う『詰み』状態になる。

「ラモグはともかく衛兵隊本部くらいなら大した寄り道にもならない。そこでティリティアを拾えるなら拾っていこう。もし会えなかったらティリティア抜きで王都に突撃だ」

 俺とチャロアイトは進路を少し西に変更した。

 ☆

「まぁ、一気に賑やかになりましたね。嬉しいわ」

 衛兵隊本部に設置された簡易教会にティリティアはまだ居てくれた。それどころか更に見慣れた顔が3つ。クロニア、モンモン、そして……。

「ベルモ…」

 そこには見慣れた赤毛の鬼族オーガの女丈夫、俺達の仲間のベルモがいた。

 病身が長かったせいかやや頬がやつれてはいるものの、その眼は以前と変わらず猛禽類を彷彿とさせる鋭い光を持っている。
 『蛇』の毒に冒されて半死半生だった頃のベルモとは全く違う、今の彼女からは出会った頃の荒々しさすら滲み出ていた。

 これはつまりリーナから貰った薬が効いて、ベルモの胸の病を治したと見て良いだろう。しかもモンモンの時の様に、ベルモの外見に変な影響は出ていない。うむ、良いことづくめだな。

「へぇ、このチンチクリンが噂の剣士様ってかい? 想像していたのよりかなり貧相だねぇ…」

 ベルモのまるで虫を見るかの様な冷たい視線は、喜び勇んでベルモに抱きつこうとした俺をその場に氷漬けにした。

 ☆

「…という訳で、体は治ったらしいのだが、その副作用でどうやら我々と出会った以降の記憶を無くしてしまっているようでな。お前の存在を話しても半信半疑で『じゃあ会わせろ』となって…」

 森での経緯をクロニアが説明してくれた。ベルモの病気が治ったのは喜ばしい事だが、ベルモは俺達の事や共に戦った時の記憶を丸ごと消失していた。

 ティリティアに呼ばれたクロニア達がこの衛兵隊本部に到着したのが今朝早く。俺とチャロアイトはそれに遅れること2時間程だったらしい。
 なので迎えたティリティアも互いの経過報告と旅の報告だけしか話していなかった、という事だった。

 ちなみにベルモの記憶喪失をティリティアの法術なりチャロアイトの魔術で治せないかを視線で問うてみたが、2人の表情は冷たかった。

 ティリティアの、というかアイトゥーシア教会の法術は、切断部位の接着等の高度な怪我治療は出来るけど、病気の類には解熱や消毒くらいしか出来ず、精神面の病に至っては何も対抗策が無いらしい。

 チャロアイトの薬を再度処方してもらうにしても、あの薬は『身体能力を一時的に大きく活性化させる』事で回復や強化を狙う物であり、記憶喪失の様な症状が治る保証はゼロだ。
 それどころか下手したら記憶が戻らないまま第3の手足が生えてくる可能性も否めない。

 どっちも微妙に使えないぜ……。

「ね、そうなったら『アレ』しか無いんじゃない…?」

 チャロアイトがこっそりと俺に耳打ちしてくる。『アレ』って何だよ?

 チャロアイトの声が聞こえたのかどうか定かでは無いが、ティリティア、クロニア、モンモンも同じ様な縋る視線で俺を見てくる。

 あぁ、アレね……。

「えぇと… とにかくベルモか覚えていなかったとしても、俺達にとっては感動の再会なんだよ。また会えて嬉しいぜベルモ!」

 俺はそんなわざとらしい言葉と同時にベルモに『握手しよう』と右手を突き出してみせた。

 もちろんその意図は俺の魔剣に宿る『淫奔』の能力だ。現状のベルモがどうであれ、もう一度触れてメロメロにしてしまえば、少なくとも刺々しい目で見られる事は無くなるだろう。

「ふむ… そうだね、アンタはアタイらが散々苦労した『熊』を退治してくれたそうだから、その礼くらいは言っておかないとね…」

 ベルモは俺の差し出した手をガッチリと掴み返し力を込めてくる。それこそ並の男なら手ごと握りつぶされる程の力を。

 よし触れたぞ? さぁどうだ…?

「さて、と… それじゃその『熊』を倒したっていう剣の冴えを見せてもらおうかね!」

 しかしベルモは何も無かったかの様にモンモンから返却されたと思しき双剣を持って練兵場に出ていった。

 あれ? 何も効果無し? 俺の能力が発動しなかったとかは無いよね…?

「あらら、『同じ人には2度目の魅了は効かない』って事かしらねぇ? それともベルモさんが『鋼の意志』で我慢してるのかしら…?」

 いずれにせよ期待していたのとは別の意味でベルモと一戦しなければ帰れない雰囲気になってきた……。
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