魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第118話 釈明

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「さて小僧、言いたい事があるなら地下牢で聞いてやるぞ。大人しくいて来い。まぁ『姫様に夜這いをかけに来た』ってんなら、今ここで俺が八つ裂きにしてやるけどな?」

 ゴルツさん。巨躯の鬼族オーガでバルジオン王家の近衛このえ隊長。『虚無ヴォイド』での作戦の際は冒険者による混成部隊を率いて、正規軍に先んじてゾンビ達を制圧した剛腕の指揮官だ。

 まぁその戦果の半分以上は俺の功績でもあるのだが。

 ゾンビ討伐の折に振り回していた戦斧ハルバードを担いで俺に迫るゴルツさん。
 今は武器だけ持って鎧は着ていない。本当に騒ぎを聞きつけて押っ取り刀でやってきたらしいな。

 ちなみに姫様への夜這いは既に済ませてあるから、今日の予定には無い。そういう意味では八つ裂きの心配は要らなさそうだな。

 …しかし地下牢とやらに連行されるのは都合が悪いぞ。当然このまま大人しく連れて行かれたら武装を解除されてしまうのは明白だ。
 
 俺の魔剣は俺の体から離すと加護の力が失われる。『魅了』が解けて俺の目の前で自死したイメッタさんは、まだ少しトラウマが残っているんだ。

 今更こんな所でティリティアやクロニア、更にミア姫達の『魅了』が解けたらと思うと気が気ではない。
 そして恐らくは剣に授けられた「力」や「叡智」も無くなって、下手したらこの世界の言葉すら話せなくなり、俺は本当に天涯孤独の身になってしまうだろう。

「ミア姫の近侍であるヨアンナ・シシューに、敵の魔術が掛けられている疑いがあって調べに来たんだ。緊急案件だったので、城の警備隊に話を通さなかったのは悪いと思っている。幻夢兵団のチャロアイトも事情をよく知っているので向こうにも確認して欲しい」

 本心はかなり動揺しているのだが、口からはスラスラと尤もらしい言い訳が出てきた。嘘は言っていないが、これは恐らく『策謀神』の発現だろうな。 

 勝手知ったる王城で尚且つ緊急事態だったせいか、本来は筋を通すべき城の警備隊に黙って行動したのは確かにマズかったかも知れない。

 ただその辺の動きはチャロアイトが気を利かせてくれていると期待していたが、そうでは無かった、という話だ。しかしこれはちょっと困ったな……。

「彼の言葉は本当です、ゴルツのオジサマ。私が彼をここまで導きました。咎を負うのであれば、それはわたくしに…」

 ティリティアも俺の弁護の為に前に出てきてくれた。ティリティアに責任を被せるつもりは毛頭ないけど、貴族の子女の助けはこの様な場合とても有効だ。

「むぅ… しかしティア嬢は小僧の仲間ですから、彼を庇う為に嘘をいている可能性も…」

 対応に困ったゴルツさんがミア姫に救援を願う視線を送る。

 ミア姫は既に立ち直り、目はまだ少し赤みを残すものの、完全に落ち着きを取り戻していた。

わたくしの近侍の事ゆえ、この者は私が直々に取り調べます。ゴルツ、彼とティアを私の部屋へ連れていきなさい」

 王女様も俺達の思惑がテロ行為では無かったと理解したのだろう。このタイミングで部屋に導かれるのはかなり大きな助け舟だぞ。
 
「この場は私とゴルツで引き受けます。なので警備の者は直ちに持ち場に戻り通常の仕事に就きなさい。ゴルツ、宜しいですね?」

 あのゴルツさんに頭ごなしにビシバシ指示を飛ばすミア姫の仕草は、歳若い娘とは思えない本当の王族の貫禄を感じたね。

 ☆
  
「はぁ… ヨアンナを殺した方だというのに、この身は貴方を抱きしめたくて仕方ない。本当、とんでもない呪いを掛けてくれましたね、ティア…」

 3度目となるミア王女様の部屋。ゴルツさんは幻夢兵団に問い合わせてチャロアイトの言質を取るためにこの場を離れた。
 従って今この部屋には俺とティリティア、そしてミア姫の3人だけだ。

 先ほどゴルツさんに見せていた凛とした顔は力を無くし、今のミア姫は長年仕えてきたヨアンナさんを亡くした悲しみに再び打ちひしがれている。

「ミア姉様、ご傷心のところ申し訳ありません。ヨアンナ・シシュー様に最近不審な動きはありませんでしたか? 腕の刺青いれずみに関しても…」

 その後の沈黙を破ったのはティリティアだ。俯いている王女様に追い討ちをかけるかの様に、不躾な質問をしていた。

 まぁ俺達の目的は『それ』なので、早く聞き出せるに越したことはないのだが、ティリティアも少し性急すぎる気がしないでもない。
 
 この辺はティリティアとミア姫、幼馴染みである2人の関係性で好転して欲しい所だな。俺にはこの場で振るえる力は何も無い。

「…本当にその刺青でヨアンナは操られていたのですか、ティア…?」

 事情を知らない王女様に、俺とティリティアはウルカイザーでの出来事を全て説明した。ヨアンナさんによるミア姫暗殺を阻止できた事も含めて。

 最初半信半疑だった王女様も、ヨアンナさんが操られていたが為の、死ぬ間際の不自然すぎる行動に得心ができたみたいだった。

 だってヨアンナさんは俺やティリティアの顔を知っているのだから、ミア姫を利用しようと近づく俺達を警戒こそすれ、いきなり「賊です!」と叫びだしたりしないはずだもの。

「最近のヨアンナ自身に不審な点は感じられませんでした。その例の『紋様』とやらもわたくしは存在すら存じ上げません… ヨアンナかのじょは常に籠手を嵌めていましたし…」

 ありゃりゃ、王女様方面の捜査は空振りかぁ… もしヨアンナさんの実家を調べていたチャロアイトも同様に情報入手に失敗していた場合、またしてもガドゥ捜索は振り出しに戻る事になる……。

 クソッ、本当にストレスの溜まる敵さんだぜ……。

 ☆
 
 程なくゴルツさんが戻ってきて、王女様の部屋で俺とティリティアら4人で顔を突き合わせる。
 だが良い話と悪い話は同時に訪れたらしい。
 
「幻夢兵団からの裏も取れた。『紋様』とやらの真偽は(幻夢兵団長の)リーナがこれから調べるそうだ。とりあえず坊主の疑いは晴れたが、それと城への無断侵入はまた別の話だからな…?」

 ゴルツさんの顔は険しく、怒っているのは間違いない。まぁ城の警備主任だもんなぁ。侵入者には厳しくなるよねぇ……。

「彼の行動も忠義心故の過ちであると考えます。ゴルツ、ここは温情ある対応をお願いします…」

 俺はどうやら罪を問われているらしい。王女様が庇ってくれてはいるが、もしこの後拘束されて武装解除なんて展開になったら、俺は抵抗してでも逃げるしか無い。
 
 下手したらラモグの時の様に犯罪者として手配されて、衛兵や冒険者、下手したらチャロアイトら幻夢兵団に追われる可能性もある。

 そんな事になったらバルジオンでの全てを失う。収監されるのと同様に俺は終わりだ。

 そうなったら、最悪ウルカイザーに亡命してゾビル… もといアルバ・レキーラ男爵だっけか? の元に逃げ込むしか無くなる……。

「オジサマ…」

 ティリティアも胸の前で手を組み、懇願する様な瞳でゴルツを見つめている。

 俺、どうなっちゃうのかな…?

 その瞬間、ゴルツさんは険しい戦士の顔をほころばせ、気の良いオジサンの顔になり、ニヤリと顔を歪める。

「この場は俺の裁量で坊主を無罪にしてやっても良い。ただ1つ頼みたい仕事があってだなぁ…」

 なるほど、そういう展開ね……。
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