魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

文字の大きさ
118 / 120

第119話 ゴルツの依頼

しおりを挟む
「仕事、ですか…?」

 今の状況でゴルツさんの提案を拒否する力は俺には無い。仕事が何であろうと従う以外に無いのだが、せめてその詳しい内容くらいは聞く権利があるだろう。

 ただ冒険者匠合ギルドを通してでは無く、ゴルツさんから直接に依頼をしてくるとなると、それなりに厄介で面倒くさい仕事であるのは容易に想像できる。

「うちのカーノ… 陛下が冒険者の出なのは知ってるよな?」

 もちろん知っている。ゴルツさんやリーナさんら今のバルジオン国の重鎮達も同じ冒険者として一党パーティで活躍していた事も。

「そんで、あいつ… 陛下は城に籠もって腕がなまるのを避ける為に、定期的に俺を呼び出して稽古の相手をさせるんだよ…」

 あ~、ふむふむ。大体読めてきたぞ……。

「俺もまだまだ現役ではあるが、それなりに歳も取ってきて、過酷な稽古が段々厳しくなってきてな…」

「それで俺に代わりを務めろ、と…?」

 何を言われるのか確定したので、結論を先に言っておく。長々と言い訳を聞かされるのも退屈だ。

「話が早くて助かるぜ。俺は警備主任として他にも例の紋様とやらの調査をしなくちゃならねぇから忙しいんだよ。それに何と言ってもカーノは先代の『勇者』だからな。半端なく強ぇぞ?」

 カーノ王の持つ『聖剣ラグロン』は『魔の者を弱体化させる能力』を持つ。アレと対峙すると俺はまともに呼吸すら出来なくなる、最悪に相性が悪い。
 以前に謁見した時はそれでドエライ目に遭ったものだ。
 
「『勇者』だと言うなら、今の勇者のショウ君にでも頼むのはダメなんですか…?」

 別の聖剣保持者である『勇者ショウ』。『蛇』討伐の時に大活躍してくれたのを覚えている。
 彼となら『勇者』同士仲良く稽古出来るのでは無かろうか?

「いやぁ、ショウの奴はまだまだ聖剣頼みで剣技も未熟な若造よ。お前の方がまだマシと思ってな」

 言うて俺も魔剣頼みの力技戦法だから、剣技としては素人並みだよ? 以前クロニアに稽古を付けてもらおうとか思っていたけど、結局出来ず終いだったし……。

 まぁショウの持つ聖剣は純粋な『対邪神特化型』で、攻撃力そのものは大した事は無いというのは聞き及んでいる。
 それに大人しい彼の性格では、あのクセの強い王様の相手は荷が重いだろうという、向こうの事情も分かるからな。

「…分かりました。いつから来たら良いですか?」
  
 どのみち断れる話でも無いし、稽古の相手を口実に今後堂々と城に入れる手段を手に入れられるのなら逆にラッキーまである。

「とりあえず陛下に俺の代わりにお前来るって話を通しておくから、改めて呼び出すわ。今度はキチンと正面から来いよ!」

 結局この場はヨアンナさんを死なせてしまっただけで、ガドゥに関する有益な情報は得られなかった。

 まぁ今度はヨアンナさんの実家が調べられてどうこう、という話になるのだろうが、純粋な『捜査』という面ではチャロアイトはともかく、俺達に出来る事はもう何も無いだろう。

 ここはすっぱり頭を切り替えて、「王様の稽古相手」という次のミッションに臨むべきなのだろうな……。

「また以前の様に真剣で斬り掛かられたりしませんよね…? 次もわたくしが同行した方が良いのでは…」

 前回の謁見では聖剣の力で満足に動けなくなった俺を、ティリティアが身を挺して守ってくれた。
 さすがに何度も女を盾にするのは気が引けるのでキッパリと断った。

 前回は何も分からない状況で王様らに「検分」されていたので、俺も何も出来ずにいたけど、次にまた斬りかかられる様な事態に対して心の準備が出来ていたのなら、如何様にも対処は可能だ。

 本当に何が起こるか分からないから、王様と真剣で切り結ぶ覚悟だけは決めていこうと思う……。
 
 ☆

 2日後、俺は1人で城の入り口に立っていた。
 
 ちなみにそれまでの期間、俺はウルカイザーでの仕事の成果を冒険者匠合ギルドに報告し、その功績を以て冒険者認識票に5つ目の打刻が成された。

 遂に… 遂に冒険者としての最高峰に当たる『5点冒険者』となる事が出来た訳だ。

 これでこのバルジオン王国に於いては、俺は貴族に等しい社会的立場としての身分が確立された事になる。
 これで大手を振ってティリティアに求婚を申し込めるし、副妻としてクロニアとも籍を同じくする事が出来るだろう。

 長かった… 本当に長かったよ。ここまで来る為にこれまで色々頑張ってきたんだもんなぁ… メチャメチャ感慨深い物があるよ……。

 もちろんその日は、冒険者匠合ギルド付属の酒場に於いて、他の冒険者達も巻き込んでの大宴会が催された。もちろん全て俺の奢りだ。
 本来は陰キャで宴会等とは縁遠かった俺だが、今回ばかりは特別だ。こんな日に騒がないでどうする?!
 
 その日は一晩中飲み明かし、翌日は酷い二日酔いだったがティリティアに法術で治してもらって、昼から皆で城に向かう為の服をあつらえに行った。

 今後は上流社会との付き合いも増えるから、との事だが、俺には服のセンスは全く分からないのでティリティア達に一任して揃えてもらったよ。
 
 もちろんいつ呼ばれるのか分からないので、とりあえずマントだけは展示品の吊るしだが、それなりに高級な物を購入した。下に着る物は出来上がりが早くて1週間後らしい。

 宿に帰った頃に城からの伝令が来てゴルツさんの「明日昼頃に城に来い」とのメッセージを受け取る。

 当然今日頼んだ服が明日着られる訳もなく、明日は今日新調したマントだけで見栄えを整えて入城するしか無い。まぁこれは仕方ないよね。
 
 更にその晩は俺とクロニアとティリティアの3人で、久々に熱い時間を過ごした。

 仲間の残りの3人だが、ベルモは健康を取り戻したものの、俺達と共に戦った記憶はついぞ戻らないままで、再度彼女に触れても魔剣の力で『魅了』する事は叶わなかった。

 そしてガチムチの大人の体になったモンモンとも体を合わせるのが正直無理だと判断した。
 第一『男の娘』としてのモンモンに惑わされて抱いてしまっただけで、俺は元々そっちのケは無いんだよ。目が覚めた気分だよ。

 まぁそんな感じでモンモンには疎外感を味わわせてしまって申し訳ないが、ベルモを連れて夜の街を散策してもらっていた。
 2人が外で何をやっていたのかは俺は知らないが、翌朝帰ってきた時にベルモはベロンベロンに酔っていたし、モンモンは体中傷だらけだった。

 残るチャロアイトはあれから音信不通だ。恐らくヨアンナさんの関係で『幻夢兵団』の仕事が忙しいのだと思われる。
 こちらからチャロアイトに連絡を取る手段が無いので、このまま放置せざるを得ない。

「この3人で、というのも久し振りで良いものですわねぇ…」

 一戦終えた後のティリティアの呟きが、どこか遠い世界の物の様に感じられたのは、俺の気のせいだったのかな…?

 ☆

「よぉ来たな。陛下もちょうどお前と会いたいと思っていたらしくて、話はトントンと進んだぜ。じゃあいて来い」

 出迎えてくれたゴルツさんに従って、訓練所を兼ねていると思われる城の中庭に通された。
 中庭そこは観賞用の花を植えた憩う為の庭園では無く、訓練用の木剣や木槍が多数並べられている無骨な場所だった。

 そんな場所でゴルツさんは俺を「少し待ってろ」と置き去りにして、1人で奥に行ってしまう。
 やがてしばらくして、ゴルツさんと入れ替わりで入って来る人の気配があった。

「久しぶりだな魔剣の少年。ゴルツの推挙で余の相手をするとの事だが、『覚悟は出来ている』か?」

 棚に綺麗に並べられた木剣類を眺めていた俺に背後から声を掛ける相手。言うまでもなくこの国の王、カーノ・バルジオン1世陛下のご登場だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...