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第119話 ゴルツの依頼
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「仕事、ですか…?」
今の状況でゴルツさんの提案を拒否する力は俺には無い。仕事が何であろうと従う以外に無いのだが、せめてその詳しい内容くらいは聞く権利があるだろう。
ただ冒険者匠合を通してでは無く、ゴルツさんから直接に依頼をしてくるとなると、それなりに厄介で面倒くさい仕事であるのは容易に想像できる。
「うちのカーノ… 陛下が冒険者の出なのは知ってるよな?」
もちろん知っている。ゴルツさんやリーナさんら今のバルジオン国の重鎮達も同じ冒険者として一党で活躍していた事も。
「そんで、あいつ… 陛下は城に籠もって腕が鈍るのを避ける為に、定期的に俺を呼び出して稽古の相手をさせるんだよ…」
あ~、ふむふむ。大体読めてきたぞ……。
「俺もまだまだ現役ではあるが、それなりに歳も取ってきて、過酷な稽古が段々厳しくなってきてな…」
「それで俺に代わりを務めろ、と…?」
何を言われるのか確定したので、結論を先に言っておく。長々と言い訳を聞かされるのも退屈だ。
「話が早くて助かるぜ。俺は警備主任として他にも例の紋様とやらの調査をしなくちゃならねぇから忙しいんだよ。それに何と言ってもカーノは先代の『勇者』だからな。半端なく強ぇぞ?」
カーノ王の持つ『聖剣ラグロン』は『魔の者を弱体化させる能力』を持つ。アレと対峙すると俺はまともに呼吸すら出来なくなる、最悪に相性が悪い。
以前に謁見した時はそれでドエライ目に遭ったものだ。
「『勇者』だと言うなら、今の勇者のショウ君にでも頼むのはダメなんですか…?」
別の聖剣保持者である『勇者ショウ』。『蛇』討伐の時に大活躍してくれたのを覚えている。
彼となら『勇者』同士仲良く稽古出来るのでは無かろうか?
「いやぁ、ショウの奴はまだまだ聖剣頼みで剣技も未熟な若造よ。お前の方がまだマシと思ってな」
言うて俺も魔剣頼みの力技戦法だから、剣技としては素人並みだよ? 以前クロニアに稽古を付けてもらおうとか思っていたけど、結局出来ず終いだったし……。
まぁショウの持つ聖剣は純粋な『対邪神特化型』で、攻撃力そのものは大した事は無いというのは聞き及んでいる。
それに大人しい彼の性格では、あのクセの強い王様の相手は荷が重いだろうという、向こうの事情も分かるからな。
「…分かりました。いつから来たら良いですか?」
どのみち断れる話でも無いし、稽古の相手を口実に今後堂々と城に入れる手段を手に入れられるのなら逆にラッキーまである。
「とりあえず陛下に俺の代わりにお前来るって話を通しておくから、改めて呼び出すわ。今度はキチンと正面から来いよ!」
結局この場はヨアンナさんを死なせてしまっただけで、ガドゥに関する有益な情報は得られなかった。
まぁ今度はヨアンナさんの実家が調べられてどうこう、という話になるのだろうが、純粋な『捜査』という面ではチャロアイトはともかく、俺達に出来る事はもう何も無いだろう。
ここはすっぱり頭を切り替えて、「王様の稽古相手」という次のミッションに臨むべきなのだろうな……。
「また以前の様に真剣で斬り掛かられたりしませんよね…? 次も私が同行した方が良いのでは…」
前回の謁見では聖剣の力で満足に動けなくなった俺を、ティリティアが身を挺して守ってくれた。
さすがに何度も女を盾にするのは気が引けるのでキッパリと断った。
前回は何も分からない状況で王様らに「検分」されていたので、俺も何も出来ずにいたけど、次にまた斬りかかられる様な事態に対して心の準備が出来ていたのなら、如何様にも対処は可能だ。
本当に何が起こるか分からないから、王様と真剣で切り結ぶ覚悟だけは決めていこうと思う……。
☆
2日後、俺は1人で城の入り口に立っていた。
ちなみにそれまでの期間、俺はウルカイザーでの仕事の成果を冒険者匠合に報告し、その功績を以て冒険者認識票に5つ目の打刻が成された。
遂に… 遂に冒険者としての最高峰に当たる『5点冒険者』となる事が出来た訳だ。
これでこのバルジオン王国に於いては、俺は貴族に等しい社会的立場としての身分が確立された事になる。
これで大手を振ってティリティアに求婚を申し込めるし、副妻としてクロニアとも籍を同じくする事が出来るだろう。
長かった… 本当に長かったよ。ここまで来る為にこれまで色々頑張ってきたんだもんなぁ… メチャメチャ感慨深い物があるよ……。
もちろんその日は、冒険者匠合付属の酒場に於いて、他の冒険者達も巻き込んでの大宴会が催された。もちろん全て俺の奢りだ。
本来は陰キャで宴会等とは縁遠かった俺だが、今回ばかりは特別だ。こんな日に騒がないでどうする?!
その日は一晩中飲み明かし、翌日は酷い二日酔いだったがティリティアに法術で治してもらって、昼から皆で城に向かう為の服を誂えに行った。
今後は上流社会との付き合いも増えるから、との事だが、俺には服のセンスは全く分からないのでティリティア達に一任して揃えてもらったよ。
もちろんいつ呼ばれるのか分からないので、とりあえずマントだけは展示品の吊るしだが、それなりに高級な物を購入した。下に着る物は出来上がりが早くて1週間後らしい。
宿に帰った頃に城からの伝令が来てゴルツさんの「明日昼頃に城に来い」とのメッセージを受け取る。
当然今日頼んだ服が明日着られる訳もなく、明日は今日新調したマントだけで見栄えを整えて入城するしか無い。まぁこれは仕方ないよね。
更にその晩は俺とクロニアとティリティアの3人で、久々に熱い時間を過ごした。
仲間の残りの3人だが、ベルモは健康を取り戻したものの、俺達と共に戦った記憶はついぞ戻らないままで、再度彼女に触れても魔剣の力で『魅了』する事は叶わなかった。
そしてガチムチの大人の体になったモンモンとも体を合わせるのが正直無理だと判断した。
第一『男の娘』としてのモンモンに惑わされて抱いてしまっただけで、俺は元々そっちのケは無いんだよ。目が覚めた気分だよ。
まぁそんな感じでモンモンには疎外感を味わわせてしまって申し訳ないが、ベルモを連れて夜の街を散策してもらっていた。
2人が外で何をやっていたのかは俺は知らないが、翌朝帰ってきた時にベルモはベロンベロンに酔っていたし、モンモンは体中傷だらけだった。
残るチャロアイトはあれから音信不通だ。恐らくヨアンナさんの関係で『幻夢兵団』の仕事が忙しいのだと思われる。
こちらからチャロアイトに連絡を取る手段が無いので、このまま放置せざるを得ない。
「この3人で、というのも久し振りで良いものですわねぇ…」
一戦終えた後のティリティアの呟きが、どこか遠い世界の物の様に感じられたのは、俺の気のせいだったのかな…?
☆
「よぉ来たな。陛下もちょうどお前と会いたいと思っていたらしくて、話はトントンと進んだぜ。じゃあ従いて来い」
出迎えてくれたゴルツさんに従って、訓練所を兼ねていると思われる城の中庭に通された。
中庭は観賞用の花を植えた憩う為の庭園では無く、訓練用の木剣や木槍が多数並べられている無骨な場所だった。
そんな場所でゴルツさんは俺を「少し待ってろ」と置き去りにして、1人で奥に行ってしまう。
やがてしばらくして、ゴルツさんと入れ替わりで入って来る人の気配があった。
「久しぶりだな魔剣の少年。ゴルツの推挙で余の相手をするとの事だが、『覚悟は出来ている』か?」
棚に綺麗に並べられた木剣類を眺めていた俺に背後から声を掛ける相手。言うまでもなくこの国の王、カーノ・バルジオン1世陛下のご登場だ。
今の状況でゴルツさんの提案を拒否する力は俺には無い。仕事が何であろうと従う以外に無いのだが、せめてその詳しい内容くらいは聞く権利があるだろう。
ただ冒険者匠合を通してでは無く、ゴルツさんから直接に依頼をしてくるとなると、それなりに厄介で面倒くさい仕事であるのは容易に想像できる。
「うちのカーノ… 陛下が冒険者の出なのは知ってるよな?」
もちろん知っている。ゴルツさんやリーナさんら今のバルジオン国の重鎮達も同じ冒険者として一党で活躍していた事も。
「そんで、あいつ… 陛下は城に籠もって腕が鈍るのを避ける為に、定期的に俺を呼び出して稽古の相手をさせるんだよ…」
あ~、ふむふむ。大体読めてきたぞ……。
「俺もまだまだ現役ではあるが、それなりに歳も取ってきて、過酷な稽古が段々厳しくなってきてな…」
「それで俺に代わりを務めろ、と…?」
何を言われるのか確定したので、結論を先に言っておく。長々と言い訳を聞かされるのも退屈だ。
「話が早くて助かるぜ。俺は警備主任として他にも例の紋様とやらの調査をしなくちゃならねぇから忙しいんだよ。それに何と言ってもカーノは先代の『勇者』だからな。半端なく強ぇぞ?」
カーノ王の持つ『聖剣ラグロン』は『魔の者を弱体化させる能力』を持つ。アレと対峙すると俺はまともに呼吸すら出来なくなる、最悪に相性が悪い。
以前に謁見した時はそれでドエライ目に遭ったものだ。
「『勇者』だと言うなら、今の勇者のショウ君にでも頼むのはダメなんですか…?」
別の聖剣保持者である『勇者ショウ』。『蛇』討伐の時に大活躍してくれたのを覚えている。
彼となら『勇者』同士仲良く稽古出来るのでは無かろうか?
「いやぁ、ショウの奴はまだまだ聖剣頼みで剣技も未熟な若造よ。お前の方がまだマシと思ってな」
言うて俺も魔剣頼みの力技戦法だから、剣技としては素人並みだよ? 以前クロニアに稽古を付けてもらおうとか思っていたけど、結局出来ず終いだったし……。
まぁショウの持つ聖剣は純粋な『対邪神特化型』で、攻撃力そのものは大した事は無いというのは聞き及んでいる。
それに大人しい彼の性格では、あのクセの強い王様の相手は荷が重いだろうという、向こうの事情も分かるからな。
「…分かりました。いつから来たら良いですか?」
どのみち断れる話でも無いし、稽古の相手を口実に今後堂々と城に入れる手段を手に入れられるのなら逆にラッキーまである。
「とりあえず陛下に俺の代わりにお前来るって話を通しておくから、改めて呼び出すわ。今度はキチンと正面から来いよ!」
結局この場はヨアンナさんを死なせてしまっただけで、ガドゥに関する有益な情報は得られなかった。
まぁ今度はヨアンナさんの実家が調べられてどうこう、という話になるのだろうが、純粋な『捜査』という面ではチャロアイトはともかく、俺達に出来る事はもう何も無いだろう。
ここはすっぱり頭を切り替えて、「王様の稽古相手」という次のミッションに臨むべきなのだろうな……。
「また以前の様に真剣で斬り掛かられたりしませんよね…? 次も私が同行した方が良いのでは…」
前回の謁見では聖剣の力で満足に動けなくなった俺を、ティリティアが身を挺して守ってくれた。
さすがに何度も女を盾にするのは気が引けるのでキッパリと断った。
前回は何も分からない状況で王様らに「検分」されていたので、俺も何も出来ずにいたけど、次にまた斬りかかられる様な事態に対して心の準備が出来ていたのなら、如何様にも対処は可能だ。
本当に何が起こるか分からないから、王様と真剣で切り結ぶ覚悟だけは決めていこうと思う……。
☆
2日後、俺は1人で城の入り口に立っていた。
ちなみにそれまでの期間、俺はウルカイザーでの仕事の成果を冒険者匠合に報告し、その功績を以て冒険者認識票に5つ目の打刻が成された。
遂に… 遂に冒険者としての最高峰に当たる『5点冒険者』となる事が出来た訳だ。
これでこのバルジオン王国に於いては、俺は貴族に等しい社会的立場としての身分が確立された事になる。
これで大手を振ってティリティアに求婚を申し込めるし、副妻としてクロニアとも籍を同じくする事が出来るだろう。
長かった… 本当に長かったよ。ここまで来る為にこれまで色々頑張ってきたんだもんなぁ… メチャメチャ感慨深い物があるよ……。
もちろんその日は、冒険者匠合付属の酒場に於いて、他の冒険者達も巻き込んでの大宴会が催された。もちろん全て俺の奢りだ。
本来は陰キャで宴会等とは縁遠かった俺だが、今回ばかりは特別だ。こんな日に騒がないでどうする?!
その日は一晩中飲み明かし、翌日は酷い二日酔いだったがティリティアに法術で治してもらって、昼から皆で城に向かう為の服を誂えに行った。
今後は上流社会との付き合いも増えるから、との事だが、俺には服のセンスは全く分からないのでティリティア達に一任して揃えてもらったよ。
もちろんいつ呼ばれるのか分からないので、とりあえずマントだけは展示品の吊るしだが、それなりに高級な物を購入した。下に着る物は出来上がりが早くて1週間後らしい。
宿に帰った頃に城からの伝令が来てゴルツさんの「明日昼頃に城に来い」とのメッセージを受け取る。
当然今日頼んだ服が明日着られる訳もなく、明日は今日新調したマントだけで見栄えを整えて入城するしか無い。まぁこれは仕方ないよね。
更にその晩は俺とクロニアとティリティアの3人で、久々に熱い時間を過ごした。
仲間の残りの3人だが、ベルモは健康を取り戻したものの、俺達と共に戦った記憶はついぞ戻らないままで、再度彼女に触れても魔剣の力で『魅了』する事は叶わなかった。
そしてガチムチの大人の体になったモンモンとも体を合わせるのが正直無理だと判断した。
第一『男の娘』としてのモンモンに惑わされて抱いてしまっただけで、俺は元々そっちのケは無いんだよ。目が覚めた気分だよ。
まぁそんな感じでモンモンには疎外感を味わわせてしまって申し訳ないが、ベルモを連れて夜の街を散策してもらっていた。
2人が外で何をやっていたのかは俺は知らないが、翌朝帰ってきた時にベルモはベロンベロンに酔っていたし、モンモンは体中傷だらけだった。
残るチャロアイトはあれから音信不通だ。恐らくヨアンナさんの関係で『幻夢兵団』の仕事が忙しいのだと思われる。
こちらからチャロアイトに連絡を取る手段が無いので、このまま放置せざるを得ない。
「この3人で、というのも久し振りで良いものですわねぇ…」
一戦終えた後のティリティアの呟きが、どこか遠い世界の物の様に感じられたのは、俺の気のせいだったのかな…?
☆
「よぉ来たな。陛下もちょうどお前と会いたいと思っていたらしくて、話はトントンと進んだぜ。じゃあ従いて来い」
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中庭は観賞用の花を植えた憩う為の庭園では無く、訓練用の木剣や木槍が多数並べられている無骨な場所だった。
そんな場所でゴルツさんは俺を「少し待ってろ」と置き去りにして、1人で奥に行ってしまう。
やがてしばらくして、ゴルツさんと入れ替わりで入って来る人の気配があった。
「久しぶりだな魔剣の少年。ゴルツの推挙で余の相手をするとの事だが、『覚悟は出来ている』か?」
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