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第66話 変化
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「う、う~ん…」
モンモンは発熱の為に意識も朦朧としている様だった。温度計を持ち合わせていないので正確な体温は計り知れないが、触った感じ恐らく40度近いと思われる。
「おいおい、どうすんだよコレ… もう夜を徹して馬を飛ばして王都に帰るしか無いのか…?」
俺には医学の心得はないし、無敵の聖剣でも他人を癒やす力は無いし、もう濡れた手拭いを額に置いてやるくらいしか出来る事はない。
「そんな事しても馬が潰れちゃうだけで、王都に辿り着けるかどうかも怪しいわ…」
「だからどうするんだよ!?」
思わず大きな声が出る。チャロアイトは俺のリアクションに驚く仕草も見せずにただ首を振った。
「落ち着いて。まず私は学者でも治癒士でも無いから『どうすれば良いか?』は分からないわ。モンモンちゃんを助けて上げたいとは思ってるけど…」
ここまでモンモンに散々翻弄されてきたけど、こいつだって要所要所で色々と役に立ってはくれていた。何よりこの世界において、聖剣の『魅了』の力を抜きにして俺に好意を抱いてくれていた唯一の人物でもある。
「う… うぐ… うがぁぁぁ…」
意識の無いまま、モンモンが胸を押さえて苦しみ始めた。焚き火の炎に照らされたモンモンの肌の色から、段々血色が褪せていく。これもうマジでヤバいやつだ……。
ここで怪物と化したモンモンを俺の手で仕留める、なんて別れ方はしたくない。モンモンは仲間なのに! どうにか手は無いのか? どうにか……。
そうだ!
「おいチャロアイト、お前ベルモに飲ませる為の薬って今持っているか?! ひょっとしてそれをモンモンに飲ませたら治せるか?!」
もう他に縋る手が無い。一か八かでもモンモンをゾンビ化から救えるなら、手遅れになる前に何でも試しておきたいし、そうするべきだ。
「え…? 薬ならあるわよ…」
そう言ってチャロアイトは豊満な胸の谷間から液体の入った小瓶を取り出した。
「でもよく考えて。この薬は『回復薬』でも『毒消し』でも無いの。体の弱っている部分を無理やり活性化させる『強化薬』、今のモンモンちゃんに飲ませてどんな効果が出るのかまるで分からないし、最悪身体強化された屍人が生まれる事も…」
チャロアイトの言う事は分かる。だが今は他に取れる手段が無いんだ。ここまでやって本当にモンモンがゾンビ化してしまったなら、それこそ俺の手で引導を渡してやるさ……。
「とにかく薬を貸してくれ! この後どうなっても俺が責任とるから…!」
俺はチャロアイトの手から奪う様に小瓶を受け取り、苦しみ続けているモンモンに近付いて膝をつく。
「モンモン、もう少し踏ん張ってくれ… これを飲め。お前は『強い奴』だ…」
モンモンの目は見開いたままだが、焦点は合っていない。『薬を飲む』という能動的な動きすら出来なくなってしまっていた為、俺は無茶を承知でモンモンの頭を上に向かせて、開いた口に薬を流し込んだ。
そのまま無理やり口を閉じさせ鼻をつまむ。こうすれば口の中にあるものを飲み込ませる事が出来る。
何でそんなやり方を知っているかって? そりゃ昔、『飲み込みたくない物』を無理やり飲み込まさせられた事があったからだよ。それ以上は察してくれ……。
モンモンは薬を飲み込んだ直後に大きくむせてえづいている。ゾンビとして死体になっていたのなら恐らくは取らないリアクションだ。まだ希望はある。
やがてモンモンは大きくビクン! と体を震わせ、次は小刻みに痙攣し始めた。
うぇぇぇ、大丈夫かなコレ…? 俺もチャロアイトもこの後の展開が全く読めずに固まってしまっている。チャロアイトがここまで茫然自失とするのも、かなりレアケースなのではなかろうか?
「うぐ… うがぁぁぁぁっ!!」
再びモンモンが胸を掻きむしりだす。今モンモンの体内では薬とゾンビウイルスの激しい戦いが繰り広げられているのだろう。
殊この段階に至っては俺達に出来る事はもう本当に何も無い。モンモン自身の体力が尽きる前にゾンビウイルスを退治し切れるかどうかの瀬戸際なのだ。
「熱い、熱いぃぃっ!」
モンモンの声が太く聞こえる。変声期前男子のアニメキャラを彷彿とさせる様なコロコロとした声ではなく、高校生男子の様な耳に障る声だ。
そのままモンモンは立ち上がり、「熱い」を連呼しながらキャンプ地近くの川へと走って行ってしまった。
当然後を追うが、俺達よりも素早いモンモンはいち早く川にたどり着き、そのまま身一つで飛び込んだ。
「一体何がどうなって…?」
俺より少し遅れてチャロアイトが到着するが、もちろん俺に何らかの説明が出来る訳もない。川に飛び込んだモンモンは現状沈んだままで、生きているのか死んでいるのかすら覚束ない。
心配ではあるが、川面は暗くモンモンの物と思われる気泡すら浮いてくる気配もない。
モンモンを探しに行きたいが、居場所の目星すら立たない状態で飛び込んでも意味が無い。
どうにも攻めあぐねて動けずにいる俺とチャロアイトだが、およそ10秒ほど後に状況が動いた。
岸から5mほど、俺達から10mほど離れた水面からボコボコと気泡が上がったのだ。『モンモンか?!』と近寄って俺の足が水に浸かったタイミングで、その気泡の浮いた地点で水が大きく撥ねた。
「うがー、痛いー、体中がギシギシ言ってるよー!」
そこに現れたのは長身で筋肉ムキムキの若い男。上半身は裸で、下半身は水に埋もれていて分からない。歳の頃は10代半ばから20代、声質も年齢相応。
そして何より特徴的なのは、その額から生えている一対の角… こいつは恐らく鬼族だ……。
「えー? なんでボク川の中にいるの? もしかしておにーさんが寝ているボクを落としたとかー?」
そいつは恨みがましい目で俺の方を向き直る。
その言い草… お前もしかしてモンモンなのか……?
モンモンは発熱の為に意識も朦朧としている様だった。温度計を持ち合わせていないので正確な体温は計り知れないが、触った感じ恐らく40度近いと思われる。
「おいおい、どうすんだよコレ… もう夜を徹して馬を飛ばして王都に帰るしか無いのか…?」
俺には医学の心得はないし、無敵の聖剣でも他人を癒やす力は無いし、もう濡れた手拭いを額に置いてやるくらいしか出来る事はない。
「そんな事しても馬が潰れちゃうだけで、王都に辿り着けるかどうかも怪しいわ…」
「だからどうするんだよ!?」
思わず大きな声が出る。チャロアイトは俺のリアクションに驚く仕草も見せずにただ首を振った。
「落ち着いて。まず私は学者でも治癒士でも無いから『どうすれば良いか?』は分からないわ。モンモンちゃんを助けて上げたいとは思ってるけど…」
ここまでモンモンに散々翻弄されてきたけど、こいつだって要所要所で色々と役に立ってはくれていた。何よりこの世界において、聖剣の『魅了』の力を抜きにして俺に好意を抱いてくれていた唯一の人物でもある。
「う… うぐ… うがぁぁぁ…」
意識の無いまま、モンモンが胸を押さえて苦しみ始めた。焚き火の炎に照らされたモンモンの肌の色から、段々血色が褪せていく。これもうマジでヤバいやつだ……。
ここで怪物と化したモンモンを俺の手で仕留める、なんて別れ方はしたくない。モンモンは仲間なのに! どうにか手は無いのか? どうにか……。
そうだ!
「おいチャロアイト、お前ベルモに飲ませる為の薬って今持っているか?! ひょっとしてそれをモンモンに飲ませたら治せるか?!」
もう他に縋る手が無い。一か八かでもモンモンをゾンビ化から救えるなら、手遅れになる前に何でも試しておきたいし、そうするべきだ。
「え…? 薬ならあるわよ…」
そう言ってチャロアイトは豊満な胸の谷間から液体の入った小瓶を取り出した。
「でもよく考えて。この薬は『回復薬』でも『毒消し』でも無いの。体の弱っている部分を無理やり活性化させる『強化薬』、今のモンモンちゃんに飲ませてどんな効果が出るのかまるで分からないし、最悪身体強化された屍人が生まれる事も…」
チャロアイトの言う事は分かる。だが今は他に取れる手段が無いんだ。ここまでやって本当にモンモンがゾンビ化してしまったなら、それこそ俺の手で引導を渡してやるさ……。
「とにかく薬を貸してくれ! この後どうなっても俺が責任とるから…!」
俺はチャロアイトの手から奪う様に小瓶を受け取り、苦しみ続けているモンモンに近付いて膝をつく。
「モンモン、もう少し踏ん張ってくれ… これを飲め。お前は『強い奴』だ…」
モンモンの目は見開いたままだが、焦点は合っていない。『薬を飲む』という能動的な動きすら出来なくなってしまっていた為、俺は無茶を承知でモンモンの頭を上に向かせて、開いた口に薬を流し込んだ。
そのまま無理やり口を閉じさせ鼻をつまむ。こうすれば口の中にあるものを飲み込ませる事が出来る。
何でそんなやり方を知っているかって? そりゃ昔、『飲み込みたくない物』を無理やり飲み込まさせられた事があったからだよ。それ以上は察してくれ……。
モンモンは薬を飲み込んだ直後に大きくむせてえづいている。ゾンビとして死体になっていたのなら恐らくは取らないリアクションだ。まだ希望はある。
やがてモンモンは大きくビクン! と体を震わせ、次は小刻みに痙攣し始めた。
うぇぇぇ、大丈夫かなコレ…? 俺もチャロアイトもこの後の展開が全く読めずに固まってしまっている。チャロアイトがここまで茫然自失とするのも、かなりレアケースなのではなかろうか?
「うぐ… うがぁぁぁぁっ!!」
再びモンモンが胸を掻きむしりだす。今モンモンの体内では薬とゾンビウイルスの激しい戦いが繰り広げられているのだろう。
殊この段階に至っては俺達に出来る事はもう本当に何も無い。モンモン自身の体力が尽きる前にゾンビウイルスを退治し切れるかどうかの瀬戸際なのだ。
「熱い、熱いぃぃっ!」
モンモンの声が太く聞こえる。変声期前男子のアニメキャラを彷彿とさせる様なコロコロとした声ではなく、高校生男子の様な耳に障る声だ。
そのままモンモンは立ち上がり、「熱い」を連呼しながらキャンプ地近くの川へと走って行ってしまった。
当然後を追うが、俺達よりも素早いモンモンはいち早く川にたどり着き、そのまま身一つで飛び込んだ。
「一体何がどうなって…?」
俺より少し遅れてチャロアイトが到着するが、もちろん俺に何らかの説明が出来る訳もない。川に飛び込んだモンモンは現状沈んだままで、生きているのか死んでいるのかすら覚束ない。
心配ではあるが、川面は暗くモンモンの物と思われる気泡すら浮いてくる気配もない。
モンモンを探しに行きたいが、居場所の目星すら立たない状態で飛び込んでも意味が無い。
どうにも攻めあぐねて動けずにいる俺とチャロアイトだが、およそ10秒ほど後に状況が動いた。
岸から5mほど、俺達から10mほど離れた水面からボコボコと気泡が上がったのだ。『モンモンか?!』と近寄って俺の足が水に浸かったタイミングで、その気泡の浮いた地点で水が大きく撥ねた。
「うがー、痛いー、体中がギシギシ言ってるよー!」
そこに現れたのは長身で筋肉ムキムキの若い男。上半身は裸で、下半身は水に埋もれていて分からない。歳の頃は10代半ばから20代、声質も年齢相応。
そして何より特徴的なのは、その額から生えている一対の角… こいつは恐らく鬼族だ……。
「えー? なんでボク川の中にいるの? もしかしておにーさんが寝ているボクを落としたとかー?」
そいつは恨みがましい目で俺の方を向き直る。
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