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第67話 異形
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「なぁチャロアイト…」
「…なにかしら?」
「…どうすんだよコレ?」
「…知らないわよ、貴方が『責任取るから』って、私から無理やり薬を奪ったんじゃない」
「だよな…」
俺達の眼の前にはボディビルダーも真っ青な、見事な逆三角形の上半身の男がいる。性格はクソガキだったとは言え、かつて『ロリ枠』だったモンモンが見る影もなく成長してしまったのだ。
本人はまだ自分の体の変質を認識していない様で、川から川岸に向けてズンズンと歩いてきた。
「あー、なんか声もやたらイガイガするし完全に風邪ひいたよねコレ。イタズラにしてもやって良い事と悪い事があると思うんだ…」
今のモンモンは身長が180cmを超え、俺はおろかベルモよりも大柄になっている。顔立ちはあまり変わらないが、以前よりも顎骨がしっかりとしてきて男性らしい形と言えるだろう。幼さが残る反面、ムキムキマッチョな体がとんでもなく不釣り合いだ。
モンモンは水深が膝丈よりも低くなった辺りで違和感を抱いた様だ。今まで見上げていた俺を見下ろす視点になって、ようやく事態を理解してきたのか挙動が怪しくなってきた。
「うん…? あれ…? おにーさん達小さくなった?」
どうやら真実に気がついたらしく声が上ずっている。しかし俺には『責任を取って』真実を伝える義務がある。
「そうじゃない。自分の体をよく確かめてみろ…」
俺の言葉に怯えた目で恐る恐る自分の体を検めるモンモン、太い腕を、熱い胸板を、以前の3倍程に伸びた額の角を、そしてはち切れんばかりに股間の膨らんだ女物の黒いパンツを……。
「な、なんじゃこりゃ~っ!!」
人気のない川辺に、殉職間近の刑事の様な成人男子の野太い叫び声が上がった。
☆
「私はちゃんと警告したのよ? 『何が起こるか分からない』って。それなのに彼ったら強引に私の事を…」
落ち着いたモンモンに事情説明を要求され、俺とチャロアイトは答えに窮していた。チャロアイトはこんな感じで全責任を俺に引っ被せるつもりらしい。まぁ確かに俺の責任なんだけど、それを踏まえた上でどうしたら良いんだろうか…?
いや別に悪意があってこうなった訳ではなく、あの時に薬を飲ませなければモンモンは高確率でゾンビになっていただろう。
ホラ、アレだよ、『善きサマリア人の法』。善意の行いであるならば悪い結果になっても無罪で処罰されないってやつ。この世界に聖書の教えがあるとは思えないが、アイトゥーシア教会だってきっと似たような概念はあるはずだ。だから俺は悪くない。
「まぁ、あんな腐った化け物になるのに比べたら何倍もマシだけどさ、なんか別の化け物になっちゃった気分だよ…」
とりあえず濡れた体を乾かす為に焚き火のもとに移動、モンモンには俺の予備のマントを貸してやる。火を前にマントに包まったモンモンは膝を抱えてうずくまり、膝に顔を埋めていた。
「ねぇおにーさん… ボクどうなるの? ボクから『可愛さ』が無くなったら一党にいる価値無いよね…? 追放されちゃうの…?」
「いやちょっと待て」
俺達がモンモンを仲間にしたのは『盗賊技能の持ち主』だからであって『可愛いから』では無い。根本的に勘違いしてないか?
そりゃ小柄な体と美少女と見紛う外見にスベスベの肌、男と分かっていても勢い余って抱いてしまった俺が言うのも烏滸がましいが、モンモンは享楽ではなくて仕事の為に仲間になって貰っている人材なのだ。
「俺は別にお前が可愛いからとか関係なく助けたし、それ以前に仲間だと思っている。追放なんて考えてすらいないよ…」
「ホントっ?!」
好物を貰った犬みたいに顔をパァと輝かせモンモンは俺に抱き着いて来た。以前のモンモンなら甘えた子が「わぁい!」とじゃれてくるイメージがあったが、今のモンモンだと普通にタックルだ。押し倒されて俺の上で歓喜の瞳で俺を見るモンモンに、俺はそのまま犯されそうな恐怖感を覚えていた。奴の股間に何やら硬い物の反応があるし……。
「とりあえずモンモンちゃん、体に不調は無いかしら? もし屍人の要因がまだ体内に残っているなら街へは帰れないわよ…」
押し倒された俺の傍らに立ち、チャロアイトが冷静に告げる。確かに一見まともそうに見えるモンモンだが、元気に動いているゾンビかも知れないし、その爪や牙にゾンビ毒が残っていないとも限らない。
チャロアイトに言われて再び自分の体を検めるモンモン。途中何度も首をひねって何か考え事をしていたが、やがてチャロアイトに向けて大きく首を振った。
「体中の骨と筋肉がバッキバキに痛い。でも我慢できない程じゃない。熱っぽさは引いたし、胸も苦しくないけど…」
モンモンの声には明らかに「街に帰れないのは困る」という困惑と恐怖があった。最悪街に帰るどころか人里そのものに近寄れなくなってしまう。
「体の痛みは恐らく体格の急激な変化による成長痛だと思うわ。それ以外に変調が無いなら大丈夫なのかな…? まだ街には丸一日以上の行程があるから、今はまだ少し様子見ね。明日になれば王都に《念話》を届けて応援を呼びましょう」
少なくとも俺には今のモンモンがゾンビには見えないし、本人もちゃんと意識があるようなので、外見はともかくこいつはモンモンで間違いないだろう。外見はともかく。
「何にせよこれで今回のミッションは終了で良いのか? 異変の原因までは掴めなかったけど、『調査』は出来たしそこそこゾンビも退治してきた。これでベルモも治せるな…」
「え…?」
俺の言葉に『何それ知らん』とでも言いたげにチャロアイトが不思議そうな顔をする。おいおい、まさかここに来てしらばっくれるなんて下衆な真似は止めてくれよ…?
「ベルモさんに渡す薬は、今モンモンちゃんに使っちゃったじゃない。結果がどうであれ報酬はそれでチャラよ…?」
なん、だと…?
「まぁ約束は約束ですからねぇ、それに貴重な薬なので『ハイすぐ2本目』ともいかないのよ… この辺は割り切って次の仕事に頑張ってもらうしか無いわね…」
「…なにかしら?」
「…どうすんだよコレ?」
「…知らないわよ、貴方が『責任取るから』って、私から無理やり薬を奪ったんじゃない」
「だよな…」
俺達の眼の前にはボディビルダーも真っ青な、見事な逆三角形の上半身の男がいる。性格はクソガキだったとは言え、かつて『ロリ枠』だったモンモンが見る影もなく成長してしまったのだ。
本人はまだ自分の体の変質を認識していない様で、川から川岸に向けてズンズンと歩いてきた。
「あー、なんか声もやたらイガイガするし完全に風邪ひいたよねコレ。イタズラにしてもやって良い事と悪い事があると思うんだ…」
今のモンモンは身長が180cmを超え、俺はおろかベルモよりも大柄になっている。顔立ちはあまり変わらないが、以前よりも顎骨がしっかりとしてきて男性らしい形と言えるだろう。幼さが残る反面、ムキムキマッチョな体がとんでもなく不釣り合いだ。
モンモンは水深が膝丈よりも低くなった辺りで違和感を抱いた様だ。今まで見上げていた俺を見下ろす視点になって、ようやく事態を理解してきたのか挙動が怪しくなってきた。
「うん…? あれ…? おにーさん達小さくなった?」
どうやら真実に気がついたらしく声が上ずっている。しかし俺には『責任を取って』真実を伝える義務がある。
「そうじゃない。自分の体をよく確かめてみろ…」
俺の言葉に怯えた目で恐る恐る自分の体を検めるモンモン、太い腕を、熱い胸板を、以前の3倍程に伸びた額の角を、そしてはち切れんばかりに股間の膨らんだ女物の黒いパンツを……。
「な、なんじゃこりゃ~っ!!」
人気のない川辺に、殉職間近の刑事の様な成人男子の野太い叫び声が上がった。
☆
「私はちゃんと警告したのよ? 『何が起こるか分からない』って。それなのに彼ったら強引に私の事を…」
落ち着いたモンモンに事情説明を要求され、俺とチャロアイトは答えに窮していた。チャロアイトはこんな感じで全責任を俺に引っ被せるつもりらしい。まぁ確かに俺の責任なんだけど、それを踏まえた上でどうしたら良いんだろうか…?
いや別に悪意があってこうなった訳ではなく、あの時に薬を飲ませなければモンモンは高確率でゾンビになっていただろう。
ホラ、アレだよ、『善きサマリア人の法』。善意の行いであるならば悪い結果になっても無罪で処罰されないってやつ。この世界に聖書の教えがあるとは思えないが、アイトゥーシア教会だってきっと似たような概念はあるはずだ。だから俺は悪くない。
「まぁ、あんな腐った化け物になるのに比べたら何倍もマシだけどさ、なんか別の化け物になっちゃった気分だよ…」
とりあえず濡れた体を乾かす為に焚き火のもとに移動、モンモンには俺の予備のマントを貸してやる。火を前にマントに包まったモンモンは膝を抱えてうずくまり、膝に顔を埋めていた。
「ねぇおにーさん… ボクどうなるの? ボクから『可愛さ』が無くなったら一党にいる価値無いよね…? 追放されちゃうの…?」
「いやちょっと待て」
俺達がモンモンを仲間にしたのは『盗賊技能の持ち主』だからであって『可愛いから』では無い。根本的に勘違いしてないか?
そりゃ小柄な体と美少女と見紛う外見にスベスベの肌、男と分かっていても勢い余って抱いてしまった俺が言うのも烏滸がましいが、モンモンは享楽ではなくて仕事の為に仲間になって貰っている人材なのだ。
「俺は別にお前が可愛いからとか関係なく助けたし、それ以前に仲間だと思っている。追放なんて考えてすらいないよ…」
「ホントっ?!」
好物を貰った犬みたいに顔をパァと輝かせモンモンは俺に抱き着いて来た。以前のモンモンなら甘えた子が「わぁい!」とじゃれてくるイメージがあったが、今のモンモンだと普通にタックルだ。押し倒されて俺の上で歓喜の瞳で俺を見るモンモンに、俺はそのまま犯されそうな恐怖感を覚えていた。奴の股間に何やら硬い物の反応があるし……。
「とりあえずモンモンちゃん、体に不調は無いかしら? もし屍人の要因がまだ体内に残っているなら街へは帰れないわよ…」
押し倒された俺の傍らに立ち、チャロアイトが冷静に告げる。確かに一見まともそうに見えるモンモンだが、元気に動いているゾンビかも知れないし、その爪や牙にゾンビ毒が残っていないとも限らない。
チャロアイトに言われて再び自分の体を検めるモンモン。途中何度も首をひねって何か考え事をしていたが、やがてチャロアイトに向けて大きく首を振った。
「体中の骨と筋肉がバッキバキに痛い。でも我慢できない程じゃない。熱っぽさは引いたし、胸も苦しくないけど…」
モンモンの声には明らかに「街に帰れないのは困る」という困惑と恐怖があった。最悪街に帰るどころか人里そのものに近寄れなくなってしまう。
「体の痛みは恐らく体格の急激な変化による成長痛だと思うわ。それ以外に変調が無いなら大丈夫なのかな…? まだ街には丸一日以上の行程があるから、今はまだ少し様子見ね。明日になれば王都に《念話》を届けて応援を呼びましょう」
少なくとも俺には今のモンモンがゾンビには見えないし、本人もちゃんと意識があるようなので、外見はともかくこいつはモンモンで間違いないだろう。外見はともかく。
「何にせよこれで今回のミッションは終了で良いのか? 異変の原因までは掴めなかったけど、『調査』は出来たしそこそこゾンビも退治してきた。これでベルモも治せるな…」
「え…?」
俺の言葉に『何それ知らん』とでも言いたげにチャロアイトが不思議そうな顔をする。おいおい、まさかここに来てしらばっくれるなんて下衆な真似は止めてくれよ…?
「ベルモさんに渡す薬は、今モンモンちゃんに使っちゃったじゃない。結果がどうであれ報酬はそれでチャラよ…?」
なん、だと…?
「まぁ約束は約束ですからねぇ、それに貴重な薬なので『ハイすぐ2本目』ともいかないのよ… この辺は割り切って次の仕事に頑張ってもらうしか無いわね…」
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