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Case.01【消えるピアニスト】
day9─そして、明日へ─
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翌週、絢葉は奏汰と共に、こっそりと廊下から吹奏楽部の練習の様子を覗き込んでいた。
休憩時間、山野辺がピアノに向かい、あの曲を弾き始める。
旋律はまだ完全とはいえないが、以前のように音を外すことはなく、確かな前進を感じさせた。
演奏を終えると、古谷や他の部員たちから自然と拍手が湧く。
山野辺は照れくさそうに笑い、仲間と談笑を交わした。
「……山野辺先輩、もう大丈夫そうですね」
「そうだな」
二人はその場を静かに後にする。
廊下を歩きながら、絢葉が思い出したように問うた。
「そういえば天野先輩、なんで先週、旧音楽室の鍵だけ開けて帰っちゃったんですか?呉宮先輩の推理、凄かったのに」
「いや、あんなん絶対しんみりした雰囲気になるだろ?そういうのダルいし」
「えぇ……」
絢葉の呆れ声に、奏汰は肩をすくめて小さくため息を漏らした。
その頃、音楽室では。
「麻美、すごいじゃない! もうスランプともおさらばね!」
古谷が満面の笑みで声をかける。
「ううん、まだまだだよ。でも……ありがとうね、果歩」
山野辺も笑い返す。
「全然!でも、もう私が必要以上に頑張らなくてもいいかな?」
「……どういうこと?」
古谷は照れ笑いを浮かべた。
「実はね、高校に入ってすぐの頃から、時々由美先生にピアノを教えてもらってたの」
「え……? お母さん、そんなこと全然……」
「私が麻美にはナイショにしてってお願いしたから! でも麻美が調子を崩して……なら、その間だけでも私が代わりになれればって思って、もっと頑張ってたんだよ。結局、あんまり上手くはいかなかったけど」
山野辺は驚きに目を見開き、やがて小さく笑った。
「……そうだったんだ。ありがとう、果歩」
こぼれた涙を、彼女は笑顔のまま拭った。
その時、村西が背後から声をかける。
「山野辺」
振り向けば、珍しく穏やかな眼差しを浮かべた顧問が立っていた。
「随分、良くなってきたみたいね」
「は、はい先生!」
涙を慌てて拭い、元気よく答える山野辺。
村西は小さく笑い、ふっと言葉を落とした。
「その様子なら……もう、こそこそ頑張る必要はないな?」
「……え?」
山野辺が戸惑い、問う間もなく、村西は楽譜を手に部員たちに練習の指示を出し始めてしまった。
真意を測りかねたまま、しかし山野辺は小さく笑みを零した。
─────
その後絢葉は、帰ると去っていった奏汰と別れて一人、優雅部の部室を訪れていた。
部室の扉を開けると、史桜が読みかけの本を机に置き、こちらを見た。
「どうだった?」
「山野辺先輩は、もう大丈夫そうです」
音楽室での様子を報告する。
史桜は満足げに微笑み、頷いた。
「そうか。それは何よりだ。これにて一件落着だな」
彼はいつもの様に優雅な所作で紅茶のカップを傾ける。
暫しの談笑の後、絢葉は一瞬言い淀んだが、やがて決意を固めたように口を開いた。
「あの……私、正式にこの部に入りたいです。もっと色んな体験をして、色んな世界を知りたいです」
史桜はまるで予想していたかのように微笑んだ。
「君ならそう言うと思っていたよ。ならば勿論歓迎しよう。君の調査も、報告も、きっとこれからも優雅なものになる」
夕日が差し込む窓辺で、二人の笑顔が重なる。
こうして、静英高校優雅部は、新たな一歩を踏み出した。
Case.01 end──
休憩時間、山野辺がピアノに向かい、あの曲を弾き始める。
旋律はまだ完全とはいえないが、以前のように音を外すことはなく、確かな前進を感じさせた。
演奏を終えると、古谷や他の部員たちから自然と拍手が湧く。
山野辺は照れくさそうに笑い、仲間と談笑を交わした。
「……山野辺先輩、もう大丈夫そうですね」
「そうだな」
二人はその場を静かに後にする。
廊下を歩きながら、絢葉が思い出したように問うた。
「そういえば天野先輩、なんで先週、旧音楽室の鍵だけ開けて帰っちゃったんですか?呉宮先輩の推理、凄かったのに」
「いや、あんなん絶対しんみりした雰囲気になるだろ?そういうのダルいし」
「えぇ……」
絢葉の呆れ声に、奏汰は肩をすくめて小さくため息を漏らした。
その頃、音楽室では。
「麻美、すごいじゃない! もうスランプともおさらばね!」
古谷が満面の笑みで声をかける。
「ううん、まだまだだよ。でも……ありがとうね、果歩」
山野辺も笑い返す。
「全然!でも、もう私が必要以上に頑張らなくてもいいかな?」
「……どういうこと?」
古谷は照れ笑いを浮かべた。
「実はね、高校に入ってすぐの頃から、時々由美先生にピアノを教えてもらってたの」
「え……? お母さん、そんなこと全然……」
「私が麻美にはナイショにしてってお願いしたから! でも麻美が調子を崩して……なら、その間だけでも私が代わりになれればって思って、もっと頑張ってたんだよ。結局、あんまり上手くはいかなかったけど」
山野辺は驚きに目を見開き、やがて小さく笑った。
「……そうだったんだ。ありがとう、果歩」
こぼれた涙を、彼女は笑顔のまま拭った。
その時、村西が背後から声をかける。
「山野辺」
振り向けば、珍しく穏やかな眼差しを浮かべた顧問が立っていた。
「随分、良くなってきたみたいね」
「は、はい先生!」
涙を慌てて拭い、元気よく答える山野辺。
村西は小さく笑い、ふっと言葉を落とした。
「その様子なら……もう、こそこそ頑張る必要はないな?」
「……え?」
山野辺が戸惑い、問う間もなく、村西は楽譜を手に部員たちに練習の指示を出し始めてしまった。
真意を測りかねたまま、しかし山野辺は小さく笑みを零した。
─────
その後絢葉は、帰ると去っていった奏汰と別れて一人、優雅部の部室を訪れていた。
部室の扉を開けると、史桜が読みかけの本を机に置き、こちらを見た。
「どうだった?」
「山野辺先輩は、もう大丈夫そうです」
音楽室での様子を報告する。
史桜は満足げに微笑み、頷いた。
「そうか。それは何よりだ。これにて一件落着だな」
彼はいつもの様に優雅な所作で紅茶のカップを傾ける。
暫しの談笑の後、絢葉は一瞬言い淀んだが、やがて決意を固めたように口を開いた。
「あの……私、正式にこの部に入りたいです。もっと色んな体験をして、色んな世界を知りたいです」
史桜はまるで予想していたかのように微笑んだ。
「君ならそう言うと思っていたよ。ならば勿論歓迎しよう。君の調査も、報告も、きっとこれからも優雅なものになる」
夕日が差し込む窓辺で、二人の笑顔が重なる。
こうして、静英高校優雅部は、新たな一歩を踏み出した。
Case.01 end──
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