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Case.03【盛夏の潮騒】
day3.2─波打ち際の少女─
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昼が近づくにつれ、砂浜には人が増え始めた。
パラソルの下で談笑する家族、浮き輪を抱えて走る子どもたち。
絢葉はその中を縫うように歩き、地元の人へと話を聞いてまわった。
最初に声をかけたのは、海辺を散歩していた白髪の老人だった。
「光る足跡かい? あぁ、あれはもう五年くらい前からだな」
「五年も前から……?」
「うむ。最初に見たのは花火をしていた観光客だったかな。それ以来地元の人間も殆ど夜には寄り付かなくなっちまったよ」
老人は笑いながらも、少しだけ目を伏せた。
次に話を聞いたのは、ライフセーバーの若い男性だった。
「足跡は夏場、海水浴場が開放されている間だけ、いつも同じ場所に現れるんです。あの端のほう。夜に現れて、朝には跡形もなくなる」
「その辺りで遊ぶ人は?」
「ほとんどいませんね。地元の子供がその近くで遊んでいる姿は見かけますが」
そして、海水浴場近くの小さな商店。
絢葉が尋ねると、店主の男性は少し考えてから口を開いた。
「足跡が現れ始める前の年、六年前の夏に事故があってね」
「事故ですか……」
「あぁ。その年、この海で女の子が亡くなったんだよ。観光客の子どもが溺れて、それを助けようとしてな。助けた方の子は地元の子で……まだ小学生だった」
店主の声がわずかに沈む。
「その翌年から、ライフセーバーを常駐させるようになったんだ。それと同時に足跡が現れ始めたんだよ」
絢葉は店主に頭を下げて店を出た。
潮風が頬を撫でる。
──六年前の事故。足跡が現れ始めたのはその翌年。
因果関係があるとしか思えなかった。
お昼時になって、仲間たちと合流した。
京香も文子も奏汰も、ほぼ同じ内容の話を聞いたようだ。
「これってさぁ、昨日の海の家の人も言ってたけど……やっぱ、亡くなった女の子の霊とかなんじゃ……」
文子が小声で言う。
「でも、それじゃ蓄光パウダーは説明できないでしょ?」
京香がすぐに返す。
「確かに……。じゃあさ、夜、足跡のあたりを張り込んでみるのは?」
「うーん、それだと誰かが見てるって気づいて、出てこないかも」
「それもそうか。……ていうかさ、どうせ明日には帰るじゃん? 私たちが無理に調べなくてもいいんじゃない?」
文子の言葉に、絢葉は小さく黙り込んだ。
──確かに、そうかもしれない。
けれど、胸の奥にひっかかるものがあった。
そのときだった。
視線の先、砂浜の端。
海を眺めながら体育座りをしているひとりの少女が目に入った。
日差しに髪が揺れ、波音の中でじっと遠くを見つめている。
絢葉は何気なく歩み寄った。
「こんにちは。君はここの地元の人?」
少女は小さく首をかしげてから、うなずいた。
「……うん」
「お名前、聞いてもいい?」
「……遠野、沙月」
「沙月ちゃんか。何年生?」
「六年。……あの、なに?」
「あ、ごめんね。ちょっとね、私たち“光る足跡”のことを調べてて。なにか知ってることあるかなって」
少女──沙月は視線を落とし、しばらく黙ったあと、小さく首を振った。
「……知らない」
「そっか。……沙月ちゃんは、よくここに来るの?」
「……他にすること、ないから」
「そうなんだ。お話ししてくれてありがとう。暑いから、気をつけてね」
絢葉は沙月から離れようとしたとき、ふと彼女の足元に視線を落とした。
随分と履き古した様子のビーチサンダルだった。兄姉のお下がりだろうか。
あまりしつこく深掘りして聞くのも失礼と感じ、絢葉は何も言わずに笑顔を向けて、沙月の元から離れた。
少しして振り返ると、沙月はまだ同じ姿勢のまま、波間をじっと見つめていた。
その瞳に、何かを映しているように──。
パラソルの下で談笑する家族、浮き輪を抱えて走る子どもたち。
絢葉はその中を縫うように歩き、地元の人へと話を聞いてまわった。
最初に声をかけたのは、海辺を散歩していた白髪の老人だった。
「光る足跡かい? あぁ、あれはもう五年くらい前からだな」
「五年も前から……?」
「うむ。最初に見たのは花火をしていた観光客だったかな。それ以来地元の人間も殆ど夜には寄り付かなくなっちまったよ」
老人は笑いながらも、少しだけ目を伏せた。
次に話を聞いたのは、ライフセーバーの若い男性だった。
「足跡は夏場、海水浴場が開放されている間だけ、いつも同じ場所に現れるんです。あの端のほう。夜に現れて、朝には跡形もなくなる」
「その辺りで遊ぶ人は?」
「ほとんどいませんね。地元の子供がその近くで遊んでいる姿は見かけますが」
そして、海水浴場近くの小さな商店。
絢葉が尋ねると、店主の男性は少し考えてから口を開いた。
「足跡が現れ始める前の年、六年前の夏に事故があってね」
「事故ですか……」
「あぁ。その年、この海で女の子が亡くなったんだよ。観光客の子どもが溺れて、それを助けようとしてな。助けた方の子は地元の子で……まだ小学生だった」
店主の声がわずかに沈む。
「その翌年から、ライフセーバーを常駐させるようになったんだ。それと同時に足跡が現れ始めたんだよ」
絢葉は店主に頭を下げて店を出た。
潮風が頬を撫でる。
──六年前の事故。足跡が現れ始めたのはその翌年。
因果関係があるとしか思えなかった。
お昼時になって、仲間たちと合流した。
京香も文子も奏汰も、ほぼ同じ内容の話を聞いたようだ。
「これってさぁ、昨日の海の家の人も言ってたけど……やっぱ、亡くなった女の子の霊とかなんじゃ……」
文子が小声で言う。
「でも、それじゃ蓄光パウダーは説明できないでしょ?」
京香がすぐに返す。
「確かに……。じゃあさ、夜、足跡のあたりを張り込んでみるのは?」
「うーん、それだと誰かが見てるって気づいて、出てこないかも」
「それもそうか。……ていうかさ、どうせ明日には帰るじゃん? 私たちが無理に調べなくてもいいんじゃない?」
文子の言葉に、絢葉は小さく黙り込んだ。
──確かに、そうかもしれない。
けれど、胸の奥にひっかかるものがあった。
そのときだった。
視線の先、砂浜の端。
海を眺めながら体育座りをしているひとりの少女が目に入った。
日差しに髪が揺れ、波音の中でじっと遠くを見つめている。
絢葉は何気なく歩み寄った。
「こんにちは。君はここの地元の人?」
少女は小さく首をかしげてから、うなずいた。
「……うん」
「お名前、聞いてもいい?」
「……遠野、沙月」
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「……知らない」
「そっか。……沙月ちゃんは、よくここに来るの?」
「……他にすること、ないから」
「そうなんだ。お話ししてくれてありがとう。暑いから、気をつけてね」
絢葉は沙月から離れようとしたとき、ふと彼女の足元に視線を落とした。
随分と履き古した様子のビーチサンダルだった。兄姉のお下がりだろうか。
あまりしつこく深掘りして聞くのも失礼と感じ、絢葉は何も言わずに笑顔を向けて、沙月の元から離れた。
少しして振り返ると、沙月はまだ同じ姿勢のまま、波間をじっと見つめていた。
その瞳に、何かを映しているように──。
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