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Case.03【盛夏の潮騒】
day3.1─明滅─
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波の音が、まだ静かに耳の奥に残っていた。
朝の光がカーテン越しに差し込み、部屋の中を淡く照らす。
絢葉はゆっくりとまぶたを開け、昨夜の出来事を思い出す。
──光る足跡。
そして、瓶の中で淡く輝いた砂。
布団の上で身を起こすと、すでに京香と文子が準備をしていた。
「おはよ、絢葉。ほら、朝ごはん行こ」
「……うん」
宿の食堂は潮風の匂いが残る、古い木造の建物だった。
焼き魚と味噌汁の香りが漂い、さっきまでの非現実が嘘のように思える。
けれど、テーブルの上の瓶を思い出すたび、胸の奥がざわつく。
絢葉は、美味しい筈なのにほとんど味のしない朝食を終えると、すぐに部屋へ戻った。
────
机の上にティッシュを敷き、昨夜の瓶を置く。
慎重にキャップを開けると、中の砂を少しだけ広げた。
朝の光の中で見ても、やはりただの砂のようにしか見えない。
けれど、文子が顔を寄せた瞬間、小さく声を上げた。
「ねぇ、これ……よく見ると、砂じゃない粒が混ざってない?」
彼女が指差した先には、透明というよりは、わずかに青みがかった小さな粒。
形も均一で、自然の砂とは違う人工的な光沢を放っていた。
京香が目を輝かせる。
「これ……もしかして、蓄光パウダーじゃない?」
「蓄光?」
「うん! 光を吸収して、暗いところで光るやつ。ネットとかで売ってるよ!」
「え、じゃあ……」
文子がスマホを取り出し、何かを検索する。
「……あった。これ!見て、写真。まんま同じじゃない!?」
画面に映るのは、青緑色に輝く細かい粒。
昨夜の“光る足跡”と同じ、冷たい白青の光だった。
「……つまり」
絢葉が息を呑む。
「これは幽霊の仕業じゃなくて──誰かが“わざと”足跡を光らせたってこと……?」
部屋の空気が一瞬、静まり返った。
そのとき、襖が開き、奏汰が顔をのぞかせた。
「なにか分かったのか?」
京香が嬉しそうに説明する。
「見て下さい! 昨日の足跡、たぶんこの“蓄光パウダー”でできてたんですよ!」
「へぇ……」
奏汰は机の上の砂を見下ろし、
「……確かに、これなら足跡を光らせることもできるな」
腕を組みながら静かに言った。
その声に、絢葉がはっと顔を上げる。
「やっぱり、あの足跡は──幽霊なんかじゃなく、人為的なもの……!」
胸の奥が高鳴る。
何かが、少しずつ形になっていくような感覚。
「もう一度、砂浜を調べてみましょう!」
絢葉の声に三人が頷き、彼女らは宿を飛び出した。
────
朝の海は静かに凪いでいた。
砂浜に立った瞬間、絢葉は息をのんだ。
……何も、ない。
あの光の道も、波紋のように夜の闇へ溶けたのかのように。あれほどくっきりと光っていた足跡は、どこにも見当たらない。
波打ち際には、ただ白い砂と小さな貝殻が残るばかり。
「……そんな、昨夜は確かにここにあったのに!」
京香が焦ったように辺りを見回す。
「や、やっぱり……おばけなんじゃ……」
文子の声が震える。
絢葉はスマホに視線を落とした。
昨夜、史桜に電話が繋がらなかったあと、とりあえず送っておいたメッセージ。
そこには、まだ既読すらついていない。
「……一先ず、現地の人中心に聞き込みしてみよう。もしかしたら、誰かが何か見てるかもしれないし」
絢葉が顔を上げると、三人も頷いた。
四人はそれぞれ別方向に散り、朝の砂浜で話を聞けそうな人を探し始める。
白い波が足元に寄せては返す。
その下には、何が隠されているのか──
彼女たちは、まだ知らなかった。
朝の光がカーテン越しに差し込み、部屋の中を淡く照らす。
絢葉はゆっくりとまぶたを開け、昨夜の出来事を思い出す。
──光る足跡。
そして、瓶の中で淡く輝いた砂。
布団の上で身を起こすと、すでに京香と文子が準備をしていた。
「おはよ、絢葉。ほら、朝ごはん行こ」
「……うん」
宿の食堂は潮風の匂いが残る、古い木造の建物だった。
焼き魚と味噌汁の香りが漂い、さっきまでの非現実が嘘のように思える。
けれど、テーブルの上の瓶を思い出すたび、胸の奥がざわつく。
絢葉は、美味しい筈なのにほとんど味のしない朝食を終えると、すぐに部屋へ戻った。
────
机の上にティッシュを敷き、昨夜の瓶を置く。
慎重にキャップを開けると、中の砂を少しだけ広げた。
朝の光の中で見ても、やはりただの砂のようにしか見えない。
けれど、文子が顔を寄せた瞬間、小さく声を上げた。
「ねぇ、これ……よく見ると、砂じゃない粒が混ざってない?」
彼女が指差した先には、透明というよりは、わずかに青みがかった小さな粒。
形も均一で、自然の砂とは違う人工的な光沢を放っていた。
京香が目を輝かせる。
「これ……もしかして、蓄光パウダーじゃない?」
「蓄光?」
「うん! 光を吸収して、暗いところで光るやつ。ネットとかで売ってるよ!」
「え、じゃあ……」
文子がスマホを取り出し、何かを検索する。
「……あった。これ!見て、写真。まんま同じじゃない!?」
画面に映るのは、青緑色に輝く細かい粒。
昨夜の“光る足跡”と同じ、冷たい白青の光だった。
「……つまり」
絢葉が息を呑む。
「これは幽霊の仕業じゃなくて──誰かが“わざと”足跡を光らせたってこと……?」
部屋の空気が一瞬、静まり返った。
そのとき、襖が開き、奏汰が顔をのぞかせた。
「なにか分かったのか?」
京香が嬉しそうに説明する。
「見て下さい! 昨日の足跡、たぶんこの“蓄光パウダー”でできてたんですよ!」
「へぇ……」
奏汰は机の上の砂を見下ろし、
「……確かに、これなら足跡を光らせることもできるな」
腕を組みながら静かに言った。
その声に、絢葉がはっと顔を上げる。
「やっぱり、あの足跡は──幽霊なんかじゃなく、人為的なもの……!」
胸の奥が高鳴る。
何かが、少しずつ形になっていくような感覚。
「もう一度、砂浜を調べてみましょう!」
絢葉の声に三人が頷き、彼女らは宿を飛び出した。
────
朝の海は静かに凪いでいた。
砂浜に立った瞬間、絢葉は息をのんだ。
……何も、ない。
あの光の道も、波紋のように夜の闇へ溶けたのかのように。あれほどくっきりと光っていた足跡は、どこにも見当たらない。
波打ち際には、ただ白い砂と小さな貝殻が残るばかり。
「……そんな、昨夜は確かにここにあったのに!」
京香が焦ったように辺りを見回す。
「や、やっぱり……おばけなんじゃ……」
文子の声が震える。
絢葉はスマホに視線を落とした。
昨夜、史桜に電話が繋がらなかったあと、とりあえず送っておいたメッセージ。
そこには、まだ既読すらついていない。
「……一先ず、現地の人中心に聞き込みしてみよう。もしかしたら、誰かが何か見てるかもしれないし」
絢葉が顔を上げると、三人も頷いた。
四人はそれぞれ別方向に散り、朝の砂浜で話を聞けそうな人を探し始める。
白い波が足元に寄せては返す。
その下には、何が隠されているのか──
彼女たちは、まだ知らなかった。
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