10 / 10
最終話 正しい位置
しおりを挟む
最終話 正しい位置
駅のホームに立っている。
いつからここにいたのか、分からない。
白線は、はっきりと引かれている。
黄色い点字ブロックも、そのまま。
人もいる。
ざわめきもある。
すべて、元通りだ。
私は、白線の内側に立っている。
きちんと。
誰よりも正しく。
足先は一ミリもはみ出していない。
押される感覚もない。
通知も鳴らない。
拍手も聞こえない。
記録も消えない。
全部、整っている。
アナウンスが流れる。
「白線の内側までお下がりください」
みんな、少しだけ下がる。
私も下がる。
でも、足が動かない。
もう、これ以上内側がない。
視線が集まる。
初めて。
誰かが私を見ている。
その目は、驚いていない。
ただ、確認している。
位置を。
「そこ、外側ですよ」
隣に立つ人が、静かに言う。
足元を見る。
私は確かに、白線の内側にいる。
でも周囲の人たちは、
さらにもう一歩、内側に立っている。
白線が、増えている。
もう一本。
その内側に、さらに一本。
層になっている。
私は、一番外の内側。
電車が入ってくる。
風が強くなる。
誰も押さない。
誰も触れない。
ただ、みんなが一歩下がる。
私だけが、動けない。
アナウンスが、はっきりと聞こえる。
「正しい位置にお立ちください」
その瞬間、白線が消える。
私の足元から。
体が、わずかに傾く。
踏み出した覚えはない。
でも、ホームの縁が遠ざかる。
電車の窓に、自分の姿が映る。
ちゃんと内側に立っている。
誰よりも整った位置で。
ガラス越しに、
みんなが拍手をしている。
三秒間。
ぴったり。
そして、私はやっと気づく。
最初から、
外側に立っていたのではない。
正しい位置に、
きちんと置かれていただけだと。
駅のホームに立っている。
いつからここにいたのか、分からない。
白線は、はっきりと引かれている。
黄色い点字ブロックも、そのまま。
人もいる。
ざわめきもある。
すべて、元通りだ。
私は、白線の内側に立っている。
きちんと。
誰よりも正しく。
足先は一ミリもはみ出していない。
押される感覚もない。
通知も鳴らない。
拍手も聞こえない。
記録も消えない。
全部、整っている。
アナウンスが流れる。
「白線の内側までお下がりください」
みんな、少しだけ下がる。
私も下がる。
でも、足が動かない。
もう、これ以上内側がない。
視線が集まる。
初めて。
誰かが私を見ている。
その目は、驚いていない。
ただ、確認している。
位置を。
「そこ、外側ですよ」
隣に立つ人が、静かに言う。
足元を見る。
私は確かに、白線の内側にいる。
でも周囲の人たちは、
さらにもう一歩、内側に立っている。
白線が、増えている。
もう一本。
その内側に、さらに一本。
層になっている。
私は、一番外の内側。
電車が入ってくる。
風が強くなる。
誰も押さない。
誰も触れない。
ただ、みんなが一歩下がる。
私だけが、動けない。
アナウンスが、はっきりと聞こえる。
「正しい位置にお立ちください」
その瞬間、白線が消える。
私の足元から。
体が、わずかに傾く。
踏み出した覚えはない。
でも、ホームの縁が遠ざかる。
電車の窓に、自分の姿が映る。
ちゃんと内側に立っている。
誰よりも整った位置で。
ガラス越しに、
みんなが拍手をしている。
三秒間。
ぴったり。
そして、私はやっと気づく。
最初から、
外側に立っていたのではない。
正しい位置に、
きちんと置かれていただけだと。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
鍵のかかった部屋
あめとおと
ホラー
閉ざされた部屋に、出口はない――。
ドアにかかった鍵は、手の届くところにない。
机の上の書類は、未来の日付を示す。
壁の影は、人の形をして、こちらを見ている。
秒針が狂い、時間が歪む。
呼吸音、囁き、影――
部屋の中にいるのは、誰なのか。
恐怖は静かに、確実に忍び寄る。
あなたは、この部屋から逃げ出せるだろうか。
秒針の隙間
あめとおと
ミステリー
正確なはずの時間に、わずかな“隙間”が生まれる。
五分だけ早い時計。
三秒だけ遅れるエレベーター。
未来の日付が印字されたレシート。
返却期限を迎えない本。
誰も気づかないほどの誤差。
けれど、その小さなズレは、
確実に誰かの現在を変えている。
秒針が刻む音と音のあいだ。
そこに生まれた隙間に、立ってしまった人たちの物語。
時間は、いつも正しいとは限らない。
消えない残響:ずっと、誰かがいる
あめとおと
ホラー
日常の隙間から漏れ出す「音」や「視線」。
一度気づいてしまったら最後、それはあなたの日常を浸食し始める。
五感を伝って忍び寄る、四つの連作短編と二つの番外編を収録。
「読み終えたとき、あなたの耳に届く音は、絶望か、それとも安らぎか――。」
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
灯影の恋
あめとおと
歴史・時代
江戸の町で放火の罪に問われた少女・お七。
しかし、偶然と人の手によって命は救われる――史実とは異なる救いのある未来を描いた創作。
遠島での試練の日々を経て、数年後、お七は無自覚に彼女を想っていた僧・吉祥と再会。
小さなお寺で共に暮らす中、火の恐怖も悲しみも、希望と学びに変わる。
桜舞う庭で、笑顔を取り戻した二人。
過去の痛みは残るけれど、命がある限り、未来は明るい――
少女と僧が紡ぐ、穏やかで救いに満ちた物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる