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第九話 境界線
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第九話 境界線
横断歩道の白線が、少し薄くなっていた。
雨のせいかもしれない。
でも、昨日より確実にかすれている。
信号が青になる。
みんな迷わず歩き出す。
私は立ち止まる。
どこからどこまでが、渡っていい範囲なのか分からない。
一歩踏み出す。
足の裏に、白い感触がない。
線が消えている。
それでも人々は進む。
ぶつからない。
はみ出さない。
まるで、見えない線があるみたいに。
向こう側へ渡る。
振り返る。
白線は、くっきりと残っている。
さっきまで立っていた場所に。
もう一度、足元を見る。
何もない。
スマホが震える。
“最終調整を開始します”
心臓が、ひとつ強く鳴る。
周囲の音が遠くなる。
車の音も、足音も、信号機の電子音も。
静かだ。
交差点の中央に立っていることに気づく。
誰も、私を避けない。
誰も、ぶつからない。
車はすり抜ける。
人もすり抜ける。
私は、そこに立っているのに。
白線の上に戻ろうとする。
足が、境界に触れない。
最初から、触れられない位置にいる。
遠くで、アナウンスの声がする。
「白線の内側まで――」
続きは、やはり聞こえない。
信号が赤になる。
みんなが止まる。
私だけが、止まれない。
線がないから。
横断歩道の白線が、少し薄くなっていた。
雨のせいかもしれない。
でも、昨日より確実にかすれている。
信号が青になる。
みんな迷わず歩き出す。
私は立ち止まる。
どこからどこまでが、渡っていい範囲なのか分からない。
一歩踏み出す。
足の裏に、白い感触がない。
線が消えている。
それでも人々は進む。
ぶつからない。
はみ出さない。
まるで、見えない線があるみたいに。
向こう側へ渡る。
振り返る。
白線は、くっきりと残っている。
さっきまで立っていた場所に。
もう一度、足元を見る。
何もない。
スマホが震える。
“最終調整を開始します”
心臓が、ひとつ強く鳴る。
周囲の音が遠くなる。
車の音も、足音も、信号機の電子音も。
静かだ。
交差点の中央に立っていることに気づく。
誰も、私を避けない。
誰も、ぶつからない。
車はすり抜ける。
人もすり抜ける。
私は、そこに立っているのに。
白線の上に戻ろうとする。
足が、境界に触れない。
最初から、触れられない位置にいる。
遠くで、アナウンスの声がする。
「白線の内側まで――」
続きは、やはり聞こえない。
信号が赤になる。
みんなが止まる。
私だけが、止まれない。
線がないから。
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