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第1話 しがみつ鬼
(10)鰻獲り
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手拭いを巳之吉は、その右手に袋のように被せる。
蛇のような糸は、巳之吉を小馬鹿にするように近づいてくる。
「こいつゥ、舐めやがって! よぉし、見てろィ!」
猫が人の足下に体をこすりつけるように、ズルリズルリと糸が動く。
巳之吉の二本の脚の間を、八の字を描くようにズルリズルリ。
巳之吉は、己の足を止める。
踏ん張るようにして、足の指に力を込めて、しっかりと立つ。
巳之吉の足が止まると、糸はますます調子に乗っていくようだ。
ズルリ、ズルリ。
『ほぅれ、捕まえてみやがれ』
そう言っているかのように、巳之吉の足下に八の字を書くのをやめない。
しかも、その速さは、どんどんと遅くなっていく。
足を動かさないようにしたまま、巳之吉は腰だけを落としていく。
尻を後ろに突き出して、転ばぬようにソロソロと。
それは、ドジョウ掬いのようでもあり、田植えの格好にも見える。
己の足下の、ちょうど前側を糸が通り過ぎようとした時。
見計らっていた巳之吉の手が、鞭のようにしなやかに動く。
ガシリッ!
親指と小指を除いた三本の指が、糸を絡めるように捕まえている。
手拭いに包まれた指からは、糸の滑りも逃げ出せない。
「どうでぃ! 俺ァ、小せぇ頃ァよォ!
鰻を獲らせりゃ右に出るもんはいねぇって言われたもんよっ!」
巳之吉の指に捕えられて、ジタバタと動く糸。
それは、本当に捕まえられた鰻のようにも見える。
「こらこら、観念しやがれってんだ! おめぇは、切られる定めなんだよぅ!」
まるで生きものにでも話しかけるように、巳之吉が言う。
その言葉を分かっているかのように、糸もジタバタをやめない。
腰に指していた扇子を左手で抜くと、巳之吉がハタと気づく。
「こいつはいけねぇ。糸を切るにゃあ、こいつを離さねぇと。
だけど、逃げられちまったら難儀だしなぁ」
糸を押さえた右手と扇子を持った左手を交互に眺めて、巳之吉が惑う。
その時、桔梗の声が巳之吉のすぐそばで聞こえる。
「さぁ、早く。こやつは、私が押さえます」
言うなり、糸がドスンと地面に縫いとめられる。
切れ味の良さそうな鎧通しが、糸を突き抜けているのが分かる。
「おぅ! 桔梗、おめぇさん、怪我は無ぇか? さっきの化け猫は……」
「その話は、あとです。まずは、糸を!」
「お、おぅ! しっかり押さえててくんなっ!」
巳之吉が、扇子を開く。
シャラシャラ、パラリ。
黒雲に包まれた龍の姿が、あらわになる。
すぐに、黒雲もろとも龍が扇子の絵からヌルリと抜け出してくる。
「やれやれ、遅いぞ。全く、こんな小物に苦戦しおって」
龍が、さっそく小言をのたまう。
巳之吉は、慣れているのか、龍の小言にも動じない。
「すまねぇ! 鰻みてぇに、ちょろちょろ逃げやがってよぅ!
けどよ、ようやく捕まえられた。いっちょ、頼むわ」
扇子を縦に持ち替えて、巳之吉は真っ直ぐに構える。
巳之吉の言葉に応えるように、龍の握る宝珠が光を発する。
ピカーーーッ!
眩しすぎる光に、巳之吉が目をつむる。
光が止み、巳之吉がまぶたを開けると、手には糸切り鋏が握られている。
「よっしゃ! いくぜ! ひでぇ糸は、断ち切っちまうに限らぁ!」
手拭いを、今度は左手に被せる。
その左手をヌルヌルと動く糸の上に置いて、がっしりと押さえる。
桔梗の刺した鎧通しと巳之吉の手拭いに覆われた左手。
ふたつに押さえられた糸は、身動きが取れない。
ザクッ! ザク、ザクザクッ!
糸切り鋏を入れると、そこは糸。
鋏には抗えずに、端から切れていく。
さっきまで、鰻のようにヌメヌメとしていたのが嘘のように。
切れた先から、糸がほつれ、そして消え去っていく。
バチリッ!
力を込めて、巳之吉が鋏を最後まで握りきる。
ヒヤァァァァァァ!
ボボボボボボェェェェェーーー!
グアァァァァァァッ!
またしても、叫び声のようなものが辺りに響く。
真っ二つに切れた糸は、サラサラとどこへともなく消え去る。
両手で耳をふさいでいた巳之吉が、ソロソロと手を離す。
「ひゃあ、やれやれだぜ。毎度毎度、糸のやつもご苦労なこった」
「おまえは、なんでも人のように考え過ぎだ。
あやつらが動くのは、意思があるからでは無い。
ただの作用に過ぎぬ。物の怪の見せる染みの柵に過ぎぬのだ」
「そ、そんなこたぁ、分かってらい! けどなぁ……」
「何度も申したでしょう。それが巳之吉様の良きところ。
黒助殿も余計なことを申されないでいただきたい」
「桔梗、おぬしまで、我を黒助と呼ぶでない。
まったく、巳之吉に誑かされおって。我は、もう眠るぞ」
「はい。此度もお疲れ様にございました」
「黒助、また頼むわっ!」
「だから、我は黒助などと言う名ではないと……」
ぶつぶつと言いながら、龍の声が消えていく。
同時に、糸切り鋏も扇子へと、その姿を変えていた。
糸が消え、地面に突き刺さったままだった鎧通しを桔梗が抜く。
右手で抜いた鎧通しの柄を左の手のひらで、トンッと軽く叩く。
血などついてはいないものの、血振りが習いになっている者の動き。
トンッとやった瞬間に、鎧通しは篠笛へと変げする。
「あれ、そいつも笛が変わったもんだったのかい?」
「ええ。この笛は、その時に必要な形に変わってくれますゆえ」
「へぇ! 便利なこった。さぁて、糸は切れた。
こっから先にゃあ、物の怪が憑いてないといいんだがなぁ。
ところでよぅ。さっきの化け猫のことだけどよ?」
「えぇ。なぜ、染みの中にいた物の怪が、こちら側に出て来られたのか?
それをお聞きになりたいんですね?」
「そう、そう! そうなんだよ。
さっきァ、咄嗟のことでよ? 桔梗に任せるしかなかったけどよ?」
「はい。この染みの中でも、物の怪の本体は……」
桔梗の話が始まると、巳之吉はふんふんと頷きながら聞いている。
そんな巳之吉の姿を見る桔梗。
その目には、巳之吉が気づくことがない思慕が浮かんでいた。
蛇のような糸は、巳之吉を小馬鹿にするように近づいてくる。
「こいつゥ、舐めやがって! よぉし、見てろィ!」
猫が人の足下に体をこすりつけるように、ズルリズルリと糸が動く。
巳之吉の二本の脚の間を、八の字を描くようにズルリズルリ。
巳之吉は、己の足を止める。
踏ん張るようにして、足の指に力を込めて、しっかりと立つ。
巳之吉の足が止まると、糸はますます調子に乗っていくようだ。
ズルリ、ズルリ。
『ほぅれ、捕まえてみやがれ』
そう言っているかのように、巳之吉の足下に八の字を書くのをやめない。
しかも、その速さは、どんどんと遅くなっていく。
足を動かさないようにしたまま、巳之吉は腰だけを落としていく。
尻を後ろに突き出して、転ばぬようにソロソロと。
それは、ドジョウ掬いのようでもあり、田植えの格好にも見える。
己の足下の、ちょうど前側を糸が通り過ぎようとした時。
見計らっていた巳之吉の手が、鞭のようにしなやかに動く。
ガシリッ!
親指と小指を除いた三本の指が、糸を絡めるように捕まえている。
手拭いに包まれた指からは、糸の滑りも逃げ出せない。
「どうでぃ! 俺ァ、小せぇ頃ァよォ!
鰻を獲らせりゃ右に出るもんはいねぇって言われたもんよっ!」
巳之吉の指に捕えられて、ジタバタと動く糸。
それは、本当に捕まえられた鰻のようにも見える。
「こらこら、観念しやがれってんだ! おめぇは、切られる定めなんだよぅ!」
まるで生きものにでも話しかけるように、巳之吉が言う。
その言葉を分かっているかのように、糸もジタバタをやめない。
腰に指していた扇子を左手で抜くと、巳之吉がハタと気づく。
「こいつはいけねぇ。糸を切るにゃあ、こいつを離さねぇと。
だけど、逃げられちまったら難儀だしなぁ」
糸を押さえた右手と扇子を持った左手を交互に眺めて、巳之吉が惑う。
その時、桔梗の声が巳之吉のすぐそばで聞こえる。
「さぁ、早く。こやつは、私が押さえます」
言うなり、糸がドスンと地面に縫いとめられる。
切れ味の良さそうな鎧通しが、糸を突き抜けているのが分かる。
「おぅ! 桔梗、おめぇさん、怪我は無ぇか? さっきの化け猫は……」
「その話は、あとです。まずは、糸を!」
「お、おぅ! しっかり押さえててくんなっ!」
巳之吉が、扇子を開く。
シャラシャラ、パラリ。
黒雲に包まれた龍の姿が、あらわになる。
すぐに、黒雲もろとも龍が扇子の絵からヌルリと抜け出してくる。
「やれやれ、遅いぞ。全く、こんな小物に苦戦しおって」
龍が、さっそく小言をのたまう。
巳之吉は、慣れているのか、龍の小言にも動じない。
「すまねぇ! 鰻みてぇに、ちょろちょろ逃げやがってよぅ!
けどよ、ようやく捕まえられた。いっちょ、頼むわ」
扇子を縦に持ち替えて、巳之吉は真っ直ぐに構える。
巳之吉の言葉に応えるように、龍の握る宝珠が光を発する。
ピカーーーッ!
眩しすぎる光に、巳之吉が目をつむる。
光が止み、巳之吉がまぶたを開けると、手には糸切り鋏が握られている。
「よっしゃ! いくぜ! ひでぇ糸は、断ち切っちまうに限らぁ!」
手拭いを、今度は左手に被せる。
その左手をヌルヌルと動く糸の上に置いて、がっしりと押さえる。
桔梗の刺した鎧通しと巳之吉の手拭いに覆われた左手。
ふたつに押さえられた糸は、身動きが取れない。
ザクッ! ザク、ザクザクッ!
糸切り鋏を入れると、そこは糸。
鋏には抗えずに、端から切れていく。
さっきまで、鰻のようにヌメヌメとしていたのが嘘のように。
切れた先から、糸がほつれ、そして消え去っていく。
バチリッ!
力を込めて、巳之吉が鋏を最後まで握りきる。
ヒヤァァァァァァ!
ボボボボボボェェェェェーーー!
グアァァァァァァッ!
またしても、叫び声のようなものが辺りに響く。
真っ二つに切れた糸は、サラサラとどこへともなく消え去る。
両手で耳をふさいでいた巳之吉が、ソロソロと手を離す。
「ひゃあ、やれやれだぜ。毎度毎度、糸のやつもご苦労なこった」
「おまえは、なんでも人のように考え過ぎだ。
あやつらが動くのは、意思があるからでは無い。
ただの作用に過ぎぬ。物の怪の見せる染みの柵に過ぎぬのだ」
「そ、そんなこたぁ、分かってらい! けどなぁ……」
「何度も申したでしょう。それが巳之吉様の良きところ。
黒助殿も余計なことを申されないでいただきたい」
「桔梗、おぬしまで、我を黒助と呼ぶでない。
まったく、巳之吉に誑かされおって。我は、もう眠るぞ」
「はい。此度もお疲れ様にございました」
「黒助、また頼むわっ!」
「だから、我は黒助などと言う名ではないと……」
ぶつぶつと言いながら、龍の声が消えていく。
同時に、糸切り鋏も扇子へと、その姿を変えていた。
糸が消え、地面に突き刺さったままだった鎧通しを桔梗が抜く。
右手で抜いた鎧通しの柄を左の手のひらで、トンッと軽く叩く。
血などついてはいないものの、血振りが習いになっている者の動き。
トンッとやった瞬間に、鎧通しは篠笛へと変げする。
「あれ、そいつも笛が変わったもんだったのかい?」
「ええ。この笛は、その時に必要な形に変わってくれますゆえ」
「へぇ! 便利なこった。さぁて、糸は切れた。
こっから先にゃあ、物の怪が憑いてないといいんだがなぁ。
ところでよぅ。さっきの化け猫のことだけどよ?」
「えぇ。なぜ、染みの中にいた物の怪が、こちら側に出て来られたのか?
それをお聞きになりたいんですね?」
「そう、そう! そうなんだよ。
さっきァ、咄嗟のことでよ? 桔梗に任せるしかなかったけどよ?」
「はい。この染みの中でも、物の怪の本体は……」
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