ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース3 山奥の事故物件【プロローグ】

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 とりあえず目についたコンビニの駐車場へと入る。車高が変に低い車だから、コンビニの出入口でさえ気を遣わねばならない。なんとかうまく乗りこなしてはいるが、いずれ下を擦ってしまいそうな気がしなくもない。

「よし、ちょっと待ってろ」

 車が停まるなり、助手席から降りてコンビニの中へ向かう鯖洲。一里之だってコーヒーくらい調達したいのであるが、そこは自分本位の鯖洲のことだ。変に気を回してくれることはないだろう。

 鯖洲が戻ってきたのは数分後か。一里之の予測通り自分の分だけ買って戻ってきた鯖洲。コーヒー缶が袋の中にちらりと見えた時は期待したが、残念ながら鯖洲自身が飲むらしい。まぁ、この高級車のハンドルを握りながら、コーヒーを飲むのはハードルが高すぎではあるが。

「それじゃ、今度はホームセンターで色々と調達しますよ」

 実のところ、会社の経費で買っておきながら、ほぼ使っていないものというものが多い。廃ラブホテルの際に買い出したものや、先日の物件に泊まる際に冥が色々と調達したものなど――すでに引き上げられてはいるが、それらがどこに行ったのか、一里之は無責任ながら知らなかった。その辺りの金の使い方は、特殊すぎる立場であるゆえに、かなり優遇されているようだ。これなら横領もやり放題ではないか……と思ったこともあったが、それは一里之の中にある倫理観が許さなかった。

「あぁ、さっきも言ったが、一度現場に入っちまうと物資を調達することが難しいからな。ただ、衣食住の衣と住に関しては気にする必要がねぇ。玄界灘のほうが手を回してあるらしい」

 となると、こちらで準備をしなければならないのは食だけか。さすがは自分の車。助手席で弁当を食べ始めた鯖洲を尻目に、一里之は買い出しのリストアップを頭の中で行う。

「あとよ、現場は車で入れないような山奥にあるから、必要なものを運ぶためのリュックみたいなのも調達しておけよ。ビニール袋を両手に下げて登山は嫌だろ?」

 弁当の中に入っていたシュウマイを頬張りながら、恐ろしい一言をさらりと漏らす鯖洲。

「え? 登山?」

 思わずオウム返しをしてしまった。まさか、この格好……スーツ姿のままで登山をしろというのか。足元だって革靴だというのに。

「おう、登山だ。お嬢はどうするつもりか知らねぇが現地集合らしいぞ。あれだ。冗談抜きでヘリが出るぞ。ヘリで上空からダイビングしてくるやつだ」

 鯖洲は冗談じみた口調だが、しかし冗談に思えないのはなぜなのか。コトリならやりそうな気がしなくもない。
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