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ケース3 山奥の事故物件【出題編】
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さすがは山奥の山荘。電気は自分達でまかなわなければならないらしい。しかし電気をまかなうためには燃料が必要だ。それを調達するとなれば、もう一度山を降りて燃料を購入し、それを持って登山をしなければならない。まったくもって不便な場所に建てられた山荘だ。そもそも、ここに建てようと思った人間は、いささかクレイジーなのではないだろうか。
電気が使えないことが判明したわけであるが、一里之が直近でやることは決まっている。草を刈ることだ。エンジンがかかったままの草刈機を見て、ふと一里之は思いついた。この意見が通れば、もしかして草刈りを免除してもらえるかもしれない。草刈機のエンジンを切ってバルコニーへと向かった。
「あの、この草刈機の燃料を発電機に入れたらどうですか?」
玄関を開けて中へと声をかけた。そう、草刈機とて燃料で動いている。冥がこれを調達した経緯は不明だが、この草刈機の中にある燃料を抜いて発電機に使えないだろうかと一里之は考えたのだ。
「その草刈機はここにずっと置いてあったものみたいです。燃料も入ったままでした。駄目元で使ってみたら使えただけで、中に入っている燃料も古いでしょう。それに、草刈機に入ってる燃料はガソリンのようですが、発電機に必要なのはディーゼル……軽油のようですね」
すなわち、燃料の種類が違うということか。この草刈機は現地調達のようだ。あっさりと一里之の目論見は崩れ去った。
「――なんだよ。ちょっと期待したじゃねぇか。余計なことを言ってねぇで、外の草で刈ってろよ」
冥の言葉に続いて鯖洲の声が飛んでくる。玄関の中は思ったよりも薄暗く、また埃っぽかった。ずっと廃山荘としてここにあったとすれば、これでも綺麗な状態で残っているといえるのではないか。それにしたって、ここを掃除して回るのは難儀である。むろん、草刈りのほうがもっと難儀ではあるが。
観念した一里之は、疲れた体に鞭を打って周囲の草刈りを終わらせる。あらかたの作業が終わった頃を見計らっていたかのごとく、遥か遠くからパタパタと定期的なリズムが聞こえてきた。ヘリコプターの羽が回る音であると気づくには、さほど時間はかからなかった。
音を聞いてか、冥と鯖洲も外に出てくる。この辺りは木々も多く、ヘリコプターが降下することは難しいだろう。
「あちらのほうに、ひらけた場所があります。そっちのほうに降りるつもりなのでしょう」
さすがは冥。事前の調査などもばっちりらしい。彼女の後に続いて、山荘から離れ、また緩い坂道を登ることになる。
電気が使えないことが判明したわけであるが、一里之が直近でやることは決まっている。草を刈ることだ。エンジンがかかったままの草刈機を見て、ふと一里之は思いついた。この意見が通れば、もしかして草刈りを免除してもらえるかもしれない。草刈機のエンジンを切ってバルコニーへと向かった。
「あの、この草刈機の燃料を発電機に入れたらどうですか?」
玄関を開けて中へと声をかけた。そう、草刈機とて燃料で動いている。冥がこれを調達した経緯は不明だが、この草刈機の中にある燃料を抜いて発電機に使えないだろうかと一里之は考えたのだ。
「その草刈機はここにずっと置いてあったものみたいです。燃料も入ったままでした。駄目元で使ってみたら使えただけで、中に入っている燃料も古いでしょう。それに、草刈機に入ってる燃料はガソリンのようですが、発電機に必要なのはディーゼル……軽油のようですね」
すなわち、燃料の種類が違うということか。この草刈機は現地調達のようだ。あっさりと一里之の目論見は崩れ去った。
「――なんだよ。ちょっと期待したじゃねぇか。余計なことを言ってねぇで、外の草で刈ってろよ」
冥の言葉に続いて鯖洲の声が飛んでくる。玄関の中は思ったよりも薄暗く、また埃っぽかった。ずっと廃山荘としてここにあったとすれば、これでも綺麗な状態で残っているといえるのではないか。それにしたって、ここを掃除して回るのは難儀である。むろん、草刈りのほうがもっと難儀ではあるが。
観念した一里之は、疲れた体に鞭を打って周囲の草刈りを終わらせる。あらかたの作業が終わった頃を見計らっていたかのごとく、遥か遠くからパタパタと定期的なリズムが聞こえてきた。ヘリコプターの羽が回る音であると気づくには、さほど時間はかからなかった。
音を聞いてか、冥と鯖洲も外に出てくる。この辺りは木々も多く、ヘリコプターが降下することは難しいだろう。
「あちらのほうに、ひらけた場所があります。そっちのほうに降りるつもりなのでしょう」
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