ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

文字の大きさ
136 / 391
ケース3 山奥の事故物件【出題編】

14

しおりを挟む
 さすがは山奥の山荘。電気は自分達でまかなわなければならないらしい。しかし電気をまかなうためには燃料が必要だ。それを調達するとなれば、もう一度山を降りて燃料を購入し、それを持って登山をしなければならない。まったくもって不便な場所に建てられた山荘だ。そもそも、ここに建てようと思った人間は、いささかクレイジーなのではないだろうか。

 電気が使えないことが判明したわけであるが、一里之が直近でやることは決まっている。草を刈ることだ。エンジンがかかったままの草刈機を見て、ふと一里之は思いついた。この意見が通れば、もしかして草刈りを免除してもらえるかもしれない。草刈機のエンジンを切ってバルコニーへと向かった。

「あの、この草刈機の燃料を発電機に入れたらどうですか?」

 玄関を開けて中へと声をかけた。そう、草刈機とて燃料で動いている。冥がこれを調達した経緯は不明だが、この草刈機の中にある燃料を抜いて発電機に使えないだろうかと一里之は考えたのだ。

「その草刈機はここにずっと置いてあったものみたいです。燃料も入ったままでした。駄目元で使ってみたら使えただけで、中に入っている燃料も古いでしょう。それに、草刈機に入ってる燃料はガソリンのようですが、発電機に必要なのはディーゼル……軽油のようですね」

 すなわち、燃料の種類が違うということか。この草刈機は現地調達のようだ。あっさりと一里之の目論見は崩れ去った。

「――なんだよ。ちょっと期待したじゃねぇか。余計なことを言ってねぇで、外の草で刈ってろよ」

 冥の言葉に続いて鯖洲の声が飛んでくる。玄関の中は思ったよりも薄暗く、また埃っぽかった。ずっと廃山荘としてここにあったとすれば、これでも綺麗な状態で残っているといえるのではないか。それにしたって、ここを掃除して回るのは難儀である。むろん、草刈りのほうがもっと難儀ではあるが。

 観念した一里之は、疲れた体に鞭を打って周囲の草刈りを終わらせる。あらかたの作業が終わった頃を見計らっていたかのごとく、遥か遠くからパタパタと定期的なリズムが聞こえてきた。ヘリコプターの羽が回る音であると気づくには、さほど時間はかからなかった。

 音を聞いてか、冥と鯖洲も外に出てくる。この辺りは木々も多く、ヘリコプターが降下することは難しいだろう。

「あちらのほうに、ひらけた場所があります。そっちのほうに降りるつもりなのでしょう」

 さすがは冥。事前の調査などもばっちりらしい。彼女の後に続いて、山荘から離れ、また緩い坂道を登ることになる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」 愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。 婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。 私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。 落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。 思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。

不貞の濡れ衣を着せられて婚約破棄されましたがお陰で素敵な恋人ができました

ゆうゆう
恋愛
「お前みたいなふしだらな女とは婚約破棄だ」と婚約者に言われて一方的に婚約破棄をされて全てを奪われ追い出されました。 でもそのお陰でとても素敵な人に出会う事ができました。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

シンメトリーの翼 〜天帝異聞奇譚〜

長月京子
恋愛
学院には立ち入りを禁じられた場所があり、鬼が棲んでいるという噂がある。 朱里(あかり)はクラスメートと共に、禁じられた場所へ向かった。 禁じられた場所へ向かう途中、朱里は端正な容姿の男と出会う。 ――君が望むのなら、私は全身全霊をかけて護る。 不思議な言葉を残して立ち去った男。 その日を境に、朱里の周りで、説明のつかない不思議な出来事が起こり始める。 ※本文中のルビは読み方ではなく、意味合いの場合があります。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

処理中です...