ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース3 山奥の事故物件【出題編】

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 もう限界が近い。慣れもしない登山をして、休む暇もなく草刈り。そして、再び登山だ。せめて背中のリュックサックくらい降ろしてくれば良かった――なんて考えても後の祭りである。

 比較的緩めな坂道を登っていたと思ったら、急に坂の角度がきつくなる。

「お二方。決して上を見ないように」

 先を行く冥の言葉に首を傾げた一里之だったが、実際に坂の向こう側に視線をやり納得した。もちろん、視線は慌てて足元への戻す。こんなところまでメイド姿の冥は、ニーハイのソックスを履いているとはいえスカートはほどほどに短い。ゆえに見上げてしまうと見えてしまうのである。何が――とまではみなまで言うまい。

「別に減るもんじゃないからいいだろうが――」

 鯖洲がぽつりと漏らすと「しかし、ある程度の料金をいただいても構わない景観かと」と冥。なんにせよ、上を見なければいいのだ。一里之は足元に視線を落としたまま急な坂道を登った。そこを登りきった頃には、へとへとになってしまっていた。ヘリコプターの羽根の音が大きくなり、ひらけた小高い丘の上空ではヘリコプターがホバリングをしているようだ。

「まるで天然のヘリポートだな。これだけひらけていれば、ヘリの1台くらい余裕で降りられるだろうよ」

 鯖洲の言葉を尻目に、冥はどこからか発煙筒を取り出す。そして、発煙筒をたくとヘリコプターに向かって大きく振った。あらかじめ合図を決めてあるかどうかは別にして、降りる分には問題ないことを伝えたのであろう。こういう時こそ、せっかく使えるスマホを活用すればいいのに。

 冥の合図により、ヘリコプターがゆっくりと降下を始めた。辺りには強風が吹き荒れる。それはヘリコプターが近づくにつれて強くなり、そしてとうとうヘリコプターは無事に着陸する。

 ヘリコプターのドアがスライドすると、先に寺山が降りて手を差し伸べる。その手を掴んだのは、いつも通りの格好のコトリだった。いつも通りのお嬢様スタイルであるが、しかしヘリコプターの羽から生じる強風は想定外だったのであろう。セットに時間がかかったであろう髪型は、同行した寺山にエスコートされて降りた瞬間に台無しとなった。寺山の髪型も強風のせいで片方に偏っており面白い。普段は運転手の寺山であるが、さすがにヘリは操縦できなかったか。今回はエスコートとして登場だ。

 コトリと寺山が降りると、ヘリはドアを閉じて上昇する。それを見守っている間に風は弱くなり、そして辺りには耳鳴りだけが残った。
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