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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】
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別に悪いことをしているわけではないが、警察署の中に入るというのは緊張するものだ。一方、千早は慣れた感じで中へと入ると、近くにいた警察官を捕まえて、何やら会話を交わす。その警察官が中に消えると、しばらくして見慣れた人物が姿を現した。
「いや、わざわざご足労いただいて申し訳ありませんねぇ」
周囲へと聞こえるように、わざと声を張ったように思える。斑目はそう言うと、やや冷ややかな目を向ける千早に向かって続けた。実に大根役者である。
「さぁ、こちらへどうぞ! ご協力感謝します」
おそらくではあるが、単純に一般人を招き入れるという形ではなく、なんらかの関係者として招き入れるという体裁をとっているのだろう。だから、それをアピールするために、あえて声を張り上げているのだ。
とにもかくにも、そんな斑目に続いて中へと入る。警察署の中に入ること自体初めてだが、別に特別な感じはしない。会社のオフィスビルに似たような構造になっていた。もっとも、取調室があるのは警察特有なのだろうが。
「斑目さん。あれはさすがに露骨すぎませんか? 大体、ここへは何度かお邪魔していますから、私も顔を覚えられつつあるかと」
見れば分かることなのであるが、千早にとってここは初めての場所ではないらしい。何度も同じようなアピールを繰り返しつつ、ごまかして中へと招き入れていたのだと思われる。
「まぁ、今のところ、まだごまかせていますから。ご忠告として受け入れてはおきますが」
実際、斑目がどれだけ優秀なのかは分からない。高校時代は、ことあるごとに千早のところに意見を聞きに来ていた刑事というイメージが強く、それが定着してしまっているせいで、事件を丸投げして、おいしいところだけ持っていく――というネガティブな印象がついてしまっている。世の中の渡り方がうまいことだけは間違いないだろうが。
「さてさて、こちらへどうぞ」
そう言って斑目がドアを開けてくれた部屋のプレートには【取調室⑤】と書かれていた。番号が割り振られているが、その番号が遅いことから、よほどのことがない限り使われることのない部屋なのだろうと予測できた。
中に入ると、テレビで見るような机があり、そこに脚立が立てかけられ、ロープが引っ掛けられていた。
「随分と過去の事件ですから、引っ張り出すのに苦労しましたよ。でも、苦労した甲斐はあったと思いますよ」
千早、一里之と部屋に入り、最後に入った斑目がドアを閉めた。冷たい金属音が、外から聞こえるざわめきをシャットアウトする。
「いや、わざわざご足労いただいて申し訳ありませんねぇ」
周囲へと聞こえるように、わざと声を張ったように思える。斑目はそう言うと、やや冷ややかな目を向ける千早に向かって続けた。実に大根役者である。
「さぁ、こちらへどうぞ! ご協力感謝します」
おそらくではあるが、単純に一般人を招き入れるという形ではなく、なんらかの関係者として招き入れるという体裁をとっているのだろう。だから、それをアピールするために、あえて声を張り上げているのだ。
とにもかくにも、そんな斑目に続いて中へと入る。警察署の中に入ること自体初めてだが、別に特別な感じはしない。会社のオフィスビルに似たような構造になっていた。もっとも、取調室があるのは警察特有なのだろうが。
「斑目さん。あれはさすがに露骨すぎませんか? 大体、ここへは何度かお邪魔していますから、私も顔を覚えられつつあるかと」
見れば分かることなのであるが、千早にとってここは初めての場所ではないらしい。何度も同じようなアピールを繰り返しつつ、ごまかして中へと招き入れていたのだと思われる。
「まぁ、今のところ、まだごまかせていますから。ご忠告として受け入れてはおきますが」
実際、斑目がどれだけ優秀なのかは分からない。高校時代は、ことあるごとに千早のところに意見を聞きに来ていた刑事というイメージが強く、それが定着してしまっているせいで、事件を丸投げして、おいしいところだけ持っていく――というネガティブな印象がついてしまっている。世の中の渡り方がうまいことだけは間違いないだろうが。
「さてさて、こちらへどうぞ」
そう言って斑目がドアを開けてくれた部屋のプレートには【取調室⑤】と書かれていた。番号が割り振られているが、その番号が遅いことから、よほどのことがない限り使われることのない部屋なのだろうと予測できた。
中に入ると、テレビで見るような机があり、そこに脚立が立てかけられ、ロープが引っ掛けられていた。
「随分と過去の事件ですから、引っ張り出すのに苦労しましたよ。でも、苦労した甲斐はあったと思いますよ」
千早、一里之と部屋に入り、最後に入った斑目がドアを閉めた。冷たい金属音が、外から聞こえるざわめきをシャットアウトする。
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