ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

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「まぁ、色々と気になるとは思いますが、とりあえず座ってくださいよ」

 わざわざお茶を淹れて持ってくる――なんてことはできないのであろう。ペットボトルのお茶が机の上に用意されており、その数に合わせてふたつの椅子が置かれていた。その片方に千早が座り、自然と一里之がもう片方に座った。

「そんなものしか用意できなくて、すいませんが」

 ペットボトルのほうへと手を差し出す斑目。千早は「ありがとうございます」とだけ返してお茶には手をつけなかった。それが申し訳ないように思えた一里之は、さほど喉も渇いてはいなかったが、お茶をいただいた。少しばかり生温いが、喉が潤ったような気がする。

「それで、こちらは――何になるのでしょうか?」

 千早が早速口を開く。ここに来てからずっと気になっていたもの。立てかけられた脚立にロープ。これが事件に無関係だとは思えない。

「ある程度察していただけると思いますが、当時現場に残されていた証拠品ですね。本当なら、捜査がひと段落した時点で持ち主の方に返すべきなのですが、どうやら手違いがあったようでして。この手違いのおかげで、ずっと所有者不明だとばかり思っていたのですが、改めて調べてみたら、どうやら所有者は判明していたみたいなんですよね」

 警察とて完璧ではないだろうし、その組織は人間で作り上げられている。凡ミスが許されるわけではないが、やはりヒューマンエラーは生じてしまうのだろう。もっとも、問題なのはエラーが生じてしまうことではなく、エラーが生じた後の処理であるが。

「自殺だと断定してしまった手前、後出しで情報を出せなかっただけなのでは?」

 千早の指摘に斑目は苦笑い。

「事件に関与した人間で、この署に残っているのは自分だけですから、いまさら手痛いところを突かれても、それは全部こちらにシワが寄ってしまうわけで――。まぁ、その辺りに関しては、今さら調べ直すことはできないってことでどうです?」

 千早の指摘をゆるりとかわすと、話題をごまかすかのように続ける斑目。

「それはそうとこの脚立。実はある人物が事件の直前に購入していたことが明らかになりました。近隣のホームセンターにて、ある意外な人物のクレジットカードで購入された記録が残っていたんです」

 意外な人物――と言われても、そもそもそ自殺で片付けられてしまった事件だ。一体、誰のことを指しているのだろう。

「もったいぶらずに教えていただけませんか? 誰が脚立を購入していたのかを」
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