ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

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 警察とて無能ではない。きっと、当時の事件が自殺であると断定されて、誰よりも斑目が悔しかったに違いない。だからなのか、待ってましたとばかりに、斑目は口を開いた。

「赤祖父とおる――亡くなった愛さんの父親です。彼のクレジットカードで脚立が購入されていたんです。いいえ、それだけじゃない。そちらのロープも同時に購入されていました」

 斑目の言葉に、仏壇の写真が頭に浮かぶ。事件に関与しているであろう物品を、愛の父親が購入していた。まさか、愛を手にかけた犯人は、実の父親だとでもいうのだろうか。

「目撃証言などは確認できているのでしょうか?」

 衝撃の事実に動じる様子もなく、実に冷静な様子で返す千早。斑目はゆるく首を振る。

「クレジットカードは履歴を遡って確認することができたのですが、明確な目撃証言は得られていないです。当時の監視カメラ映像もあるのですが、いかんせん解像度が低くてですね――」

 目撃証言など明確なものはない。しかしながら、クレジットの利用履歴から、愛の父親が購入したであろう推測が成り立つ。これはいよいよ、愛の父親が怪しくなってきた。

「そうですか。そこまでのことが分かっていながら、なぜ当時は自殺だと断定されてしまったのでしょう?」

 愛が自殺だと断定されたことについて、千早はいまだに疑問を抱いているようだった。あえて彼女が触れないようにしてきた事件。きっと、この数年の間、千早はやるせない気持ちをどこかに抱き続けていたに違いない。逃げてしまったこと、本当に申し訳ないと思っている。

「やはり遺書の存在が大きかったですね。本当に杜撰なやり方だとは思いますが、遺書が出てきた時点で自殺だと決めつけて動いたらしいので」

 事件に対して申し訳なく思っているのは、きっと斑目とて同じであろう。そこでふと疑問が浮かぶ。当時、斑目は警察の中でもそこそこの地位にいたはずだ。ならば、愛の事件も彼が担当したのではないだろうか。

「らしい――って、この辺りって、斑目さんの警察署が管轄だよな?」

 一里之が問うと、これまた面目ないといった様子で、やや目線を逸らして口を開く斑目。

「いやね、うっかり愛さんと知り合いだ――なんて漏らしてしまったせいで、事件から外されてしまいまして。あの時は失言してしまいました」

 私的感情が入ってしまうと、捜査に支障をきたす可能性がある。それゆえに斑目は事件から外されてしまったわけか。彼がどこか申し訳なさそうにしている意味が分かった気がした。
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