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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】
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「おい、こんなところで煙草を吸っている場合じゃないだろ?」
無視をされても食らいつく鯖洲に、男はただ首を横に振った。
「もう表に車は回してあるさ。それに、お客人の前でその態度はやめたほうがいい」
男に軽くあしらわれてしまった様子の鯖洲は、聞こえるように舌打ちをすると、紫煙を燻らせた。自然と男と目が合うと、まだ随分と長かったにも関わらず、煙草を消して男は頭を下げる。
「寺山――と申します。この度は、わざわざありがとうございます」
なかば分かっていたのであるが、目の前にいる男が寺山という男らしい。丁寧に挨拶してもらったことに恐縮しつつ頭を下げ返す。
「斑目といいます。どうぞ、よろしくお願いします」
寺山は鯖洲と話す時は別人であるかのごとく柔和な笑みを浮かべ「こちらこそ、よろしくお願いします」と一言。それを見た鯖洲が鼻で笑う。察するに、寺山と鯖洲は仲が悪いのであろう。
「――じゃあ、俺は先に行く。あんまり煙草臭ぇとお嬢と玄界灘がうるせぇからな。玄界灘のやつなんて自分でも電子煙草やってるくせによ」
そうぼやきつつ、体にまとわりついた煙を払うかの動作をする鯖洲。先にブースを出て、屋敷の中へと戻ってしまった。慌てて残りの分を吸ってしまうと、寺山に頭を下げてブースを後にする。ただでさえ広大な屋敷なのだ。置いていかれたら迷う自信がある。
裏口から屋敷の中に戻ると、どうやら待ってくれていたらしい。鯖洲が腕組みをして廊下の壁に寄りかかっていた。
「悪いな。俺はあいつが昔から気に入らなくてよ。あっちもあっちで、極道に偏見があるみたいで、あの様さ。あんまり気を悪くしないでくれや」
まさか、そんな点で気を遣ってもらえるとは思いもしなかった。斑目は「いえ、大丈夫です」と返した。見た目とは違い、様々なところに気を回せる人らしい。人は見た目で判断してはならないというが、まさしくその通りである。
「さて、お嬢と玄界灘も待ってるだろうし、表のほうに向かうか。まぁ、車に乗ってる時は寝てるだろうからよ。さっきみたいな諍いは起きない。心配せんでくれ」
誰かと誰かが険悪。それだけで第三者が気を遣ってしまうものである。それを理解している鯖洲は、きっと性根は優しい人間なのであろう。
鯖洲と一緒に表へと向かう。どこで追い越されたのかは分からないが、すでに車は表に回されており、運転席の側には寺山の姿があった。
無視をされても食らいつく鯖洲に、男はただ首を横に振った。
「もう表に車は回してあるさ。それに、お客人の前でその態度はやめたほうがいい」
男に軽くあしらわれてしまった様子の鯖洲は、聞こえるように舌打ちをすると、紫煙を燻らせた。自然と男と目が合うと、まだ随分と長かったにも関わらず、煙草を消して男は頭を下げる。
「寺山――と申します。この度は、わざわざありがとうございます」
なかば分かっていたのであるが、目の前にいる男が寺山という男らしい。丁寧に挨拶してもらったことに恐縮しつつ頭を下げ返す。
「斑目といいます。どうぞ、よろしくお願いします」
寺山は鯖洲と話す時は別人であるかのごとく柔和な笑みを浮かべ「こちらこそ、よろしくお願いします」と一言。それを見た鯖洲が鼻で笑う。察するに、寺山と鯖洲は仲が悪いのであろう。
「――じゃあ、俺は先に行く。あんまり煙草臭ぇとお嬢と玄界灘がうるせぇからな。玄界灘のやつなんて自分でも電子煙草やってるくせによ」
そうぼやきつつ、体にまとわりついた煙を払うかの動作をする鯖洲。先にブースを出て、屋敷の中へと戻ってしまった。慌てて残りの分を吸ってしまうと、寺山に頭を下げてブースを後にする。ただでさえ広大な屋敷なのだ。置いていかれたら迷う自信がある。
裏口から屋敷の中に戻ると、どうやら待ってくれていたらしい。鯖洲が腕組みをして廊下の壁に寄りかかっていた。
「悪いな。俺はあいつが昔から気に入らなくてよ。あっちもあっちで、極道に偏見があるみたいで、あの様さ。あんまり気を悪くしないでくれや」
まさか、そんな点で気を遣ってもらえるとは思いもしなかった。斑目は「いえ、大丈夫です」と返した。見た目とは違い、様々なところに気を回せる人らしい。人は見た目で判断してはならないというが、まさしくその通りである。
「さて、お嬢と玄界灘も待ってるだろうし、表のほうに向かうか。まぁ、車に乗ってる時は寝てるだろうからよ。さっきみたいな諍いは起きない。心配せんでくれ」
誰かと誰かが険悪。それだけで第三者が気を遣ってしまうものである。それを理解している鯖洲は、きっと性根は優しい人間なのであろう。
鯖洲と一緒に表へと向かう。どこで追い越されたのかは分からないが、すでに車は表に回されており、運転席の側には寺山の姿があった。
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