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暫くして男子集団がどやどやと入ってきた。王太子の皮鎧の色を打合せ、その流れで普段使いの狩猟用の手袋や胸当ても依頼し、エリクやアラン運動部副代表も希望のものを頼めたようだ。
アランは
「さすがに魔獣の皮は予算が無理だったな」
「私は普段用のもっと手入れのしやすい鹿皮のトラウザも頼んだ」
なんとなく男子たちは興奮して戦利品報告を女子たちにしている。一番最初にアランが気が付く。
「あれ?ジャックは?」
「礼拝堂に行ったはず」
クレマンが答える。王太子はちゃっかり菫姫とリーゼの間に座って新しくお茶と小腹を満たすものを持ってこさせる。
「すみません、武骨なものしかなくて」
と持ってこられたのはパンにバターを塗っただけのタルティーヌだった。それと焼いたソーセージ。
「今、料理人がちょうど休憩してたので………、我々が食べるおやつです」
これを持ってきた騎士が説明する。王太子たちはそれでも嬉しそうで、そっけないバターが塗られたパンにソーセージをはさんでぱくつく。
「ドルパック伯のところでは、皮と革と鎧の話で何か食べること忘れてたんで」
エリクは説明する。リリゼットはリーゼに耳打ちして、一礼をし部屋から出て行った。
宿舎に戻ると、メイドに声をかける。
「ルイになにかおやつとか」
「殿下たちが帰られてすぐにユーグ様と一緒にお昼を」
「それまで朝から何も取ってなかった?」
メイドは頷いた。ユーグの悪い癖だった。興が乗ってくると寝食を忘れる。今回はそれにルイを巻き込んだようだった。
「お父様」
リリゼットの雷が落ちそうなのをユーグは悟った。
「まて、いい質の皮があるからルイと一緒に」
「お父様、貴方は孫をひもじい思いさせていいとお思い?」
ルイは気を付けて食べさせないとあっという間に痩せてしまう。一度に食べる量が成長に追いつかないのでちゃんと10時3時のおやつはかかせないのだ。
「一日くらい、ならいいですけどお父様にまかせるとここにいる間にがりがりになっちゃいます」
リリゼットはルイに向き直った。
「ルイ、あなたもちゃんと10時15時のおやつもお昼ご飯も食べるようにしなさい。あとルイがお父様に声をかけてあげて。一度声をかけてだめならほっといていいから。ルイはここから食堂に一人でいける?行けなかったら」
ルイは
「行ける。そこまで子供じゃないよ」
と答えた。
「じゃ、夕食はちゃんと食堂に来てね、ルイ。………お父様もね」
ユーグは不承不承頷いた。食堂で食べるとダンテス公爵と同席になるので会話に苦しむのだ。それが嫌で時間をずらしたりしても公爵が待ち構えていたりもする。
ダンテス公爵は、休暇を満喫していた。魔道騎士たちと一緒に魔獣狩りをしたりユーグの作業場ですっと作業を見たり。リリゼットは礼拝堂で侯爵と話し込む陛下を見てそっと扉を閉じたこともあった。
誰かに話すべきかとも考えたが、リリゼットは話さなかった。陛下が秘密裡にこちらに来ていた事を知っているのは偶然みたリリゼット、理由を知ってるエドアールとダンテス公爵だった。
アランは
「さすがに魔獣の皮は予算が無理だったな」
「私は普段用のもっと手入れのしやすい鹿皮のトラウザも頼んだ」
なんとなく男子たちは興奮して戦利品報告を女子たちにしている。一番最初にアランが気が付く。
「あれ?ジャックは?」
「礼拝堂に行ったはず」
クレマンが答える。王太子はちゃっかり菫姫とリーゼの間に座って新しくお茶と小腹を満たすものを持ってこさせる。
「すみません、武骨なものしかなくて」
と持ってこられたのはパンにバターを塗っただけのタルティーヌだった。それと焼いたソーセージ。
「今、料理人がちょうど休憩してたので………、我々が食べるおやつです」
これを持ってきた騎士が説明する。王太子たちはそれでも嬉しそうで、そっけないバターが塗られたパンにソーセージをはさんでぱくつく。
「ドルパック伯のところでは、皮と革と鎧の話で何か食べること忘れてたんで」
エリクは説明する。リリゼットはリーゼに耳打ちして、一礼をし部屋から出て行った。
宿舎に戻ると、メイドに声をかける。
「ルイになにかおやつとか」
「殿下たちが帰られてすぐにユーグ様と一緒にお昼を」
「それまで朝から何も取ってなかった?」
メイドは頷いた。ユーグの悪い癖だった。興が乗ってくると寝食を忘れる。今回はそれにルイを巻き込んだようだった。
「お父様」
リリゼットの雷が落ちそうなのをユーグは悟った。
「まて、いい質の皮があるからルイと一緒に」
「お父様、貴方は孫をひもじい思いさせていいとお思い?」
ルイは気を付けて食べさせないとあっという間に痩せてしまう。一度に食べる量が成長に追いつかないのでちゃんと10時3時のおやつはかかせないのだ。
「一日くらい、ならいいですけどお父様にまかせるとここにいる間にがりがりになっちゃいます」
リリゼットはルイに向き直った。
「ルイ、あなたもちゃんと10時15時のおやつもお昼ご飯も食べるようにしなさい。あとルイがお父様に声をかけてあげて。一度声をかけてだめならほっといていいから。ルイはここから食堂に一人でいける?行けなかったら」
ルイは
「行ける。そこまで子供じゃないよ」
と答えた。
「じゃ、夕食はちゃんと食堂に来てね、ルイ。………お父様もね」
ユーグは不承不承頷いた。食堂で食べるとダンテス公爵と同席になるので会話に苦しむのだ。それが嫌で時間をずらしたりしても公爵が待ち構えていたりもする。
ダンテス公爵は、休暇を満喫していた。魔道騎士たちと一緒に魔獣狩りをしたりユーグの作業場ですっと作業を見たり。リリゼットは礼拝堂で侯爵と話し込む陛下を見てそっと扉を閉じたこともあった。
誰かに話すべきかとも考えたが、リリゼットは話さなかった。陛下が秘密裡にこちらに来ていた事を知っているのは偶然みたリリゼット、理由を知ってるエドアールとダンテス公爵だった。
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