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3.店の上の生活
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「お目覚めですか、アレシア様。」
目を開けたアレシアは、窓から差し込む明るい日差しに目を細める。
昨夜、モナンジュの立て直し計画が進展せず、店の二階にある小さなお部屋にエイダと二人で寝ることにしたのだ。
元々この部屋は、下の針子の仕事が終えた後に、休むための仮眠室という名のベッドと机があるだけの小さなスペースだ。
人生でこんな小さなベッドになど寝たことがなかったけれど、寝れれば問題ないものである。
私はトラヴィス様と離縁になってしまうのも仕方ないと考えているので、こうして小さな部屋で生きていくのも悪くないかもしれないと思った。
「よく眠れたわ。」
「それは良かったです。」
向かいに寝ていたエイダは、もうすっかり身支度を整えて、私が目を覚ますのを待っていたようである。
「エイダは寝れたの?」
「もちろんですよ。
私はこんなの慣れっ子です。」
「そうなの?
だったら良かったわ。」
「朝食にしませんか?
お邸より朝食が届いております。」
「えっ?
わざわざここに?」
「はい、ヨルダン様が気を利かせてくれたのでしょう。
先ほど使いの者が届けに来ました。」
「何だか申し訳ないわ。
私達の都合で勝手にこっちに泊まったのに。」
「アレシア様はどうか心配なさらずに。
皆、アレシア様のことを大変慕っており、心から気にかけているんですよ。」
「そんな、私は勝手に邸を出てしまった身なのに。
でも、そんなふうに思っていただけるのはありがたいわ。」
「さあ、起きて朝食をいただきましょう。」
二人がバスケットに入っていたパンやハム、果実水を飲んでいると、出勤して来たレオニーも加わり、今日の予定を立てる。
「アレシア様、今日は完成したドレスを王宮に持って行くので、話し合いはその後でもいいですか?」
レオニーは申し訳なさそうに目を伏せながら話す。
「私には時間がたっぷりあるのだから、そんなに気を使わなくてもいいのよ。
でも、せっかくだから私も行っていいかしら?」
「えっ、アレシア様もですか?
もちろん構いませんが、長い距離を歩くことになりますが、大丈夫ですか?」
「ええ、頑張るわ。」
私はここにいてもできることは限られているし、気分転換に王宮について行くことにした。
少しでも動くことで、何かモナンジュの立て直し案が浮かぶかもしれない。
「ふふ、楽しみだわ。」
王宮に到着すると、公爵夫人である私は、普段なら正面のエントランスに馬車をつけるのが常だが、今回は業者なので裏門の勝手口から入ると言われた。
モナンジュからワンピースを借りた私は、お針子の助手を装い、目立たないように顔を伏せる。
これなら誰も私が、オフリー公爵夫人だとは気づかないはず。
私は皆のように静々と歩き、平静を装っているが、内心では初めての経験にワクワクしている。
案内役の女官の後をレオニーが歩き、私はレオニーの後ろに隠れるようにして、王宮の回廊をすすんで行く。
着ている服は、借り物の地味なワンピースで、ドレス以外を着たのは、人生初めてのことで、その軽さや締め付けの無さに驚いている。
皆、このような物を着て働いているのね。
納得だわ。
これなら、ドレスより何倍も早く動ける。
もし、トラヴィス様と離縁することになったら、実家からも追い出されてしまうだろう。
私のお父様はとても厳格な人で、彼に捨てられてしまえば、出戻る私など価値なしと言わんばかりに、邸から出されてしまうに違いない。
でも、その後は、心優しいお兄様が私を支えると言ってくれている。
その時は、このような服を着て、なるべくお兄様の負担にならないように、自分のことは自分でできるようにしなくちゃ。
お兄様は血は繋がっていないが、幼い頃から共に過ごし、心を許せるたった一人の家族なのだ。
王宮の使用人が通る廊下は曲がりくねり、顔を伏せている私は、もうどこを歩いているのかさえわからなかった。
息を切らしながら階段を登り、上がった先の回廊の窓からは、王宮自慢の美しい庭園が見渡せ、その中にリベルト第一王子と共に歩くトラヴィス様の姿が目に入った。
トラヴィス様を見たのは、幾日ぶりだろうか。
皮肉なものね。
彼に会いたいと思い、夜遅くまで待っていた寝室では、寝た形跡があるものの直接顔を合わせることがなかったのに。
トラヴィス様は、いつものようにキリッとした表情でリベルト王子と話しながら、王宮内に入ろうとしていた。
彼の深い青色の瞳をどれだけ見たいと思い続けていたかしら。
彼の瞳は、遠くで見ると色は深く、近くで見ると綺麗な青色なのだ。
みんなが知る彼の瞳は夜の闇のようだけど、親密さを増せば輝く海のようになる。
それを知ってしまった私は、彼を見つめることをやめられない。
美しいと評判のリベルト王子よりも、自分の夫であるトラヴィス様が断然素敵に見える私は重症ね。
きっと彼は、いつもあのようにリベルト王子を支えれることに誇りを持って、勤めているのだろう。
だから、最近は特に忙しくて、私が起きている時間に帰って、話す時間さえとれないのかしら。
もし、離縁しても王宮で今のように遠くから彼を見守ることができるなら、会えない夫婦のままでいるよりも、寂しさを感じることなく過ごせるのかもしれない。
また、こうして王宮に助手として来れるように、モナンジュの経営を頑張ろう。
彼の瞳を時々は見たいからと、離縁してモナンジュを立て直そうとする私は、どうかしている。
そもそも、私達夫婦には会話する時間なんてほとんどないのだから、彼がこうして忙しくしていると知りながら、出て行こうとする私は悪い妻ね。
でも、そうしなければ今までの三年と同じように、ただ寝室で待つだけでは何も変わらないことは、分かりきっている。
私は彼にとって、いてもいなくても大した違いのない存在だから、私が何をしても彼の生活に影響はない。
この先も、私が彼を時々見たいと動くだけ。
それはわかっているけれど、いざ彼を見て物思いに耽ると、今もなお一方的にトラヴィス様を想い、胸が締め付けられるような切なさが込み上げてしまう。
お父様に促されて、初めて彼に会った時、その上品な顔立ちと爽やかな笑顔に恋をした。
若い男性でこんなにも美しく、落ち着いた振る舞いができる人がいるのだと、驚きと羨望の眼差しで彼を見つめたものだ。
あの頃、私は結婚に夢を抱き、彼と結婚できる幸運に酔いしれた。
こんな素敵な人と夫婦になり、共に一生を過ごせるのだと。
夢が叶い結婚すると、トラヴィス様は私の肌がとても綺麗だと褒めてくれた。
「抱きしめるととても癒される。」
顔の造りには自信がないけれど、肌はお薬を飲み、手入れも欠かさない。
その努力を認めてもらえたようで、嬉しかった。
けれど、わずか三年で私に全く興味を持たない彼が仕事に没頭する姿に絶望し、彼から離れる決心をして今に至る。
好きであればあるほど、心を向けられない日々は耐えがたく、邸の中では呼吸するのさえ、苦しくてたまらなくなった。
もし、私がトラヴィス様のことをなんとも思わずにいられたら、平穏な気持ちのまま一人ぼっちの邸で過ごせたのだろう。
でも、私は彼に憧れを抱いてしまったから、私に関心を持ち続けて欲しかった。
けれど、結婚してからわずか一年も経たないうちに、彼の私への興味はなくなってしまったようだ。
時が経つにつれてますます、どんなに努力してもダメだったから、私は彼以外に目を向けようと頑張っている。
時々こうやって彼を遠くから見つつも、自分の人生を生きる。
ただ待つだけの空虚な自分には、戻りたくない。
それだけが、私の今の思いである。
「明日から、早く帰りたいとはどういうことだ?」
リベルト第一王子は、いつもそばにいて補佐してくれるトラヴィスが、自分から離れようとしていることに苛立ち、鋭い目で彼を見つめる。
「最近、王からの執務の分担は少し落ち着いてきました。
だから、少しぐらい僕がいない時間ができても、何とかなるはずです。
恥ずかしながら、僕は今夫婦の危機に直面しています。」
「ほう、それは穏やかじゃないな。」
リベルト王子はニヤリと笑って、トラヴィスを見る。
「笑いごとではありません。
妻を失っては夜もよく眠れませんし、リベルト様をお支えする元気も湧いて来ません。」
「トラヴィスからそんな言葉を聞くとはな。」
リベルト王子は、トラヴィスとは長い付き合いだから、二人きりの時は名前で呼んでいる。
そして、彼から吐き出されたその言葉に驚きを隠せなかった。
周りの者を信用できないリベルト王子にとって、彼はただ一人の信頼できる相手で、幼い頃からの付き合いである従兄弟だった。
だからこそ、彼をそばに置きたがり、彼は邸に戻るのが極端に遅くなる。
彼は常に冷静で、誰よりも的確に仕事を割り振り、部下達に指示を出している。
だから、邸に帰る時間が少なくても、妻の扱いもうまくやっていると思っていた。
これほど仕事のできる男でも、こと夫婦関係については、うまく収めれないものなのか?
夫婦がうまくいくためには、頭の良さだけでは足りないようだ。
政略結婚が当たり前で、常に女性に傅かれているリベルト王子には、わからないことだった。
「私はどうやら失敗してしまったようです。
妻が出て行ってしまったので。」
「だったら丁度いい、放っておけばいいじゃないか。
お互いに好きにすればいいだろ?」
「僕は妻に帰って来てほしいんです。
リベルト王子もそばにいてほしいと思える相手に会えば、わかりますよ。」
「女なんて暇つぶし程度で十分だ。
お前のことを裏切っているのに、その女に固執する意味がわからない。」
「でも、愛する女性のぬくもりを一度知ってしまうと、どんなに恋しく思うのは自分だけだとわかっていても、不思議と元の生活に戻りたくなくなるんですよ。
だから、僕は何としても早く帰りますから。」
「しょうがないな。」
その時、回廊の向こうから妻が見ているとは思いもしないトラヴィスは、アレシアとの関係をどうにか立て直すために真剣に話をしていた。
目を開けたアレシアは、窓から差し込む明るい日差しに目を細める。
昨夜、モナンジュの立て直し計画が進展せず、店の二階にある小さなお部屋にエイダと二人で寝ることにしたのだ。
元々この部屋は、下の針子の仕事が終えた後に、休むための仮眠室という名のベッドと机があるだけの小さなスペースだ。
人生でこんな小さなベッドになど寝たことがなかったけれど、寝れれば問題ないものである。
私はトラヴィス様と離縁になってしまうのも仕方ないと考えているので、こうして小さな部屋で生きていくのも悪くないかもしれないと思った。
「よく眠れたわ。」
「それは良かったです。」
向かいに寝ていたエイダは、もうすっかり身支度を整えて、私が目を覚ますのを待っていたようである。
「エイダは寝れたの?」
「もちろんですよ。
私はこんなの慣れっ子です。」
「そうなの?
だったら良かったわ。」
「朝食にしませんか?
お邸より朝食が届いております。」
「えっ?
わざわざここに?」
「はい、ヨルダン様が気を利かせてくれたのでしょう。
先ほど使いの者が届けに来ました。」
「何だか申し訳ないわ。
私達の都合で勝手にこっちに泊まったのに。」
「アレシア様はどうか心配なさらずに。
皆、アレシア様のことを大変慕っており、心から気にかけているんですよ。」
「そんな、私は勝手に邸を出てしまった身なのに。
でも、そんなふうに思っていただけるのはありがたいわ。」
「さあ、起きて朝食をいただきましょう。」
二人がバスケットに入っていたパンやハム、果実水を飲んでいると、出勤して来たレオニーも加わり、今日の予定を立てる。
「アレシア様、今日は完成したドレスを王宮に持って行くので、話し合いはその後でもいいですか?」
レオニーは申し訳なさそうに目を伏せながら話す。
「私には時間がたっぷりあるのだから、そんなに気を使わなくてもいいのよ。
でも、せっかくだから私も行っていいかしら?」
「えっ、アレシア様もですか?
もちろん構いませんが、長い距離を歩くことになりますが、大丈夫ですか?」
「ええ、頑張るわ。」
私はここにいてもできることは限られているし、気分転換に王宮について行くことにした。
少しでも動くことで、何かモナンジュの立て直し案が浮かぶかもしれない。
「ふふ、楽しみだわ。」
王宮に到着すると、公爵夫人である私は、普段なら正面のエントランスに馬車をつけるのが常だが、今回は業者なので裏門の勝手口から入ると言われた。
モナンジュからワンピースを借りた私は、お針子の助手を装い、目立たないように顔を伏せる。
これなら誰も私が、オフリー公爵夫人だとは気づかないはず。
私は皆のように静々と歩き、平静を装っているが、内心では初めての経験にワクワクしている。
案内役の女官の後をレオニーが歩き、私はレオニーの後ろに隠れるようにして、王宮の回廊をすすんで行く。
着ている服は、借り物の地味なワンピースで、ドレス以外を着たのは、人生初めてのことで、その軽さや締め付けの無さに驚いている。
皆、このような物を着て働いているのね。
納得だわ。
これなら、ドレスより何倍も早く動ける。
もし、トラヴィス様と離縁することになったら、実家からも追い出されてしまうだろう。
私のお父様はとても厳格な人で、彼に捨てられてしまえば、出戻る私など価値なしと言わんばかりに、邸から出されてしまうに違いない。
でも、その後は、心優しいお兄様が私を支えると言ってくれている。
その時は、このような服を着て、なるべくお兄様の負担にならないように、自分のことは自分でできるようにしなくちゃ。
お兄様は血は繋がっていないが、幼い頃から共に過ごし、心を許せるたった一人の家族なのだ。
王宮の使用人が通る廊下は曲がりくねり、顔を伏せている私は、もうどこを歩いているのかさえわからなかった。
息を切らしながら階段を登り、上がった先の回廊の窓からは、王宮自慢の美しい庭園が見渡せ、その中にリベルト第一王子と共に歩くトラヴィス様の姿が目に入った。
トラヴィス様を見たのは、幾日ぶりだろうか。
皮肉なものね。
彼に会いたいと思い、夜遅くまで待っていた寝室では、寝た形跡があるものの直接顔を合わせることがなかったのに。
トラヴィス様は、いつものようにキリッとした表情でリベルト王子と話しながら、王宮内に入ろうとしていた。
彼の深い青色の瞳をどれだけ見たいと思い続けていたかしら。
彼の瞳は、遠くで見ると色は深く、近くで見ると綺麗な青色なのだ。
みんなが知る彼の瞳は夜の闇のようだけど、親密さを増せば輝く海のようになる。
それを知ってしまった私は、彼を見つめることをやめられない。
美しいと評判のリベルト王子よりも、自分の夫であるトラヴィス様が断然素敵に見える私は重症ね。
きっと彼は、いつもあのようにリベルト王子を支えれることに誇りを持って、勤めているのだろう。
だから、最近は特に忙しくて、私が起きている時間に帰って、話す時間さえとれないのかしら。
もし、離縁しても王宮で今のように遠くから彼を見守ることができるなら、会えない夫婦のままでいるよりも、寂しさを感じることなく過ごせるのかもしれない。
また、こうして王宮に助手として来れるように、モナンジュの経営を頑張ろう。
彼の瞳を時々は見たいからと、離縁してモナンジュを立て直そうとする私は、どうかしている。
そもそも、私達夫婦には会話する時間なんてほとんどないのだから、彼がこうして忙しくしていると知りながら、出て行こうとする私は悪い妻ね。
でも、そうしなければ今までの三年と同じように、ただ寝室で待つだけでは何も変わらないことは、分かりきっている。
私は彼にとって、いてもいなくても大した違いのない存在だから、私が何をしても彼の生活に影響はない。
この先も、私が彼を時々見たいと動くだけ。
それはわかっているけれど、いざ彼を見て物思いに耽ると、今もなお一方的にトラヴィス様を想い、胸が締め付けられるような切なさが込み上げてしまう。
お父様に促されて、初めて彼に会った時、その上品な顔立ちと爽やかな笑顔に恋をした。
若い男性でこんなにも美しく、落ち着いた振る舞いができる人がいるのだと、驚きと羨望の眼差しで彼を見つめたものだ。
あの頃、私は結婚に夢を抱き、彼と結婚できる幸運に酔いしれた。
こんな素敵な人と夫婦になり、共に一生を過ごせるのだと。
夢が叶い結婚すると、トラヴィス様は私の肌がとても綺麗だと褒めてくれた。
「抱きしめるととても癒される。」
顔の造りには自信がないけれど、肌はお薬を飲み、手入れも欠かさない。
その努力を認めてもらえたようで、嬉しかった。
けれど、わずか三年で私に全く興味を持たない彼が仕事に没頭する姿に絶望し、彼から離れる決心をして今に至る。
好きであればあるほど、心を向けられない日々は耐えがたく、邸の中では呼吸するのさえ、苦しくてたまらなくなった。
もし、私がトラヴィス様のことをなんとも思わずにいられたら、平穏な気持ちのまま一人ぼっちの邸で過ごせたのだろう。
でも、私は彼に憧れを抱いてしまったから、私に関心を持ち続けて欲しかった。
けれど、結婚してからわずか一年も経たないうちに、彼の私への興味はなくなってしまったようだ。
時が経つにつれてますます、どんなに努力してもダメだったから、私は彼以外に目を向けようと頑張っている。
時々こうやって彼を遠くから見つつも、自分の人生を生きる。
ただ待つだけの空虚な自分には、戻りたくない。
それだけが、私の今の思いである。
「明日から、早く帰りたいとはどういうことだ?」
リベルト第一王子は、いつもそばにいて補佐してくれるトラヴィスが、自分から離れようとしていることに苛立ち、鋭い目で彼を見つめる。
「最近、王からの執務の分担は少し落ち着いてきました。
だから、少しぐらい僕がいない時間ができても、何とかなるはずです。
恥ずかしながら、僕は今夫婦の危機に直面しています。」
「ほう、それは穏やかじゃないな。」
リベルト王子はニヤリと笑って、トラヴィスを見る。
「笑いごとではありません。
妻を失っては夜もよく眠れませんし、リベルト様をお支えする元気も湧いて来ません。」
「トラヴィスからそんな言葉を聞くとはな。」
リベルト王子は、トラヴィスとは長い付き合いだから、二人きりの時は名前で呼んでいる。
そして、彼から吐き出されたその言葉に驚きを隠せなかった。
周りの者を信用できないリベルト王子にとって、彼はただ一人の信頼できる相手で、幼い頃からの付き合いである従兄弟だった。
だからこそ、彼をそばに置きたがり、彼は邸に戻るのが極端に遅くなる。
彼は常に冷静で、誰よりも的確に仕事を割り振り、部下達に指示を出している。
だから、邸に帰る時間が少なくても、妻の扱いもうまくやっていると思っていた。
これほど仕事のできる男でも、こと夫婦関係については、うまく収めれないものなのか?
夫婦がうまくいくためには、頭の良さだけでは足りないようだ。
政略結婚が当たり前で、常に女性に傅かれているリベルト王子には、わからないことだった。
「私はどうやら失敗してしまったようです。
妻が出て行ってしまったので。」
「だったら丁度いい、放っておけばいいじゃないか。
お互いに好きにすればいいだろ?」
「僕は妻に帰って来てほしいんです。
リベルト王子もそばにいてほしいと思える相手に会えば、わかりますよ。」
「女なんて暇つぶし程度で十分だ。
お前のことを裏切っているのに、その女に固執する意味がわからない。」
「でも、愛する女性のぬくもりを一度知ってしまうと、どんなに恋しく思うのは自分だけだとわかっていても、不思議と元の生活に戻りたくなくなるんですよ。
だから、僕は何としても早く帰りますから。」
「しょうがないな。」
その時、回廊の向こうから妻が見ているとは思いもしないトラヴィスは、アレシアとの関係をどうにか立て直すために真剣に話をしていた。
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