2 / 19
2.モナンジュ
しおりを挟む
「なるほど、つまりモナンジュのドレスを着ると破局すると言う噂が広まり、それが原因でドレスが売れなくなったのね。」
「はい、アレシア様。」
私とエイダは王都にあるレオニーというエイダの友人のドレス工房に来ていた。
モナンジュというのはそのドレス工房の名前である。
そこはレオニーが数人のお針子を抱える小さな店ながら、思い通りのドレスが仕立てれると評判で、一時期はとても賑わっていた。
しかし、現在はお客様が激減し、破綻の危機に瀕している。
レオニーは私達に事情を説明した後、悔しそうに顔を伏せる。
ドレスは社交の場で必ず着るものだから、その中で破局する人が出てしまうのも仕方ないことで、それはドレスのせいではないのだ。
しかし残念ながら、自分の不幸を何かのせいにしようとする人が一定数いる。
今回はその「何か」がたまたまドレスだったというだけだろう。
それでも、そんな噂が立てば、不吉だからと買うのを躊躇う人がいるのは無理もないことだ。
「でも、元々自分でシックなドレスをオーダーするからなんです。
私には似合わないとか、もう年だからとか言い訳して、くすんだ色のドレスを作った挙句、男性と破局した理由をドレスのせいにするなんて許せません。」
レオニーは怒りのために、拳をプルプルと震わせる。
「そうね。
あくまでそれは自分のせいね。」
「でも、アレシア様、私もう店を畳もうと思うんです。
元々私は、ドレスを作りたかっただけで、店を開きたかったわけじゃなかったことに気がついたんです。
店の経営を考えるのはもうウンザリで。
ドレス作りだけを考えていたいんです。
でも、子供がいても雇ってくれる店がなくて、自分で始めました。」
「ここを辞めたら、代わりの仕事はあるの?」
「ドレス作りの夢を諦めれば、子守として働くことができます。
好きではないけれど、お金のためなら仕方がないです。」
レオニーは肩を落として、つぶやく。
「子供がいるからって好きな仕事を諦めるなんておかしいわ。
アレシア様、なんとかならないでしょうか?」
エイダも心配そうに、俯くレオニーの背に手を置く。
「わかったわ。
同じ女性として、子育てしているレオニーに協力したいの。
だから、私がモナンジュの経営を引き受けるわ。
そしたら、レオニーはこの店を続けられるでしょ?
でも、一つだけ条件があって、表向きはあなたが経営者だということにしてほしいの。」
「えっ、アレシア様がこの店の経営をするんですか?」
「ええ、私には時間があるし、多くはないけれど資金もあるの。
だから、経営と広告塔としての役割を果たすわ。
でも、実際に経営をしているのが私だということは内緒にしてほしいの。
私に何があっても、トラヴィス様が背負うオフリー家の名前に泥を塗ってしまうことを避けたいから。
経営の問題が解決して、レオニーが安心してドレス作りができるように、三人でこの工房の立て直しをしましょう。
エイダも一緒に。」
「私もやっていいんですか?」
「もちろんよ。
ずっと夢だったんでしょ?
とりあえず、邸の仕事と両立を目指してみたら?
まだ、このお店がうまくいく保証はないから。」
「そう言っていただけると、助かります。
邸の仕事を辞める決心もまだつかなくて。」
「ゆっくり決めればいいわ。
それにレオニー、あなたが守って来た大切なお店なんでしょう?
潰すことならいつでもできるのだから、私達と一緒にもう一度挑戦してみない?
それでもうまくいかなければ、その時は諦めましょう。」
「でも、アレシア様、オフリー公爵様からお許しがいただけるでしょうか?」
「トラヴィス様は私に関心なんてないわ。
だから心配いらないと思うの。」
「ありがとうございます。
アレシア様、私本当はドレスをまだ作り続けたかったのです。
でも、一人だと不安で。」
「一緒に頑張りましょう。
うまくいくかどうかは、私達次第よ。」
それから、私達三人は、モナンジュの噂に対する解決策と今後の方針について夜遅くまで話し合った。
まずは、「モナンジュのドレスを着ると破局する。」という噂についてどうにかしなければならない。
やるとは思い立ったものの、現時点で打開策は思いつかない。
この噂が払拭されるくらいの何かが、この小さな工房で起こるはずもなく、難題が私達の前に立ちはだかり続ける。
けれど、邸の中でトラヴィス様を思い、辛い日々を送るよりも仲間たちと工房を立て直す方がずっといい。
私はここに自分の居場所と価値が欲しかったのかもしれない。
まだ具体的なアイデアは何も浮かばないけれど、新しい挑戦に心は踊り出すのだった。
「アレシアがいないとはどう言うことだ。」
夜遅くに邸に帰って来たトラヴィスは、眉をひそめでヨルダンを呼び出した。
慌てて彼の居室にやって来たヨルダンは、顔を強張らせて答える。
「それは、トラヴィス様が昨日、あれほど念押ししていたのに、結婚三周年のお祝いをすっぽかしたからです。」
「お祝いと言ったって、二人で夕食をとるだけだろう?」
「その夕食をとるだけを最後に二人がしたのがいつだったのか、覚えていらっしゃいますか?」
「…、しばらくないか。」
「はい、その間、アレシア様は一人でお食事をとられていたのですよ。」
「使用人達と食べているのは知っている。」
「ですが、使用人と一緒に食事をして満足する妻などいません。
トラヴィス様がいないから、仕方なくそうしているにすぎません。」
「だが、僕は忙しいんだ。」
「それは、アレシア様も承知しております。
だから、三周年の祝いだけでも特別に来ていただきたいとトラヴィス様にお伝えしていたのです。
でも、トラヴィス様は来なかった。
だから、アレシア様は出て行かれたのです。」
「何だと?
ここを守るのが、アレシアの務めだろうが。」
「それは、信頼し合っている二人だからこそ成り立つことです。
アレシア様は、もうそれを望めなくなったのでしょうね。
気の毒に。」
「何故、私ではなく、アレシアが気の毒なんだ。」
「トラヴィス様がアレシア様を大切にされないからです。」
「している。
充分な暮らしに、雑務に追われず優雅に過ごす日々、それに何の不満があると言うんだ?」
「トラヴィス様、あなた様はそれを幸せだと思われているのは、存じております。
けれども、アレシア様にとっての幸せとは異なるのでしょう。」
「どういう意味だ?」
「多くの女性は、孤独で怠惰な日々よりも、愛に包まれた忙しい日常を求めるものです。
そのことについてアレシア様に尋ねたことがありますか?」
「…、もういい。」
トラヴィスは、ヨルダンに返す言葉が浮かばなかった。
確かにアレシアにそのことについて尋ねたことはなかった。
だとしても、妻とは邸で夫を待つべきではないのか?
せめて話し合ってから、出ていくべきじゃないのか?
だが自問してみると、彼女が話そうと思っても邸にいないのは、僕か。
仕方なくトラヴィスは、普段二人で寝ているベッドに一人横たわった。
冷たい。
ひんやりとしたベッドの中のどこを探しても、いつもの温もりがない。
いつもは、外で冷えた身体も寝ているアレシアに寄り添えばすぐに温まり、あっという間に眠りにつくことができるのに。
彼女は眠りが深く、夜中に身体を抱き寄せても起こしてしまう心配がない。
結婚したばかりの頃は、夜中だというのにアレシアを起こしたくて、手を伸ばしたものだ。
だが、予想に反して彼女は全く目を覚まさなかった。
そのため、起こすことを諦め、抱き枕のように彼女を抱きしめて眠ったら、驚くほどぐっすり眠れて驚いたものだ。
それからというもの、彼女を毎晩、抱きしめて眠るのが習慣になっていた。
彼女が起きる前に、僕の方がいつも目を覚まし出仕するから、きっと彼女はそのことに気づいていないのだろう。
彼女がいない今、なかなか身体が温まらない僕は安眠できる気がしない。
気づけば、いつの間にか僕は、彼女に依存していた。
「はい、アレシア様。」
私とエイダは王都にあるレオニーというエイダの友人のドレス工房に来ていた。
モナンジュというのはそのドレス工房の名前である。
そこはレオニーが数人のお針子を抱える小さな店ながら、思い通りのドレスが仕立てれると評判で、一時期はとても賑わっていた。
しかし、現在はお客様が激減し、破綻の危機に瀕している。
レオニーは私達に事情を説明した後、悔しそうに顔を伏せる。
ドレスは社交の場で必ず着るものだから、その中で破局する人が出てしまうのも仕方ないことで、それはドレスのせいではないのだ。
しかし残念ながら、自分の不幸を何かのせいにしようとする人が一定数いる。
今回はその「何か」がたまたまドレスだったというだけだろう。
それでも、そんな噂が立てば、不吉だからと買うのを躊躇う人がいるのは無理もないことだ。
「でも、元々自分でシックなドレスをオーダーするからなんです。
私には似合わないとか、もう年だからとか言い訳して、くすんだ色のドレスを作った挙句、男性と破局した理由をドレスのせいにするなんて許せません。」
レオニーは怒りのために、拳をプルプルと震わせる。
「そうね。
あくまでそれは自分のせいね。」
「でも、アレシア様、私もう店を畳もうと思うんです。
元々私は、ドレスを作りたかっただけで、店を開きたかったわけじゃなかったことに気がついたんです。
店の経営を考えるのはもうウンザリで。
ドレス作りだけを考えていたいんです。
でも、子供がいても雇ってくれる店がなくて、自分で始めました。」
「ここを辞めたら、代わりの仕事はあるの?」
「ドレス作りの夢を諦めれば、子守として働くことができます。
好きではないけれど、お金のためなら仕方がないです。」
レオニーは肩を落として、つぶやく。
「子供がいるからって好きな仕事を諦めるなんておかしいわ。
アレシア様、なんとかならないでしょうか?」
エイダも心配そうに、俯くレオニーの背に手を置く。
「わかったわ。
同じ女性として、子育てしているレオニーに協力したいの。
だから、私がモナンジュの経営を引き受けるわ。
そしたら、レオニーはこの店を続けられるでしょ?
でも、一つだけ条件があって、表向きはあなたが経営者だということにしてほしいの。」
「えっ、アレシア様がこの店の経営をするんですか?」
「ええ、私には時間があるし、多くはないけれど資金もあるの。
だから、経営と広告塔としての役割を果たすわ。
でも、実際に経営をしているのが私だということは内緒にしてほしいの。
私に何があっても、トラヴィス様が背負うオフリー家の名前に泥を塗ってしまうことを避けたいから。
経営の問題が解決して、レオニーが安心してドレス作りができるように、三人でこの工房の立て直しをしましょう。
エイダも一緒に。」
「私もやっていいんですか?」
「もちろんよ。
ずっと夢だったんでしょ?
とりあえず、邸の仕事と両立を目指してみたら?
まだ、このお店がうまくいく保証はないから。」
「そう言っていただけると、助かります。
邸の仕事を辞める決心もまだつかなくて。」
「ゆっくり決めればいいわ。
それにレオニー、あなたが守って来た大切なお店なんでしょう?
潰すことならいつでもできるのだから、私達と一緒にもう一度挑戦してみない?
それでもうまくいかなければ、その時は諦めましょう。」
「でも、アレシア様、オフリー公爵様からお許しがいただけるでしょうか?」
「トラヴィス様は私に関心なんてないわ。
だから心配いらないと思うの。」
「ありがとうございます。
アレシア様、私本当はドレスをまだ作り続けたかったのです。
でも、一人だと不安で。」
「一緒に頑張りましょう。
うまくいくかどうかは、私達次第よ。」
それから、私達三人は、モナンジュの噂に対する解決策と今後の方針について夜遅くまで話し合った。
まずは、「モナンジュのドレスを着ると破局する。」という噂についてどうにかしなければならない。
やるとは思い立ったものの、現時点で打開策は思いつかない。
この噂が払拭されるくらいの何かが、この小さな工房で起こるはずもなく、難題が私達の前に立ちはだかり続ける。
けれど、邸の中でトラヴィス様を思い、辛い日々を送るよりも仲間たちと工房を立て直す方がずっといい。
私はここに自分の居場所と価値が欲しかったのかもしれない。
まだ具体的なアイデアは何も浮かばないけれど、新しい挑戦に心は踊り出すのだった。
「アレシアがいないとはどう言うことだ。」
夜遅くに邸に帰って来たトラヴィスは、眉をひそめでヨルダンを呼び出した。
慌てて彼の居室にやって来たヨルダンは、顔を強張らせて答える。
「それは、トラヴィス様が昨日、あれほど念押ししていたのに、結婚三周年のお祝いをすっぽかしたからです。」
「お祝いと言ったって、二人で夕食をとるだけだろう?」
「その夕食をとるだけを最後に二人がしたのがいつだったのか、覚えていらっしゃいますか?」
「…、しばらくないか。」
「はい、その間、アレシア様は一人でお食事をとられていたのですよ。」
「使用人達と食べているのは知っている。」
「ですが、使用人と一緒に食事をして満足する妻などいません。
トラヴィス様がいないから、仕方なくそうしているにすぎません。」
「だが、僕は忙しいんだ。」
「それは、アレシア様も承知しております。
だから、三周年の祝いだけでも特別に来ていただきたいとトラヴィス様にお伝えしていたのです。
でも、トラヴィス様は来なかった。
だから、アレシア様は出て行かれたのです。」
「何だと?
ここを守るのが、アレシアの務めだろうが。」
「それは、信頼し合っている二人だからこそ成り立つことです。
アレシア様は、もうそれを望めなくなったのでしょうね。
気の毒に。」
「何故、私ではなく、アレシアが気の毒なんだ。」
「トラヴィス様がアレシア様を大切にされないからです。」
「している。
充分な暮らしに、雑務に追われず優雅に過ごす日々、それに何の不満があると言うんだ?」
「トラヴィス様、あなた様はそれを幸せだと思われているのは、存じております。
けれども、アレシア様にとっての幸せとは異なるのでしょう。」
「どういう意味だ?」
「多くの女性は、孤独で怠惰な日々よりも、愛に包まれた忙しい日常を求めるものです。
そのことについてアレシア様に尋ねたことがありますか?」
「…、もういい。」
トラヴィスは、ヨルダンに返す言葉が浮かばなかった。
確かにアレシアにそのことについて尋ねたことはなかった。
だとしても、妻とは邸で夫を待つべきではないのか?
せめて話し合ってから、出ていくべきじゃないのか?
だが自問してみると、彼女が話そうと思っても邸にいないのは、僕か。
仕方なくトラヴィスは、普段二人で寝ているベッドに一人横たわった。
冷たい。
ひんやりとしたベッドの中のどこを探しても、いつもの温もりがない。
いつもは、外で冷えた身体も寝ているアレシアに寄り添えばすぐに温まり、あっという間に眠りにつくことができるのに。
彼女は眠りが深く、夜中に身体を抱き寄せても起こしてしまう心配がない。
結婚したばかりの頃は、夜中だというのにアレシアを起こしたくて、手を伸ばしたものだ。
だが、予想に反して彼女は全く目を覚まさなかった。
そのため、起こすことを諦め、抱き枕のように彼女を抱きしめて眠ったら、驚くほどぐっすり眠れて驚いたものだ。
それからというもの、彼女を毎晩、抱きしめて眠るのが習慣になっていた。
彼女が起きる前に、僕の方がいつも目を覚まし出仕するから、きっと彼女はそのことに気づいていないのだろう。
彼女がいない今、なかなか身体が温まらない僕は安眠できる気がしない。
気づけば、いつの間にか僕は、彼女に依存していた。
1,163
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
年増令嬢と記憶喪失
くきの助
恋愛
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」
そう言って思い切りローズを突き飛ばしてきたのは今日夫となったばかりのエリックである。
ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。
「吐き気がする!」と言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。
年増か……仕方がない……。
なぜなら彼は5才も年下。加えて付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。
次の日事故で頭を強く打ち記憶が混濁したのを記憶喪失と間違われた。
なんとか誤解と言おうとするも、今までとは違う彼の態度になかなか言い出せず……
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる