異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ

文字の大きさ
14 / 52
【第一章 ハズレモノ胎動編】

014「計画決行」

しおりを挟む


「お前、もういらねーわ」

 突然、吉村の態度が変わった。

「え? い、いらないって⋯⋯。よ、吉村君?」
「気安く『吉村君』なんて言うな⋯⋯⋯⋯無能がっ!」
「⋯⋯っ!?」

 吉村が冷めた目で俺を見据える。

「俺としてもだな、本当はだな、お前を殺したくはないんだよ?⋯⋯⋯⋯だから、さっき説得したじゃん?」
「え? 俺を⋯⋯殺し⋯⋯え?」

 な、何を言っているんだ、吉村こいつ⋯⋯。

「なのに、お前ときたら『救世主になることを諦めない』なんて言う始末⋯⋯。挙句の果ては『特別な力が⋯⋯』とか言い出すしよ。あるわけねーだろ、そんなもん! この世界は、ゲームでもなければ、アニメでもラノベでもねー。ただの現実リアルなんだよ。そして、お前のはただの『ハズレ称号』なんだよ。特別な力とか頭おかしいんじゃねーか、お前っ?!」
「⋯⋯そ、そんな」
「そんな『ハズレ称号』で無能のお前が、何でシャルロット様からやたら贔屓されてんだよ! しかもそれに喜んでニヤニヤしやがって⋯⋯何様だ、てめえ!」
「(ビクッ!)」

 突然の吉村の恫喝に俺は完全にビビって体を硬直させる。

「何、ビビってんだよ、無能? 特別な力があるんだろ? じゃー、早く出してみろや⋯⋯オラっ!」

 バキッ!

「ぐはっ!?」

 突然、吉村が俺の顔を殴ってきたがそのパンチは⋯⋯まったく見えなかった。

「どうだ? 俺のパンチは見えたか? 特別な力があるんだったら見えるだろ? どうなんだよ⋯⋯ええっ!?」

 ゴッ! ドゴ! ゴス! ドガッ⋯⋯!!!!!

「オラっ! どうした? どうしたよ? オラ、オラー!」
「うごっ!⋯⋯がはっ!⋯⋯ぐぎっ!⋯⋯がはぁーーーっ!!!!」

 吉村は倒れた俺の頭や腹に強烈な蹴りを何発も入れる。俺は直撃を避けようと咄嗟に両腕を動かしながら必死にガードしていたが、そのガードしている両腕に強烈な蹴りが入ると、ガードは脆くも崩れ、吉村の蹴りが何発も入る。

「ご、ごほ、ごほ⋯⋯!」
「オラ⋯⋯立て、コラ」

 俺は吉村にストンピングで何度も顔や体に蹴りを入れられた後、今度は無理矢理立たされた。

「さて、これでお膳立て準備完了だ。次に魔物をここへ誘い出して・・・・・・・・・・・⋯⋯と」
「⋯⋯え? ま、魔物⋯⋯?」

 吉村がニチャァと笑みを浮かべる。

「お前は気づいていないだろうが、俺たちがさっき通った百メートルくらい後ろで魔物の気配を感じた。おそらく魔物の自動生成リポップしたんだろう⋯⋯それをだな⋯⋯」
「⋯⋯(ごくり)」
「ここに誘い出して、お前を襲わせるんだよ」
「⋯⋯っ!?」

 こ、こいつ、吉村の奴、本当に俺を殺そうとしている。⋯⋯⋯⋯本気だ。

 ニィィイィィィィィ⋯⋯!

 吉村が今日一番の醜く歪んだ笑顔を見せると、魔物が自然発生リポップした通路のほうへ行き、魔物⋯⋯ハイオークにみつかるよう、ワザと怯えた姿・・・・・・・を見せる。

 ハイオークはその吉村の怯えた姿を認識すると、こっちへゆっくりと歩いてきた。吉村はハイオークが自分をターゲットにしたのを確認すると、ボロボロになって地面に転がる俺のところへ戻ってきた。

「これからお前はあのオークの上位種『ハイオーク』にグチャグチャに殴り殺される。そんなお前に、俺から慈悲として、せめてもの『プレゼント』をやる」
「な、何⋯⋯を⋯⋯」
「お前を殺そうとしたのは俺以外に『小山田』と、そして⋯⋯⋯⋯『柊木』の三人だ」
「⋯⋯え?」
「俺も小山田も柊木もお前を殺そうと思った理由はただ一つ⋯⋯⋯⋯『無能のくせにシャルロットに贔屓されるお前がムカつくから』だ。ヒャハハハハハハハハ!」

 吉村はその酷く歪んだ笑顔で下品に高笑いする⋯⋯俺を殺せるのが心の底から嬉しいようだ。これが吉村の『本性』なのだろう。

「そ、そんな⋯⋯それだけの理由で⋯⋯ひと一人、殺すってのか?」
「そうだよ? だって、ここは地球でもなければ日本でもない。そして、俺たちは尋常ならざる力を持っている。その程度の理由・・・・・・・で人を殺せるくらいにはな。ヒッヒッヒ⋯⋯」
「⋯⋯狂ってる」

 狂ってる。

 その程度の理由・・・・・・・で人を殺せるくらいには⋯⋯⋯⋯ちゃんと狂ってる。

 いや、吉村こいつはむしろ、元々・・なのか?

 そして、柊木・小山田あいつらもそうなのだろうか⋯⋯。


********************


 ズシン、ズシン⋯⋯。

 いよいよ、通路の奥からハイオークであろう足音が聞こえてきた。

「さてと、それじゃあ俺はおいとましますか。⋯⋯じゃあな、瑛二」
「ま、待って⋯⋯待って⋯⋯くれよ⋯⋯吉村。た、助けて⋯⋯」

 俺は、目の前の、俺を殺そうとしている吉村おとこにでさえも、情けなくも命乞いをする。しかし、

「助けるわけないじゃん? お前はここでハイオークにただおもちゃのように・・・・・・・・・・、グチャグチャに殴り殺される。痛いと思うけど、ガンバッ!⋯⋯『隠蔽ヒドゥン』」
「えっ!?」

 突然、目の前にいた吉村の姿が消えた。

 どうやら魔法で姿を消した・・・・・・・・ようだ。

 俺は体の痛みに耐え、何とか立ち上がる。そして、すぐに辺りを見渡すが吉村の姿はもう⋯⋯みつからなかった。

「じゃーなー、無能! ヒャハハハハハハハハ!!!!!」

 どこからか吉村の醜い笑い声がダンジョン内に木霊する。

「吉村君っ!! 吉村君っ!!⋯⋯よしむら⋯⋯吉村ぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」

 シーン⋯⋯。

 吉村の気配が完全に消える。

 そして、それと入れ替わるように⋯⋯、

「ぐもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
「ひぃ⋯⋯っ!!」

 通路の奥から片手に大きな斧を握りしめた、五メートルはあるであろうハイオークの姿が見えた。


********************


——3階層/柊木たち

「おい、今何か聞こえなかったか?」

 柊木たち一向は、ちょうど3階層へと降りてきた。

 すると、そこで魔法先生が何かの音・・・・に気づく。

「き、聞こえました。魔物の叫び声⋯⋯」
「今のは、たぶん⋯⋯オークか、ハイオークかと」

 剣術先生、武術先生もまた、魔法先生と同じくその『叫び声』に気づいた。

「私たちにも聞こえました!」

 柊木がそう進言すると、他の生徒も柊木の言葉にコクコクと相槌を打つ。すると、

「あ! せ、先生! みんなーー!」
「「「ヨ、ヨシムラ様っ!!!!」」」

 前方から吉村が走りながら声をかけてきたのを見ると、先生、生徒らが急いで吉村の元へと駆けつけた。

「よ、吉村君! 無事でしたか!」

 魔法先生が真っ青な顔で動揺する吉村に声をかける。

「日下部が⋯⋯日下部とはぐれてしまって⋯⋯。それで、3階層をずっと探していたんですが⋯⋯どこにもみつからなくて⋯⋯」
「い、いない?! クサカベ様とは一緒じゃないんですか!」
「はい⋯⋯日下部が、いきなり『もうだいぶレベルが上がってきたから、俺一人で魔物狩るわ』って言って、僕とのパーティーを解除して、一人でいなくなっちゃったんです!」
「な、何ですって⋯⋯っ!?」
「すみません⋯⋯。さっき1階層で日下部に『ダンジョンで一気にレベル上げしたいから手伝ってくれ』って半ば強引に言われて、それで、僕⋯⋯断りきれなくて⋯⋯」
「そ、そんな⋯⋯勝手を⋯⋯」

 吉村がボロボロ涙をこぼしながら、魔法先生に悲痛な叫びを訴える。

「な、何をやっているんだ、クサカベ様は! どれだけレベルが上がったかしらんが、初めてのダンジョン、初めての実戦特訓で単独での魔物討伐など危険すぎるにも程があるっ!」
「まったくだ! 何を考えているんだ、クサカベ様は!」
「二人パーティーだったとはいえ、レベル2のクサカベ様なんて、この一時間程度ならよくてレベル4くらいしか上がってないでしょう!? レベル4程度で3階層の魔物相手に単独討伐だなんて⋯⋯あまりに無謀すぎる!」

 先生らは皆、『日下部の身勝手な行動』に怒りの言葉を吐き出す。⋯⋯吉村の言葉をそのまま信じて。

「先生! あいつはレベルが上がらないことに苦しんでいたんです! 無謀で身勝手な行動かもしれないけど、あいつはあいつなりに『強くなりたい』とずっと焦っていたんです! 僕にはわかります! だから、日下部を⋯⋯どうか責めないでください!」

 吉村は怒っている先生たちに「日下部を責めないで!」と必死に訴えかける。

「吉村君! 君のクサカベ様を思う気持ちは素晴らしい! しかし、クサカベ様のこの無責任な行動はとても許し難いものです! 下手すれば、吉村君も危険な目にあう可能性もあったのですから!」
「せ、先生! ひとまず、急いで日下部を探しましょう! さっきのオークらしき叫び声のほうに、もしかしたら日下部がいるかも⋯⋯」

 吉村に同情すると同時に、瑛二の身勝手な行動へ怒りまくる魔法先生へ柊木が声を掛ける。

「そうですね、わかりました! 説教は後です! まずは日下部くんを探しにオークの声がしたあの⋯⋯⋯⋯吉村君がやってきた通路とは反対・・のあの通路へ向かいましょう!」
「「「「「はい!!!!」」」」」

 そう言って、皆がオークの叫び声がした通路へと入っていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...