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【第一章 ハズレモノ胎動編】
013「仕組まれた罠」
しおりを挟む俺たちはみんなが休憩していた1階層の場所から抜け出し、今は2階層へ降りる階段の入口にまできていた。
「これでよし! これで、俺と瑛二がパーティーとなったな」
「う、うん!」
「とりあえず、ここまで来たら大丈夫だろう。それじゃあ、行くぞ」
「わ、わかった!」
俺と吉村は2階層へと降りていった。
********************
——三十分後 1階層/柊木たち
「それでは、そろそろ動きましょう。皆さん、行きますよ!」
そう言って、魔法先生が立ち上がるのを見て、みんなも立ち上がる。
「おや? ちょっと待ってください。クサカベ様とヨシムラ様が⋯⋯いませんね?」
「そういえば、そうですね」
そう言うと、先生らは周囲を探し回るが二人はみつからない。
「すみません、皆さんも二人を探してもらっていいですか?」
そうして、全員で周囲を探すも二人をみつけることはできなかった。
「トイレでしょうか? でも、それにしては遅すぎますね⋯⋯」
「ま、まさか、ダンジョンで行方不明⋯⋯に⋯⋯」
先生らは、二人がダンジョンで行方不明になった事実にだんだんと不安な顔をしていく。その時、
「先生」
「な、何でしょう、ヒイラギ君!?」
「今、ステータスを確認したら⋯⋯⋯⋯吉村がパーティーを抜けているみたいです」
「な、何ですって⋯⋯っ!?」
そう言って、魔法先生が確認をし、その事実に愕然とする。
「どうして、ヨシムラ様は⋯⋯パーティーを⋯⋯」
「ま、まさか!?」
「な、何ですか、ヒイラギ様!」
「も、もしかして、日下部と吉村がパーティーを組んだのかも⋯⋯」
「えっ?! ど、どうして! どうして、そんなことを⋯⋯」
「日下部は⋯⋯このダンジョンでの魔物討伐でみんなとのレベル差を埋めようと⋯⋯それで、吉村に無理を言ってパーティーを組むよう⋯⋯懇願したのではないでしょうか⋯⋯」
柊木は青い顔をしながら、自分の考えを告げる。
「ま、まさか!? い、いやでも⋯⋯っ! た、確かに、それは、あり得るかも⋯⋯!?」
魔法先生や他の先生も柊木の話を聞いて「その可能性が高い」と判断。
「ヨシムラ様とクサカベ様を急いで探しましょう! ヨシムラ様のレベルは『8』。しかも、彼は『大魔道士』の称号ですので『3階層』までなら単独でも大丈夫なはず! まずは1階層で探して、みつからなければ2階層へ行きましょう!」
魔法先生がそう指示を出すと、みんなが一斉に動き出した。
********************
——2階層/吉村、瑛二
「す、すごい、強いね⋯⋯吉村君」
「⋯⋯まあな」
吉村は魔法を使って、単独で次々と魔物を倒していた。オーバーキルなくらいに。あと、吉村は魔法だけじゃなく、
「オラー!」
「ぐごぉぉーー!!!」
先週、習った体術でも魔物をオーバーキルしていた。だが、先週習った体術は、あくまで基礎的なものだったが、吉村はその基礎的な体術だけでも強かった。ちなみに、今倒したのはオークのような魔物だ。
しかし、悲しいかな⋯⋯、
「え? レベルが上がっていない?」
「うん⋯⋯」
そう。俺のレベルは上がっていなかった。
ここまでに結構な数の魔物を倒したので、吉村はレベルが『8』から『10』へと上がっていたのだが、俺は以前『レベル2』のままだった。
「どういうことだ? レベル2であるということはレベルが上がらないことはないと思うが⋯⋯そうなると『レベルの成長率がかなり低い』、もしくは『レベルアップに必要な経験値が俺たちよりも多く必要』ってことなのか?」
吉村はブツブツとひとり言をいいながら、俺のレベルがアップしない理由を考えていた。まあ、どっちにしても、俺にはつらい現実ではあるが⋯⋯。
そんな中、いよいよ『3階層』の階段が見えてきた。
「お! あれ、3階層の階段じゃねーか! 行くぞ、瑛二!」
「う、うん」
そう言って、吉村は3階層の階段へ降りていく。
正直、俺は自分のレベルが想像以上に上がらないことにショックを受けていたので、もうみんなのところへ帰りたいと思っていたが、せっかく『俺のため』にパーティーを組んでレベル上げに誘ってくれた吉村の『善意』に「一度、みんなのところへ戻ろう」とは言えなかった。
********************
——1階層/柊木たち
「先生! 1階層にはいません!」
古河が体術先生に伝える。
「ぬうぅぅ⋯⋯やはり、2階層に降りたか」
「そのようですね。でも、まあ、3階層までなら吉村君は単独でも大丈夫なはずです」
「しかし、実戦経験は今日が初めてなんです! トラブルが起きたらすぐに命が危険に晒されます! 急ぎましょう!」
そう言って、先生たちを先頭に2階層へと降りていく。
その集団の後ろには柊木と小山田がおり、みんなと少し離れてボソボソと小声で話していた。
「吉村の奴、うまいことやりましたね」
「ああ。予定ではもう3階層あたりだろう⋯⋯」
「ということは、いよいよ⋯⋯ですね」
「ああ⋯⋯⋯⋯いよいよだ」
二人はニチャァと下卑た笑みを一瞬浮かべるが、すぐに『仲間を助けるために必死に探している』という演技を見事に演じていた。
********************
——3階層/吉村、瑛二
「おらぁぁ!!!!」
ここでも吉村は無双していた。
強い。レベルも今では『12』となり、柊木と同じレベルになっていた。あと、魔法も新しい魔法を2つほど習得したらしい。⋯⋯うらやましい。俺は安定の『レベル2』のままだった。
それにしても、経験値はかなり入ってきているはずなのにどうしてレベルが上がらないんだ? まさか『自主訓練』でしか俺のレベルは上がらないのだろうか?
そんなことを考えている間に、目の前の魔物を狩った吉村がこっちに戻ってきた。
「すごいね、吉村君」
「⋯⋯ああ。ありがとう」
「?」
吉村の返事が少し素気なかった。疲れているのかな?
「ところでさ、瑛二⋯⋯」
「な、何?」
「お前⋯⋯やっぱり、ダメなんじゃないか?」
「え? どういう⋯⋯?」
「いや、だからさ⋯⋯これ以上、俺たちと一緒に特訓カリキュラムを受けることだよ」
「⋯⋯え?」
「お前だってわかっただろ? これだけ魔物を倒して、俺なんてレベルが『4つ』も上がったっていうのに、お前はいまだにレベル2のままで、一向に上がってないじゃないか」
「そ、それは⋯⋯」
俺は吉村の言葉に絶句する。
「なあ、もう救世主になるのは諦めろよ。早めに諦めてこの世界で生きていくための勉強をしろよ」
「で、でも、まだ、俺のステータスにはわからないことが多いじゃない? だから、もしかしたら可能性があるんじゃないかって! だから、救世主になることを諦めたくない!」
俺は吉村に自分のステータスへの『希望』や『熱意』を伝えた。
「ほ、ほら、俺のステータスって、みんなとは少し違っているじゃない? あ、あれって、もしかして、裏設定というかさ、何かすごい力が眠っているというかさ、そういう可能性があると思うんだよ!」
「⋯⋯」
「だ、だからさ! 今はレベルが全然上がっていないけど、もしかして、次レベルが上がったらいきなり強くなるとかさ! お、俺だけの『特別な力』が覚醒するとか⋯⋯」
「はぁ⋯⋯もういいわ、厨二病」
「⋯⋯え?」
「やっぱ、お前には何言っても無駄だったわー」
「へ? ど、どうしたの、吉村君?」
「⋯⋯お前、もういらねーわ」
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