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【第一章 ハズレモノ胎動編】
012「吉村、動く」
しおりを挟む「それでは、ヒイラギ様をリーダーとしたパーティー登録を行います」
そう言って、魔法先生がパーティー登録の仕方を説明した。
——————————————————
【パーティー登録方法とルール】
1.「パーティーを作りたい人=パーティーリーダー」が「パーティーメンバーにしたい人」を頭の中でイメージし、「このメンバーにパーティー申請を上げる」と希望をイメージすると、そのメンバーだけにパーティー申請が送られる
2.「パーティーメンバーにしたい人」に『パーティー参加要請です。パーティーに入りますか?』というコマンドが現れる
3.「はい」を選択すればパーティー登録完了となる。「いいえ」を選択すればパーティー登録はされない
4.途中での「パーティー解除」は「パーティーリーダー」からも「パーティーメンバー」からも、どちらからも解除できるようになっている
——————————————————
「では、ヒイラギ様⋯⋯『パーティー参加要請』の六人をイメージして送ってください」
そう言われて、指示通りに行う柊木。しかし、俺はここで予想する。「絶対、俺以外の六人にしかパーティー参加申請を送らない」と。
しかし、意外にも柊木は普通に俺にもパーティーの参加申請を送信した。
「⋯⋯なんだ?」
「あ、いや、別に⋯⋯」
俺は柊木がちょっかいを出さないことに一瞬驚き、思わず柊木の方を向いた。すると、ちょうど柊木と目があい、気まづいやりとりをする。
それにしても、今日は柊木も小山田もやけに静かだな⋯⋯。
「これがパーティー登録のやり方となります。しっかり覚えていてくださいませ。次に、パーティーとなった7人が魔物を倒すと経験値が入るとき、その人数分で割った経験値が入るようになっています。なので、パーティーは多いほうが安全安心ではありますが、経験値獲得ではだいぶ不利となるのでパーティーメンバーの構成はよく考えて行ってくださいませ」
なるほど、確かに。
例えば、一人で倒せる魔物をパーティーメンバー全員で倒したら、獲得経験値が人数分で割られるのはしんどいな。かといって、パーティーメンバーが少なすぎると危険度は増す。この辺のパーティーメンバーの構成は難しいところだな。
「あれ? ということはパーティー登録されている俺にも、みんなが倒した魔物の経験値が入ってくるってこと? や、やったー!」⋯⋯などと、内心喜んでいると、
ジロリ⋯⋯。
柊木と小山田が俺にジト目を向けた。すると魔法先生が、
「あ、忘れてました! ブキャナン宰相から『クサカベはパーティー登録禁止』とのことです。なので、クサカベ様は今日は一日ずっと見学となります」
「⋯⋯え?」
魔法先生の言葉を聞いた瞬間、柊木はすぐに俺のパーティーメンバーを解除した。
「当然だ! お前みたいな無能が俺たちを利用して経験値を獲得するなんぞ⋯⋯あり得ないっ!!」
そう言って、柊木にいつものように罵倒された。
最初、柊木が何もしてこなかったので「丸くなったのかな?」と思っていた数秒前の俺を殴りたい。
「では、出発します! ちゃんと私たちの後ろからついてきてくださいね!」
そう言って、魔法先生を先頭に、剣術先生、体術先生の後ろから俺たちがついていく形でダンジョンへと足を踏み入れた。
何はともあれ『人生初ダンジョン』である!
********************
「これが⋯⋯ダンジョン」
俺たちは今、ダンジョンの1階層に降りてきた。
不思議なことにこのダンジョンの中の岩壁には『光を発光する苔』がいて、その苔のおかげでダンジョンの中はだいぶ視認できるほど明るかった。あと、ダンジョンの入口には『ダンジョン名』が記されていた。
「ダンジョンには名前がついておりまして⋯⋯。このダンジョンの名は『原初創世のダンジョン』といいます」
何やら、壮大なダンジョン名だな。
ただ、話によると誰かがダンジョン名をつけたとかそういうのではなく、ダンジョンの入口付近の岩壁に自然に名前が刻まれているとのことだった。なかなか、摩訶不思議な話ではあるが、そんなことを言ったら異世界の存在そのものが俺たちからすれば摩訶不思議の大元みたいなもんである。
そんなアホなことを考えている俺を余所に、皆はズンズンと2階層の階段を目指して進んでいく。
ちなみに今回の目標階層は『3階層』とのこと。先生曰く「今の救世主様たちの実力なら『3階層』までは問題ありません」とのことだ。もちろん、俺は含まれておりません。
レベル2のヘナチョコでは1階層でさえ危ういのだ(涙目)。
********************
「ここで一旦休憩を取ります。午前中に我々の動きを見てもらったので、午後からは救世主様たちで実際に魔物を狩ってもらいます」
魔法先生が午後からはいよいよ『実戦訓練』ということを告げる。とは言っても、俺は午後ももちろん安定の『見学』であるが。
本当ならこのダンジョンで少しでも経験値を稼いでレベルを上げたいと思っていた俺には苦痛ではあるが、しかし、誰かが俺とパーティーを組んでくれなければ魔物を倒すなんてできないので、それは諦めるしかなかった⋯⋯⋯⋯そう思っていた時だった。
「瑛二!」
「!⋯⋯よ、吉村、君?」
なんと、吉村が俺に声をかけてきた。
「お前、午後も見学なんだよな?」
「う、うん。そうだけど⋯⋯」
「だったら、俺とパーティー組んで二人で魔物を狩りに行かないか?」
「えぇ?! で、でも、それは危ないんじゃ⋯⋯」
「大丈夫だ。お前もわかるだろ? 俺がオタクだってこと? だから、この異世界転移の自分もすでに受け入れているし、何より、自分の今の強さもちゃんと理解している」
さらに吉村は、午前中の先生たちと魔物との戦闘を見てあの程度なら余裕で倒せるとのことだった。
「正直、瑛二だってこのダンジョンで魔物をいっぱい狩って、一気にレベルを上げたい思っているんだろ?」
「そ、それは、そう⋯⋯だけど⋯⋯」
「だったら、俺とパーティー組んで二人でダンジョン内で魔物を狩ろう。正直怒られるとは思うが、それでも他の奴らよりももっとレベルを上げたいのならここは無理してもいいんじゃないか?」
「そ、それはそうだけど⋯⋯。ていうか、吉村君もレベルを上げたいの?」
「ああ。俺はこの中の誰よりも強くなりたい。だが、現状は『リア充柊木』の奴が頭1つも2つも抜けて強い。俺はあの柊木には負けたくない!⋯⋯それに、柊木のお前に対する態度も酷すぎると思うしな」
「え?」
「俺は瑛二が強くなって、お前をバカにした奴らの鼻を明かして欲しいんだよっ!」
「吉村君!」
俺は感動した。
みんな敵だと思っていたのに吉村だけは俺の味方だったことに!
俺は吉村の言葉に感動して⋯⋯⋯⋯泣いた。
「泣いてんのか?」
「だ、だって⋯⋯グス」
「いいか、とりあえず、この休憩を利用してみんなから離れるぞ。離れたら、柊木とのパーティー登録を解除して俺と瑛二とでパーティーを登録し直す、わかったな?!」
「わ、わかった!」
吉村の優しさに触れた俺はその提案に即答。
かくして、俺と吉村はこっそりとその場から離脱した。
吉村の『罠』とも知らずに⋯⋯。
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