ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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地潜りの竜(7)

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☆☆☆


 が落ちて星がきらめく空の下で、私は木製のマグカップに入った温かいスープを飲んでいた。
 私達はアンダー・ドラゴンの本拠地が在った廃墟の町で野営することになった。
 公民館や周辺の建物を調べたところ、まだ移動されていなかった組織の財宝が沢山残っており、それらを空の荷馬車へ詰め込む作業に時間がかかったのだ。師団には財宝を積む専用馬車が数台あらかじめ用意されていた。国のお偉い方は、首領の行方よりも金を取り戻す方が大切なのかもしれない。有力貴族の屋敷も荒らされたらしいから。

「今日は大活躍だったな、ウィー」

 肩が付く距離で私の隣に座るルパートが微笑んだ。戦闘中のピリピリとした雰囲気はすっかり消え、穏やかな表情の気のいいロン毛に戻っていた。

「先輩こそ先鋒せんぽうお疲れ様でした。無事に誕生日を祝えて良かったです」
「……で、プレゼントは?」

 至近距離でルパートが悪戯いたずらっ子のように囁いた。本来ならここで私はポ~ッとなってしまう場面なのだが、今回に限っては平常心だった。だって……。

「仲間みんなで過ごせる時間、プライスレス」

 無粋な文句でロマンティックなムードを台無しにしたのはエリアスだった。
 エリアスだけでなくギルドメンバー全員が揃っていた。今は夕飯時なのだ。ミラとマリナと何故かマシュー中隊長も居た。これだけの人数が集まった中でイチャイチャできたらそれは痴女だ。

「年に一度の誕生日くらい、ウィーと二人きりで過ごさせてくれよな……」
「だから小娘の隣の席を許してやったんだろーが。お誕生日席だぞ、良かったなチャラ男。そうでなかったら金ダライを命中させているところだ」

 魔王が毒づき、マシューがニヤニヤはやし立てた。

「ロックウィーナはモテモテなんだね」

 昨日は殿の敬称が付いていたが、今日は呼び捨てだった。マシューはこれからも出世していくであろう高位の騎士様だから、私としては呼び捨てにされても全然構わないのだが、周囲の男達がピクッと肩を震わせた気がした。肩が私と触れている右隣のルパートは確実に。

「ね、ね、俺だけに教えて。ロックウィーナは誰が本命なの?」

 おまけにマシューは私の左隣の席だったりする。人懐っこく私に接するマシューに、他の男達の苛つきが高まっていく。何かデジャヴ。ああ、マキアの時もこんな感じだったな。
 そのマキアは今日は大人しく、相棒のエンの様子を気にしていた。ユーリを捕らえることはできたけれどまだ説得には至っていない。思い詰めた瞳をしたエンがマシューに尋ねた。

「あの……ユーリはどうしていますか?」
「んー、さっき彼を拘束した馬車を覗いた時はまだ気を失っていたよ。ロックウィーナのかかと落とし、綺麗に入ったからねー。それに疲れも有ったようだから当分は眠って……」
「え、ロックウィーナも戦ったの!?」

 好奇心旺盛のミラが首を突っ込んで、上官の話の腰を折ってしまった。

「わぁっ、す、すみません中隊長! お話の途中で……」
「あはは、いいよ。友人の活躍は気になるよね? 彼女、凄かったんだよ」

 マシューは本当に気にしていないようで、気さくな態度でミラとマリナに公民館内の戦闘がどうだったか話した。二人の女兵士は頬を赤らめつつも真剣に聞いていた。

(そういえば……)

 マシューは将来性抜群の聖騎士、年の頃も同じ、そして充分イケメンの部類だと思う。だというのにマリナの理想とする結婚相手候補に名前が挙がらなかったな。だいぶ年上のルービック師団長にはキャーキャー言っていたのに。
 ミラとマリナは別の師団から第七師団に移籍したばかりと言っていたから、まだマシューと面識が無かったのかな?

「そういう訳で……」

 説明を終えたマシューはエンに向き直った。

「ユーリと話したいなら明日を待ちな。師団長も君達の事情はご存知だから、たぶん面会許可が出ると思うよ」
「……はい!」

 嬉しそうに返事をしたエンを見て、ギルドメンバーは安堵して目を細めた。

「あ、そうだウィー。これは内緒の話なんだが……」

 不意にルパートが私の右耳に顔を近付けた。

「おい近いぞ!」

 すぐに飛んだエリアスの野次にルパートは言い返した。

「内緒話くらいはいいだろーが! 誕生日だぞ!」
「……くっ、ハッピーバースデイ……」

 邪魔者を退《しりぞ》けてルパートは私へ囁いた…………振りをして、みんなに見えないようにこっそり頬にキスをした。

「~~~~~~!!」

 一気に顔全体の皮膚が熱を持った。ルパートはまた悪戯いたずらっ子のように笑って私から顔を離した。
 ばっ、馬鹿野郎~~~~!

「ロックウィーナ、顔が赤いです! ルパートに卑猥なことを言われたんですか!?」
「ちょっとぉルパートお兄様、それは僕の役割でしょう!?」

 外野が騒ぐ中、私は必死に自分に言い聞かせた。

(誕生日だから。そう誕生日。だから今日は特別に許してあげる)

 そして自然とニヤけそうになる口元を必死に結んで誤魔化した。
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