153 / 291
エリアスの背中(4)
しおりを挟む
「私も彼らと共に残ろう。アンドラの陽動部隊は何処に現れるか判らない。ここも決して安全じゃない」
エリアスが申し出た。アルクナイトが幼馴染みの肩を軽く叩いて賛成した。
「そうだな。俺の次に強いエリーが残るなら小娘も忍者Ⅱも安全だろう。頼んだぞ」
「任せろ」
「小娘はナイーブだからな? 悪人解体ショーで怖がらせて泣かせるなよ?」
「さっさと行け馬鹿」
魔王と勇者の平和なやり取り見ていると、横からにゅっとエンが顔を出した。ビビった。彼は覆面を付け直していたが、露出している部分の肌がまだ赤かった。
「ロックウィーナ、後で二人きりで話がした……」
「はいはいアナタも行きますよー。エンお兄様ー」
棒読みのリリアナがエンの腕を組む形で引っ張った。
「待て。彼女と大切な約束を取り付け……」
「はいはーい。素直に一緒に来て下さーい。暴れないでねー? 変なトコに触れると銃が暴発しますよー?」
「ち……」
聖騎士と冒険者ギルドメンバーは財宝馬車の在る中央エリアへ走り去った。その後ろ姿を見送ったユーリが苦笑した。
「いちいち賑やかな連中だな」
そして私へ軽い謝罪をした。
「悪い。俺のせいで貧乏クジを引かせたようだ。戦いたかったんだろう? おまえは強いものな」
「……いや、弱いんだよ。だからいっつも先陣には入れてもらえない」
「自分を卑下するな。おまえに倒された俺の立場が無くなる」
私は乾いた笑いで返した。
「あなたに勝てたのは奇跡だって、みんなに言われたよ……」
「ああ……?」
ユーリは共に残ってくれたエリアスを睨んだ。
「ギルドの男どもはコイツの実力を認めてやっていないのか?」
エリアスは躊躇いがちに否定した。
「そんなことは無い。ロックウィーナは充分に強いと認識している」
「じゃあ何でコイツはこんなに自分に自信が持てないんだ? 卑屈のヒッちゃんになっているんだ?」
ヒッちゃんって何だ。
「ヒッちゃんにさせてしまったのは悪いと思っている」
エリアスも乗っちゃ駄目。二十代後半の男性の会話じゃない。
「だが……」
「だが?」
「惚れた女を命懸けの戦場へ出したくない。男のエゴだと批判されたとしても」
「……………………」
素直な自分の気持ちをエリアスから吐露されて、ユーリは黙った。私はというとこんな時なのに、物憂げなエリアスの面持ちに見とれていた。だって色っぽかったんだもん。
「ロックウィーナ」
「は、はいぃっ!?」
エロい妄想中だった私はエリアスに声をかけられて動揺した。
「さっき私に何を言おうとしたんだ?」
「さっき?」
「森で会う前から……どうとか」
「森……ああ」
エリアスに強烈な既視感を抱いたんだった。ずっと前から彼を知っているような。それを確かめようと質問したけれど中断されたんだよね。
「あのですね、もしかしたらエリアスさんと私は前から……」
私はまたもや最後まで言えなかった。肌がピキっと引き攣る感覚に襲われたから。
殺気だ。
鞭を握って気配を窺う。エリアスとユーリも抜刀して構えている。
嫌な予感が的中か。アンダー・ドラゴンの陽動部隊、こちらにも現れたようだ。
(敵は何人だ……?)
今の時刻は19時半頃だろうか。月光と焚き火のほのかな灯りだけでは広範囲を探れない。
右斜め十メートル先がポンッと明るく光ったと思ったら、二連のファイヤーボールがこちらへ向かって飛んできた。敵には魔術師が居るのか!
てい。私は軌道から逸れるように横っ飛びした。物理攻撃ならガードが可能だけれど、魔法攻撃に関しては避けるしかない。
とか思ったけどエリアスが大剣で火球を薙ぎ払った。その剣には魔封じの印が彫られているんでしたね。
「ぎゃっ」
男の短い悲鳴と誰かが倒れた音がした。ファイヤーボールの発射位置を読んだユーリが、クナイを投げ刺して敵の魔術師を倒したのだ。この暗い中でよく投擲武器を命中させられるものだ。
「畜生が……」
暗闇から男達がゾロゾロと武器を手に現れた。遠距離攻撃が効かなかったので接近戦に切り替えた模様。夕飯の為に起こした焚き火の炎が招かれざる客の姿を照らし出した。
総勢二十五名ほどだが、モヒカン率が異様に高い。素肌に革製のジャケット、棘の付いた肩当てを装着し、あまり精巧ではないタトゥーを入れている。この終末臭はアンダー・ドラゴン構成員に間違いない。彼の組織には服装規定でも有るのだろうか?
「ヒヒッ、殺すには惜しいイイ女が居る…………んん?」
「へ? あ、アンタはユーリさんかい!?」
「死んだって聞いたけど、生きてたのか!?」
近付くことで私達側の細やかな容貌が敵へ伝わった。ユーリを見たアンダー・ドラゴン構成員達は皆一様に驚愕の表情を浮かべた。
ユーリはマキアから借りた服でイメージチェンジを図ったものの、東国の特殊武器クナイを構える姿は首領の側近そのものであった。
「おいユーリさん、アンタは何でそっちに居るんだ……?」
「俺達を……組織を裏切ったのか!?」
かつての仲間から問われてユーリは舌打ちをした。
エリアスが申し出た。アルクナイトが幼馴染みの肩を軽く叩いて賛成した。
「そうだな。俺の次に強いエリーが残るなら小娘も忍者Ⅱも安全だろう。頼んだぞ」
「任せろ」
「小娘はナイーブだからな? 悪人解体ショーで怖がらせて泣かせるなよ?」
「さっさと行け馬鹿」
魔王と勇者の平和なやり取り見ていると、横からにゅっとエンが顔を出した。ビビった。彼は覆面を付け直していたが、露出している部分の肌がまだ赤かった。
「ロックウィーナ、後で二人きりで話がした……」
「はいはいアナタも行きますよー。エンお兄様ー」
棒読みのリリアナがエンの腕を組む形で引っ張った。
「待て。彼女と大切な約束を取り付け……」
「はいはーい。素直に一緒に来て下さーい。暴れないでねー? 変なトコに触れると銃が暴発しますよー?」
「ち……」
聖騎士と冒険者ギルドメンバーは財宝馬車の在る中央エリアへ走り去った。その後ろ姿を見送ったユーリが苦笑した。
「いちいち賑やかな連中だな」
そして私へ軽い謝罪をした。
「悪い。俺のせいで貧乏クジを引かせたようだ。戦いたかったんだろう? おまえは強いものな」
「……いや、弱いんだよ。だからいっつも先陣には入れてもらえない」
「自分を卑下するな。おまえに倒された俺の立場が無くなる」
私は乾いた笑いで返した。
「あなたに勝てたのは奇跡だって、みんなに言われたよ……」
「ああ……?」
ユーリは共に残ってくれたエリアスを睨んだ。
「ギルドの男どもはコイツの実力を認めてやっていないのか?」
エリアスは躊躇いがちに否定した。
「そんなことは無い。ロックウィーナは充分に強いと認識している」
「じゃあ何でコイツはこんなに自分に自信が持てないんだ? 卑屈のヒッちゃんになっているんだ?」
ヒッちゃんって何だ。
「ヒッちゃんにさせてしまったのは悪いと思っている」
エリアスも乗っちゃ駄目。二十代後半の男性の会話じゃない。
「だが……」
「だが?」
「惚れた女を命懸けの戦場へ出したくない。男のエゴだと批判されたとしても」
「……………………」
素直な自分の気持ちをエリアスから吐露されて、ユーリは黙った。私はというとこんな時なのに、物憂げなエリアスの面持ちに見とれていた。だって色っぽかったんだもん。
「ロックウィーナ」
「は、はいぃっ!?」
エロい妄想中だった私はエリアスに声をかけられて動揺した。
「さっき私に何を言おうとしたんだ?」
「さっき?」
「森で会う前から……どうとか」
「森……ああ」
エリアスに強烈な既視感を抱いたんだった。ずっと前から彼を知っているような。それを確かめようと質問したけれど中断されたんだよね。
「あのですね、もしかしたらエリアスさんと私は前から……」
私はまたもや最後まで言えなかった。肌がピキっと引き攣る感覚に襲われたから。
殺気だ。
鞭を握って気配を窺う。エリアスとユーリも抜刀して構えている。
嫌な予感が的中か。アンダー・ドラゴンの陽動部隊、こちらにも現れたようだ。
(敵は何人だ……?)
今の時刻は19時半頃だろうか。月光と焚き火のほのかな灯りだけでは広範囲を探れない。
右斜め十メートル先がポンッと明るく光ったと思ったら、二連のファイヤーボールがこちらへ向かって飛んできた。敵には魔術師が居るのか!
てい。私は軌道から逸れるように横っ飛びした。物理攻撃ならガードが可能だけれど、魔法攻撃に関しては避けるしかない。
とか思ったけどエリアスが大剣で火球を薙ぎ払った。その剣には魔封じの印が彫られているんでしたね。
「ぎゃっ」
男の短い悲鳴と誰かが倒れた音がした。ファイヤーボールの発射位置を読んだユーリが、クナイを投げ刺して敵の魔術師を倒したのだ。この暗い中でよく投擲武器を命中させられるものだ。
「畜生が……」
暗闇から男達がゾロゾロと武器を手に現れた。遠距離攻撃が効かなかったので接近戦に切り替えた模様。夕飯の為に起こした焚き火の炎が招かれざる客の姿を照らし出した。
総勢二十五名ほどだが、モヒカン率が異様に高い。素肌に革製のジャケット、棘の付いた肩当てを装着し、あまり精巧ではないタトゥーを入れている。この終末臭はアンダー・ドラゴン構成員に間違いない。彼の組織には服装規定でも有るのだろうか?
「ヒヒッ、殺すには惜しいイイ女が居る…………んん?」
「へ? あ、アンタはユーリさんかい!?」
「死んだって聞いたけど、生きてたのか!?」
近付くことで私達側の細やかな容貌が敵へ伝わった。ユーリを見たアンダー・ドラゴン構成員達は皆一様に驚愕の表情を浮かべた。
ユーリはマキアから借りた服でイメージチェンジを図ったものの、東国の特殊武器クナイを構える姿は首領の側近そのものであった。
「おいユーリさん、アンタは何でそっちに居るんだ……?」
「俺達を……組織を裏切ったのか!?」
かつての仲間から問われてユーリは舌打ちをした。
1
あなたにおすすめの小説
時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜
いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。
突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。
この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。
転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。
※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる