ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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冒険者ギルドへ帰還です!(5)

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☆☆☆


 馬車はひたすらフィースノーの街を目指して走った。自分達も早く戻りたいからと言って、短い休憩以外はずっと馬を制御してくれた御者ぎょしゃの二人には感謝しかない。彼らには多大なボーナスでむくいたいが、冒険者ギルドのふところ事情はしょっぱいからなぁ……。
 帰ったらバリバリ働いてギルドの収益増しに貢献しないと!

(……あ。ルパートとデートの約束をしていたんだった)

 今回の任務が終わったら二人で遊びに行こうと誘われていた。昼間の人が多い街へのお出かけだから、これまでのようなエロい展開にはならないだろう。
 買い物をしたり屋台で食べ歩きをしたり、公園のベンチに腰かけてお喋りしたり、とっても楽しくて健全な男女の交流が待っている。

(おおお……! やっと私がしたかったデートができるんだ)

 私はゆっくり異性との距離を縮めていきたいのに、押し倒しされ、キスマークを付けられ、昨夜に至っては直に胸を揉まれた。思い出すと穴に埋まりたい気分になる。
 恋人や夫婦関係を良好に維持する上で、性行為が重要な要素の一つであるということは理解している。私だっていずれはしたい。
 でも身体の関係になる前に、まずは心を通じ合いたいと思う。これは贅沢な望みではないよね?

(ていうか、アイツ約束を忘れてないよね?)

 ルパートから言い出してきたんだから大丈夫だと思うが、一抹いちまつの不安がよぎった。楽しみにしているのが私だけだったら切ない。

 ガタン。
 馬車が止まった。ついに私達はフィースノーの街、冒険者ギルドへ帰ってきたのだ! キースの懐中時計によると時刻は16時を少し回ったところだった。
 即座にエリアスが扉を開け、先に降りて私をエスコートしてくれた。

「ありがとうございます。帰ってきましたね~」
「ああ。久し振りにベッドで眠られるな」

 それも嬉しいが一番はシャワーだ! 今日は小さい浴槽も使わせてもらって、まんべんなく身体を洗おう。泡だらけになるんだ~~~~ウフフ。

「おう、お帰り。全員無事で何よりだ」

 エントランスホールへ入った私達を、リリアナの代わりに受付カウンターに座ったギルドマスターの太い声が迎えた。ギルドを空けたのは一週間にも満たない期間なのに、ずいぶんと懐かしく感じてしまった。

「エリアスさんにアル、ギルドへのご協力ありがとうございました。ルパート、よくみんなをまとめてくれたな」
「あいよ。長距離移動で身体中がギッシギシだよ」
「だろうな。今日はこのまま上がっていいぞ」
「今日は? 明日も休みを貰えるんだろ?」

 確認したルパートにマスターは首を振った。

「そうしてやりてぇんだが全員一度には無理だな。残ってくれていたヤツらがダウンしそうなんだ。あいつらには強制的に明日から三日間の有休を使わせる」
「ああ……そうだよな。セスの旦那を含めた四人だけで、ずっと休み無く出動班を回してくれていたんだもんな」
「おまえ達も疲れているのは承知の上で言う。すまねぇが内勤のリリアナ以外は一日二人までで、バラけて休みを取ってくれねぇか?」

 私達は頷いて承諾した。

「そうなると……」

 ルパートがすぐに組み合わせを決めた。

「明日の休みは公民館戦で活躍してくれたキースさん、それとまだギルドに慣れていないユアンだ。二日目はマキアとエンのバディ、三日目には俺とウィーが休みを貰う」

 すぐにキースが噛み付いてきた。

「ちょっと待ちなさいルパート。ちゃっかりロックウィーナと一緒の日に休みを取ろうとしていますね?」
「いや俺達バディだし」
「以前出動して、僕とロックウィーナのバディも充分いけると証明しました。休む日を代わりなさい」
「うるせー。主任のわずかな役職手当で面倒くせぇ中間管理職やらされてんだ。このくらいの特権が有ってもいいだろーが!」
「……チッ」

 舌打ちをかましたもののキースは引き下がった。管理職は確かに大変そうだ。
 エリアスが申し出た。

「ルパート、いよいよ人手が足りなくなったら私も出動任務に参加するぞ。またおまえとデキているという噂が流れるかもしれないが、誰かが疲労で倒れてしまうよりは余程いい」
「ありがとな。ヤバくなったら声をかけさせてもらうよ」

 マスターが私達の中に紛れていたユーリへ視線を留めた。

「おまえさんがエンの義兄弟だな? アルからの手紙で詳細は知っている。今日からギルド職員として宜しくな」
「お世話になります」

 ユーリは深々と頭を下げた。今は身を隠す為の臨時職員だけど、アンダー・ドラゴンの件が片付いたら堂々とできるよね? 将来はここの正規職員になってくれたらいいな。

「エン、独身寮最後の一部屋へユアンを案内してやってくれ。……それとアルに申し上げますが」
「何だケイシー」
「手紙の配達人にその……、空を飛んで人語を喋る猫を使うのはやめて頂けますかね?」
「何故だ」
「迎える側の俺が驚くからです」
「ふっ、案外肝が小さいな。アイツは外見こそ愛らしいがSランクの魔族だぞ。同じSランク同士仲良くせんか」

 配下のお使い魔物は可愛いネコちゃんだったのか! 今度頼んで会わせてもらおう。

「よしみんな解散だ。明日もキースさんとユアン以外は出動になるが、今夜はゆっくり休んでくれ」
「はい!」

 リリアナを除くメンバーがゾロゾロと独身寮へ引きあげていく中、ルパートがそっと私の手に、二つ折りされた小さな紙片を握らせた。そのまま彼は何も言わずに階段を昇っていってしまった。

(んん、何?)

 冒険者ギルド二階の自室へ戻った私は、手の中の紙片を広げてみた。

『休みの日、朝10時にギルド横の本屋で待ち合わせな』

(ルパート……!)

 彼は約束を覚えていた。そしてデートできるよう、二人を同じ休みの日にしたのだ。

「ふふっ」

 何故か笑いがこみ上げてきた。
 旅の荷物を部屋の奥へ置いてから、シャワーセットを組んで同じ二階に在る浴室へ急行した。疲れているはずなのに足取りが軽かった。
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